IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

24 / 33
艦これのイベントで沼っているので気分転換で書こうそうしよう。

そういえばIS1巻だと学年別トーナメントは自由参加、2巻だと強制参加になっていますが、この小説では前者を採用しています。
理由は簪。
専用機がないからって出場しないのは(この小説での設定上)難しいですし、
簪が出場してるなら噂にもなってないのはおかしい。
=これは自由参加だろう(名案)

そんなこんなで第2章8話、始まります。


02-08 学年別タッグトーナメント③

暗く檻のような部屋。

優等生であればまず見たことのない部屋。

 

-IS学園学生寮、懲罰室。

 

朝晩の食事は教員によって運び込まれるが、教科書やノート、筆記用具、制服、寝間着などの他は何も持ちこむことができない部屋である。

 

そこで蠢くは、長さも不揃いな銀髪の、小さな少女。

ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

少女は(くら)い瞳で、この2週間を過ごしていた。

 

きっかけは、元代表候補生の生徒との戦闘。

生徒の打鉄が機体維持(レッド)警告域(ゾーン)になっても攻撃の手を止めるなど、思いつきもしなかった。

なぜならその戦闘は模擬戦などというお綺麗なものではなく、ただの八つ当たりだったから。

 

 

試験管ベイビーであるラウラには、養父であるボーデヴィッヒ少将という存在はいる。

だがそれは軍の上司と部下の関係でしかなく、家族などという温かいものではなかった。

 

家族を知らないラウラには、尊敬する織斑千冬が弟を想う気持ちはわからない。

しかし、敬愛する千冬から依頼された護衛の対象を襲えば、自ら任務失敗にしてしまう。

任務を失敗することは軍人の誇りに障る。だから織斑一夏を襲うことはやめた。

 

織斑一夏を襲えば千冬に嫌われる、それどころか千冬は二度とドイツに来てくれなくなるのではないか。そんな思考は、ラウラにはまるでなかった。

むしろ、私の強さを知り、もっと私を鍛えようと思ってくれる、そう信じてやまなかった。

任務でさえなければ、倒せたというのに。

 

 

だが、織斑一夏は襲えない。

ならどうするか?

織斑一夏ではない人間と戦い、強さを見せつければいいのだ。

織斑一夏を殺せない八つ当たりも込めて、代わりにそいつを嬲ればいい。

 

その想いによる行動を止めたのは、ISも纏わぬ、敬愛すべき教官の冠を奪った贋作の戦乙女だった。

 

「許さない……殺してみせる……待っていてください、教官……!」

 

いっそ逆恨みでしかない。

そのことに気付かないラウラは、2週間の懲罰室生活を終え、そして学年別トーナメントへ出場すべく、部屋を後にした。

 

 

**********

 

 

学年別トーナメント、3日目だ。

今日は各学年で2回戦が行われるんだが、俺とオルコットはそもそもトーナメント表の右下に位置しているため、今日も結局最後まで対戦がない。

そのせいで午前中のトーナメント表作成係の仕事を俺はしているし、オルコットも友人たちと観戦なりなんなりしているはずだ。

 

2回戦第1試合は、ボーデヴィッヒ・デーレンダール組と4組の一般入学組の対戦になる。

今日の見どころはあとは第3試合と第8試合か。

第8試合は言うまでもなく俺達なわけだが、まあ一昨日の勝ち上がりについて1つずつ思い出そう。

 

 

学年別トーナメント初日、この日は第1試合から第8試合まで行われた。

第1試合はボーデヴィッヒ・デーレンダール組と、篠ノ之・凰鈴音組の対戦だった。

これは結果から言えばドイツ代表候補生組が勝った。

 

 

端的に言うと、篠ノ之・凰組はどちらも前衛型で、射撃装備も一応使えるといった範囲でしかなかったのが敗因だ。

篠ノ之はサブマシンガンで弾をまき散らすくらいならできるが、狙いを付けて撃つとなるとほぼ当たらないし、凰は凰で、そういう狙い澄ましてという行為が性分に合っていないんだろう。

