「あ、あの……っ!」
璃紗が男に話しかけたのは男が立ち去ろうとしたその時であった。男はやっと来たのかとやれやれと言いながら肩をすくめ、彼女の方へと体を向ける。璃紗には今ようやくわかったことなのだが、男は璃紗からちょうど見えない位置に水が入ったバケツと尺が置いてあった。墓はちゃんと洗われてあったのである。自分のやろうとしたことがいつの間にかやられてあったなんてことは学校ではよくあることである。
「……誰だ?」
「あ、あの私……【皆原 璃紗】と申します。そこの……【
「ほぉ……まぁ、立ち話はなんだ……場所を変え」
男がそう言い終わらないうちに男のポケットから振動が起こる。すでにポケットに手を突っ込んでいたのですぐにスマホを取り出し、耳元に近づけ、話かける。
「よお……は?ああ、終わったのか……流石は――――だな。いやいや、それで?……レストランか……」
スマホをポケットにしまい、璃紗の方へ顔を向ける。
「今、お昼時だからレストランでいいよな?」
「はい。」
男は車をもっていた。それに乗ってレストランへと向かって発進する。
璃紗は男の後ろの席に座って男の姿をまじまじとみていた。女ともとれる黒の
「……あー。そういや名前名乗ってなかったな。俺は【――
「え?今なんて……?」
「絶って気軽に呼べよ。璃紗ちゃん……」
「は、はい。あの絶さんは澟さんのお知り合いなんですか?」
「ああ、昔ちょっと知り合う機会があってな……お前は?見た感じ珀雲君と同じくらいの年齢だと思うけど……」
「は、珀雲兄ちゃんも知っているの!?」
「……実際に会ったことはないがな。だが、彼は今……」
「…………」
「おっと着いたぜ。」
キキィッ……というブレーキ音とともに少し速度が上がっていたことに気づき、男は少し苦笑いをする。どうもこういうのは苦手なんだと璃紗に向けているようでそうでないよ
うな曖昧な言い方をしながら車から降りる。
レストランに入ればそこには二人の男だけが座っており、他にはウエイトレスぐらいしかいなかった。普段から客が少ないのだが、今回は男の待ち合わせがあるので好都合であった。璃紗は男に言われたまま、その男たちの向かいの席に座ろうとした璃紗は絶句する。それは向かいの男が意外や意外の人物……
「晴兄ちゃん!?」
「璃紗!?」
晴であった。晴もまさかここで妹に出会うとは思って見なかっただろう。それを見て絶は首をかしげるが、もう片方の男は絶に向かってこういう。
「ほら、感動の再会だぞ。泣けよ。」
「事情がわからんから泣けない。」
晴の隣にいる男は絶に向かってニヤニヤしながらそういうが、何も分からない絶にとってはチンプンカンプンである。
「ゆ、行方不明だって……聞いたから……ぐすっ。心配っしたんだよ?」
「……そうか。」
「お父さんもお母さんも心配してるのにどこで何してたの!?」
「…………」
「お兄ちゃん!」
「……アレが?」
「え?」
「アイツらが心配……?くだらねえ……アイツらが心配してんのは
「わ、私だって心配だよ!?でも、お兄ちゃんたちがいなくなってからお父さんもお母さんもおかしくなっちゃったのよ!」
「……自業自得だ。」
晴は憎々しそうにあの時のことを語る。璃紗は驚きのあまり口を開いたまま閉じられなかった。絶も男もさっきとは違い、真面目な顔をする。
一通り話が終わると店に誰かが入ってくる。どうやら他の客が来はじめたようで、ふと我に帰った男が晴と璃紗に向かって言う。
「ま、まあ、その……なんだ。君たちが今の状況を理解した上で話すけど……今、珀雲君は俺たちが知っている中では行方不明…………ではなく【誘拐】されているんだ。」
「!?……な、なんでそうなっているんですか!?あの……えっと……」
「あっ。そういえば俺のこと……まるで説明してなかったね。俺は【大神 漣】。絶の後輩だよ。」
「……こんな後輩いらねーけど。」
「ま、それはそうと珀雲君は諸事情で捕まってしまっている。俺たち独自の情報網で居場所は見つけてある。ここから北に10キロメートルぐらいだ。絶の車でひとっ走り行けば簡単だな。」
「そういやなんでお前上から目線なんだ?璃紗ちゃんはともかく晴君は同い年だろ?」
「え?」
絶の一言に漣は固まる。確かにそのとおりだったからだ。こういう何事も上から目線な印象を与える人物は好評ではない。それが明らかなため、急に漣は口調を強くする。言われてから直す。あまり性格の良い人物ではないことが明らかとなってしまった。
「おほん!で、早速俺と絶で行こうとした矢先に晴を見つけたってことだ。」
「……なら今度は俺から質問していいか?」
晴は重い口ぶりで漣に言う。漣は口角を少し釣り上げたまま、どうぞとだけ言う。
「何故……あんたらは【幻想郷】を知っている?」
「【幻想郷】……?」
璃紗は首をかしげる。まさか晴からそんな非現実的なものが晴の口から出てくるとは思いもしなかったということとそれがどういうものなのかという二つの意味で疑問符が浮かび上がった。晴の疑問に答えるわけではないが、絶が喋り始めた。
「漣、どこまでいえばいいんだ?」
「え?全部だろ?」
「……まじ?」
「まじ。」
「俺ら頭痛い人だとか思われない?」
「もう思われてんじゃないか?」
「……はあ、晴君。君は【生まれ変わり】というものを信じるか?」
「生まれ変わり……?信じる……当たり前だ。」
「ふっ。面白いな君は……俺と漣は前世の記憶を持っているんだ。生まれながら人以上の記憶を持っている。生き様も……死に様も……といった具合で俺たちはちょっとクレイジーでな……」
「……それと幻想郷が何の関係があるんだ?」
「……俺は紫の父親だ。」
「は?……はあああああああ!?た、確かに似てなくも……」
「はあ……絶。もう少し説明が必要だろう。」
「言いたかった。晴……この世界は一つじゃない。パラレルワールドというものが存在する。」
「あーお兄ちゃんあれだよ!あの映画でさ!よく見てたやつじゃない?」
「あれか……そこの世界に前世の時にいたということか?」
「そういうことだ。」
「じゃ、じゃあ私たちは前世の記憶を持っている人と接しているてこと!?貴重な体験をしたね!お兄ちゃん。絶たちは前世どんな人だったの?」
「……漣は嫁さんを持ってた。」
「なっ!お前……よりによってその話を発掘するか!?」
「しかもその嫁さんも俺らと同じでこの記憶を持っているし、なんと漣の幼馴染なんだよな。」
「へぇ……じゃあ私と珀雲兄ちゃんみたいな感じだね!いいなぁ……」
「お前……虎視眈々と珀雲の貞操を狙うのはいいがまずは救出だからな。」
「……絶。てめぇ……余計な火種を……」
「ごめんごめんww【ただの】幼馴染じゃなくて
「(#・ω・)」
そんな些細なやり取りの最中……隣の席の客が4人に見られないよう……ドスを引き抜いていたことが発覚したのは……まだ先のおはなし……
絶と漣と妃香梨がこの世界にいる理由……二重録のキャラは出さないって言ってたのにごめんね。
次回「晴れた日、痛い火」