IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

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かなりお久しぶりの更新です。みなさんお元気でしたか?


01-09 水面下

転校生が来た。授業の合間合間の時間にでも、クラスメイト諸君がその話をしている。

 

ちらっと聞こえた情報が正しいのなら、中国の代表候補生で織斑の知り合い。……あいつの知り合いで中国籍の女なんて、俺はひとりしか報告を受けてないんだけどな。

 

凰鈴音。

中国人の両親の間に生まれた純粋な中国人だが、両親が日本で本場の味が売りの中華料理店を開くことになり、凰鈴音が日本でいう小学5年生の時に来日。4年後に両親の離婚により、母に引き取られて帰国した、ということのはずだ。

 

……あ? この情報の出所? んなもん、IS委員会に決まってるだろ。俺を雇ってここに派遣したのもIS委員会なんだから。

 

「アイリーンさん、転校生の噂、聞きまして?」

「これだけ噂されてればな」

 

放課後。織斑とオルコットと篠ノ之に囲まれていた。

そういえば篠ノ之は、今日は織斑のクラス対抗戦に向けての練習相手になるって言ってたっけな。この数日で覚えたことが生かせることを期待しよう。

 

「で? 早くアリーナに行かなくていいのか。時間は限られてるのに」

「ああ、それなんだけど。ブルックスさん、特訓に付き合ってくれないか?」

「なぜ? 今日は篠ノ之が付き合うんだろう。それにオルコットもいる。私は不要のはずだが」

「えーと、そうじゃなくてだな……ブルックスさんに、高速機動の操縦を教えてほしいんだよ!! ほら、セシリアもできるとはいえ専門じゃないし」

「織斑はあのISで高速機動ができると思うのか?」

「できるだろ。でなきゃ、この間の授業の時、打鉄であんなに速く動けるはずがないからな」

 

……そういえば授業でやったんだったな。やれ面倒臭い。今日は今度届くっていう新武装のために時間を使おうと思ってたのに。

 

「でも、あのISにはウィングスラスターはおろか、姿勢制御用のスラスターすらついてない。物理的に飛行は無理だ」

「でもあの……PICのマニュアル操作だっけ? あれでなんとかならないのか?」

「ならないな。あれは打鉄のスラスター性能を疑似的に上げただけにすぎない」

「ブルックス、まさか面倒臭いというだけの理由ではあるまいな?」

 

篠ノ之に見破られるとは不覚。ここ数日ずっとつきっきりだったせいで、俺が面倒臭がりだということがすっかりバレバレのようだ。……やめろ、そんな目で見るな。

 

「……仕方ない。一時間だけな」

「ありがとう!! すげー助かるぜ!!」

 

感謝はわかったから、俺の両手を離せ織斑。俺はこんなナリをしてはいるが、男と戯れて喜ぶような性癖は持ってない。

 

 

 

「……お前は専用機の性能に頼りすぎだな」

「ウッ」

「技術がなってない。専用機を持ってない篠ノ之の方が安定して稼働できているとは何事だ?」

「それは……訓練機はクセがないからで」

「言い訳無用。次言い訳したら撃つぞ」

 

アリーナで織斑の動きを見ていると、うんまあ初心者まる出しだった。

ひとつひとつの動きが大雑把すぎるし、多分それに関する考え方も大雑把なんだろう。

対する篠ノ之は、昨日まで見てた様子じゃ全然まだまだだと思ってたのに、織斑と比べてみれば驚くほど上達している。やっぱり知識的基礎って大事だな。

 

「お前はひとつひとつが雑だ。一挙手一投足、いや指の一本を動かすのにさえ集中しろ。専用機はパーソナライズしてあるから、お前が動こうとせず、動きたいと思え」

「動きたいと思う……?」

「たとえば、両手を挙げたいと考えてみろ」

 

よくわからない顔をしていたが、俺達から見れば両手を挙げた、本人からしたら挙げられた瞬間に、顔が驚きで染まる。

 

「うっ、動いたぞ!? 身体が勝手に!!」

「お前が実際に動くより反応速度は速いはずだ。千冬さんクラスの怪物ならともかく、一般人のお前ならな。それが専用化処理の施されたISが特別視される所以でもある」

「そうですわね。このブルー・ティアーズも、専用化する前は動かすといった感覚でしたけれど、専用化した後は動くといった感覚でしたし」

「織斑は戦闘中にパーソナライズしたせいで、感覚が混じってる。そのせいで無駄な動きも多い。それが雑さに繋がる」

「流石アイリーンさんですわ……。わたくしでは気付けませんでしたのに」

 

