IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

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艦これのイベントが始まってしまった。
デレステにもハマってしまった。
書く時間がない。
そうだ、山風を掘ろう! ~そして小説が進まなくなる未来へ~


02-07 学年別タッグトーナメント②

たった数分のエキジビジョンマッチで暖まった会場の空気。

後続の開会式プログラムであるトーナメント表発表と、各会場の実況席紹介を聞いているのか聞いていないのかわからないが、それでも賑やかに閉会した。

 

開会式の時間から1回戦の初戦が始まるまでに、20分ほどの時間が与えられる。

それというのも、第1アリーナで開会式に出ていた来賓や実況席の生徒が移動するための時間を確保するためであり、初戦の生徒のISの運搬の時間を確保するためである。

 

 

時間を遡り。

1回戦の対戦カードが発表された、8時40分。

第1学年の予選が行われる第3アリーナの各更衣室はざわめいた。

勿論、彼女たち……篠ノ之箒、凰鈴音も例外ではない。

 

 

-第1試合

ボーデヴィッヒ・デーレンダール 対 篠ノ之・凰

-第5試合

織斑・デュノア 対 フェラーラ・ベルナルドーネ

 

ある意味当然とは思える、代表候補生同士のペアの多発。

しかし、第5試合に出場するエリザ・フェラーラ、アレッタ・ベルナルドーネの両名はどちらもイタリア代表候補生であり、どちらもつい先日、専用機を受領したと学園でも噂になっていた。

つまり。

 

「1回戦から専用機オンリーの試合なんてあんの……」

「ふむ? 外国には興味ないと言って憚らない鈴音らしくない発言だな」

「あたしだって今は半分社会人なんだしさ、多少はね。それに、フェラーラのほうはウチのクラスだし。更衣室は別みたいだけど」

 

己のあたるペアのことは知らぬ存ぜぬ、第5試合に想いを馳せる。

イタリア代表候補生組が搭乗するのは、きっとIS学園でも最新型のIS、第三世代近接格闘型IS「テンペスタⅡ」。

 

同じ第3次イグニッション・プランに出品されている、イギリスのティアーズモデル、ドイツのレーゲンモデルはとっくに形になり、今こうして専用機として受領し、IS学園に通うセシリアなりラウラなりがいる。

実際に戦った鈴は、己の経験として、ラウラとシュヴァルツェア・レーゲンが相棒となってすぐの機体ではないと確信できている。実稼働時間は200時間はくだらないだろう。

つまり、余程第三世代兵装の完成が遅れていたとかでなければ、機体そのものの性能もテンペスタⅡの方が新しいと考えられる。

 

そもそもISを纏ってなお殴り合いを好み、それで織斑千冬と争うまでに至った現イタリア代表の専用機をマイナーチェンジした機体のグレードアップモデル、それがテンペスタⅡなのだ。

いっそ雪片弐型すら入っていない状態に、零落白夜級の容量の第三世代兵装を入れてる可能性すらあるのだから。

 

つつ、と頬に冷や汗を伝わせている鈴を見た箒は、不思議そうに首を傾げた。

 

「よくわからんが、私達が今気にするべきはドイツの代表候補生ペアだろう。準決勝まで当たらないペアのことを考えてもどうしようもない」

「……ま、それもそうよね。アンタ、ブルックスにISについて教えてもらってたんだっけ? 絶対決勝に行って倒すわよ!」

「ああ!」

 

 

**********

 

 

学年別トーナメント、1日目の全行程が終了した。

実況席から撮影した全ての試合は後日教師がチェックし、もし普通科の授業に利用できそうな場合は当該生徒に了承を得た上で授業素材として扱われる。

 

1回戦最終試合まで出番のないアイリーンは、トーナメント表作成係の仕事を全うしていた。

勝敗を確認して勝ち上がりを記録し、3日目の2回戦へ向けてトーナメント表と対戦カードの整理をしていた。

トーナメント表作成係はまだ楽なほうで、特に接待係はこのイベントの期間中、働き詰めである。

その報酬で学食パス5日分がもらえることにはなっているが、そうでもしないとボイコットが起きるレベルで大変な係になっている。

ちなみに、第1回学年別トーナメントで実際にボイコットが起きて以来の対策としてこの報酬は設定された。

 

「アイリーンさん、お仕事の調子はどうですの?」

 