そういうIS乗りはいくらでもいる。アリーシャもその1人だ。

 

逆にドイツ組は、ボーデヴィッヒの場合レールガンを専用機に搭載しているし、2組に所属しているドイツ代表候補生、アルマ・デーレンダールは専用機こそ持っていないが1学年用訓練機のラファール・リヴァイヴに銃火器を多く入れていた。

 

まぁ、要するに近付けなくて勝負にならなかった、という感じだ。

近付ければ、特に篠ノ之は剣の筋がいいし、訓練機でも十二分にやれるだろう。

そこはお互いにペアの選択を間違ったかもしれないが、お互いに組んでよかったと言っていたから、トーナメントで勝つ以上の何かを得られたんだろう。

 

 

ただ、気になったのは、ボーデヴィッヒだ。

打鉄2機のシールドエネルギーが切れてからも攻撃を入れようとしていた。

たまたま千冬さんが実況席の近くにいたから、千冬さんからの注意で止まったけど。

 

基本的に軍用機である俺の専用機などは競技用ISと違って、きちんとIS本来のシールドエネルギーを使用できる。

だが競技用は競技用IS規則に則って、ISコアの5割までのシールドエネルギーしか使用してはいけない。あとの5割はこういう不測の事態で搭乗者の身を守る絶対防御用だ。

でも学園の訓練機にはそもそも不測の事態など起こらないだろうという怠慢で、その5割のシールドエネルギーは用意されていない。いわばISコアという器の半分までしかエネルギーを充電しないのだ。

 

だからまぁ、模擬戦で敗北すると、ISの近接ブレードが急所を掠っただけでISが解除されてしまう。

つまり篠ノ之がかなり危なかった。多分千冬さんからボーデヴィッヒにお叱りが飛んだに違いない。

 

 

 

あと、学年別トーナメント初日の第5試合。

これは織斑・デュノア組と、イタリア代表候補生組による、まさかの初戦から専用機だけの対戦が起こった。

トーナメント表組んだのは機械なんだが、こいつ絶対誰かの思惑働いてるだろ……。

 

 

こっちは収穫が多かった。

俺は結局テンペスタⅡの第三世代兵装を見ないままだったからな。

これは特にイタリア組のコンビネーションがよかったから、どうせ千冬さんが授業で使うだろう。流石幼馴染と言った感じのコンビネーションだった。今大会一と言える。

 

 

「ブルックスさん、私達さっき負けちゃったから仕事変わるよー」

「ああ、助かる。頼んだ」

 

今第3試合が始まったところだ。

少し早いが昼食にして、早めに待機しておいてもいいかもしれないな。

そんなことを思って、学食に足を伸ばす。

 

時間が早いから、学食はがらんとしていた。

どれを注文しようかじっくり悩む時間もあったし、出てきた豚の生姜焼きをのんびり味わう時間も十分にあった。

慢心ではないが、どの相手についても対策を取る気はない。

対策なんて取れれば幸運だが、それに頼り切りでは実戦ですぐに死ぬ。

 

だから、対策なんて大層なものは考えるつもりなどない。

あるとすれば、常に俺のベストパフォーマンスを維持することが対策だろう。

 

 

うん、今日の学食もまあうまい。

 

 

*********

 

 

時間は飛んで、IS学園学年別タッグマッチトーナメント、最終日。

各学年の決勝戦が、第1アリーナにて行われる。

 

 

「大会中初の朝一試合だが……調子は?」

「ええ、よく寝られましたし、体調は万全です」

 

 

 

「やっと、ですね。ラウラさん、頑張りましょう」

「……」

 

 

決勝戦は、第1学年、第2学年、第3学年の順に行われる。

試合の様子は各教室でもリアルタイムに放送されるため、各クラスの担任、あるいは副担任は教室のプロジェクター操作と生徒たちの監督をしている。

 

