IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

21 / 33
今回も例の如くアンチヘイト強めだから気を付けてね!
あと、一夏がちょっと道を逸れそうになるよ!苦手な方気を付けてね!


02-05 無知と努力

『学年別トーナメント戦 ルール変更!』

 

毎年恒例、各学年別トーナメント大会の季節がやってまいりました。

今年度は生徒会長の意向により、ルールを一部改編しての開催となります。

このイベントは例年のように自由参加となっていますが、ぜひ奮ってご参加ください。

 

 

○日時:6月22日(月)~6月26日(金)

 ・22日:開会式 1回戦前半

 ・23日:1回戦後半

 ・24日:2回戦

 ・25日:3回戦 準決勝

 ・26日:決勝 閉会式

 

○ルール変更点

 (旧)1対1によるモンド・グロッソ方式模擬戦

 (新)2対2によるタッグマッチ方式模擬戦

 

○参加方法:各クラス副担任に参加表明

 

○タッグの登録方法

 ・ペアが見つかっている場合…

   22日8:00までに、設置された「トーナメント表作成係受付」に2人で行き、登録する。

 ・ペアが見つからなかった場合…

   ペアが見つからなかった他の生徒と、機械による抽選で急造タッグチームとなる。

 

○トーナメント表作成係受付

 ・受付時間:(月)~(金) 13:00~13:30 16:00~17:00

 

○表彰

 ・各学年優勝:学食スイーツ半額割引券150枚セット

 ・各学年準優勝:学食スイーツ半額割引券50枚セット

 ・各学年上位3名:表彰状

 

 

生徒会長 更識楯無

 

 

**********

 

 

普段は遅くとも5分前には教室で座っている俺だが、今日ばかりは1分前にしてよかった。

教室中どころか廊下でさえペア決めで騒ぐ生徒の山でいっぱいだ。

やはり、あのポスターは門限後にしてよかった。違いない。

 

今日から、俺は生徒会の仕事をしつつトーナメント表作成係としての事務作業までやってくる。

まあトーナメント表作成に関しては専用の機械で顔写真と名前と生徒番号を登録するだけだから、そんなに苦労はないはずだが……。

 

「おはようございます、アイリーンさん」

「ああ、おはようオルコット」

 

オルコットも代表候補生だし、何よりBT試験機を専用機として受領している立場だ。

きっと学年別トーナメントに参戦してくるだろう。

 

「アイリーンさんは、学年別トーナメントのペア、決まったんですの?」

「いいや……。そもそも出ようかどうか、迷ってる」

「まあ……。生徒会のお仕事などが忙しいんですのね」

「オルコットはどうなんだ?」

 

オルコットは織斑に熱い視線を向けている女のひとりだし、織斑にでもペアを申し込んだのだろうか。

まあ約数名の女子が是としないだろうが……。

 

「わたくし、その……」

 

人差し指をつつきあわせながら、その指と俺とをちらちらと交互に見る。

 

「もしよろしければ、わたくしと-」

「私でよければたんと指導してやろう」

 

ズバンとオルコットの脳天に突き刺さったのは、()()()()()()だった。

……ドンマイ?

まあ言ったとおりに千冬さんが指導してくれるなら、近接格闘戦であったり、それに用いる機体操縦技術であったりは大幅に向上するだろうけど。

 

でも、あくまで「力」としてではなく、競技としてしかISを使わないのであれば、オルコットは下手に近接格闘をいじるよりも、ビットの技術を磨くほうが先決だしなぁ。

 

「得意なことをさらに伸ばす」か「苦手を克服する」か。

勉強だろうがスポーツだろうが、この二択に関する議論は尽きない。

 

しかし、だ。

オルコットの「得意」はあくまで通常の狙撃術であり、ビット操作ではない。

あくまで、狙撃>ビット攻撃>近接格闘であるわけだ。

これなら、最も苦手な近接格闘を伸ばすよりも、ビットでの攻撃性能を上げるほうが早い。

まあ、どちらにしても、いつかは全部を得意にしなければいけないわけだが。

 

 

 

