IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

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01-06 クラス代表決定戦 後編

イギリス製第三世代型IS「ブルー・ティアーズ」。

 

第三世代型ISの最大の特徴「イメージ・インターフェースを使用した特殊兵装」でも最も進んでいるイギリスの最新型機であり、イギリスが目指すBT兵器の試作第一号機である、我が愛機。

 

わたくしがこの子に乗り始めて、3か月。訓練機との違いもすっかりわかって、やっとわたくしに馴染み、本当の専用機になったのだと実感した頃。

IS学園へ入学し、あの織斑千冬さん-いえ、織斑先生の弟君と同じクラスになり、更にはあのアイリーンさんまでいらっしゃった。

本来ならアイリーンさんとわたくしがクラスの話題を独占して当然。なぜならここはIS学園。選ばれたエリートが集まるところ。その中でも更に優れたわたくし達が、ISに乗れるだけの男と並べられ、更にはクラス代表にはわたくし達ではなく男が選出される始末!

 

納得いきませんわ。クラスメイトは全員実力主義でこの学園へとやって来たのですわよね?

なのになぜ自らよりも劣る存在をクラスの顔として持ち上げようとするのですか?

物珍しいからというだけで実力主義の世界に入って来られても迷惑なのです。

 

わたくしが、わたくし達が、叩きのめして差し上げましょう。

イギリスと、射撃の女王(クィーン・オブ・シューター)の名にかけて。

 

 

などと、考えていたわたくし自身が恥ずかしいですわ。

 

 

**********

 

 

Cピットから出てきたオルコットは、嫌にすっきりした顔をしていた。

オルコットのことだから、織斑に負けて相当へこんでるか、もしくは怒ってるかと思ったけど。意外だな。

 

『アイリーンさん。わたくし、愚かでしたわ』

 

オルコットは主力兵装のスターライトmkⅢすら展開せず、ビットも腰部アーマーに固定したまんまで、いきなり何かを言い出した。

 

『一夏さんのことを、男だからという色眼鏡で見てしまっていましたわ。女性でしたけど、知識の面はぱっとせずとも、実戦では輝くといった方達を今までにも見てきていましたのに』

「そうか」

 

一夏さん?

いや織斑の名前だってことはわかってるが、オルコットは織斑のことは織斑って呼んでたような……。ま、どっちでもいいし俺には関係ないけど。

 

『このように愚かなわたくしが、ましてやアイリーンさんに勝てるなどと思っていませんわ。それでも……「ブルー・ティアーズ」試作第一号機のパイロットに選ばれた誇りにかけて、全力で挑ませてもらいますわ!』

 

オルコットは左手を横に、肩の高さまで上げる。爆発のような光を伴って、スターライトmkⅢの量子構成を終えた。

 

ビーッと試合開始のブザーが鳴る。

それと同時にオルコットはスターライトの銃身を前に向け、ビットを起動させて俺を狙う。俺はずっと持っていたCDD01/IRで、スラスターを噴かせてレーザーを避けながらオルコットに接近する。

もうDDP01/Minは弾切れだから、俺の状態って実は劣化版織斑だったりする。機体の話だけをすればな。

けどテンペスタはスリムな外見とは裏腹に強固な装甲をしていて、割と殴ったり蹴ったりでもダメージを与えられるようになっている。ま、テンペスタより装甲の硬い機体に向かってやったら装甲削れる上にダメージ喰らうけどな。ちなみにブルー・ティアーズは中遠距離射撃型なのもあって、装甲は強度よりもBTとの同調を重視したものが採用されてる。

 

『っなかなか、当たりませんことね……! 訓練機だというのに!!』

「訓練機だからといって、そうそう捕まってちゃ世界一の名が泣くからな」

 

俺の技術があるのは認める。機体の性能だけじゃ世界一にはなれないし、何より機体のよさで世界を目指すなら、その機体についていけるだけの実力がなくてはならない。

更に言うけど、オルコットはBT適性Aだって聞いてるけど、まだまだ使いこなせていない。ビット6機全て出してはいるけど、俺を的確に狙ってきてるのは3機だけ。残りの3機はおざなりだ。更にオルコット本体が動けない。だから俺を狙うのは実質3本のレーザーだけで、余裕で避けられるわけだ。そこでBT適性とマルチタスクは別物なんだと今初めて気付いた。

 

瞬時加速をして、オルコット本体に詰め寄る。無防備だ。近接武装も詰んであるはずなのに展開できていない。

 

一撃必殺のつもりで剣を振り下ろし、俺の肩から剣先までの慣性と遠心力を倍増させる。

 

『きゃああああああ!!』

 

