IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

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6000~1万字を諦めたうえでの14話、はっじまっるよー(死)


01-14 砦

キンッキンッキンッキンッ

 

空薬莢の跳ねる音。

 

チュインッチュインッ

 

ブレードが、当たりそうな弾を弾く音。

 

 

空を裂いて、テンペスタS02に肉薄する。

 

 

自己流の剣戟。苦しそうに受け止めるテンペスタS02。

 

ガギン ビーッ ギンッ ビーッ

 

金属同士のぶつかり合う音にまぎれて、俺の左耳が鳴る。

この音は。

 

 

銃火器の射程から離脱し、一旦テンペスタⅡを脱ぐ。

ISの2機同時稼働はできないんだ。その行動に目をひん剥くテンペスタS02に構っている暇はない。

 

「こちら最碧参型。どうした」

『最碧弐型より参型へ。香港全土が北からIS15機、戦闘機169機、ミサイル発射台32機、他多数により攻撃を受けています』

 

北……。……嫌な時に来るね、まったく。

 

「了解。情報部と開発部はゲートフルロック、敵ISのデータを転送しろ。民間人の死者を出すな」

『最碧弐型、了解』

 

プライベート・チャネルに対して音声入力していたのは、テンペスタS02の操縦者にも、ミカエルにも伝わったことだろう。

 

「ミカエル、香港が攻撃されている。今から急行する、天井開けて」

『了解、こっちの説明は任せて』

 

閉まっていたアリーナの屋根が、ゆっくりと開き出す。

ぱらぱらと雨が降り注ぐ。分厚い雨雲が空を覆っているが……雷は発生していないな、問題ない。

 

-IS「シューティングスター」 戦闘モードへ移行

-有事制限解除

-システム「ABFS」「PTS」起動

-システム・オールグリーン

 

「悪いな、学校に戻ったら埋め合わせをする」

 

-ブースター 作動

 

開き切ったアリーナの天井から宇宙を目指す。

というのも大気圏をちんたら行ってたら、香港まで何時間かかるか。マッハ1で7時間半だぞ? ない。

 

なら宇宙空間を飛べばいい。このISは本来のIS通りに、宇宙での活動も前提にしてるからな。

……まあ、本当のことを言えば、絶対防御があっても大気圏じゃ速度に限界があるから、なら宇宙空間を航行すればいいじゃないかって言い出したどこかの変態な義姉がキチガイブースター作ったせいで、それに合わせて機体もいじったんだが。

 

元々最碧シリーズは宇宙空間での活動および調査ができることを最低条件として制作されたISだ。だから第一世代型なのに、調査地の岩石などを持ち帰れるように拡張領域を有している。

拡張領域なんてものの構想すらなかった時代からこんなものを有していたことこそが、香港のIS産業が発展していると言わしめる理由でもあるが。

 

-大気圏離脱モード 作動

 

ブースターにエネルギーが集まる。

首や腹などの、元々装甲がなかった部分に装甲が新しく展開されて、全身装甲(フルスキン)と化す。

 

 

Infinite Stratos……。

永久の成層圏だなんて、まるで宇宙空間での運用を制限されている今のこいつにぴっ()たり()な名前じゃないか。

 

 

**********

 

 

IS15機を始めとした軍勢に急襲を受けた香港は、待ってましたとばかりに迷わず動きだす。

ISの開発から得た技術と、IS開発そのものの副産物-それこそが、ISコアの保有数の少ない香港の持つ武器だ。

 

高性能なレーダーと二重の自動迎撃装置によりミサイルのほぼ全て、99%が撃墜されている。

それでも撃墜できなかったものは香港が世界に誇る高速戦闘特化型IS「最碧弐型」と、その登録操縦者であるジェシカが自ら撃墜。

 

自動迎撃装置でカバーできない面には、香港の多くの民が暮らしている。

それらは香港陸軍が避難誘導を行い、人命第一で守ろうとしている。

 

そして-

 

 

169機の戦闘機と、15機のISを相手取るのは、ただ1機のIS。

香港初の国産ISにして、香港の名を世界に轟かせた、第一世代IS。

 

「最碧壱型」。

 

第3代ブリュンヒルデたるアイリーン・ブルックスのせいで霞んではいるが、何を隠そう最碧壱型とその登録操縦者レベッカこそが、第1回、第2回モンド・グロッソに出場した、正式な元香港代表である。

