IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

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もーうーいーくつねーるーとー、おーしょーおーがーつー。
というわけで年末ですね。年末年始はおそらく更新が止まります。
年末までに第2章が終わるといいなあと思っています。あくまで願望です。

それでは第2章9話、はっじまーるよー。


02-09 学年別タッグトーナメント④

IS学園、学年別タッグトーナメントマッチ。

決勝戦、第1学年試合。

 

 

一手目を制したのは。

 

 

『速いッ! ブルックス選手、目にも止まらぬ光速の突撃ィ!! デーレンダール選手のパッケージ換装済みラファールの右翼が一瞬にしてもがれたァ!!』

『今スローが届きました! これはIS「シューティングスター」に搭載された、IS用ナイフ……いや、小太刀と言ったところでしょうか!? 試合開始直後に小太刀を展開しつつ瞬時加速で接近したようです!』

 

学園に配備されている訓練機のハイパーセンサーは機能を制限されている。

突然高感度のハイパーセンサーを、身体能力の面では一般人である生徒が着用したとする。

生徒は一瞬で酔い、頭痛や吐き気を催してしまう。

そんな状態で訓練どころではないため、わざと機能制限を設けている。

 

そんなハイパーセンサーで、競技中に使用できるIS最高速度の上限ギリギリを出せるシューティングスターを捉えることなど容易ではない。

 

そして、通常の熟練したIS乗りは、瞬時加速を行う寸前にいわゆるボクサーのファイティングポーズのように前傾姿勢を取る。

 

 

その方がエネルギーを集めるイメージをしやすい。

何より前傾していたほうが、瞬時加速中の空気抵抗が減り、速度が出やすいからだ。

 

しかしその前触れもなく、開始の合図と共に直立の状態からの瞬時加速。

 

 

当たり前を知っている代表候補生だからこそ、前傾していなかったアイリーンに、油断した。

 

何より、展開していたのは、第三世代兵装たる盾のみだったはず。

それを持って瞬時加速したとして、振りかぶる動作等で見切って避けられると踏んでいた。

 

 

アルマ・デーレンダールは心の中で舌打ちした。

今回アルマが用意した訓練機、ラファール・リヴァイヴには学園でも置いてあったパッケージをインストールしていた。

 

そのパッケージ「パピヨン」は、装甲や物理シールドを犠牲に、スラスターも兼ねるサブアームを増設し、機動力と砲火力を重視したものに仕上がっている。

そして武装は-近接武装を外し、空いている枠すべてに射撃武装を搭載した、ある意味気の違ったパッケージである。

 

先程落とされた右翼のサブアームには勿論アサルトライフルが設置されていたわけで。

切り落とされたそれを拾う時間など、あの世界最強が許すはずがない。

開始直後のたった一手で、己の火力の3割と機動力の4割を持って行かれた。

少し、代表を舐めていたかもしれない。

 

 

 

「……デーレンダールの顔が変わった。だがやることは変わらない」

「ええ、存じ上げておりますわ」

 

最初の一手が起こっている間に、セシリアはアリーナの端まで移動していた。

アリーナの直径程度の距離であれば、セシリアほどのBT適正があれば悠々と指示を送れる上に、武装の特性上空気抵抗による減速もないため、離れれば離れるほど優位に立つことができた。

追ってくるのであればミサイルビットで迎え撃ち、再び距離を取り、2対1になることを待てばいい。

 

セシリアはドイツの代表候補生のどちらも、自分のことを後回しにするだろうと思っていたし、それは間違っていなかった。

 

 

 

観客席は大いに沸いていた。

国家代表のIS操縦技術はモンド・グロッソ以外の場では秘匿されることが多い。

単純にアイリーンのISの操縦技術に舌を巻いていることもある。

 

 

それ以上に、セシリアの選択を、主に欧州連合のVIPたちは褒め称えていた。

 