ハイパーセンサーから伝わってくる、オルコットのシールドエネルギーがもう残り僅かだということ。

……情けない、一撃で堕とせなかったか。

もう一度CDDを振りかぶる。

 

 

**********

 

 

「なあ箒」

「なんだ?」

「ブルックスさんが今乗ってるISって訓練機らしいんだが、一撃が重すぎじゃないか?」

 

Aピットでブルックスさんとオルコットさんの試合を見ていた。横には箒と千冬姉がいる。先程千冬姉から、ブルックスさんとの試合の評価をもらった。隙だらけだ馬鹿者。

 

「ほら、今のも」

 

ブルックスさんの袈裟懸けでオルコットさんのシールドエネルギーが満タンからあと1割以下にまで減る。これはいくらなんでも一撃が重すぎる。

 

「言われてみれば確かにな。それだけじゃない、一夏との試合での蹴りも、相当重かっただろう?」

「ああ! ISにはシールドバリアーがあるはずなのに、腹がズシンときた。今もちょっと痛い。訓練機だからパワーアシストって多分そんなにないよな?」

「ではブルックスの実力が単純に高かったのだろう」

 

箒の結論に、俺は納得いかない。

千冬姉が横でくすりと笑った。……あの千冬姉が。

 

「織斑。今何か失礼なことを考えなかったか?」

「いやっ、考えてなんか」

 

バシーンッ

 

戦乙女の聖剣が俺の頭を直撃した。これなら絶対防御を発動させることができるんじゃなかろうか。

 

「ブルックスに武道の実力があるのは確かだ、間違いない。だが、それだけでは、訓練機であそこまでの威力は出ない。ましてや訓練機に最初から入っていた、訓練用の近接ブレードではな」

「じゃあ魔法でも使ったっていうのか?」

 

バシーンッ

 

「敬語を使え馬鹿者。魔法……か。わからない者が見れば、確かに魔法で威力を上げたようにも見えるだろうな。ちょうどいいから明日の授業で扱うことにしよう」

 

千冬姉がくるりとアリーナに背を向けて、ピットの入り口へとすたすた歩いていく。その瞬間、試合終了のブザーがビーッと鳴った。オルコットさんのシールドエネルギー切れ、ブルックスさんの勝利だ。

 

戦績、ブルックスさん2勝、オルコットさん1勝1敗、俺2敗。

無事、ブルックスさんがクラス代表に決定した。めでたしめでたし。

 

 

 

「では、1年1組のクラス代表は、織斑一夏くんに決定です!」

 

翌朝。SHRで、副担の山田先生が爆弾を投下した。周囲はワーワー、キャーキャー、パチパチ。歓声と拍手でいっぱいだ。

 

「はい、先生」

「なんでしょう、織斑くん」

「俺は昨日、2敗しました。なんで俺がクラス代表になってるんですか?」

 

まさか、負けたもん勝ちとかいう特殊ルールでもあったんだろうか。

くそう、ルールをちゃんと確認しておかなかったことが悔やまれる。

 

「えーと、それはですね」

「そもそもブルックスはクラス代表にはなれんからだ。例年、国家代表はクラス代表にならないようにという暗黙の了解がある。その上既に生徒会役員だから、二重に役職を持つわけにはいかん」

「……というわけなんです」

 

なるほど。確かに中学の時も生徒会執行部に所属してたやつらは、学級委員長にはなれなかったもんな。それは納得だ。

 

「じゃあオルコットさんは?」

「それは、わたくしがクラス代表を辞退したからですわ」

 

教室の中でも廊下側の最後列に席のあるオルコットさんが、おしとやかに立ち上がってそう発言した。

 

「そもそも、わたくしは国家代表候補生。そして一夏さんも専用機持ちとは言えど、乗っている期間が違いすぎますわ。だから、一夏さんがわたくしに勝てないのは当然のこと」

 

えーっと、そういや模擬選中に、乗り始めて3か月だとか、有名な人の使っていたコアを使った機体だとか、いろいろ教えてくれたっけな。

俺も入学してから授業で一回だけ打鉄に乗ってみたけど、昨日乗った白式とは全く感覚が違った。オルコットさんが言いたいのはそのことだろうか。

 

「むしろ、わたくしをああまで追い詰めた一夏さんに、ISパイロットとしての実力の片鱗を見た気がしましたの。訓練と実戦を積めば一夏さんは必ず花開くパイロットとお見受けして、クラス代表の座をお譲りすることを決めましたの。クラス代表ならば模擬戦にこと欠きませんし」

「というわけだ。さあ織斑、SHRを終わる。挨拶をしろ」

「えーと……起立」

 

