IS  -香港のダイヤモンド-【改】   作:7seven

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01-07 頼みごと

日本では、数十年前に「ぶるまあ」というものがあったらしい。

女学生が運動する際に臀部を保護するために着用するもので、発端は1964年の東京オリンピックあたりの、女子バレーボール日本代表のユニフォームにあるらしかったが、太腿を露わにするデザインや、また下着がはみ出ることもあり、思春期に入ってすぐの女学生達はそれらによる羞恥心のため、ぶるまあ撲滅のために立ち上がったそうだ。

 

……と、ここまで伝聞推定の表現を使ったが、何を隠そう、いや隠さなくてもいいけど、俺は日本人ではないし、そもそも女ですらないのだ。ぶるまあについては詳しくなくて当然だろう。

ただ、不思議な体操着に疑問を持ったため、ネットで調べてみたわけだ。

そう、俺の今所属しているIS学園の体操着は、何を隠そう、いや隠すまでもないけど、その「ぶるまあ」である。

 

 

「なんてゆーか……ブルックスさんのISスーツって、別にツーピースじゃなかったよね?」

「ツーピースに見えるのか?」

 

四限目は体育だ。確か卓球をすると聞いている。

そのために俺は女子と一緒に教室で着替えている。不自然だと思われないためにも女子と着替えるしかないし、何より女の下着姿は義姉で見慣れてしまっている。今更どうこうは思えない。

 

「いや、全然。どう見てもワンピース。トイレ行くときとか面倒じゃないの?」

 

男物の下着など見られたら一発でばれると思うだろ? そもそも下着を履いてない。

……ノーパンって意味じゃなくて、ISスーツを下着として着てるって意味な。その上からぶるまあを履く。てかまあ、ISスーツがないといくらなんでも男だってばれるだろ。あれとかそれとかのせいで。

ISスーツ着っぱなしに気付いた隣の席の女子……確か岸原だっけ、が声をかけてきた。

 

「実はツーピースだから問題ない」

「ええっウソ!? あっほんとだ!!!」

 

ISスーツのニーハイそっくりの脚部保護ウェアがどうしてもずり下がってしまうから、俺のISスーツではガーターベルトを手本にして、腹部から脚部保護ウェアまでの前部分が繋がったデザインになっている。

なおIS学園指定のISスーツで実装されている電圧式は効果がなかった。まあ女の足と男の足の肉付きの違いのせいだろう。

ガーター部分をちょっとかき分けて、胸下まであるショーツ部分の裾を下ろしてみせるとすごく驚かれた。軍でISスーツを推してる俺が、トイレに行くという日常的な行動を想定していないとでも思ったか。

 

「すごーい! ブルックスさん、それどこのモデル?」

「私の専属整備士がデザインした、世界にたった二着のものだ」

「流石国家代表! こだわりが違う!」

 

ショーツ部分を戻して、体操着のシャツを着る。ISスーツの肩の部分がちょっとだけはみ出てはいるけど、気にすることではないな。

ちなみに、このツーピースタイプはトイレとかって問題を除いても優秀だ。普通のISスーツは二重になっているものが少なく、たまに冷えを感じる場合がある。俺は冷え症じゃないから関係ないけど。特に女子は腹を冷やしたらダメだと聞くけど、このツーピース型は腹部が二重になるから暖かいんだよな。流石、作ったのが女なだけはある。

 

「……アイリーンさん、ISスーツが丸見えですわよ?」

 

着替え終えて、一緒に体育館へ行こうとオルコットが誘いにくるが、俺の姿を見て眉根を顰めた。

 

「肌の露出が減っていいだろ。筋肉サポート機構もあるし、怪我防止にもなる。何より体操着の下にISスーツを着てはならないなんて校則も法律もない」

「それはそうですけど……」

 

オルコットははあ、と溜息を吐いた。まあ確かにあまり美しい光景ではないかもしれないけど、俺としては色々な意味でベストなんだよな、これ。即戦闘態勢入れるし。

 

「汗とかも気にならないし、ISスーツなかったら素っ裸だぞ? オルコットは私に素っ裸になれと?」

「そそそそそ、そんなことはありませんわ!!!」

 

俺が意地悪にそう尋ねるとオルコットは焦りながら即座に否定してきて。それがおもしろくってふくく、と笑ってしまう。俺の笑いにオルコットはからかわれたと気付いて、ぷうっと膨れてしまった。