オルコットがなるほどといった顔でうんうん頷いた。

まあオルコットも代表候補生とはいえ、まだ教える側にはなってないしな。特にオルコットはイギリスがBT兵器を完成させてから代表候補生になった、割と経験の浅いパイロットだし。

 

「剣の腕自体は悪くない。が、それを支える機動面が圧倒的にヘタクソだ。ここ数日、クラスメイトと模擬戦はしたな? そして、稼働時間は織斑の方が勝っていても勝負は負けている。そうだろ」

「なんで知ってるんだ?」

「模擬戦をしたのなら間違いなくそうなる自信があるからだ。特に千冬さんの零落白夜が使えるのなら余計に」

 

自らのシールドエネルギーをガソリンにして動く、超高燃費車。それを素人に毛が生えてすらない状態の織斑が運用するなんて、賭けにもなってない。

しかも織斑の顔を見るに、そのことがわかってない。

 

「とりあえずお前は歩行・走行からやり直した方がいい。あと展開が遅いからそこもいい加減になんとかしろ。機体が体に馴染めば高速機動も自ずと身に着く」

「えーと、なんで体にISが馴染んだら高速機動ができるようになるんだ?」

「簡単に言えば、専用機になったとはいえ、まだISが一夏さんのことを疑っているからですわ。操縦者のことがよくわからないから、機体が全力を出せないのです。ですからわたくし達専用機持ちは専用機に長い時間乗り続け、自分をISに知ってもらい、信じてもらうことで、ISが勝手に動きを速めますわ」

「なるほど、交換してやってきたポ○モンも、ジムバッジが少ないと言うことを聞いてくれないっていうあれか」

 

なぜポ○モンで喩えたんだ織斑。ポ○モンは主人を疑ってるわけじゃなくて、舐めてるんじゃないのか。まあいいか。

その時ハイパーセンサーが、ISの接近を伝える。学園に登録されてる訓練機でも、報告を受けている上級生の専用機でもない。登録国家は中国……ああ、噂の転校生か。

 

「なーんでISに乗りながらポ○モンの話なんてしてんのよ!」

 

呆れ顔で宙を漂っているのは報告書にあった顔写真通りの女、凰鈴音。

乗ってるISは中国製第三世代型IS「甲龍」か。ショッキングピンクと黒のツートンカラーと、装甲のところどころにあるスパイクアーマーが刺々しい。

 

「おお、鈴」

「……敵の施しは無用とお伝えしたはずですが?」

 

フレンドリーに片手を上げて挨拶する織斑と、その前にずずいっと出てくるオルコット・篠ノ之両名。凰鈴音は敵視するようなふたりのことなんて視界に入っていないようだ。

 

「それにしても、見せてもらってたけど……みんな大したことないね。一夏も一夏だけど、初心者まる出しの打鉄に、遠距離射撃しか能のない専用機、更には訓練機すら乗れないやつ。一夏、こんなやつら相手で訓練相手足りてるの? やっぱりあたしが教えたげるよ」

「なっ、なんですってぇ!? わたくしだけならともかく、国家の威信をかけたブルー・ティアーズまで侮辱されるなんて、我慢なりませんわ!!」

「あっそ。そんな安い威信なんて、あたしの全財産で買えるわね」

 

……織斑の知り合いと聞いていたし、千冬さんが傍に置くのを許すぐらいなんだから、悪い奴ではないはずなんだが。それにしては、発言が不自然だ。

何より代表候補生が他国のISまで貶してるとなると、それ相応の外交問題に発展する。そんなことも知らないわけじゃないだろう。オルコットが織斑に喧嘩売った時のあれは、頭に血が上っていたからとはいえ、今回の凰鈴音は冷静そうだ。

 

「中国の代表候補生、そのへんにしておいた方が身のためだ」

「は? 訓練機にすら乗れないやつが口挟まないでくれる?」

「訓練機に乗れないわけがないだろう。そもそもこの学園の入学試験の第一次選考ではIS適性ランクC以下なら不合格だからな」

 

