東方傷心記   作:咲き人

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どうも咲き人です。


其の弐拾捌「墨ヘト染マレ妖シイ桜 6面下」

ヴァルガン………フルネームは【ヴァルガン=アンチハント】。アンチハントはそのまま【逆狩】という意味だ。とてもやっつけな感じがするが、これが本名ではないということは目に見えてわかるのだろう。本名は珀雲も知らないが、今はヴァルガン………またはおっさんとでも名称をしておこう。ヴァルガンは珀雲の父親の弟だ。それほど歳はとっていないはずなのだが、無精髭なぞ一丁前なことをしているところがチャームポイントだということを本当に昔に聞いたことがあるような気がする。珀雲は3、4歳ぐらいの時に5回ほどだけ見たことがあるだけなのだが、あの柔らかい口調に幼い時には必ず大人を見上げるのだが、その時によく見えたあの髭がインパクトが強すぎて今まで忘れていたことが不思議なほど印象深い人だ。

 

 

その人がどうしてこの幻想郷にいるのだろうかという疑問よりもあの幽々子という女への疑問が強かった。あの西行妖という桜が咲かないのは分かった。それを咲かせたいという理由もまぁ………大体はわかる。だが、あのこだわりというか執着心といったほうが聞こえは悪いだろうが、あれにはさすがの珀雲も不快感を拭いきれない。桜を咲かせることに幽霊なのに身を削っているような感じが肌で感じとれる。

 

 

幽々子が弾幕を絶やさずに出し続けている。霊夢と魔理沙は必死にそれを回避し、スキあらば反撃しようとする姿勢でいる。晴と咲夜は時を止めそれを援護している。だが、弾幕の量が多すぎて反撃の機会を全くない。これは自分の出番しかないと直感した珀雲は魔理沙の元へと急ぐ。

 

 

「魔理沙!」

 

「珀雲だ、大丈夫なのかぜ!?」

 

「ああ、とにかくまずはあれだ!いっきに突破するぞ!」

 

「!分かったぜ!」

 

 

魔理沙と珀雲は霊夢たちの前にでる。そしてお互いは1枚ずつスペルカードを持つ。そしてそれらは一つへと合わさっていく………二人は笑いさけぶ。

 

 

「「しつこい恋に疲れたのなら気分転換するがいいさ!押してダメなら引いてみろ!それでもダメなら受け身になって受け止めろ!それを愛情表現の一種だと捉えるのならそれも愛だぜ!!!」」

 

「「傷恋【マゾヒスティックマスタースパーク】!!!」」

 

 

放たれたマスパは途轍もなく短く、その代わりに横に太い弾幕であった。その形状から察するように絶えず襲ってくる蝶の弾幕たちの侵攻を防いでいる。それだけではない。視聴者なら分かると思うが、マゾヒスティックというのはいわゆるマゾというものなのだが、暴力的なものなど肉体的痛みを性的快感として捉えてしまうというアレである。

それがマスパに付与(エンチャント)されているとほかの人が知った瞬間嫌な顔をされるだろう。

 

 

徐々に受けていたダメージを………苦痛を快感()を捉えてしまったマスパは更なる痛みを求めるかのように体積を膨大していき、幽々子へと照準を向けられ、放たれる。

 

 

幽々子はそれを見て、やはり飛んでくるという構えをとっていたので、驚きもせず回避しようとする。だが、突如として周囲から霊力の(弾幕)が飛んでくる。霊夢の【夢想封印】だ。だが、それさえも………

 

 

「くっ!華霊【スワローテイルバタフライ】!」

 

 

幽々子の強力なスペルカードに相殺されてしまう。珀雲と魔理沙の合成スペカやそれさえも布石にした霊夢の十八番技(夢想封印)というコンビネーションの強さ。それは絆の強さだ。彼らの力の源が【生きる】ということからなのが、幽々子にとっては腹がたっている。自分は何故死んでいるのか………自分が生きていればあんなにも幸せになれるのだろうかという希望を見ているはずなのに………何故か憎たらしく感じられる。何故彼らは生きているのだろうか、分かち合えないのだろうかと考えてしまう。そうか………彼彼女は【生きている】。だが、自分は【死んでいる】。その差なのだ。死んでいるか生きているか、それだけで過去の人なのか今を現在を知っていて未来を創ろうとする人なのかがわかる。死ねばいいのに………そうすれば自分は一人ではない。過去の人とは言われない。自分の存在をわかってくれる。死ねば自分を理解してくれると………そんな歪んだ欲求がこの体をカラカラにする。

 

 

幽々子は狂ったように突如として手に持っている扇を右往左往させながら1枚のスペルカードを取り出す。そのスペルカードは回転しながら上空へと飛んでいく。それは禍々しく恐怖を感じさせられる2枚であった。

 

 

