Ange Vierge ~鎧武ノ風~   作:ULTRA-7

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一年過ぎての投稿。プログレス最初の登場は千尋ちゃん。我らが妹千尋ちゃん。
そしてリンケージからは野郎が二人と。二人は書いてて楽しい。

アンジュ・ヴィエルジュは今年7月からアニメになりますね。嬉しい限りです。この作品が少しでもアンジュ・ヴェルジュが広まるきっかけになればと思います。


Link1 始まり

 現在朝の6時頃。太陽の光が、建物や大地を明るく照らす。

 雲もなく、透き通る様な青空が広がっている。唯一不思議な点と言えば…

 

 ――空に3つの光、黒、赤、白の光が浮かんでいる事ぐらいだろうか?――

 

 そんな不思議な光が浮かんでいるこの場所は、青蘭島と呼ばれる巨大な島だ。

 その青蘭島にあるとある民家で、一人の少年が布団を被りすやすやと眠っていた。

 その少年の枕元にある時計、その針がカチッと、6時の部分に合わさると…

 

 

――――ピッ…ピッ…ピピピッ! ピピピッ!

 

 

 目覚まし音が部屋一帯に鳴り響いた。

 それに気づいた少年は、もぞもぞと動き始め、被っていた布団の中から手を出すと、目当てである時計を探し始めて目覚ましを止めた。

 

 

「………朝、か…」

 

 

 眠そうな目を擦りながら少年は背伸びをして大きな欠伸をする。

 そして頭をぼりぼりと掻きながら、着ていたパジャマのボタンを外し脱ぎ始めると、そのままタンスがある場所へ移動しシャツを取り出して着始めた。

 

 

「…顔、洗わなきゃ…」

 

 

 部屋を出て移動する。

 まだ眠そうでうつらうつらとしながら、洗面台を目指して歩き出した。

 洗面台へ辿り着くとまずは歯ブラシに歯磨き粉を付け、歯を磨き始める。

 シャコシャコとリズミカルにブラッシングをすると、コップに水を入れその水を口に含んでうがいをした。

 歯ブラシを終えブラシを片付けると今度は手の平に水を溜めて、顔を洗い始める。

 バシャバシャと数回洗面した後、用意していたであろうタオルで顔を拭きフンッと鼻息を立てて鏡を見た。

 

 

「うっし、今日も頑張るか!」

 

 

 少年の名前は葛木慎司(かつらぎしんじ)、花丸印の健康優良児、青蘭島にある青蘭学園と言う学校に通う高校1年生だ。

 慎司は両手でパンッと頬を叩いて気合を入れると、洗面所を出て行きある場所へ向かった。

 その場所は台所。彼は、エプロンを身に着けると、冷蔵庫を見ながら鼻歌を歌い、中にある食材を選んで行った。

 

 

「メニューは卵焼きと塩鮭、味噌汁の具は…無難に豆腐とワカメでいいか」

 

 

 そう言いながら食材を選んで取り出していく慎司。

 卵はボウルに入れて良くかき混ぜ、塩鮭は魚焼き機に入れてじっくりと焼き上げていく。

 鍋の水を沸騰させ、切った豆腐と、水で戻したワカメを入れていき、その中に味噌を溶かして煮込んでいった。

 次に、フライパンを熱した後、油を敷いて馴染ませる。

 十分に馴染んだ後、そこにかき混ぜた卵を少しずつ流していく。

 

 

「ほいっ! よっと!」

 

 

 そこから手慣れた手つきでフライパンを動かす。箸を使って丁寧に卵を焼き、焼き上がった傍からお皿に盛りつけて行った。

 そして鮭を焼き始める頃、台所にあるドアが開いた。

 

 

「ふわぁっ…お兄ちゃん…おはよう…」

「お、千尋、おはよう」

 

 

欠伸をしながら朝の挨拶をする女の子が。

この子の名前は葛木千尋(かつらぎちひろ)、慎司の実の妹だ。

 

 

「後少しでご飯できるから、顔洗ってきなよ」

「ふぁい…んん…」

 

 

 目を擦りながらぼんやりとつぶやく千尋。そんな千尋を見つめながらクスッと笑うと、慎司は朝ご飯の支度を再開したのだが。

 

 

「ふむ、寝起きの千尋ちゃん…GOODだぜ! なぁ! 慎司!」

「うっさいジョージ、妹を邪な目で見るな。焼き切るぞ?」

「しょっぱなから酷い!?」

 

 

 何処からか聴こえてくる声と共にコントじみた? 会話をした。しかもかなり辛口。

 声がする方へ視線を移すとそこには、丸い球体の様なものがふよふよ浮きながらぐずっている姿が。この球体は先ほど慎司が名前で呼んでいたジョージ。αドライバーをサポートするための自立型ユニット、所謂サポートロボットの様なものだ。…αドライバーが何なのかはまたの機会に。

 

 

「相変わらず慎司は千尋ちゃんの事となると過保護だな…」

 

 