ちなみに篠ノ之はランクCではあるが、人身保護の目的の下、第一次選考は特別合格となっている。

え? 俺のランク? Aってことになってはいるが……まあ、疑ってるやつは多い。実際にAじゃねえし。オルコットがランクA+だから、自分よりランクが低いとは信じがたい、みたいな目をして、俺がISを操縦するのを見てるんだよな。

 

「お前は代表候補生だろう。それは中国という一国家の顔であるということでもある」

「それが何だって言うのよ?」

「国の顔が、堂々とイギリスに向かって喧嘩売った、と世間は認識するだろうな。この学園のすべてのアリーナには記録装置があるから、オルコットが映像記録と音声記録を公表したら……どうなるだろうなあ」

 

ちなみに俺はそれを撮りながらアリーナを毎日監視してる先生達に、毎日異常がないか尋ねるっていうのも仕事になっている。

生徒会執行部の中にある実働部隊長の役職だけど、実働部隊自体は教師陣で構成されていて、その監視の先生も実働部隊のメンバーだったりする。で、アリーナでの模擬戦中に何か問題が起こり、監視からの注意で止まらない場合は、俺か千冬さん、あるいは巡回中の教員用ISに搭乗した先生がそれを止めに行かねばならない。面倒臭い。

 

「ふん、あんたみたいな劣等生は知らないのかもしれないけど。IS学園ではね、学園内にいる生徒のことについて、各国家は干渉できないことになってるのよ」

「お前の発言は、お前が代表候補生である以上学園内でした発言であっても無効にはならない。手出しができないのはお前本人だけで、中国という国には教育不行き届きっていう名目で色々とできる」

「あ、あのさ、ブルックスさんも鈴も落ち着こうって。な?」

 

織斑がISを装着しているというのに些か青い顔をしながら、俺と凰鈴音を宥める。ISを装着してても顔を青くできるなんて、こいつはある意味では才能があるのかもしれない。戦闘に役立つかは甚だ疑問だが。

 

「一夏、止めることはないぞ。ブルックスの言っていることは正しい」

「それに劣等生とはあなたのことですことよ、凰鈴音さん。この方はあのブリュンヒルデ。それすら知らないあなたの方がよっぽど劣っていますわ」

「オルコットもそういうことを言うな。お前も代表候補生だろうが」

「ンンッ、すみませんでした」

「は? え? あんたが……?」

「自己紹介がまだだったか。香港代表、アイリーン・ブルックスだ。一応、第3回モンド・グロッソで総合優勝している」

 

にやりと笑う。悪役の顔にしか見えないって? 知るか。

流石に他国に興味がないと公言している凰鈴音も、ブリュンヒルデぐらい知ってるだろう。俺の立ち位置、実力、そして篠ノ之とオルコットに囲まれているこの状態から、形勢不利だとようやくわかったのか、まずい、といった表情に変わった。

 

「くっ……一夏、今日の20時、寮の屋上に来て! 逃げんじゃないわよ!!」

「おう、わかった」

 

……しっかし、専用機持ちが増えると問題も起こりやすくなるし、勘弁してほしいぜマッタク。はあ、と溜息を吐くと織斑が幸せが逃げるぞなどと言ったので、「一意専心」の銃口を頭に突き付けさせてもらった。

 

 

 

織斑の訓練への付き合いが終わり、篠ノ之の方も見てやると、アリーナ使用時間が終了したので、寮に戻った。

アリーナは17時まで、夕食は18時から。空き時間である1時間を勉強に費やす篠ノ之に付き合い、そのままふたりで食堂に繰り出す。篠ノ之の薦めで定食や蕎麦なども食ってみたが、なかなか美味い。和食はヘルシーすぎて少し物足りないが、まああとは寝るだけの夕飯だし、これぐらいでもいいだろう。

 

今日は何にしようかな、とメニューを見ていたら、かきあげうどんの文字を見つけた。

 

そういえば最近食ってないな。よしかきあげうどんにしよう。

食券を買って、調理師に渡すと、すぐに湯気の立ち上る、美味しそうなうどんが出てきた。

 

「あれ、アイリーン……?」

 

いつもならこの時間は割と空いているはずなのに、今日はなんだか人が多い。ああ、そういえばさっき雨が降っていた。俺達は屋根のあるアリーナでやっていたが、屋根のないアリーナで訓練していた者や屋外で部活をしていた生徒が、雨のせいで早めに切り上げたせいかもしれない。