 

国家代表の地位を退いたとはいえ、未だ現役。

その堂々たる立ち居振る舞い、実力、そして風格に、相対した全ての襲撃者の手が一度止まる。

攻撃の手が止んでしまえば、あとは彼女の独壇場である。

 

1機、また1機と戦闘機は撃墜され、しかしISの攻撃は届かない。

 

『チッ、たかが第一世代なのになんで当たらないのよ……!』

『ヘタクソ! あんた射撃の才能なさすぎるのよ!』

『なんですってぇ!?』

 

「最碧壱型」は、機動性能だけでいえばラファール・リヴァイヴとほぼ同等である。

これだけで言えば並みの射手であれば最碧壱型に一発や二発、当てられるかもしれない。

 

だがレベッカは、ISに対して無力に等しい戦闘機にすら、一撃離脱を徹底している。

つまり、互いのISの射程圏内に入るのはほんの一瞬しかない。

しかも、レベッカ側には、射程圏内に入る気はさらさらない。

 

なぜなら。

 

爆ぜる音と共に、襲撃者のISのうちの1つがバランスを崩し、煙をあげながら高度を下げていく。

続いて、15機のうち前衛を担当していた計5機が、立て続けに同じ目に遭う。

勿論整備不良などが原因ではない。

 

『予測時間ぴったり。相変わらず時間を守る子だね、アイリーン』

『ああ。ここまで稼いでくれて助かった』

 

レベッカが襲撃者ISに対して強勢に出なかったのは、

 

『バリアは用意しとく。思いっきり暴れといで』

『任せろ』

 

ただの時間稼ぎ、お膳立て、当て馬でしかなかったからである。

 

 

宇宙空間を通過し、大気圏を移動するより早くに到着した香港の最大戦力に、襲撃者集団は統率を乱していく。

 

ミカエル・ブルックスについての条約の中に、ミカエル及びその専属操縦者の領空通過及び宇宙空間活動は、事前報告があれば行ってよいという条文は確かに存在する。

しかし大気圏を通過するのであれば、人間の乗ったISでこんなに早く到着できるわけがない。しかし、宇宙空間での活動ができるようなISであるなどと、知っているはずもない。

 

こんなに早くにここにいるなんて、信じられない。これは偽物じゃないのか。はったりじゃないのか。

敵陣営を情報が錯綜する。

 

『二度と馬鹿な真似ができないように、徹底的に教えてやるよ』

 

先日手にしたばかりの大馬上槍を掲げ、計11枚の花弁が火を噴く。

 

 

 

 

1時間後。

香港のビル群の上を覆う、大きなコンタクトレンズのようなものの上には、IS15機の残骸と、戦闘機169機の残骸。そして、計184人のパイロットたちが、顔中体中を液体という液体で濡らして無傷で横たわっていた。

 

 

**********

 

 

襲撃者集団の正体は、あっさりと割れることになった。

コンタクトレンズ……もとい、最碧壱型の()()()()()()()()(ティ)で作られた、海水による疑似シールドの上にあるISや戦闘機であった残骸。それらの中で、ISコアは生きていたのだ。

 

ISコアの登録国家は-中国。

登録操縦者も設定してあり、各国代表候補生カタログを見ればすぐに理解できた。

ISを操縦していたのはみな、「中国の代表候補()」だと。

 

「アイリーン、諸々お疲れさま」

「ジェシカ……。そっちも迎撃と連絡係ご苦労。私がいないせいで負担をかけて申し訳ない」

「いいのよ。民間人には死者はおろか、重傷者もいないわよ。まあ、避難中に足を捻ったとか転んで膝を擦りむいた人が何人かいたけど」

「それの治療は軍医に無料でさせておけ。陸空軍に被害は?」

「迎撃砲の砲身が今日だけで寿命を迎えちゃったから、それくらいね」

 

突然の襲撃だったにも関わらず、大きな怪我人や死亡者もなく、平穏に終わろうとしている。

もうすぐしたらIS委員会から人が来て、ミサイル発射台の操縦者含めて200余名を連行するはずだ。

 

今回の襲撃は国連安保理で議会にかけられ、国際裁判所に送致されるものと思われる。

議論の風向き次第では、モンド・グロッソの半永久的出場停止はもちろん、配分されているISコアの5割以上を没収し他国に再分配あるいはIS学園に寄付もあるかもしれない。場合によっては安保理の常任理事から降ろされるだろう。

