タイトルは某ナースな朝倉が先輩に怒られるドラマを意識しました。(ネタが古い)
今回一夏に対するヘイトが五割増です。(それに合わせてタグも少々変更しました)
気を付けて第2章4話、始めましょう。
午前中の実習を終えて、単身食堂に向かう最中。
俺を呼びとめたのは、ベルナルドーネと、体格のいい女子の2人だった。
「アイリーンちゃん、お昼一緒に食べよ!」
……イタリアで貸し1つ作ってたの、すっかり忘れてたな。
貸しあるよね? 断らせないよ? ……そんな感じの微笑みを浮かべているのは、イタリア代表候補生、兼テンペスタS02専属操縦者のアレッタ・ベルナルドーネ本人である。
頭の上にアホ毛を立てている癖に、先日の稼働テストでの戦闘といい、今といい、策士を思わせる女だ。
「……まあ、それくらいなら」
食堂で食事を摂る程度だし、同席ぐらいならまあ譲歩しても構わないだろう。
そう思って許可をし、再び食堂へと足を向ける。
体格のいい女子は確か2組の生徒だ。
そして確か、イタリアの代表候補生。
ただ、誰かを率いるタイプじゃないらしく、凰鈴音が転校してくるまで2組のクラス代表を務めていたのとはまた違う生徒だ。
あれは金髪だったのに、この女子は茶髪だし、いくらなんでも見間違えない。
「ベルナルドーネ、そっちは?」
「あ! 紹介遅れたね、こっちはエリザ。あたしの相棒だよ!」
「エリザ・フェラーラだよ。イタリア代表候補生で、テンペスタⅡの初めての登録操縦者になる予定だ。よろしく、アイリーン」
フェラーラが俺に右手を差し出す。
テンペスタⅡの初めての登録操縦者。
……てことは。
「ああ、あれのか」
「そうそう、アイリーンちゃんがテストしたあれだよ」
篠ノ之とはまた違った方向に武人然としたフェラーラは、確かに武道を嗜んできた体つきだ。
たしかにあのテンペスタⅡを乗りこなすだろう。
「エリザとは幼馴染でね。まさかほぼ同時期に専用機もらえるなんて思ってなかったけど」
昼食を受け取ってから席に着き、食べ始めると、まさに阿吽の呼吸。
互いに何を取ってとか言っていないのに、胡椒や醤油を手渡している。
そうか、だから相棒、ね。
「私はどうなるかわからないけど、少なくともアレッタは専用機で学年別トーナメントに出るから、覚悟しておくんだね」
「まあ……そうだな」
今回のイベントは自由参加制なのと、誰かさんの見張りもしないといけないから、出場に関してはあまり気が向かない。
他の国と違って香港政府は、俺に代表として目立て云々言わないしな。
まあミカエルの最先端技術を全部使ってる俺のデータを前に出しすぎるのも惜しいんだろう。
既にもっとでかい場で目立った経歴あるしな……。
もっと競技向けな武装を新しく作ったからテストしてくれ、なんてミカエルが言わない限りは見送るかな……。
**********
放課後、生徒会室。
学年別トーナメントに向けて、生徒会室で色々書類仕事をしていると、アレのせいで目の下にクマができたままの更識が1枚の紙を渡してきた。
「じゃあ、開会式と閉会式のプログラムはこれだから。よろしく頼むわね」
「あのなぁ……」
わざわざ毎年恒例!! と書かなくてもわかる。開会の挨拶と生徒会長挨拶と選手宣誓くらい俺にだってわかる。
それより見逃せないのが、エキジビジョンマッチだ。「初代ブリュンヒルデVS現ブリュンヒルデによる生身の組手」って。これ千冬さんにちゃんと許可取ったのか。
「……更識、これ私にも許可取ってないんだが、それ以上に千冬さんに許可取ったか?」
「取ったわよ……。すごく生き生きした顔で引き受けてくださったわ」
……千冬さんめ。
「まぁ、千冬さんが引き受けてしまったなら仕方な-」
「あーちゃん!!」
眉間に皺を寄せたままプログラムを睨んでいると、生徒会室の扉が強く音をたてた。
飛び込んできた……というよりも、読んで字の如く転がり入ってきたのは布仏だ。
「本音、入室は静かに」
「あ、ごめんねお姉ちゃん……じゃなくて! あーちゃん、大変!! りんりんが!」
りんりん……は凰鈴音か。
「凰鈴音がどうかしたのか」
「それが、第4アリーナでラウラウと、」
ボーデヴィッヒと凰鈴音か……嫌な組み合わせだな。