そんなこんなで数少ない空席を探しながらきょろきょろしていると、窓際から聞き慣れた声が聞こえた。簪だ。隣には本音が座っていて、その前は都合のいいことに空いている。

 

「簪、それに本音。珍しいな、簪がこんな時間に食堂にいるなんて」

「うん、かんちゃんがあーちゃんに会いたいって言ってたから、この時間に食堂に来るよーって教えてあげたんだー」

「なるほど。私と篠ノ之が相席してもいいか?」

「う、うん。どうぞ」

 

俺が簪の向かい側に、篠ノ之が本音の向かい側に腰かける。ちなみに篠ノ之は日替わり和定食、本音は洋定食Aセット、簪は俺と同じかきあげうどんだった。本音と簪の器の残りは半分ほどに減っている。

 

「ブルックス、彼女は?」

 

ひとり気まずげに和定食の味噌汁をすすっていた篠ノ之に、そう尋ねられた。

ああ、本音はともかく、簪はクラスも違うし初見なのも仕方ないか。一応代表候補生だからある程度有名なはずなんだけどな。

 

「4組の更識簪と、うちのクラスの布仏本音。簪は日本の代表候補生、本音は生徒会だ」

「更識簪、よろしく」

「布仏本音だよーよろしくー」

「1組の篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 

簪は篠ノ之の名字で察したのか、少し表情が変わった。

そういえば、簪と篠ノ之は、どちらも才能に恵まれ過ぎた姉を持っているんだよな。そして形は違えど、多少なりと疎んでいる。たまたま会ったとはいえ、このふたりは割と分かり合える間柄になるのかもしれない。

 

「そーいえばあーちゃん、最近しののんと仲いいね?」

「しののん? って篠ノ之か。仲がいいというか、勉強を見てやっているだけだな」

「うむ。私は姉こそISの開発者だが、私が開発したわけではない。ISのことに関しては、ブルックスの方が遥かに詳しい。だから教えを乞うているんだ」

 

教えを乞う。篠ノ之がこの言い方を出来るようになったのが、ちょっと嬉しかったりする。これのおかげで、俺が今も面倒臭がらず篠ノ之の勉強に付き合えていると言っても過言ではない。

俺に頼んできた当初は、なんというか……上からだったんだよなあ、物言いが。どんな心変わりがあったのやら。それでも乞われて悪い気はしない。

 

「そだねー。あーちゃん、ISの操縦も上手いし」

「アイリーンの戦闘記録って、すごく勉強になるし」

「うむ」

「せんとーきろく?」

「戦闘中の記録のことだ。ISのハイパーセンサーから来る通知や、武装の待機コール、展開完了、被弾率、そういうことを戦闘中の映像と一緒に記録される」

「……本音はまだあんまりISに乗ってないから、わからないかも」

 

簪は俺の戦闘記録なんて見てたのか。まぁ、俺の戦い方を参考にするならありだけど……ぶっちゃけ簪には俺のスタイルは合わないんだけどな。

 

「そういえば、3人は2年になったらどっちの科を選ぶんだ?」

 

ずるる、今日ももちもちの麺が美味い。

 

「どっちの科、とは?」

「2年から普通科と整備科に学科が別れる。クラス編成や、各学科に必要なものを事前に用意するために、6月頃に1回目のアンケートがあるって言うからな」

 

事前調査だ。本音は姉である虚さんが整備科であるからそちらが濃厚か。簪は代表候補生だからほぼ普通科と思うが、場合によっては整備科もあるかもしれない。

そして一番読めない篠ノ之。

 

「整備科はなんとなくわかるのだが、普通科とは……。今の我々も普通科だろう?」

「1年は強制的に全員普通科だな。2年からは整備科を除いた全員が普通科になる」

「あーでもねー、普通科のすごい人達って特別かり……なんだっけ? を3年からやるらしーよー」

 

特別カリキュラム? 俺は聞いてない。そういうことはちゃんと言っとけ。特に更識と千冬さん。

 

「えっとー、なんだっけー、かんちゃん」

「……確か、集団戦術における指揮を取ったり、オペレータの練習をしたりするカリキュラム。って、先生が言ってた」

「なるほどな……私みたいに軍で学んでいる操縦者は一握りしかいないし、IS戦闘に関してはIS学園で学んだ方が確実だからな」

「そういうこと。……私は、それに進むようにって、国から言われてる」

 

