彼女……【皆原 璃紗】は貴重な休日を利用し、お墓参りに来ていた。前、珀雲と晴に連れて行ってもらったときと同じように寺の住職さんに線香を頂いてからバケツに水を汲み、尺を入れて墓のところへと出向く。
「……珀雲兄ちゃんだけじゃなく、晴兄ちゃんまで……いなくなっちゃうなんて……」
ふと立ち止まり、そうつぶやく。
珀雲が消えてから早2ヶ月以上経った。そして晴もいなくなってしまった。晴は珀雲の家に早苗といっしょに行ったきり、誰も会っていない。晴の両親はすぐに警察に捜索するように懇願し、人が変わったようにいもしない珀雲に向かって謝るようになった。
『すまなかった……私が悪かったのだ!だから頼む!晴を』
『ごめんなさい!ごめんなさい!私の命ならあげるから!晴を……晴を……』
このように自分たちの寝室でいつもこうやってしまっており、娘である璃紗のことは気にもかけないのだ。確かに自分たちのことよりも息子である晴が行方不明になり、それよりも前に珀雲が行方不明になっている……だが、何故珀雲なのか……?
それよりも前に珀雲が行方不明になった日も両親はおかしかった。挙動不審……といえばわかりやすいが、それどころではない。何かに取り憑かれたかのように……まるでドラック中毒者がドラックの効果が切れ、それを求め、得た満足感みたいに……狂いだした。
「と、そうだそうだ。早くあそこの墓を磨かなきゃ。確か前来たのが1年前だから……相当汚くなっているはずよね。」
璃紗がそう言って、墓の前に行こうとすると音が聞こえ始める。水をバシャバシャとかけている音だ。誰かが墓参りしているのだろうかと思い、あまり気にせず自分が洗おうとしている墓の前を見た時、その人物はいた。
「あんたが死んでからもう5年も経つのか……」
男は石造りの墓の前に花束を置いてそうつぶやく。周りには璃紗がいるが、気づいてはいないらしくシーンとしているためか、昼間だというのに少し暗さを感じる。
「悪い知らせがあるんだ。」
男はしゃがみ、墓に話しかける。
「あんたの息子さん。行方不明なんだとよ。」
勿論、墓は返事をしないが、男は不敵に微笑み、話を続ける。
「そう慌てんな。息子さんには【ヴァルガン】がついてる。」
男はひと呼吸置いて次は空を見上げて言う。
「行方不明……【多数】……か。もしかすればこれは……【俺の知る世界】みたいになっちまうのか?……いや、そんなことになれば俺自ら……」
……男は何かを考えたかと思ったらすぐさま手をズボンのポケットにつっこみ、その場を立ち去ろうとする。そしてぼそっと
「ククク……【漣】も【妃香梨】も多忙だからなぁ……」
次回「傷の代わりに晴れる」