「死ね!死ね!皆死んぢゃえ!【反魂蝶 -八分咲-】ィ!花死翔朧名【墨ヘト染マレ妖シイ桜】ァ!!」

 

 

すると後ろの西行妖の花が鮮やかなピンク色………それだったのに黒く染まってしまう。そしてそこから一人の人物が現れる。その人物はもう死んでいるのか、息をしているようすはなく、青白い皮膚を下げながら両手を縛られているかのような姿をしている。そして皆はしる。これは【幽々子】なのだと………【生前の幽々子の死体】なのだと認識できる。特に目立った外傷はなく、亡霊の幽々子とほとんど変わらない。それ以外にも多々不思議な点はあるが、それはともかく、この異常なまでの温度だ。ここは地上よりも暖かく言いにくいことなのだが、春らしい温度だったのだ。それが今では急激に下がっていく。まるで、冬の猛吹雪のように………

 

 

「何!?晴、まずい!雪に紛れて弾幕が降ってきてやがる!」

 

「何だと!?くそ!これじゃあ幽々子も探せられないぞ!」

 

「な、なんで急に寒くなってんのよ!」

 

「知らないぜ!こうなったらマスパでも放って………」

 

「駄目よ魔理沙!それは逆にこっちの居場所を伝えているようなもの………迂闊に貴女のスペルカードは使ってはいけないわ!」

 

「じゃあどうするんだぜ!?」

 

「こうなったら………」

 

「アレしかねえか………」

 

「珀雲!晴!」

 

 

珀雲と晴は1枚のスペルカードを取り出す。それは温かい光を放ちながら1枚のスペルカードとなる。

 

 

「「人口々にこう語る。死ねば楽園、また死ねば絶望と。しかし我ら思う。そこに我らなし。我ら語りしは、在りし場所は今であらず。人の歴史から外れるべからず、また望むべからず。」」

 

「「苦治悪悲羅花【桜見ルコトモ叶ワナイ皆ノ世界】。」」

 

 

瞬間、雪が止まる。それに紛れていた白い弾幕も止まる。そしてそれ全てがピンク色に染まる。染まっていった雪や弾幕は塵と化して消えていく………

 

 

狂ってしまっていた幽々子も思った。

 

 

何故こんな桜の色を見て嬉しく思えるのだろう………

 

 

はっとわれに還る。西行妖の桜の花びらは枯れ落ち、黒く、何十年も立派に育っている木に戻っている。幽々子は泣き出す。やっとこさ集めた春度も異変と称され奪われたのだ。それは泣きたくもなるだろう。

 

 

「何故………私はこの桜が咲くところが見たいだけなのにどうして!?どうして邪魔するの!?」

 

「確かにあの桜が咲くところは見てみたいさ。でもそれはあくまでも桜自身が咲かなければいけない。人が手を加えた桜はその時点で一気に価値が無くなる。それは桜に思い入れがないのと同じなんだ。お前はそれがわかっていない。」

 

「それに桜ってのは花びらだけじゃなくて木の幹だって桜なんだぜ。根っこだって全てが桜なんだ。花びらがないのがどうした?その桜の特徴を認めてないのはその桜を好きになっているとは言えない。」

 

「っ!」

 

「しかも桜一本咲かせるためだけにほかの桜を咲かせなくしたら誰も楽しめないしな!桜は確かに綺麗だけどその綺麗な桜の数だけお花見も楽しめるってもんだぜ!」

 

「いくら桜が綺麗な色だとしても背景は亡霊どもだけでなんだか寂しいしね。地上がいつまでも寒いしね。そのことを棚に上げてここでお花見するぐらいだったらいっそのことしゃくだけどさっさと異変を終わらさせて妖怪どもが群がるうちでしたほうがましよ。」

 

「それに貴女は本当にあの桜を思っているのかしら?本当に桜に思いがあるのだったら無理やりにでも咲かせようとなんかするわけない。」

 

 

「「「「「お前が桜に軽い興味で起こした悲劇のせいで、お前は命取りだ。つまり………お前の負けだ。(ぜ/よ)」」」」」

 

「………………そうね………貴女たちの言うとおりね。私が間違っていたわ。色々と皆に迷惑をかけたことを謝るわ。そして異変の犯人としてひと思いにやって頂戴。」

 

 

幽々子の最後の言葉に乗った人物は霊夢一人しかいなかった。

 

 

他の皆はその場に倒れこみ、そのまま寝てしまった………

 

 

 

 

「やっと見つけた………!あなたたちが幽々子を………」

 

「………おっさんになんか用?」




次回予告


「貴様が………」

「おいおいそんなことしていないって」

「俺は………」

「おっさんはヴァルガン=アンチハント………狩る者を逆に狩る者だ。」


次回「狩ルト狩ラレル境界デ EXTRASTAGE 上」
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