第1アリーナの観客席は、各国のVIPや各企業のエージェントが席を埋め尽くしており、接待係になっている生徒たちは観客たちにお茶を配り歩いたりと忙しそうに働いていた。

 

 

そして、時刻は8時55分。

選手の待機するピットのゲートが開き、放送部のエースであるドイラーズの熱のこもった実況で、選手たちが入場する。

 

 

「みなさま、お待たせ致しました!! 第1学年の部決勝、選手入場です! まずはAピット! ドイツ代表候補生、ラウラァーーーーー、ボーデヴィーーーーッヒ!!!」

 

カタパルトに射出されて、漆黒の第三世代IS「シュヴァルツェア・レーゲン」を纏う小柄な少女がアリーナに現れる。

 

「ボーデヴィッヒ選手は遠近共に優秀な選手ですね。準決勝では女子高生武道家として名高い、イタリア代表候補生のエリザ・フェラーラ選手と鍔迫り合い、見事に勝利しています」

「もういっちょ! 同じくドイツ代表候補生、アルマァーーー、デーレンダーーーッル!!!」

 

次に現れたのは、黒に近い紺色のボディをした量産IS「ラファール・リヴァイヴ」を纏った、バランスのとれたプロポーションの女子。

ただし通常のラファール・リヴァイヴとは少々形状が異なっている。

 

「デーレンダール選手は近接格闘の実力は未知数ですね。けれど射撃の技術が圧倒的に高く、1回戦からここまで、対戦相手の回避先を誘導するような射撃を魅せてくれました」

 

 

Aピットの扉が閉じた。

直後に開かれたのはAピットの対面にある、Cピットだ。

 

 

「続きまして、Cピット! イギリス代表候補生、セシリアァーーーーー、オルコーーーーット!!!」

 

場に現れたのは、蒼のIS。

第三世代ISの中でも最も実用化が進んでいるとされる、イギリス製のIS「ブルー・ティアーズ」と、その専属操縦者たる貴族の少女である。

 

「オルコット選手は近接戦闘に関してはあまり得意とは言えませんが、独自の第三世代兵装を用いた三次元的な戦いは、それを操るだけで才能が必要とされます。その才能が光るところを、今日は存分に魅せてくれることでしょう」

「最後ッ! 今大会全学年の出場選手の中で唯一の国家代表!! 香港代表、アイリーンッ、ブルックーーーーッス!!!」

 

まるで主役は遅れて出て来るものだと言わんばかりの、圧倒的存在感。

美しく磨きこまれたヴァイオレットの重厚な装甲が、アリーナの光を受けてきらめいている。

ブリュンヒルデであり、世こそ知られていないが、本当の世界初の男性操縦者であるその人だ。

 

「学園に通う国家代表はブルックス選手を入れても2名、うち片方は今回は出場を辞退していますから、大会唯一の国家代表ですね。2年前の第3回モンド・グロッソでブリュンヒルデに輝いたその実力は、私が解説するまでもないでしょう」

「試合は9時00分開始です!」

 

 

アリーナで、静かな睨み合いが起こる。

初手で取ってくる戦法は何か。自分はどう対処したらいいか。

たった1分や2分の間で、多くの読み合いが交わされる。

 

「9時になりました、戦闘態勢に入ってください」

 

それぞれが主兵装を展開する。

レールガンを。

レーザーライフルを。

アサルトライフルを。

盾を。

 

 

「試合、始めッ!!」

 

 

一手目を制したのは。




○オリキャラ紹介
アルマ・デーレンダール
ドイツ代表候補生。普段は控えめに見えるが手綱を握るのがうまく、女尊男卑でなくとも結婚したら隠れカカア天下になること請け合い。愛用する量産機はラファール・リヴァイヴ。

ドイラーズ
アンナ・ホームズ
ソフィア・ワトソン
アンナは2年、ソフィアは3年。どちらも放送部で、アンナは実況、ソフィアは解説を得意としている。いつかこのコンビでモンド・グロッソの実況解説をしたいと考えている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。