どっちも言い出したら聞かないし戦ってでも我を通すタイプがぶつかりあうとか迷惑でしかない。
「わかった。止めてくるから、布仏はちょっとこのデスクの資料を日付順で並べ直しておいてくれ」
「うん、おねがい……!」
生徒会室を飛び出して、第4アリーナへと走る。
第4アリーナは今日も盛況で、訓練機を身に纏った生徒や、訓練機を纏ってもいない生徒でさえもかなりたくさんいる。
そして、ボーデヴィッヒと凰鈴音はすぐに見つかった。
そこだけが、他生徒が寄りつかずぽっかりと開いていたから。
凰鈴音が纏う、専用化処理の施された打鉄は、もう装甲がほとんど残っていない。
コアネットワークから、
ボーデヴィッヒの「シュヴァルツェア・レーゲン」の固有装備たるワイヤーブレードに絡め取られた打鉄と凰鈴音に、拳が振り下ろされ続ける。
まったく、氷なら氷らしく大人しくしといてくれないもんかね。
シューティングスターの初期装備である、ISの武装としてはまず他に見られない形式を取る手持ちの盾を展開する。
最碧参型が防御型たる所以を一身に担うこの盾は、機体本体と同じ素材が使われている。ゆえに、硬く、重い。さらに化学変化を起こしにくいものであるから、純粋な力でなければびくともしない。
再び凰鈴音に振り下ろされんとしている拳を、盾で防いだ。
鈍い音が響く。
「ボーデヴィッヒ……。お前まさか、織斑に手が出せないからという理由で八つ当たりしてたんじゃあるまいな?」
視線が交錯する。
「邪魔立てをする気なら、生身であろうと容赦はしないぞ」
レールガンが音を立てて俺に銃口を向ける。
「おおおおおおおッ!!!」
俺の右手、ボーデヴィッヒの左手から何かが雄叫びを上げながら急接近してくる。
ボーデヴィッヒが右腕をそちらに突き出すと、その何かは動きを止める。いや、止められる。
だが、俺もこのシュヴァルツェア・レーゲンをテストしたことのある身だ。
なぜ急接近-否、瞬時加速してきたISを止められるのか。
理由はよくわかっているし、そのシステムの穴もよく知っている。
手にした盾を存分に振るう。
こいつは盾であると同時に、凶悪な鈍器である。
ボーデヴィッヒの頭と織斑の右手に一撃ずつ。
「
私に再びレールカノンを向けるボーデヴィッヒと、アサルトライフルを向ける、遅れてやってきたデュノア。
前者は今この瞬間にも撃てる態勢だが、後者は俺が生身なのを考慮してかセーフティがかかったままだ。ライフルオタクの義姉を持てば、見ただけでどこのどのモデルで今どういう状態かぐらい、見分けがつくようになるというものだ。
「IS学園規則第6条3項。軍人ともあろう者が規則を読んでいないとは言わせないからな」
IS学園規則第6条-この条文では主に課外でのIS戦闘について定められている。
規則を持ち出した俺に、ボーデヴィッヒは悔しそうに俺を睨みつけた。
「『平時、事前申請なしにIS戦闘をし、相手のISを機体維持警告域以上の悪状態たらしめた、あるいは相手に重い傷害を与えた生徒は懲罰室での懲罰、反省文、以下責任者が相応しいとする処罰を下す』。-生徒会役員として、今回の件は看過できないものと判断する」
このIS学園では、学内のことについて最も強い権力を持っているのは生徒会長である。
そして、その生徒会長の布陣たる生徒会役員についても、生徒会長に準じた権力を与えられている。
だからこそ、IS学園の実働部隊長も名目上生徒会役員であり、元国家代表候補生などの教員で構成された実働部隊ですら生徒会に直属することになっている。
このIS学園規則第6条3項にある『責任者』は、3種類の人間がいる。
1人は、IS戦闘が行われた場所の責任者-今ならアリーナ責任者である教員。
1人は、問題行動を起こした生徒の責任者-ボーデヴィッヒの担任たる千冬さんと副担任の山田先生。
最後の1人は、学園そのものに対する責任を負う、学園運営者である轡木夫人-とその旦那-、そして生徒会。
俺は最後の1種類に当てはまるわけだ。実働部隊長は生徒会役員だからな。
「織斑とデュノア、お前らも武装を向け続けるならアラスカ条約違反で懲罰室送りにするけど」