簪は普通科か。まぁ、そうだろうとは思っていたが。

一度部屋に邪魔した時、パイロットだけする上では必要ないようなレベルのIS専門書が部屋に並んでたからな。もしかしたら、とは思ったが。

 

「んー、わたしはー……整備科かなぁ」

「そういうブルックスはどうなのだ?」

「聞かなくてもわかるだろう? 私ほどのパイロットがなぜ今更整備科に行く?」

「……だろうな」

 

篠ノ之は望んでこの学園に入学したわけじゃないからな……。まだ将来の展望がはっきりしていなくても仕方ない、か。

まぁ、教えている側としては普通科に進んでほしい気持ちがないわけではないが。護衛対象でもあるし、科が別れると色々面倒だ。

つゆまで飲み干した丼から目を上げると、時計が目に入った。あ。

 

「……すまない、本国に臨時通信を入れる時間だ。先に失礼する」

「おやすみあーちゃん」

「おやすみ、アイリーン」

「おやすみ」

 

3人に見送られながら、俺は席を立った。

いつもだったらあと2時間は遅くに定時連絡を入れるだけでよかったのに、5限目の途中にISの方に通信が入っていた。19時から、オペレータに話を聞くようにと。

 

 

**********

 

 

やれ。面倒なことになった。

学園内でも手一杯だと言うのに、なんで俺にだけこんなにも仕事が降りかかる?

力がある者が求められるのは必然だ。それはわかってる。でもここまで酷いと愚痴りたくなっても仕方ないだろ。

 

-『中国に不穏な動きあり。常時臨戦態勢維持と、事前指示を』

 

俺と同じ頃から軍で育てられ、10年近い歳月を重ね、経験を積み重ね。

女性でありながら、未だ男性社会であるISを扱わない通常軍の最高司令部のオペレータさえも兼任する、母国随一の戦術オペレータ。

ある意味、俺と二人三脚をしている彼女-レイラから受け取った報告。

 

「なんでまた……」

『言ってる自分が一番よくわかってるんでしょう? ……あなたの留守を狙って、よ』

「……βで準備していてくれ。本当にまずいことになるなら授業中でも呼んで構わない。そういう契約だからな」

『オペレーションβ、了解』

 

となってくると……。中国の代表候補生が俺の護衛対象だとわかっているところにわざわざ突っかかりに来たのは、俺の目を眩ますためか。なるほど凡愚なやり口だ。

……とはいえ、一番不安なのが1週間後、か。ミカエルは今イタリアにいる。試験稼働で俺もイタリアに出向くことになっている。その間だな。

 

そこまで考えて俺は思考することをやめた。

本国にはIS技術を取り入れた、それまでの戦闘機や戦車、それの乗員を大量配備してあるし、なにより2機の軍用ISと、量産装甲と変態装備だらけの研究用ISの計3機がある。

IS2機はパイロットもかなり熟練しているし、俺がいなければどちらも国家代表になってもおかしくない実力者だ。俺が到着するまでの数分を凌ぐ戦力はある。

 

……ISが誕生してから早10年。

世界は加速的にISを重視し、他の戦力を戦力と見なさなくなっていった。

それのせいもあって、世界中で女尊男卑は蔓延った。それまで戦ってきた者達が必要とされなくなり、収入も得られなくなったから。

 

「……()を生きている女どもは、戦闘機で人を何人殺せるのか、知っているんだろうか?」

 

ISは467機までしか存在できない。

だが、ISと比べて無力だからと無条約になった、いくらでも保有できるようになった戦闘機や軍艦や戦車。これらは材料など地球上にたくさんある。

ISと戦闘機。どちらがより多くの人間を殺せるのか、自明の理だ。

その武力を、わが母国以外は、ほぼすべての国で自ら投げ出している。

今の世界はおかしい。インフィニット・ストラトスのせいで。

 

ぽつり。

繋がったままの通信の先のレイラは、何も答えなかった。




オリキャラ紹介

「レイラ」
香港軍で最も優れているとされる戦術オペレータ。
中国語の本名も持っているが、呼びやすさなどの面から気に入って「レイラ」と名乗っている。まだ20歳にもなっていない。

2016/02/14 誤字修正
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