 

「そろそろ行かないと遅刻だぞ、オルコット」

 

俺がまだ笑いを堪えきれなくて震えながら言うと、オルコットは膨れながらも大人しく歩き出した俺の後を追い始めた。

 

 

**********

 

 

「は?」

「いや、は? じゃなくてねアイリーンちゃん」

 

素っ頓狂な声を上げてしまった。だって、更識の言ったことはそれだけ衝撃的だ。

時は放課後、生徒会室でのことだ。

 

「もう決定事項なのよ」

「いやだって私が連絡もらってないのに決定してるとは思えない。あいつは私の専属なんだから、私に連絡なく決める権利もないし、あいつだって決める気はないだろう」

「だって決めたのはIS委員会だもの。むしろあれだけの逸材が香港という一国家にだけ所属している現状が認められていることのほうがおかしいわ」

「それはG8に派遣で済んだ話だろ」

「私に言われても困るわよ」

 

話題のあいつ-ミカエル・ブルックスは、俺の専属整備士であり、義姉だ。

異父姉弟ではあるものの、俺はあいつを義姉として慕っているし、あいつもきっと俺のことを義弟として可愛がってくれている。姉弟仲は至って良好だ。

 

その義姉がなぜ。

 

「とにかく、ミカエル・ブルックスは6月1日付で我がIS学園の教員となることが決定したわ!」

 

なぜ、IS学園に来ることになってんだ。

ていうか更識はこれのためだけに俺を生徒会室に呼び出したのか。

 

「それでね、アイリーンちゃん。専属パイロットである君が一番よく、ミカエルさんがどれだけ優秀かわかってるでしょう? そんな超大物がIS学園にやってくるってことは、織斑一夏含めて、IS学園はとても危険になるわ」

「……つまり、私の仕事が増えると?」

「あら、わかってるじゃない」

 

大正解、と書かれている扇子がぱっと開かれた。正解なんてしたくなかったっての。

 

「……ミカエルは私が守るまでもなく強いけどな」

 

何せこの更識楯無が生徒会長に着く前まで、IS学園整備科の中で歴代唯一の生徒会長として君臨していた張本人なのだから。

 

「それでもよ。その関係で、警備部とのミーティングが増えるわ。詳細なスケジュールは出来上がり次第、本音ちゃん伝いに渡すから」

「うん、私あーちゃんにスケジュール届けるよー」

「はあ、やればいいんだろ、やれば」

「そうそう。あ、それとね。織斑先生が、実力のあるISパイロットで、今高校1年の子がいるから、もうすぐしたらその子を呼ぶって言ってたわ。織斑一夏の方はその子に任せればいいと思う」

 

千冬さんが認めるパイロット、ねえ……。この年頃ってことは、少なくとも国家代表ではない。一応国家代表の顔と名前は全部頭に入ってるから、該当するのは俺と更識しかいない。つまり代表候補生の中でもトップクラス、といったあたりだろう。

 

「ま、この話はここらへんにして、本題に入りましょ」

 

真剣な顔をしていた更識の顔が、いや目が焼き殺してやるってぐらいの殺意と熱に溢れたものに変わる。

ていうか今までの本題じゃないってどういうことだよ。

 

「この間っから、私の簪ちゃんと仲がいいそうね!? 羨まし……じゃなくて、憎たらしいわ……!」

 

会長専用の机の上にある書類が燃え尽きるんじゃないかってぐらい嫉妬の炎にまみれる更識と、それを脇で冷ややかな目で見つめる虚さんと、相変わらずニコニコの本音。そして俺。

 

「こないだの先輩との模擬戦の後、かきあげうどんを奢ってもらったんだよねー、あーちゃん」

 

あ、本音が火に油注いだ。

 

「なんですってぇ!? アイリーンちゃん……ちょっとオハナシしましょ?」

「やなこった、このシスコン」

 

シスコンにつける薬はない。くるりと踵を返して生徒会室を出た。

簪は更識のこと苦手にしてるみたいだから、余計に拗らせてんのか? 更識は。

 

生徒会室の扉を閉めると、ちょっと先に篠ノ之がいた。目が合って、でも俺達は特に会話する仲でもないから声もかけないし、会釈もしない。

それにしても、篠ノ之はここに何の用があるんだろうか。このあたりは生徒会室と応接室、作法室ぐらいしかない。

 