放課後。

昼休みと合わせて、今日タッグ登録に来たのは1学年で3ペア、2学年で7ペア、3学年で13ペアだ。

有名どころであれば……そうだな、まぁ1年のフェラーラ・ベルナルドーネ組くらいか。

2・3年だと専用機持ちは更識含めて3人しかいない。その更識を抜いた2人、ギリシャ代表候補生のフォルテ・サファイア、アメリカ代表候補生のダリル・ケイシーは2年と3年であり、今回はペアを組むことができない。だからまだペアを探している段階なんだろうな。

とはいえ、2年や3年の普通科生徒は、卒業後を見据えて、IS企業への売り込みがかかったイベントだ。やはり自分のアピールのために余念はないし、そのためには早くペアを見つけて優勝を目指して連携の練習を積むんだろう。

 

ああ、ちなみに1年で登録に来た残り2ペアは、代表候補生の所属しないペアが2組かつ1組の生徒でもないから割愛させてくれ。

 

 

**********

 

 

クソ……

クソッ……!!

 

「くそぉぉぉぉっ!!!!」

 

ガギィン!!

 

「甘いよ、一夏!!」

 

こみあげる遣る瀬ない気持ちに任せて、やたらめったらと雪片弐型を振るう。

そしたらシャルの得意な戦術-砂漠(ミラージュ)(・デ・)逃げ水(デザート)で、接近したと思ったのにするりと逃げられ、アサルトライフルの掃射を受けた。

 

 

ある程度、いつも通りボコられた後で、反省会を行う。

俺と、シャルと、鈴と、箒。

最近、セシリアを誘っても、「ビットの強化をしたいので、今日は1人でしますわ」の言葉ばかり。

鈴も、この間ボーデヴィッヒから暴力を振るわれていたけど、生身のほうは打撲で済んだ。

ISの方も流石量産されているISだけはあるというか、打鉄を作った倉持技研の人が今朝来たけど、会社に予備パーツはたくさん揃ってるし、見た目だけなら明日あたりには直るらしい。

ただ、しばらくはISのコアに怪我をしたって記憶が残ってて、そのまま稼働し続けると悪い成長をするらしいから、代機に今は乗っているそうだ。まるで携帯電話。

 

「一夏、あんたさぁ、根本的に《零落白夜》のこと勘違いしてない?」

 

その代機を駆る鈴からの有難いお言葉である。

つい昨日、ブルックスさんから零落白夜について言われたばかりだから、その話が出ると些かむっとしてしまう。

 

「勘違い?」

「何怒ってんのよ……。いい? あんたのその零落白夜。数字でどれぐらいか知らないけど、起動するだけでかなりシールドエネルギー減るんでしょ?」

 

雪片弐型から現れるワンオフ・アビリティー。それが《零落白夜》のカテゴリーだ。

要するに、パソコンのファイルのようなもので、ISがオペレーションシステムとするなら、その中にシステムのファイルや装甲のファイルやコアネットワークのファイル、装備のファイルがある。

その装備のファイルの中の、雪片弐型のファイルの中に、《零落白夜》がある。……ということらしい。

圧縮保存がされてないから展開に手間はかからないんだが、ファイルを開き続けている間はMV付きの曲をミュージックアプリで再生し続けているようなものだそうだ。以上、束さんから聞いた千冬姉談。

まあ要するに、かなりエネルギーを食う。

 

「エネルギーソードの部分を展開している間に、1分間でエネルギーMAX時の5%ぐらいを食うらしい」

「うっわ、それ展開して棒立ちしてるだけで20分しか持たないじゃない」

 

そうなんだ。ついでに飛び道具がないから俺は動かなければ攻撃もできないから、戦闘中ずっと使っていると15分が限度である。

 

「……数字を聞くとさらにえぐいね」

 

武装を全て実弾と近接ブレードにまとめ、エネルギーを食う要素はほぼスラスターのみという超低燃費設計な専用機のシャルは、顔をしかめている。

白式はスラスターもラファール・リヴァイヴに比べてかなりでかいし、出力も高いからスラスターの食うエネルギー差も雲泥の差だったはずだ。

 

「てことは、尚更アンタ《零落白夜》のこと、理解できてないんじゃない?」

「どこがだよ。一撃必殺で仕留めるしかない、だから機動力で攪乱して接近して切るんじゃねえか」

「機動力で攪乱して接近して切るのは流石に合ってるわよ。でも、実際には過剰火力よ? ソレ」

 

過剰、火力?