1日中制服で座って仕事をしていたアイリーンの元を訪れたのは、イギリス代表候補生セシリア・オルコットである。彼女も制服を身にまとっていた。

 

「ああ、今終わったところだ」

「まあ。ではちょうどいい時間でしたのね。夕食をご一緒してもよろしいでしょうか?」

「構わない。片付けるから1分待ってくれ」

 

セシリアはここ数日、肌が荒れ気味である。

日本特有の梅雨という気候も、理由の1つではある。しかし、頻繁に立ち眩みをしているのを知っていたアイリーンは、おそらくISの訓練によるものだと推察していた。

 

「調子はどうなんだ」

「万全ですわ。……と言いたいところですけど、正直なところ可もなく不可もなく、といった感じですわね」

 

ここで見栄を張って万全ですわ、で言葉を切ったなら、きっとアイリーンはセシリアのことを蔑視したことだろう。

しかし期待通りの言葉を続けたセシリアに、アイリーンはふっと硬い口元をほころばせた。

 

「十分だ。さて、行こうか。食堂でいいな?」

「はい!」

 

 

食堂が開いている時間でも、特に混む時間に来てしまったようで、食券を買うだけでもかなりの時間がかかっている。ついでに席も完全に埋まっている。

 

「……すごい盛況ぶりだな」

「ええ、本当に……」

 

食券のいくつかは売り切れになっているし、毎年こんなもんなんだろうか。

だとするなら次のイベント以降は夕食は自分でなんとかしたほうがよさそうだなどと考えている間にも頼んだ和定食とカルボナーラが出てきたし、少しずつ食べ終わった生徒が席を立ち、空席がいくつかできた。

向かい合った2席がたまたま空いたのでそこに腰掛け、アイリーンは和定食の鱚をつつき、セシリアはカルボナーラを口にする。一緒に食事を摂っているとは思えないほど静かに食事を終えて、2人は食堂を出ていった。

その様子を、遠くから眺めていた少女2人。

 

「……アイリーンと、あれはたしかイギリス代表候補生の……」

「うん、せっしーだよ。あーちゃんも半分イギリス人だし、みかみかが昔はイギリスにいたからって仲いいみたい」

 

少女2人、更識簪と布仏本音は、小さな海鮮丼とすまし汁のセットを口に運んでいた。

簪はぷちぷちとしたイクラの食感を楽しみながら、専属メイドの言う「みかみか」に該当する人物は誰だろうと思考を巡らせる。

 

「……あ、みかみかって、もしかして、ミカエル先生……?」

「うん、そうだよ。生徒会顧問だから、よく会うんだー」

「先生なんだから、その呼び方はどうかと思う」

 

男性だが、ISの学術界では超のつく有名人であるその人、ミカエル・ブルックス。

IS開発では、個人として有名な人はあまりいない。そもそも各種工学や化学に精通していなければ、IS開発全般を手掛けることは難しいし、IS開発が出来るほどに各知識の応用ができる人間は大変稀で、現在のIS開発はそれぞれの専門家が手を取り合い、小さな部品などは下請けに作らせている状態だ。

己が姉も専用ISを自力で組み立ててはいるが、あくまでそこにはロシア製第三世代IS「グストーイ・トゥマン・モスクヴェ」というベースがあるのも事実であり、1を2にしたといえる立場である。

 

しかし、ミカエル・ブルックスその人は、0から1を生み出すことができる人とされている。

実際に彼が関わったとされるISは、現香港代表の駆る最碧参型-もとい、シューティングスターや、モントリオール議決によって派遣された各国の第三世代ISといくつかあるが、どれも全て、構想やボディは完成していた状態だと噂されている。

だから実際に出ている結果からは、1から2を作る人間でしかない。しかし、彼が趣味で作ったというIS用ライフルの数モデルだけで莫大な利益を得たという事実が、どうにも1から2を作る人間には見えない。

 

そもそも、各国の第三世代兵装は、構想ができていても実装ができていないのが現実であるのに、それをいとも容易く支援する彼は、明らかに篠ノ之束(あちら)側の人間だろう。

 

 

「……ミカエル先生、今度お話してみたいな……」

「そっかあ、かんちゃんはみかみかの作ったライフル大好きだもんねえ」

 