 さっきまでぐずっていたが、すぐに気を取り直すジョージ。そして少々呆れ気味に呟いた。

 だがそんな言葉はどこ吹く風と言う感じに、慎司は調理する手を休めない。

 

 

「いいんだよ、家族なんだから。千尋がお嫁に行くまで俺が責任もって守らないといけないんだよー」

「お前は何処の古風の親父だよ…」

「うっせ」

 

 

 そんな会話をしているうちに料理ができあがる。ふわっと湯気を立てているおかずからは美味しそうな匂いが立ち込めてきた。

 そして茶碗を準備すると、あらかじめ用意していた炊飯器のご飯をよそい始めた。お次は味噌汁の準備…と思っていると、台所のドアが開く。千尋が洗面から戻って来たみたいだ。

 

 

「んー、いい匂いする♪あ、卵焼き!」

「丁度できたところ。千尋、運ぶの手伝って」

「うん!」

 

 

 上機嫌に返事を返すと、早速おかずの乗ったお皿を食卓に運んでいく。色とりどりのおかずが並べられ、最後にご飯と味噌汁。見るからにおいしそうだ。

 料理を運び終えると、そのまま慎司と千尋は椅子に腰かけた。

 

 

「そんじゃ用意もできたことだし」

「うん! いただきます」

「おう。召し上がれ」

 

 

 慎司がそう言うや否や、千尋は出来たての卵焼きに手を付けた。口に運びそのままもぐもぐと味わいながら食べる千尋。その顔は幸せ絶頂と言ったものだ。その顔を見た慎司は満足そうに微笑みながら、味噌汁をズズっと啜った。

 

 

「ん~! 今日も卵焼き美味しい!」

「そりゃ苺先輩直伝だからな。美味しいに決まってるさ。あの人は料理に関してはプロ並みだし、ほんとすげぇよ。うん」

「それを再現するお兄ちゃんもすごいと思うけどね」

 

 

 二人で笑いながら箸を進め会話をする。様子を見る限りとても仲のいい兄妹だ。

 

 

「それより千尋、学校の方はどうだ? 慣れたか?」

「お兄ちゃん、その話何度目なのよー…前にも言ったじゃない、友達と一緒に仲良く楽しく過ごしてるって」

「そうだっけ? あはは、まあいいじゃん」

「もう…確かに青蘭島に引っ越ししてからまだ5ヶ月ほどだけどさ。私そんなに心配されるほど子供じゃないもん」

 

 

 そういいながら千尋はご飯をパクつく。

 実のところ慎司と千尋は元々青蘭島に住んでた訳じゃない。千尋が言った通り、ここ5ヶ月ほど前に引っ越ししてきたばかりだ。何故この二人がこの島に引っ越ししてきたのか。それはある事情を抱えての事だった。

 その事情とは? 二人が何かをしてしまったとか、何か病気だとかではない。それもまだ少し先の話になる。

 ともかく引っ越ししてきたばかりなので、慎司としては千尋の事が気がかりだった。何度も聞くあたり兄馬鹿と言われてもおかしくないかもしれないが。それには一応理由がある。

 

 

「心配するさ。死んだ父さんと母さんの分まで、俺がきっちり千尋の面倒を見るって決めてるんだから」

「あ…」

 

 

 彼らには両親がいない――

 

 慎司と千尋の両親は、二人がまだ幼い頃に他界している。

 そして今は多くは語らないが、それまですごく苦労をしてきた。それこそ人生の荒波に押しつぶされそうな経験を何度も…

 千尋が成長するまで責任を持って見守る。死んだ両親に、そして自分に立てた誓いであり覚悟だ。…兄馬鹿だが。

 

 

「それに子供じゃないとか言ってるけどさー、まだ中3じゃん。それにこの間ホラー映画見て泣き付いてきたのはどこのどなたでしたっけー?」

「ぐぬぬ…」

「まだまだにーちゃんには勝てないさ」

「いい返せないのが悔しいぃぃぃっ!」

 

 

 さっきまで少し暗い雰囲気だったが、慎司のからかい半分の言葉でそれもどこかへ消えてしまった。

 千尋は頬を膨らましてプンスカ怒り、それを眺めている慎司はクスクスと微笑ましく笑っていた。

 

 本当に仲のいい兄妹だ。

 

 

「うんうん。仲良きことは美しきかな…と言ったところだな」

『あ、ジョージ(さん)いたんだ』

「二人して酷くない!? 俺泣くよ!?」

 

 

 ジョージの存在をまったくもって忘れていました。

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

 朝ご飯を食べ終え、慎司と千尋はそれぞれ身支度を済ませるために一旦部屋へ戻る。

 慎司は制服を掛けていたハンガーから掴み取ると、それを袖に通してパッと着る。ボタンを留め、愛用のスマホを制服のポケットに押し込むと、そのまま鞄を持って部屋から出た。

 すると丁度千尋も身支度を整えて部屋から出て来た。二人はそのまま玄関口へ…

 

 

「あ、いつもの忘れてた」

 