……あれ、そういえばオルコットさん、今俺のことを名前で呼ばなかったか? いや減るもんでもないし、別にいいんだけどさ。

礼、ありがとうございました。

 

SHRが終わってから一限目が始まるまで、5分だけ時間がある。この時間で移動教室がある場合は移動をするんだが、火曜日の今日の一限は教室でIS関連の座学だ。先週は入学式があったこととかの関係で3日間ずっとIS関連の座学ばっかりやって、ようやく普通の授業が始まったけど。

ブルックスさんは今日も今日とて、授業の準備をするでもなく、ぼうっとしている。むしろブルックスさんが真面目に授業を受けてるのなんて体育とISを起動させる授業だけじゃないのか?

 

「あーちゃんおはよ~」

「おはよう、本音」

 

クラス一、いや下手すると学園一のんびりしていて癒し系ののほほんさん(俺命名、本名はブルックスさんの言葉から察するに本音さん)がブルックスさんに挨拶をする。

ブルックスさんはオルコットさん以外と会話してるイメージがないから、なんだかこうやって挨拶を返しているのが変な感じがする。千冬姉とは普通に会話できることから、無口ではないんだろうと思ってたけど。

 

「今日の放課後、生徒会室しゅーごーだってー」

「放課後な、わかった」

「てゆーか一緒にいこー」

 

会話を聞く限り、のほほんさんも生徒会の役員なんだろうか。……あ、そういえばこの間の朝礼の時司会をしていた人と顔がよく似てる……かもしれない。

 

「い、一夏」

「ん? おお、箒。どうした?」

「……その、なんだ。今日の昼食だが、いいい、一緒に、食べないか?」

「なんだ、昼飯ぐらいだったら全然いいぜ!」

「ほっ、本当か!」

 

箒がとっても嬉しそうで何よりだ。今朝の朝飯だって一緒に食ったのにな。なんで昼飯食うぐらいでそんなに嬉しそうなんだ?

 

「で、では四限目終了後、教室前まで戻ってきてくれないか」

「そういえば四限目は体育だったな。わかった」

「や、約束だからな!」

 

箒は赤面しながらそそくさと自分の席に戻っていった。一体何がどうしたんだろうか。

のほほんさんも伝言を終えて自分の席に帰っていった。そこにいたブルックスさんだけがはあ、と溜息を吐いた。おいおい幸せが逃げるぞ?

 

「今日は他のクラスより進んだ内容を扱うから今から始める、とっとと座れ。挨拶も要らん」

 

春のうららかな陽射し射し込む窓を眺めていたブルックスさんを眺めていると、一限目開始時刻まであと2分あるのに、千冬姉は山田先生と一緒に慌ただしく教室内に入ってきた。

千冬姉の出席簿を喰らいたくない俺らはみんな瞬く間に席に着く。

 

「よし。今日は山田先生にIS独自のシステムについて授業をしてもらうつもりだったが、ちょうどいいことに昨日、お前らはブルックスの戦う姿をナマで見た。これはなかなか見られないから、他のクラスよりも先取りで教えてやる」

「で、では、織斑先生が映像の準備をしている間に、説明をしますね。教科書57ページを開いてください」

 

教室備え付けのプロジェクターの電源を入れ、DVDプレーヤーを起動し。

千冬姉が色々やっている間に山田先生が説明を始める。

 

「ISには他の兵器にはないシステムがあります。それが絶対防御、シールドバリア、パワーアシスト、そしてPICです。シールドエネルギー自体は太陽の要らない太陽光発電みたいなものですけど、そのエネルギーをそのままバリアに使用できるのはISだけなんですよね。そして、今日説明するのはPICです」

 

ぴーあいしー。教科書によると、パッシブ・イナーシャル・キャンセラー。物体に働く慣性の力を無効化するシステムで、これによって重力を無効化してISは宙に浮く……らしい。

慣性の力を無効化して重力を無効化するってちょっとよくわからんのだが……。

 

「教科書にもあるとおり、PICによって重力を無効化することでISは宙に浮いています。また、PICは名前が指す意味よりも広い効果を持っていて、たとえば火薬銃を撃った時の反動なども、PICが自動で相殺してくれます」

 

俺火薬銃撃ったことないからよくわからんたとえだなあ。

 

「他には……たとえば、近接ブレードで斬りかかられた時、PICが作動して慣性の力を消し、近接ブレードによって与えられるダメージは遠心力+ブレードの強度+パワーアシスト+操縦者のパワーです。こう言うとそんなに差がなく感じるかもしれませんが……逆手に取るとものすごいんです」

「この映像を見ろ」

 