「……ブルックス、その、少しいいか?」

 

何の用かと思えば、俺を待ち伏せしてたのか。

篠ノ之の表情から何かを読み取れるほどの付き合いはないが、どことなく神妙そうな雰囲気を感じた。

 

 

 

場所を変えて屋上。

篠ノ之といえば織斑と一緒にいるイメージだったが、そういえば今日は織斑と一緒にいないんだな。

今日は風が強くて、無遠慮に髪が掻き撫ぜられる。鬱陶しい、男であることを隠す必要がなくなったら絶対に刈り上げてくれる。

 

篠ノ之も長いポニーテールを風に煽られながら、俺と対峙していた。きちんと顔を合わせるのは初めてだろう。

鋭い眼光、千冬さんほどではないものの、武道の使い手だろう。それも、相当できる。身体も部分的に肉付きがいいけど、他を見る限りはああ、武道家だなってわかるようなしなやかさだ。

 

「一応話すのは初めてだな。香港代表、アイリーン・ブルックスだ」

「篠ノ之箒という」

「で、用件はなんだ?」

 

なかなか切りださない篠ノ之に、自己紹介という助け舟を出して、更に率直に用件を聞いてやっても、篠ノ之はすぐに貝のように口を閉ざした。

 

「私に用があるというのなら、用件はISか香港のことと相場は決まってるが。どうだ、合ってるか?」

「あ、ああ……。察しのとおり、ISについてのことだ」

 

ISのこと、ねえ。

篠ノ之はあの博士の妹だっていうから、技術的な面は姉に聞けばいいだろうから問題はない。重要人物保護プログラムというやつで家族がばらばらだとクラスメイトの経歴の中に書いてあったが、流石に連絡が取れないことはないだろう。

ISの操縦に関しても、俺を頼る必要はない。織斑と幼馴染ってことは、千冬さんと面識がある可能性も高い。何よりオルコットが織斑に色々教えてるらしいから、一緒にいればある程度覚えるだろう。

 

つまり、篠ノ之が俺とISについて話すこともやることも、ないってことだ。

じゃあ、なんで篠ノ之は待ち伏せをしてまで?

 

「……私は、力が欲しいんだ。先日の代表決定戦で、一夏やオルコットや、お前が見せた戦いぶり。私は武道家として、けして低くはない実力を有していると自負している。それでも、お前達との間に大きな隔たりを感じた」

「専用機の有無は大きいからな。篠ノ之博士に頼んで、専用機を作ってもらえばいい。あの人なら世間をあっと驚かすISを作ってくれるだろう」

「そ、そうじゃないんだ! 何よりあの人とは連絡は取れない。父や母が今どこにいるのかさえ知らないのに、あの人の居場所などわからない」

「じゃあ何だっていうんだ」

 

俺から言っておいてなんだけど、実の姉をあの人呼ばわりか……。簪と更識のとこレベルで冷え切ってるな。

 

「その……だな。あー……えー、とどのつまりはだ。その……私に、ISの操縦について、教えてもらえないだろうか」

「織斑と幼馴染なら千冬さんと面識あるんじゃないのか? それにオルコットが織斑に色々教えてるんだから、一緒にいればそれで十分だろう」

「それじゃダメなんだ! それでは、専用機がない私は、いつまで経っても一夏やオルコットには近付けない!!」

 

……あー、なるほどね。織斑に片想いしてるっぽいし、要するに好きな人にいいところを見せたいってやつか?

納得した。理解もした。でも、そうやすやすと俺の手を貸すわけにもいかない。

 

「事情はなんとなくわかった」

「ほ、本当か! では、早速今から……!!」

「けど、私が教えるわけにはいかない」

 

目を輝かせた篠ノ之が、一瞬で地に落とされた。わけがわからない、という顔をしている。

 

「私が世界でも頂点にいるパイロットなのは知ってるだろう。そして専用機は軍用だ。私が香港の国防の要を担うことも、博士の妹なら理解できるだろう」

「だ、だが、ブルックスは授業が終わった後は生徒会室や自室にずっといるではないか! 時間的余裕はあるだろう!!」

「ああ、余裕はいくらでもあるよ。勿論な」

 

ではなぜ、と俺に掴みかからん勢いの篠ノ之。あくまで冷めた態度の俺。

 