 

 そう言いながら慎司と千尋は再び居間へ。そこには仏壇があり、写真楯が一つ。

 

 

「父さん、母さん」

『行ってきます』

 

 

 二人の両親への行ってきます。毎日欠かした事はない。

 挨拶が終わり、漸く玄関口へ向かう。靴を履きドアを開け、二人は学園へと向かった。

 

 

 

―――………

 

 

 

「お兄ちゃん、今日の放課後は何かするの?」

 

 

 登校中、不意に千尋が聞いてきた。慎司は首を傾げながら、考え込むようにこめかみに指を当てて唸った。

 

 

「えーっと…第2風紀委員の活動してから、ドルーパーズでバイトして…あ、新作ケーキの試食会するんだ!」

「え!? それ早く言ってよ! 私楽しみにしてたのに!」

 

 

 しまったと言わんばかりに叫んだ慎司。だが案の定、千尋は少し怒りながら怒鳴った。

 慎司は悪い悪いと手を合わせ、千尋に謝った。

 

 

「もしかして何か用事あったとか? それなら千尋の分だけ別に持って帰るけど…」

「そうじゃないけど…もう、少し焦っちゃったよ。お兄ちゃんの新作ケーキ、絶対食べたいしね」

「ごめんごめん」

 

 

 苦笑いしながらもう一度千尋に謝った。

 それを見た千尋は仕方ないなぁと、溜息をつきながらも許してくれた。よっぽど慎司のケーキを楽しみにしていたみたいだ。

 

 

「おお、慎司の新作か? そーいや遥達も楽しみにしてたな」

「まーな。今回はいい感じに出来てるぜ? 何せ苺先輩監修のもと…」

「しーんーじー! おっはよーさーん!」

「んぎゃ!?」

 

 

 ジョージと話をしていた時だった。いきなり後ろからバンッと、声と共に背中を叩く音が。いきなりだったから慎司は変な声を出して痛がりながらプルプルと身悶えた。

 それを見た千尋とジョージは驚きながら慎司に駆け寄った。慎司は背中を擦りながら、ギロリと背中を叩いた主を睨みつけた。

 

 

「おいこら竜斗!? 少しは手加減しやがれ!! しかもいきなり背後からとか反則だろ!?」

「あはは! わりーわりー」

「竜斗…お前なぁ。悪い、慎司…」

 

 

 豪快に笑いながら平謝りする少年。そしてその隣に、頭を抱えながら溜息をついている眼鏡をかけた少年。

 笑っている方の名前は世良竜斗(せらりゅうと)。もう一人は結城達臣(ゆうきたつおみ)。二人は慎司のクラスメイトで友人だ。悪友でも可、かもしれない。

 達臣は申し訳なさそうに慎司に謝る。それとは別に、竜斗はニカッと笑いながら慎司の肩をポンポンと叩きながら話しかけた。

 

 

「まあまあ。親友に元気を注入するのも親友の仕事ってな!」

「その元気をもう少し別の方向に向けろよ。俺達身が持たねぇよ…」

「右に同じく」

「あはは…竜斗さんってば…」

「元気がありすぎるだろ…」

 

 

 この男、元気過ぎである。とにかく元気である。そして見たらわかる様に、元気が有り余り過ぎて慎司と達臣が振り回されている。元気なのはいいが少しは自重して欲しいものだ。

 だが決して悪い人間ではないため、これも一つの個性だと諦め…もとい、理解している。

 慎司と達臣はアイコンタクトを取りながら、再び溜息をついた。

 

 

「どうしたんだよ? 二人して溜息なんか」

「「お前のせいだよお前の!!」」

「あはは…」

「自覚がないってのも考えものだな…同情するぜ…」

 

 

 ギャアギャアと騒ぐ三人を見ながら千尋とジョージは苦笑いした。そして漸く落ち着くと、大きな溜息を吐いた慎司と達臣。この二人はどれだけ苦労していたのだろうか…想像がつかない。

 

 

「二人とも大丈夫か? 元気が無くなってるような」

「「もう気にしないでください」」

 

 

 慎司と達臣は諦めたのか、項垂れる。それを見ていた竜斗はポカーンとしていた。無自覚は怖い。

 

 …と、一行はそのまま学校へ向かい歩き始めた。歩いている間に、昨日見た番組はどうだったとか、宿題はやって来たのかとか、今日の授業は何があったとか、友達同士で語り合った。

 そして歩き始めて数分が過ぎると、周りにはあっという間に生徒が集まり始めた。片手で本を読んでいる子、友達同士でおしゃべりしている子。そして空を見上げれば、飛んでいる子や宙に浮かんでいる子までいる。だが周りの子達は気にもせず、まるでそれがあるのが当たり前と言うみたいに平然としていた。それは慎司達も同じだった。

 そして慎司達の目の前には、巨大な建物が聳え立っていた。

 

 

 ――ここは青蘭学園。異能を持つ者達の学び舎――




次回からヒロイン達登場
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