東方傷心記   作:咲き人

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どうも咲き人です。書く時間ができたので投稿します。


第五章「永夜異変~不死の山から這い上がる者~」
其の肆拾弐「夜は長く月は薄く」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

少女の言葉がこの空間に響く。呼ばれた男はピタリと動きを止め、少女を睨む。少女はそれには動じなかったが、男の行動に驚いていた。

 

 

「今回の異変の担当は私よ!?なのになんであんたが行こうとしているの!?」

 

 

計画と全然違うではないかということを言いたいようで少女は男の殺気にもまるでひこうとしない。むしろ殺気で相殺している。今すぐにでもここで戦いが始まってしまいそうだ。

 

 

ちょうどそこにおっさん……もといヴァルガンがとおりかかる。

 

 

「ちょっとちょっとー。二人ともらしくないじゃない~。」

 

「おっさんは黙れ!私はこいつの行動に腹たってんのにあんたまでこいつの味方なの!?」

 

「……いやいや、【がーちゃん】も落ち着きなさいって。君が一番らしくないよ。」

 

「…………」

 

「この……!」

 

 

少女はどこからか自分の身長の二倍以上程の大剣を取り出す。ヴァルガンは慌てて少女の前に出てやめさせようとする。

 

 

「ちょ、それはダメだよ【璃緒(りお)ちゃん】~!」

 

「ちゃんつけんな!キモいんだよおっさん!」

 

「こ、心に大ダメージ。」

 

「そこどけ!アイツをぶっ殺して……」

 

 

と璃緒はヴァルガンの横っ腹に蹴りを入れる。ヴァルガンは痛みのあまりよろめいて倒れ、悶絶する。だが、ヴァルガンが璃緒を足止めしたおかげでヴァルガンにがーちゃんと呼ばれていた男はその場から消えていた。璃緒はヴァルガンが男と結託していたとでも思ったのだろう。悶絶しているヴァルガンを更に足で踏みつける。

 

 

「おっさんのせいで!おっさんのせいで!(ガシガシ)」

 

「ちょっと痛い!あ、でも気持ちいい?」

 

「死ね!」

 

「やっぱイターイ!」

 

 

 

 

魔理沙side

 

 

魔理沙は今、ご近所のアリスの家にお茶会をしている。珀雲はいないが、その分ガールズトークができるからあまり気にならない。

 

 

「そういやアリスの人形はなんでアリスにしか言葉が分からないんだぜ?」

 

「シャンハーイ?」

 

 

そう言って上海人形も不思議そうに首をかしげる。自分でもわかってないみたいだ。アリスは横に居る上海人形に向かってため息をついたが、すぐさま魔理沙の方に顔を向けて説明を始める。

 

 

「やっぱり上海人形(この子)の可動に使っている魔力が私のだからだと思うわ。私の魔力を理解するぐらいじゃないと……貴女でも分からないと思うわよ。」

 

「へー。あ、じゃあ私の魔力で人形作ったら私だけには言葉が理解できる人形ができるってことか?」

 

「それは……どうなのかしらね。いえ、それよりもまず貴女は人形作れるの?」

 

 

アリスの言葉に硬直する魔理沙。持っている紅茶が入ったティーカップをそっと口へと運びながらかっこつけて言う。

 

 

「も、ももち勿論できるぜ。」

 

「超手震えてるわよ。」

 

「あ~もう不器用で悪かったな。」

 

「(何故に逆ギレ……)逆に貴女が器用だったら言ってやるわ。なんであんな弾幕ごっこしてるのかって……」

 

「うぐっ!」

 

「大雑把なのよ。」

 

「うう……」

 

「はあ……ん?」

 

 

アリスは何かに気づく。それに気づいた魔理沙はアリスの方を向くとアリスは上……つまり空を見ている。魔理沙も釣られて空を見る。

 

 

それは夜だ。輝く星たちとその中でも一際異彩を放っている月があった。

 

 

「……綺麗な月だぜ。しかも満月だぜ。」

 

「……違う。」

 

「え?」

 

「満月じゃないわ。ちょっと欠けている。」

 

「そうか?」

 

「ええ。今日で5日目程よ。満月が未だに来ていない。」

 

「そうかなー?」

 

「長い年月、月を見てきたから分かるのかしら。兎に角異変だわ。」

 

「そうなのかな?でも、アリスが言うぐらいなんだからそうなのかもな。だったら珀雲を呼んでくるぜ。」

 

「ええ、そうしてちょうだい。」

 

 

魔理沙はよっこいしょと立ち上がると箒に股がって自分たちの家……霧雨魔法店へと行く。店に着いた瞬間、盛大に扉を開き、魔理沙はそこにいるだろうと思っていた珀雲へと大声で呼びかける。

 

 

「お~い珀雲!異変だ異変!」

 

 

だが、その声に返事をするものはいなかった。

 

 

「珀雲?」

 

 

といって寝室を見るがそこには綺麗に折りたたまれてあるシーツだけであった。そこへアリスが訪ねてくる。

 

 

「魔理沙、珀雲はいないのかしら?」

 

「う~ん。何処行ったんだぜ?」

 

「まあ、珀雲がいなければ異変を解決できないというわけではないしあまり支障にはならないと思うわ。」

 

「……そう、だぜ。」

 

 

魔理沙は寂しそうに頷くとアリスに連れられ、幻想郷上空へと飛んでいった。

 

 

 

 

霊夢side

 

 

霊夢はその夜ふと気づいて空を見上げる。綺麗なまでの月だ。

 

 

「あら、霊夢。」

 

「何?」

 

「まあまあ私が来たからって何か問題でも?」

 

「ありまくりよ。」

 

「ふふふ……まあ私のことは置いといて異変よ霊夢。」

 

「はぁ?異変?どこも……変わんないけど……」

 

「月よ月。」

 

「月?」

 

「私たちが今見ている月は偽物なの。」

 

「なにそれ?」

 

「誰かがこの満月にならない月をここ最近ずっと見せているの。」

 

「こんな綺麗な月を見せるなんて人の仕業なの?」

 

「人……まあ人でしょうね。」

 

「……報酬は「お高くするから」よし乗った。」

 

(相変わらずちょろい……)

 

「さっさと行くわよ。案内しなさい。」

 

「ええ。分かってるわ。あ、あとそうそう……」

 

「なによ、まだなんかあるの?」

 

「【珀雲がいないわ】。」

 

「は?」

 

「珀雲がどこにもいない。正確には幻想郷中を探し回っても消えた痕跡さえないの。」

 

「ま、まさか外の世界に自分から!?」

 

「……原因はあとで調べるわ。でも今は異変のことに集中しましょう。」

 

「……分かったわ。」

 

 

 

 

(自分から外の世界に行くなんてありえない。彼の精神上トラウマだろうし何より、外の世界に行く方法は彼は知らないはず……例え内側を知っていようとも結界の知識は疎かったし……もしかして何者かが邪魔だからとかで飛ばした?敵の能力が未知数ならば言いようはいくらでもあるが、恐らくそういうことか……なら、このまま放置しておけば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――珀雲の精神は崩壊してしまう。)




次回「晴し夜に紅い月を」
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