山田先生の説明の裏で、織斑先生がDVDを流し始めた。あ、これ俺とブルックスさんの、昨日の模擬戦だ。

 

「装甲自体の強度は白式の方が少々強い程度、近接ブレードの強度も同様。操縦者のパワーはブルックスの方が強いが、ISのパワーアシストはテンペスタの3倍ぐらい、白式が勝っている」

 

げぇっ、そうなのか。

 

「たとえばここだ。操縦者が人間である以上、操縦者のパワーの差なんてパワーアシストで誤魔化せる。のに、織斑の袈裟懸けをブルックスは意図も容易く受け止めているな」

 

そう。ブルックスさんのこの細腕に止められるとは思わなかった。その上腹に蹴りを入れる余裕まであったなんて、この瞬間の俺は思っちゃいない。

 

「これはブルックスがPICをマニュアル操作しているからだ。PICで慣性と遠心力を完全に無効化している。だからブルックスは余裕があったわけだ」

 

なるほど。だから俺の攻撃はまったく効かなかったんだな。

 

「更に、これだ。オルコットの装甲とテンペスタのブレードの強度は大体同程度なわけだが、この一撃でシールドエネルギーの95%を削り取った。織斑、なぜかわかるか?」

「オルコットさんのPICを作動させないようにした、とかか?」

「違う。PICは他機のPICに干渉する力は持たない。ではオルコット、お前はどうだ」

「PICを逆方向に使った、でしょうか。つまりは慣性と遠心力の増幅」

 

織斑先生はオルコットさんの言葉に力強く頷き、正解だと言った。PICって意識してなかったけど、そんなにすごいのか。それじゃあ俺もマニュアル操作にしよう。

 

「ああ、勿論素人がPICをマニュアルにしようなどと思うなよ? 私が知る限りでも世界にふたりしか、PICをマニュアル操作しながら戦える者はいない。難解な計算を解く力と十全な視野、同時並行処理能力、それから才能がなければできない所業だ」

 

俺の思考、あっさりと千冬姉にバレるの巻。

 

「できればメリットはでかいが、できない者にとってのデメリットが多すぎる。反動制御ができない、宙に浮けない、攻撃をモロに喰らう。それでもどうしてもやりたければ、やる場所の責任者に許可を取ってからやれ。オートマ設定を外すと警告音が鳴るし、そういう決まりがある」

「はい、先生。質問いいでしょうか」

「どうした」

「その、もうひとりのマニュアル操作で戦えるパイロットとはどなたですか? 織斑先生ですか?」

「私ではない。エレン・オニール……IS学園のOGで、在学中は3年間ずっと生徒会長を務めていた整備科のエースだった女だ」

「ありがとうございます」

 

オニール……うーん、どこかで聞いた名前のような……。

あっわかった、オルコットさんの機体のISコアが、元イギリス代表のなんとか・オニールさんの乗ってた専用機のコアだ。

 

「織斑先生、そのエレン・オニールって人、元イギリス代表のなんとか・オニールさんと関係あるんですか?」

「元イギリス代表というと、シェリー・オニールだな。エレンはシェリー・オニールの娘だ。母に似て、いや母以上のISパイロットだった」

「先生、わたくし代表候補生になってもう2年ほど経ちますけれど、エレン・オニールなるISパイロットの名を聞いたことがありませんわ」

「エレンがここを卒業したのが2年前だ。そのあとは母の元で整備士として働くと言っていたが……。ああ、エレンは代表候補生ではなかった。そのせいかもしれないな」

 

ん? オルコットさんが知らないのに、イギリスの優秀なパイロット? オルコットさんイギリスのこと大好きみたいだし、いくら代表候補生じゃないとしても知ってるはずなんじゃ……。

 

「とにかくエレンの話はもういい。このPICについて質問がある生徒は?」

 

織斑先生の問いかけに、クラスはしーんと静まり返った。

それを確認すると、織斑先生はDVDを片付け、山田先生は次の内容のページを指定した。後ろのブルックスさんはきっと窓の外を見てるんだろう。今日も平和だ。




日々お気に入り増えてて嬉しいです! ありがとうございます。


オリ機体紹介

イタリア製第二世代型量産IS「テンペスタ」
IS学園に配備されている訓練機の中で、アクワマリンに次いで数の少ないもの。
イタリア代表の専用機「テンペスタ」を劣化させた機体ではあるが、機動力はラファール・リヴァイヴに引けを取らず、また近接格闘に定評がある。
細身で角がなく、非常に強固な材質でできた装甲のため、殴る蹴るでも十分に戦える赤いIS。

16/09/16 誤字修正
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