(意訳:とりあえず登場だけはさせますから!!)
というわけで、とりあえずシャルロットも転入してきます。
ついでにアンチされまくってた鈴にやっと安寧(?)もきます。
(あと、タグを1つ追加しました)
それでは第2章3話、どうぞ。
火曜日。
一昨日訪れた五反田食堂での一件は、ミカエルの手がけた有史以来最も長い狙撃銃「一意専心」でもって、織斑の口に戸を立てた。
そして今俺は、嫌々ながらも、生徒会メンバーとしての仕事を手掛けている。
「-と言ったわけで、私達トーナメント表作成係は、その名の通りトーナメント表の作成に関わる事務雑務全般を請け負う」
トーナメント表作成自体は、昨年まで使われていた機械が現役だから、それを使えばいい。
つまり、仕事自体はかなり楽な係ではある。
「ここまでで質問は?」
各クラスから集められた2人組、計24人をぐるりと見回すが、特に反応はない。
「よろしい。では当日の業務についてローテを……」
組もう、と言おうとしたところで、ノック音が静かな教室に響き渡った。
「どうぞ」
「ごめんねーアイリーンちゃん。ちょっといい?」
現れたのは更識で、招き猫のように俺を手招いている。
軽い声とは裏腹に、目の下にはクマ、頬も心なしかこけているように見えた。
「手短にな」
「うん、実はね……」
俺の耳元に口を近付けてひそひそと囁いた。
……マジかよ。……マジだな。
マジでなければ、更識がプライベートチャネルで連絡できるということを忘れるはずがない。
俺も同じように、頭を抱えた。
**********
月曜日。
とうとう、件のフランスからの転校生がIS学園に足を踏み入れる日が来てしまった。
あちらさんは6月頭に入れたかったみたいだが、先に6月頭にドイツから転校生を受け入れることになってしまい、2人同時に受け入れるのは難しいという理由で2週間待たせたのだ。嘘も方便。2週間の猶予で更に調査ができた。
織斑の護衛に関しては、ボーデヴィッヒがしかめ面をしながらも引き受けてくれたから、まあ大丈夫だろう。ドイツ軍の誇りにかけて、あいつの能力の範囲で十分に働いてくれるはずだ。
少なくとも、代表候補生クラスにはひけをとらないでいてくれると思われる。そうでなければ千冬さんも紹介しないだろう。
そして-。
早めに朝食を終えた俺は、IS学園の正門に来ている。
更識がアレについてバタバタしすぎているので少しくらいは業務を代わってやろうと思ったのが1割、残りの9割は-。
「おはようございます、フランス代表候補生にして2人目の男性操縦者の-シャルル・デュノア?」
各方面からの情報、諜報により、やはりデュノア社長には息子などいないことが判明している。
公募で民間男性に適正検査を片っ端から施し、当たったのを養子縁組で息子にした、というわけでもなさそうなのは、そんな政策もデュノア社の動きもなかったとイギリスが太鼓判を押したから。ついでに言うとイギリスに借り1つで諜報してもらい、デュノア姓の養子縁組が最近にあったかを確認したが、養子縁組に
更に、編入のための書類に顔写真がついているのだが、その瞳といい、口元といい、かなりデュノア社長に似ていたし。
何より。
「……っ、はじ、めまして。フランス代表候補生、シャルル・デュノアです。よろしくお願いします、アイリーン・ブルックスさん」
ミカエルの付き合いでフランスに行った時、見ちまったんだよなぁ。
シャルル・デュノアに似た少女を。
デュノア社の、通常は関係者でなければ入れない部屋で。
「ああ、よろしく。荷物は既に寮に運び込まれている。とりあえず、職員室に行くか」
ビンゴ。
すぐ繕ったが、それぐらいで騙されるほど俺はお人よしじゃない。たとえどんなに気弱であろうとも、俺と相対しただけで、あんなにわかりやすく怯えるはずがない。
間違いなく、後ろ暗いことがある。
さて、俺を舐めてこんなことを仕掛けてきたなら、相応の報復はしないとな。
千冬さん然り、アリーシャ然り、天災や天才然り。
世界一たる人間は、世間に舐められてはいけない。
一般人に舐められてしまえば、その世界一の冠はゴミでしかなくなるからだ。
その冠を冠たるために、千冬さんであれば、自らの力で威圧的であろうとした。
アリーシャであれば、道化に努め、一般人に理解されることのないようにした。
天災と天才は、武力や経済力での威圧と、道化としての顔を持つようにした。
俺が選ぶのは、千冬さんと同じ道しかない。
ただでさえ「女である」などと偽る道化なのだ、これ以上どうして道化になれようか。
**********
男に飢えた女子高であるこの学校の生徒たちは、シャルル・デュノアに対しても黄色い声を浴びせ、そして織斑と共に男子更衣室(としているが元は当然女子更衣室だったところ)に行かんとするのを妨げ続けた。
今回ばかりは、遅刻ギリギリだったのもある程度仕方ないと思う。
俺からすれば、更に完成度の高い男装をしている身内がすぐそこにいるから、なぜ胸を平らにしただけの女にここまでの反応ができる? と不思議にしか思えない。
ボーデヴィッヒは影で、この学園の生徒たちを「ISをファッションとしか考えない平和ボケした愚図」などと表現したようだが、まあ生徒の4割を日本人が占めているのだ、日本の最高法規的に多少は仕方ないと思うものの、人を見る目が足りないという点では賛同するほかない。