 

しかし……。

 

「どうしたの? あまり眉間に皺を寄せてると、可愛い顔が台無しよ?」

「可愛いって言うな。……IS学園に転入してきた、専用機持ちの中国代表候補生がいるって話はレイラから聞いてるか? ……そいつがいなかった」

「聞いてるけど……。変ね、中国に分配されてるコアは確か19個で、うち2個が開発用、1個は国家代表の王珠晶。で、今回の襲撃ISは15機……。そういえば王珠晶もいないわね」

 

それなのだ。

編み込まれた黒髪と赤い口紅が特徴の女だ、とモンド・グロッソの時に感じた。

その独特な雰囲気は、会えば忘れがたい。その女が、今回いないのだ。

 

「……そこの2人が欠けてる理由か……。今ここは水曜日の21時だな?」

「ええ、21時18分よ」

「なら話は早い」

 

平日の21時は既に大浴場を閉められていて、各部屋か寮のロビーくらいしかうろつけない時間だ。あいつならそこは生徒会長権限でなんとかできるだろう。

 

「更識、今いいか?」

『あっ、アイリーンちゃんたら、そんな呑気なこと言ってる場合ー? 今香港大変なことになってるっていうのに』

「それはもう制圧したからIS委員会を待つだけだ。遅い時間に悪いが、1年の寮に行って、2組の凰鈴音がいるか確認してくれ」

『凰……って確か中国の代表候補生よね? なんでまた』

「詳しい話はIS学園に戻ったらする」

 

ぶーたれながらもプライベート・チャネルを切って確認に行ってくれているようだ。こんな遅い時間にこき使ったしな……。イタリアの菓子か何かを土産として買って帰ってやるか……。

 

『もしもーし。いたわよ? 寮の自室に。でも、同室の子いわく、すっごい落ち込んでてベッドから出てこないらしいわ』

「……そうか。いることが確認できたならいい。ありがとう」

 

凰鈴音は、IS学園に残っているのか……。

 

「何かわかったの?」

「いない代表候補生が、IS学園の寮にいるってことが確認できた。……そいつは、IS学園に転入するなり暴言を吐きまくっててな。ヘイト稼ぐだけ稼いで、油断させるために学園に残した、のか……? でもそれを専用機持ちにやらせるメリットもわからない」

「私もさっぱりだわ……。レイラと一緒に、何か情報がないか探しておくわね」

 

きっとレイラに会いに行くであろうジェシカを見送る。

今年23、だったか。俺も人のことは言えないが、ジェシカも大変早熟なパイロットだった。ISが登場したのが10年前で、第一世代型が世間を回ってたのはそこからせいぜい1、2年だ。

第二世代以降の機体への更新がなかったのは、第二世代が出た頃には既に二次(セカンド)移行(シフト)を終わらせていたからだ。

つまり、15歳ぐらいの頃にはセカンドシフト済みってわけだ。俺も人のこと言エナイケドナー。

 

 

こほん。

しかし、今回の襲撃の意図も不明だ。

まあ、ここはIS委員会の担当者が()問するだろうから、俺の考える範囲じゃないか。直にわかる。

 

それより、俺が考えるべきは。

 

「……どうやってイタリアまで帰るべきか」

 

肩を落とすしかなかった。




○オリキャラ紹介

「レベッカ」
最碧壱型の登録操縦者。ISが登場してからアイリーンが国家代表になるまで、ずっと香港代表といえばこの人だった。例にもれず英語圏の愛称。20代後半。

「ジェシカ」
最碧弐型の登録操縦者。高速戦闘においてはレベッカの上をいくが、格闘戦となると分が悪い。英語圏の愛称。23歳。

「王珠晶」(おう・しゅしょう)
中国の国家代表。黒髪で赤い口紅。ナンカドッカデ聞イタ特徴ダナー。

○ここだけの裏話
タイトルにもある「砦」と、IS名の最碧の「碧」の字が同じ字だと勘違いしていて、最も砦に相応しいという意味で最碧って名付けました。誤字から名前が付きました。
でも砦でヘキって読ませるのは無理があったので最碧を使い続けています。割と気に入ってます。

16/09/30 誤字修正
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