そう言われて素直にアサルトライフルを収納するのがデュノア、反抗しようとするのが織斑だ。
織斑は頭に血が上ったらなかなか下りない。いっそ献血にいって……いや、悪用されかねないから抜いた血は篠ノ之博士にでも送って処理してもらえ。
「どいてくれ、ブルックスさん!! 俺はそいつに一発入れなきゃ気が済まない!!」
「やだね。そもそもお前のその《零落白夜》は、既に第6条3項に抵触しかねない代物なんだ。今のお前みたいな頭に血が上った奴が使えば、同じように6条3項で裁いて処罰しないといけなくなる」
処罰するのは簡単だ。
だが、懲罰室送りにするとなると、見張りの教員を配置しなければならなくなってしまう。
反省文というのも手ではあるが、本来懲罰室と併用するためのものだ。
教員だって暇なわけじゃないんだから、処罰しないでいられるのがお互いにとって有益だというのに。
「なっ……! 千冬姉が使ってたのにひっかかるわけないだろ!!」
物の考え方には性差があるという。
たとえば、友人に対して悩みを相談したり愚痴を言ったりすると仮定する。
この場合、男性であれば解決案の提示を望むが、女性は大体が同意や慰めを望む。
さて、ここで問題だ。
俺と織斑の年齢と性別を答えよ。(10点)
これで10点とかこのテスト楽勝すぎだろ。
答えは、どちらも高校1年生で、どちらも男、だ。
まあ俺は生まれるのが1日遅かったら1つ学年が下だったかもしれないが、今はいいか。
「あのなあ。千冬さんはIS学園に生徒として所属していたことはないから、IS学園の規則にひっかかるわけない。違うか?」
「……ッ」
「それに、モンド・グロッソの映像を見る限りじゃ、千冬さんは《零落白夜》の濫用は決してしなかった」
そもそもシールドエネルギーバカ食いする単一仕様能力だったと、千冬さんは言っていた。
だからこそ、ここ一番でなければ振るわない力であったと。
「ハッキリと言ってやる。織斑、お前は弱い。弱いから《零落白夜》に縋るし、《零落白夜》に振り回されている」
どう考えても力の差が歴然たる俺からの「弱い」発言にはぐうの音も出なかったようだ。
それでいい。ここでやぶれかぶれに言い返したとして、それはただの負け犬の遠吠えでしかない。
「デュノア。織斑を連れて、そこの凰鈴音を医務室に運んでおけ」
「……わかった」
一夏、行くよと腕を掴んで引き摺って行く。勇ましい女だ。
だが、冷静だし、よく言えば優しい、悪く言えば意気地のないあの女のことだ。
きちんと凰鈴音を医務室に運んでくれることだろう。
……そういえばオルコットが織斑と一緒じゃないなんて珍しいな。
「さて。ボーデヴィッヒ、お前には懲罰室で二週間の生活と反省文10枚を科する。--で、いいな? 千冬さん」
音もなく俺の背後から来ていたのは、我らが1年1組担任だ。
サマースーツに黒スト、そして日本特有の湿度が異常に高いツユという季節柄か髪を結った、千冬さん。
「ああ。来るのが遅れてすまないな」
「いいよ。その代わりここからの処理全部任せるけど」
「お前というやつは……。まあ構わん、生徒会の仕事に戻れ」
引き受けてくれた千冬さんに手をひらひら振って、アリーナを後にした。
この後、生徒会には人手を要する作業が待っている。
それは、学園中で一斉に貼り出すポスターの貼り出し作業だ。
生徒会室に戻ったあと、ポスターと押しピンを持って、学園中を歩き回る。
内容が内容だけに、これを生徒がいる時間に貼るのは人と人との人身事故を起こしかねないという理由で、各自が寮長に許可を得て、寮の門限が過ぎてから貼っている。
……さて、山のようにあったポスターを全部貼り終えた。
きっと、明日の朝は大賑わいすること間違いなしだろう。
そして、例年以上に参加希望者が殺到することも。
○オリキャラ紹介
エリザ・フェラーラ
イタリア代表候補生。武術は大体なんでもござれ。剣もいけちゃうよ!
生身でなら、もしかしたらラウラに匹敵できるかもしれない。
「テンペスタⅡ」の登録操縦者になる予定。
あ、ちなみに艦これわかる人は、球磨の髪がボブヘアーな状態をイメージしてください。それがアレッタ・ベルナルドーネです。わぁわかりやすい!