さて、織斑たち男子更衣室組が遅刻しかけた理由は簡単、本日の1限がグラウンドでのIS実技だったからだ。
ラファール・リヴァイヴを纏って地面に墜落した山田先生と、その豊満な体にラッキースケベを噛ました織斑はさておき、本日の授業の導入として、山田先生と生徒2人が模擬戦をすることになった。
「専用機持ちは-ブルックス、ボーデヴィッヒ、オルコット、凰、デュノア、そして織斑だったな。……オルコットと織斑、前に出ろ」
そう、凰鈴音がなぜ専用機をまだ持っているのかというと。
彼女は日本に帰化し、名前の漢字は凰鈴音そのままに、読み方をオオトリ・スズネに変えた。
そしてそのままIS学園に在籍できることがこの2週間で決まったからだ。
かと言って呼び名に関しては、周囲の混乱を避けるためにファン・リンインそのままだが。
そして、細かいことは今は省くが、凰鈴音は今、日本のIS大企業「倉持技研」の武装テストパイロットとなり、打鉄を専用機として受け取っている。
「おっ、頑張ろうな、セシリア!」
「はい! 援護射撃はお任せくださいな」
なんで千冬さんはそう、すぐにエネルギーが尽きそうな組み合わせにしたのか。
まあ、前衛後衛がはっきりしているし、オルコットの射撃技術なら誤射はあるまい。多分。
「織斑の遅刻寸前の罰はこれでいいとして-。デュノア、お前の罰は今山田先生が使用しているISについて説明することだ」
山田先生が纏っているのは、教員用ラファール・リヴァイヴ。
生徒が使う訓練用との違いは、何と言っても入れてある武装の数だろう。
1年生用の訓練機は基本的にブレード1本とサブマシンガンかアサルトライフル1丁が入れてある。
ちなみに2年、3年と上がるにつれて武装の数はもう少し増える。
理由は、訓練機に乗る1年生は大体がほぼ初めて乗る段階が多く、入れすぎは危険だからである。
対して教員用は有事の際にすぐ出撃が出来るように、かなり実戦に向けた武装になっている。
いっそパッケージをインストールしっぱなしな機体もあるかもしれないし、……ああ、あと訓練機はパーソナライズとフィッティングが切ってあるが、教員用は切ってない。理由は以下略。
「このISは、デュノア社製第二世代IS「ラファール・リヴァイヴ」です。第一世代IS最終機「ラファール」を原型として作られた、第二世代最後発のISです。そのため機体性能は初期の第三世代ISと比肩し、また第三世代ISとは比べようもない安定性を-」
ちなみに第一世代ISであるラファールは、既に生産停止かつ、新たにラファール・リヴァイヴを買うより安値でアップデートするというデュノア社の方針によって、今はもう存在しないISである。
織斑&オルコット対山田先生の模擬戦は、明らかに手数の多い生徒組が押し負けていた。
そもそも後手後手に回っているのだから厳しいだろう。
オルコットはビット操作と己の機動の両立を課題としてこの2か月、織斑を見つつ己も鍛錬を重ね、少しは上達したようだったが、それでも本人の機動はそれこそ人間が生身で走る速さと変わらないのでは、並みの射手でも蜂の巣にできる。
つまり、ビット最大稼働と機動力の確保の両立ができないため、後手である今はビットを2機動かすので精一杯である。
織斑は言わずもがな。
接近できなければ何もできない機体ゆえに、後手に回ることは死を意味する。
一応ISを産んだ国で代表候補生をしていただけの教師が、乗り始めて2か月程度の初心者相手に接近など許すはずもない。特に、射撃技術に秀でた操縦者であるからこそ、余計に。
このままでは埒明かぬと捨て身に己の機動を捨ててビットを最大稼働するオルコットだったが、機動と己の射撃を完全に両立した山田先生から蜂の巣にされてアウト。
それに動揺した織斑もグレネードであっけなく落とされた。
「まあ、映画でよく耳にする「足を止めたら死ぬぞ!」の意味が、これでよくわかっただろう」
以上、千冬さんの総評。同意。
ISを纏った織斑の頭がはたかれたので、多分織斑は「千冬姉も映画見るんだな……」とか考えたに違いない。学習しないな。
「IS学園教員の実力はよく理解できたな? これからは敬意を持って接するように」
織斑の考えたこと予想するだけで俺を殴ろうとするのはやめてくれませんかね。
丁重に避けさせてもらったが。
1・2組合同である授業なわけだが、俺達専用機持ち6人が面倒を見るという形で、1班で7~8人の面倒を見て、訓練機の着脱、歩行、武装の展開を行わせる。
奇しくも、俺の班にはイタリアで顔を合わせたベルナルドーネがいた。あと布仏もいる。
ベルナルドーネはまだ、あのテンペスタⅡの受領に至っていないらしい。最終調整中とミカエルから聞いた。
おそらく、今度の学年別トーナメントには専用機で挑んでくるだろうと予想される。
俺の班の実習はつつがなく進んでおり、それどころか初心者ではない動きをしているのがベルナルドーネの他にもいた。
……それどころか、これは……。
鈴の武器は、生まれ持っての器用さと、極限に集中した時の全能力の高さだと思うので、こういう感じに落ち着けました。
「甲龍はどうなっちゃうの」? 「俺の甲龍返してくれよォォォオオオ」? それは私もどうなるかわかりません。
16/10/19 改行修正・細部変更(鈴の打鉄のくだり、すっかり書いた気でいました)