簪も、彼の趣味で作られたアサルトライフル、特に2つ目のメジャーモデル「ブリリアント・ボーイズ」に強く心惹かれたひとりである。

女性優位主義の立場の人間からその名称に抗議がつき、それでも変更されなかったので女性権利団体からブリリアント・ボーイズの購入は男が付け上がるのみだ、即刻使用を中止すべきだなどの声が上がったという事実が数年前にあった。

しかし結局ISを保有する国も企業も、性能の高さ、どのISとでも噛み合う万能性からブリリアント・ボーイズの正式採用を撤回することはなく、むしろ男女平等主義の女性団体主導でその女性権利団体は解体された。

 

簪は日本の代表候補生であり、日本のIS大企業・倉持技研で専用機を作ってもらうことが決定している。

しかし簪はIS操縦ばかりでなく、整備や開発方面にも非凡な才を持っていることを国にも認められており、機体の方向性や武装を決定する会議は簪抜きで進めてはならないとされている。

 

第三世代兵装は勿論、ボディも他武装も何一つ完成していない。

けれど、絶対にブリリアント・ボーイズは入れるんだ。その想いだけは譲れなかった。

 

「1年4組の更識! 更識はいないか!?」

 

海鮮丼の最後の一口を口に入れた瞬間、食堂入口の方から大きな声で自分の名前を呼ばれ、簪は危うくレンゲまで飲みこみかけた。

 

「は、はい!」

 

振り返ると、この学生寮の寮長であり、友人のアイリーンが所属する1年1組の担任でもあり、初代ブリュンヒルデである織斑千冬がそこにはいた。

校舎で見かけるのとは違ってブランド物のジャージ姿なのは、この第1学年寮に住む生徒なら見慣れたものである。

冷めかけのすまし汁を置いたまま席を立ち、千冬の傍まで歩み寄ると、1枚の名刺が手渡された。

 

「ああ、更識。倉持の社員から伝言をもらってな。これは社員の名刺で違いないか?」

 

受け取った名刺にある名前は、間違いなく己の専用機となる予定の、打鉄弐式開発プロジェクトのプロジェクトリーダーのものだ。

間違いなく倉持技研の社員のものであると伝えると、千冬は再び口を開いた。

 

「何やら、更識と話がしたいそうでな。閉会式の後に応接室で話ができないかとのことだが」

「わかりました。……たぶん、専用機の話なので……」

「そうだろうな。では先方にそのように伝えておく。詳細な時間が決定したら知らせよう」

「ありがとうございます」

 

閉会式の後を指定してきたのは、きっと学年別トーナメントで3年生の実力を見てスカウトしたり、2年生にツバをつけたり、1年2組にいる元中国代表候補生でテストパイロットをしている子の様子を見た後に、ついでに会うためだ。

少なくとも簪はそう思ったし、事実そうだった。

最も、倉持技研が最も期待を寄せていたのは、白式と織斑一夏ではあったが。

 

 

 

**********

 

 

IS学園、学年別トーナメント2日目。

この日は1回戦の後半が執り行われる。

 

この日最も注目を集めるカードは、まさかの1年生最終試合だ。

 

 

 

最終試合開始30分前、指定されたピットでISスーツを着て座っている、2人の金髪の子供。

片やイギリス代表候補生、セシリア・オルコット。

 

「もうすぐですわね」

「ああ。チョコレートを食べておけ」

 

片や香港代表、アイリーン・ブルックス。

 

この第16試合が注目される所以は、ただひとえに、このペアが登場するからだ。

 

アイリーンは第3代ブリュンヒルデとして有名なことは勿論、世界的天才であるミカエル・ブルックスの妹であり、ミカエルが心血を注ぐIS「シューティングスター」に乗っていることも挙げられる。

そしてセシリアは、イメージ・インターフェースを基とした第三世代型兵装の実用化で大きなリードを持つイギリスの代表候補生で、しかもその試験機第一号を専用機としている。

 

話題性だけでも十二分に注目されるペアではあるが、いっそ対戦相手が注目されなさすぎて憐れではある。

 

「対戦相手は3組の方たちでしたわね。話したことはありませんが、一般入学組の割には優秀な生徒だと聞いています」

「まあ、相手が何であろうと、私達のするべきことは変わらない、違うか?」

「いいえ、違いませんわ」

 

とうとう前の試合が終わり、10分後に第16試合が始まる。

ISを纏った2人は暫し見詰め合ったあと、カタパルトに乗ってアリーナへと飛び立っていった。




どこの勝敗結果も書いていないのは仕様です。
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