 

「昨日。あたしもあの時、一応まだISは展開した状態だったし、意識はあったわよ。あんたとあいつの会話も、多少は聞こえてた。正直、あいつの言葉には頷けるところしかなかった」

 

あいつ-ブルックスさんの、言葉。

 

 

-『ハッキリと言ってやる。織斑、お前は弱い』

 

 

-『弱いから零落白夜に縋るし、零落白夜に振り回される』

 

 

 

幼馴染で、今は乗ってる機体もほぼ同条件の鈴までが、零落白夜を否定するのか?

箒、箒なら、剣で戦うってことをわかってくれるよな!?

 

「……私も、同意見だ」

 

箒、まで。

専用機を持っていない箒が、専用機の強さを否定するのか?

 

「ふたりとも、その言い方はよくないよ」

 

シャルだけだ。

零落白夜のスゴさをわかってくれるのは、シャルロットだけなんだ!!!

 

 

**********

 

 

わたくし、セシリア・オルコットは、イギリスの国家代表候補生として、IS専用機「ブルー・ティアーズ」を預かっています。

 

武装名『ブルー・ティアーズ』。

子機による多方向からの同時射撃を目的とした、第三世代型兵装のひとつ。

通称ビットの試験機第一号として、武装名をそのまま冠した、我が愛機。

 

本国一、BT適正があると言えど、所詮はランクA+……。

ランクSを誇るアイリーンさんには、才能では到底勝てやしませんわ。

けれどわたくしには。義務があり、責任があります。

 

なんとかして、アイリーンさんがテストした時のあの技術を身に付けなくては……!

 

 

「セシリア、無理はよくないよ」

 

頭の中で銅鑼を熱心に叩く和太鼓の奏者が張り切っているのを無視して再びビット操作の練習に戻ろうとすると。聞き慣れた声がわたくしを呼びとめた。

 

「まあ、ミカエルさん!」

 

振り返った先には、何やらバスケットと鞄を提げた、世界的有名人のミカエル・ブルックスさんがいらっしゃいました。

 

 

 

ミカエルさんがお茶にしようと微笑むものですから、痛んでいた頭のこともあり、わたくしは素直に応じました。

そこに、国家代表候補生として、国のために天才へ媚を売るなどという考えは塵ほどもなく、純粋に、まるで同級生からお茶に誘われた時のように、笑顔しかありませんでしたわ。

 

 

わたくしが一夏さんより前に、唯一気を許せた殿方の、ミカエルさん。

まあ、殿方とは言いましても、美しい顔立ちや、輝く長い髪、低すぎない声と女性的な方ですから、失礼ながら、あまり殿方であると思って接したことは多くありませんね。ミカエルさんには秘密ですわよ?

 

出会いは、わたくしが代表候補生になってすぐ-ちょうど、イギリスがブルー・ティアーズの機体を完成させた頃でした。

ミカエルさんは国連安保理とIS委員会の合同会議での議決-通称モントリオール議決によって、2番目の派遣国たる我がイギリスにやってきたのです。

 

 

「まぁ……! おいしいですわ」

 

そのミカエルさんは、鞄から保温水筒と紙コップを持ち出し、熱い紅茶を出してくださいました。

専属メイドのチェルシーの淹れる紅茶と比較するに値する美味しさ。こんな紅茶を淹れられる方でしたのね。……それもそうですわね、ミカエルさんは元々イギリスで暮らしていらっしゃったハーフのお方ですもの。

 

「それはよかった。布仏さんに頼んで淹れてもらった甲斐があったよ」

「えっ……布仏さん?」

 

布仏さんといえば、たしか一夏さんにのほほんさん、アイリーンさんには本音と呼ばれているあの子ですわよね?

名前からしても顔立ちからしても間違いなく日本人で、しかもドジをよく踏んでいらっしゃるあの方がこんなにおいしい紅茶を……?