「私は自身の操縦技術を、香港軍に所属するパイロットにすら教えていない。できるかできないかは置いといて、寝返る可能性のあるやつに、私の秘密を教えるわけにはいかないからだ。篠ノ之、お前は日本国の所属になっている時点で、私に教えを乞うことはできないさ」

「しっ、しかし……」

 

篠ノ之は困ったような顔をして、俯いてしまった。

この手のタイプはそもそも頼みごとってものをし慣れていないから、断られるとは思わなかったのかもしれない。俺はそこまで親切じゃないから仕方ないよな。

 

「でも」

 

更なる追い打ちをかけられるのか、と身をすくめた篠ノ之を見て、武道家といえども、やっぱりただの高校生の女でしかないなと思った。

 

「私はそれと同時に、IS学園の防衛のために動く者でもある。護衛には万全を期すが、人間だから完全無欠とはなれない。だから、護衛対象の中でも、優先度が高いやつらには、ある程度自衛できる手段を持ってほしいと思っている」

 

護衛というのは、護衛される側が護衛されてると認知して初めて真の力を発揮する。

とはいえ、それを認知するにはそれなりの経験とメンタルがなければならない。まだ言うには早いと思ってたけど……。仕方ないよなあ。

 

「博士の妹であるお前は、学園内でも護衛優先度が非常に高い。織斑と同列に並ぶぐらいにはな」

 

織斑と並ぶほど優先されるということがどういうことか、博士の妹ならばきっと理解できるだろう。

 

「勿論、お前にも自衛手段を持ってもらいたいと思っているということだ」

「じ、自衛など、私には剣の心得がある!! 守られる必要もない!」

「対ISでも同じことが言えるのか?」

 

生身でIS用ブレードを振り回す千冬さんクラスになって、初めて護衛が要らないと言えるようになる。特に専用機を持っていない篠ノ之は。

 

「色々と回りくどい言い方をしたが、結論を言えばこうだ」

 

もったいぶって区切ったあと、俺はその言葉を口にした。

 

 

**********

 

 

オルコットさんが……じゃなくて、セシリアって呼ぶように言われたんだった。セシリアが毎日毎日、放課後に、IS学園内のアリーナでIS操縦の練習に付き合ってくれている。

数日前までは箒も一緒にいて、訓練機の予約が取れた時は一緒に練習して、予約が取れなかった時も俺の動きを見てああだこうだ言っていた。

 

更に、俺は今箒と同室なわけだが、俺とセシリアのこの訓練を終えて部屋に戻るのが17時。箒が部屋に戻ってくるのは、19時ぐらいなのだ。寮の門限が18時だから、少なくとも18時までに寮内には帰ってきてるとは思うんだが、それならなんで部屋に戻らず飯食いに行ってるんだろうか。

 

「一夏さん、足元がお留守でしてよ!!」

「どわっ!!」

 

今日も今日とて、セシリアと訓練だ。今日は珍しく、模擬戦のようなものをしている。

いつもなら急加速・急停止や急浮上、急下降、歩行といった基礎の練習をしたりするところだが、ずっとそれだと気が滅入るだろうとのセシリアの心遣いだ。ありがたや。

でもそういった基礎の積み重ねのおかげで、危なげなくセシリアとの模擬戦も戦えるようになっている。

 

「……ふう、こんなものですわね。一夏さん、また避けるのがお上手になったのでは?」

「やっぱりそう思うか? 基礎は大事だなと今思ってたところなんだ。ありがとな、セシリア」

「ふふ、どういたしまして。でも最近、篠ノ之さんをお見かけしませんわね」

 

セシリアも俺と同じことを考えていたらしい。

セシリアは言ってることはすごく難しいが、教え方は全然上手い。だから見てるだけでも練習になるんだけど。ああ、もしかして箒は剣道部に入部したのかもしれないな。それなら部活で忙しいだろうし、納得できる。

 

「今日にでも聞いてみるさ」

「ええ、わたくしも少し気になりますし、お願いします」

 

 

夜。19時になって寮の部屋に戻ってきた箒は、さっさとシャワーを浴びる。俺は晩飯前に一度浴びてるからいいんだが……。

その時、ぱたんと音がする。どうやらベッドからノートが落ちたようだ。たまたま見えたそのページを見る限り、IS関連の座学の授業ノートで、どう見ても箒以外の人物が書き込みを入れたような、2種類の字体が紙の上で踊っている。

 

「一夏、何を勝手に見ている」

 