彼らは興味の如何はともかくとして、一度はセシリアの駆る「ブルー・ティアーズ」のスペックカタログを見たことがある立場の者たちだ。

第三世代兵装であるBTの実用化は確かに世界でも群を抜いて進んではいるが、それだけのデータを集められるほど長い時間稼働しているISでもあり、要するに機体本体は既に時代遅れである。

 

第3次イグニッション・プランはドイツのレーゲン型か、イタリアのテンペスタⅡ型でほぼ決まりだと、彼らは信じて疑わなかった。

 

 

そのブルー・ティアーズは、BTと合わせて、複数人数でのパーティにおける運用において真価を発揮すると、今この時証明されているようなものだ。

 

大型レーザーライフルによる精密な援護射撃。

そして()()()2()()による3次元的な射撃。

 

 

対光学兵器用の特別装甲か特別バリアを用意していなければ、避ける以外の選択肢は与えられない。

現に、セシリアによる援護射撃に狙われたドイツ代表候補生ペアは、避けることしかできず、この射撃が結果的にアイリーンを助けるような場面が散見された。

 

己が前に出ようとするのではなく、後方で最も得意とすることで強力な前衛を生かす。

 

-イグニッション・プランで選ばれるのはたったの1機のみ。

その選考中に、目立とうとするのではなく勝とうとするセシリアの選択と、一度たりとも起こっていない誤射。それらはVIPたちにとって非常に好く映ったのだ。

 

 

 

**********

 

 

 

さて、アイリーン・セシリアペアの用意していた作戦はただひとつ。

 

まず支援を断ち、本体を叩く。

よく使われる、単純明快な作戦だ。

 

 

そんな戦術性もへったくれもない作戦を選んだ理由はただ一つ。

2人の目には、ラウラの辞書に援護の文字はないと映っていた。それだけだ。

 

 

 

ありもしない切り札を切ることもなく、アルマは落とされた。

それも、IS用近接ブレード1本とシューティングスターの加速力だけで。

突き刺すように装甲をもがれ、その攻撃は絶対防御を貫通した。

 

ワイヤーブレードとプラズマ手刀で猛攻を仕掛けるラウラをいなしながら自分を落とすなんて、流石ブリュンヒルデであるという感想しか、アルマには思いつかなかった。

 

アルマのラファール・リヴァイヴは学園の訓練機である。

学園の訓練機はISの模擬戦で使用される分と少ししか、エネルギーを補給されていない。

そのため既に機体を維持するだけで精一杯で、アリーナの中央に陣取り続ければ間違いなく巻き込まれて怪我では済まなくなる。

だから、IS学園の模擬戦では競技上のエネルギー切れになった選手はアリーナの端まで移動して、出来る限り巻き込まれないようにする、これがタッグ戦での決まりでもあった。

 

 

そしてアリーナの中央を縦横無尽に駆け巡り、殴り合う黒と紫のISを見上げる。

 

 

片やワイヤーブレードを操りながらプラズマ手刀を繰り出すシュヴァルツェア・レーゲン。

片や全てを小太刀でいなしながら近距離射撃をアンロックのアサルトライフル3丁から同時射出するシューディングスター。

アルマのペアであるラウラは、合計6の射線を掻い潜りながらもアイリーンに攻撃を加える。

 

 

『デーレンダール選手のダウンにより、ボーデヴィッヒ選手仇を取らんと肉薄ゥ!』

『ブルックス選手は2年前のモンド・グロッソ格闘部門でも準優勝のパイロットですからね。互いに軍属操縦者、このぶつかり合いはややブルックス選手有利か!?』

 

ややどころか、絶対的にアイリーン有利だということは見ればわかる。

しかし観客席にはドイツ政府の関係者もいるため、不用意な発言ができない実況解説も大変である。

 

 

 

ラウラの手刀を小太刀でいなす音が繰り返され、体2つ分離れた瞬間に放たれる銃弾。

一か所に集中しなければ発動できないAICを発動することなどできず、いいように撃たれていた。

 