 

「ああ、多分セシリアの想像してる人は違うよ。僕が言ってるのは布仏虚さんと言って、本音さんのお姉さんで、3年生なんだ。生徒会会計だから、生徒会顧問の僕はよく会うんだよ」

「あ、ああ……。よく全校集会などで司会をなさっている、あの方ですわね」

 

あの方は、確かに誰かに仕えることに徹することを得意としそうな方だと、廊下ですれ違った時に思ったことはありました。

 

「生徒会長の専属メイドなんだって。生徒会の仕事をする時に淹れる紅茶を、僕もたまにもらうんだけど。イギリス出身のお嬢様もおいしいって言ってたって報告しておくね」

「そうでしたか。ところであの、一体私に何の御用が……?」

 

ミカエルさんとのティータイムは、チェルシーとの時間と似ている、心安らぐものであることはよく知っています。

けれど、わたくしには今、時間がありませんわ。

このままではいけないのです。

 

「うーん……用っていうか……。まあ、これ食べなよ」

 

そうして差し出されたのは、バスケット。

中身は、サンドイッチとクッキー、そして数粒のチョコレート。

今の時刻は、きっと16時半ほど。授業が終わってからずっと、一心不乱に修練を積んでいたのですから、昼食で得たエネルギーはほとんど使い果たされ、そろそろ空腹を感じ始める頃合。

 

きゅう。

 

「……ふふ、たんとお食べ。食べたら、門限前まで僕が練習に付き合ってあげるよ。なんでもそうだけど、ただがむしゃらにやるだけじゃ上手くなれないからね」

 

淑女として恥ずべき行為を、まるで妹を見守るような優しい瞳で笑ったミカエルさんの前で、サンドイッチを1ついただきました。

 

「……おい、しい」

「うんうん、ビットは空間座標把握とその計算を瞬時に並行していくつも行う、言ってしまえば脳味噌いじめだからね。ビットの練習を増やしたのに食生活はいつも通りじゃ、そろそろ倒れちゃうよ」

 

……もしかして、ここ最近、授業中にぼーっとしていたり、立ち眩みを感じていたのを、ミカエルさんは見てらしたのかもしれませんわね。

わたくしはオルコット家の主。主たる者が健康を失うようでは、家も立ち行かなくなってしまう。ISでの修練も大切。けれどそれ以上に、わたくしが健康でいなければならない。

……そんな大事なことを忘れていただなんて、わたくしもまだまだですわね。

 

 

「そういえば、アイリーンさんは初めて乗った時からビットを最大稼働できていましたけど……あれは何故ですの?」

 

夕食へ向けて、ほどよく食べ過ぎないようにサンドイッチとクッキーをいただいて。

さて、そろそろ練習をという時に、ふと湧き上がった疑問がそのまま口からこぼれて。

 

「ああ、あれね。1つはどのISでも最大稼働できるっていうアイリーンの一種の才能だけど、それよりも可動域の狭い子機がアイリーンの専用機にはあるからね。慣れが大きいと思うよ」

 

アイリーンさんは当時最大稼働にて、ビットを一片の無駄もなく操り、偏向射撃も行っていました。

偏向射撃が才能の面であるとするなら、ビットを操る力は、アイリーンさんの専用機「シューティングスター」や「フェンリル」に搭載された、離接アサルトライフルという、トリガーを射撃管制支援システムによって引くあの武装群で培った経験によるものと考えられますわね。

その管制支援システムの詳細について聞いたことはありませんけれど、まるで輪に付けられた鍵束が如き可動域内でなら標的に照準を合わせることまで同時に行っているのですから、ある意味わたくしのブルー・ティアーズと、似ているようで、実際の砲身は真逆を向いているのかもしれませんわね。

 

 

そうして、わたくしとミカエルさんとの秘密の特訓は、熱中のあまり時間を忘れて、寮に戻ってから織斑先生の出席簿をいただくまでが一括りでしたわ。




前回後書きで、アレッタ・ベルナルドーネは球磨のボブカットって話をしたかもしれませんが、エリザ・フェラーラはめちゃくちゃ那智イメージです。
ちなみにアイリーンは比叡改二を金髪にして幼くした感じ、ミカエルはウォースパイトです。
意外と艦これで例えられるものなんですね。(陽炎見た当初すごく鈴ぽいと思ってたし、大和見た時顔立ちを厳しくしたら箒だとか思ってた)

16/12/09 脱字・一部表現修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。