シャワーを浴び終わった箒が髪を拭きながらこっちを睨んでいた。

足音どころかドアの閉まる音すらさせないとは……お前は殺し屋にでもなる気なのか。

 

「いや、これがベッドから落ちたから、拾ってたんだ」

「だからといってそんなにまじまじ見る必要もないだろう」

 

それもそうだ。

箒は俺の手から奪うようにしてノートを取り返すと机の上に置き、タオルドライを再開した。箒の髪は長い上に量が多いから、乾かすのが大変そうだ。

髪を乾かす間は他にやることもないだろうし、セシリアとの間に生まれた疑問を口にした。

 

「なあ箒」

「なんだ」

「最近放課後いないけど、どこに行ってるんだ?」

「一夏には関係ないだろう」

 

返す言葉もございません。

その時、コンコンコンとドアがノックされた。入学式後数日ぐらいはよくクラスメイトや他女子が訪ねてきてくれたけど、それからもう三週間になる。俺の珍しさによる人気はなくなったってわけだ。

 

「はーい」

「いい。用があるのは私だ」

 

俺が出ようとすると、箒がそれを押しのけて出た。

ドアが開いた向こうから聞こえてきたのは、独特な硬い声。ブルックスさんだ。

 

「時間外は私の趣味じゃないけど」

「いや。こちらから頼んだのだ。……だが、今シャワーから出たばかりでな。髪を乾かしたいから、部屋の中で待っていてくれ。茶ぐらいなら一夏が出す」

「そうか、千冬さんに絶賛される腕は是非飲んでみたいな。待たせてもらおう」

 

そんな会話がなされて、ブルックスさんが部屋へと入ってくる。他の女子のように色々とラフなルームウェアではなく、むしろスポーティーなジャージスタイルなのが意外だ。いやあまり肌を見せるタイプには見えないんだが、もっと可愛らしいものを着てると思ってたから。

 

「一夏、すまないが茶を出してもらえないだろうか」

「お、おう。ブルックスさん、緑茶は飲めるか?」

「飲んだことがないからわからない」

「じゃあ飲んでみるか?」

「そうしよう」

 

部屋に備え付けの勉強机の椅子に腰かけたブルックスさんの背筋はすっと伸びていて、凛々しさを感じる。愛らしい見た目や小柄な体躯とのギャップがすごい。

淹れ終えた緑茶をブルックスさんに渡すと、ふうふうと息を吹きかけながらちびちびと飲んでいた。こんなところは容姿に似合っていて、なんだか不思議な人だ。

 

「あのさ、ブルックスさん。ここ最近、放課後になると箒がすぐにいなくなるんだけど、なんでか知ってるか?」

「篠ノ之が言わないのなら私が言う必要もないだろう。それよりもクラス代表、気張って練習しておけよ。5月の中旬にはクラス対抗戦がある。あれは総当たりだが、お前には優勝してもらう。一敗も許されない」

 

クラス対抗戦かー。そういえば出場するのはクラス代表だったな。

あれ総当たりなのか。4クラスだからトーナメント形式だとばかり思ってた。

 

「でも、確かクラス代表が専用機持ちなのってうちだけだろ?」

「お前は訓練機に乗った私に負けた癖に偉そうに言うな」

 

ごもっともです。

 

「でもブルックスさんは国家代表だから……」

「お前がオルコットに迫ることができたのは、オルコットの機体性能が芳しくなかったのと、近接戦闘の訓練が不足していたからだ。訓練機でもお前に勝てる代表候補生なんてざらだ」

 

確かに……セシリアも、BT試験機第一号だから、機体本体がいまいち世代遅れなのだと嘆いていたし、俺がセシリアに近付くことができた時は大体勝てている。

 

「お前の実力ではまだ100%勝てるとは言えない。優勝賞品のためにも絶対勝て」

「優勝賞品? 一体何が……」

「すまない、待たせたな。それでは移動するとしよう」

 

髪を乾かし終えて洗面所から出てきた箒が、ブルックスさんを連れて部屋を出て行ってしまった。……ブルックスさん、その優勝賞品ってなんなんだ、一体。




今回ちょっと長かったですね。区切りがつきませんでした。
第一章「アイリーン・ブルックス」はあと5話ぐらいで終わるでしょうか。予定は未定ですが。

次は3月2日ぐらいに更新できればいいなーという願望。
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