シュヴァルツェア・レーゲンはイギリスが光学兵器をメインとした第三世代ISを作成するという情報を得てから開発の始まったISであり、それを理由に対光学兵器装甲を採用している。

しかしそれはあくまで装甲の話でしかない。

つまり、装甲のない部分を撃たれれば通常通りのダメージが貫通してしまう。

 

前面から3射。死角から3射。

確かに、ISパイロットはハイパーセンサーによって360度見渡せる。

しかし、だからと言って6射を完全に避け切れるわけではない。

 

特に死角からの3射は全て別方向から飛んできている光学兵器だ。

スペックカタログで見た「偏向射撃」こそ出来ないようだが、タッグマッチのペア次第では十分にいやらしいISだとラウラは思う。

 

「ふん……それならわざわざ1対2でお前の相手をしてやる必要もない」

 

鼻を鳴らし、アイリーンから目を逸らさないまま距離を取る。

火薬銃が撃たれてからでも避けられるほどにまで距離が取れ次第、背を向ける。

 

このチクチクと面倒臭い光学兵器を黙らせるために、ラウラは身をかがめた。

スラスターがエネルギーを吐き出し、そしてそれを再び取り込むことで光を灯す。

 

 

その瞬間、セシリアは至極嬉しそうに唇で弧を描く。

 

気付いた時には、眼前にミサイルが飛んできていた。

 

「チィっ!!」

 

瞬時加速中にAICなど、自らAICにぶつかりにいくようなものだ。

そんなことをしたら、当然自機のシールドエネルギーが削られる。

 

ミサイルか。それともAICとの接触か。

どちらがより被害を軽減できるだろうかと、一瞬にしてラウラの脳内を計算が過る。

 

「がら空きですわよ」

 

AICとの衝突を選んだラウラの背後、心臓の上。

4本のレーザーと計5発の銃弾が、完全に一点を狙って命中した。

 

 

『オルコット選手を先に倒そうと背を向けたボーデヴィッヒ選手、これはまんまと術中にはまってしまったかァー!?』

 

ラウラの背後何メートルも先では、アイデンティティでさえある盾を収納したアイリーンが、いつも通りのポーカーフェイス(無表情)で両腕を前に突き出していた。

常時展開されている3丁のアンロックアサルトライフルと、両腕に握られたまた別のアサルトライフル2丁の合計5丁こそが、ラウラを襲った銃弾の親である。

 

『先程までアリーナのシールド付近を周回していたオルコット選手がわざと足を止めたのは、ボーデヴィッヒ選手の動きを誘導するための罠だったのでしょう。少々捨て身ではありますが、その分確実に一手で決まると踏んでの狙いでしょう!』

『ここで一気にボーデヴィッヒ選手のシールドエネルギー減少! あと一回ブレードが掠ったら決着がついてしまう!! どうする、ボーデヴィッヒ選手!!』

 

 

ここで決めんとばかりに、次発を撃ちこむアイリーン、セシリア両名。

全弾命中したと同時に、ラウラのISは。

 

 

ドロリ、と。

 

 

ISの装着が解除されるわけでもなく。

 

むしろその黒く粘性のある何かは、ラウラを飲み込み-そして、世にも有名な形を作り出す。

 

 

 

「あ、ァァアアアアァァアァあああ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 

 




○オリジナルパッケージ紹介
ラファール・リヴァイヴ専用パッケージ
「パピヨン」
追加装甲なし、追加シールドなしの防御?何それおいしいの?系パッケージ。
スラスターを兼ねるサブアームを左右3つずつと、各種射撃武装を計10丁ほど追加し、機動力で攪乱しながら撃ち殺せといった、徹底的な近接戦闘拒否型に仕上がっている。
ラファール・リヴァイヴには特別な訓練なく、サブアーム+2本分の火器を同時管制できるようなシステムが組み込まれているため、初心者でも扱える(戦って勝てるとは言ってない)。
なお容量の関係上、初期装備は全て外さなければインストールできない。

要するに単騎で使うにはドMすぎる機動+射撃パッケージです。
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