「これで本当にお別れだ。ヨシュア。お前は守る為に生き抜け。」
銀色の髪の青年レーヴェは黒髪の少年ヨシュアに別れを告げる。
「うん、分かったよ。レーヴェ。僕はエステルやレン、大切な人達をこれからも守る為生きていく。」
ヨシュアは寂しげにしながらも力強く返事をする。そこには守り続けてきた弟の姿はなく、一人の男としての姿があった。
レーヴェはそのいつの間にか成長したヨシュアを嬉しそうに見つめ、
「カリン…今からそっちに行くぞ。」
そう呟くと消えていった。
「…う…ん…」
レーヴェが目を覚ますとそこは見渡すかぎり闇が広がる世界だった。
「何も見えんな。ここが死後の世界というやつか。カリンに会えればと思ったが甘かったか。」
そこにはレーヴェ以外に何もなく、その光景はまるで世界に一人だけ孤立している様に思わせられた。
「…まぁ俺にはお似合いの世界か。」
レーヴェは苦笑いしながらそう口にするのだった。体を横に倒し、目を瞑る。このまま朽ちていくのが運命というなら従おう。だがもしも、もしも叶うなら
「君の声を聴きたかったよ…カリン」
『…レー……ェ…』
その時、何かの音を耳がとらえる。
「何だ?今何か聞こえたような気がしたが…」
レーヴェは体を起こし、周りを見渡す。すると先ほどは闇だけが広がっていた場所に淡い光が見えた。
「あれは?」
レーヴェが疑問に思い、光に見つめる。すると、
『…レー…ヴェ』
何処か懐かしい声が光から聞こえた。
「っう!」
その声を聞いた瞬間、レーヴェは無意識に光に向かって走りだした。まさかあの声は?光は近付くにつれ徐々に人の形になり、見覚えのある黒髪の女性に変わっていく。
「はぁ、はぁ、カリン!!」
堪らずレーヴェは声を出し、最愛の人、カリンの目の前に立った。
『レーヴェ、会いたかった。迎えにきたの。』
カリンは優しく微笑みを浮かべる。
レーヴェも笑みを浮かべ、
「俺も会いたかった。君に謝りたいこと、伝えたいことが沢山あるんだ。」
『ふふっ。私も。でも…今はごめんね。時間がないの。』
とカリンは少し寂しげに笑う。その表情を見てレーヴェは疑問に思い、尋ねる。
「時間?一緒にどこか行くのか?」
カリンは少し首を横に振り
『ううん。行くのはレーヴェだけ。あの子達、ヨシュア達がいる世界に行って欲しいの』
「な!?カリン、俺はもう死んでいる。それは無理だ。」
レーヴェは驚きながらカリンに返事をする。しかし、
カリンは真剣な表情で訴える。
『まだ、間に合うの。輝く環が完全に消えてない今なら貴方が願うことで生き返ることが出来る!だから行って。まだ貴方にしか出来ないこと、やり残していることがあるでしょう!?』
レーヴェは辛そうに表情を歪め、
「だが…それでも俺はお前と一緒に。っ!?」
言い切る前にカリンから抱きしめられる。
『大丈夫。私は此処で待っているから。心配しないで。ヨシュア達をお願いね。』
笑顔を見せるカリン。
その笑顔を見て自分には、選択肢がないことを悟るレーヴェ。苦笑しながらカリンに告げる。
「まったく君は本当に強いな。分かった。もう少しだけ待っていてくれ。全て片付けたら必ず会いにくる。」
『うん!楽しみにしてる。』
カリンは嬉しそうに微笑む。そして、レーヴェに伝える。
『じゃあレーヴェ、強く生きたいと願って。そしたら行ける筈だから。』
レーヴェは頷き、残してきたヨシュアやレン達の顔を思い浮かべながら願う。
「俺にはまだ守りたいものがある!だから、頼む。俺を生き返らせてくれ!!」
「!!」
レーヴェの体が光に包まれ、薄く消え始めた。
『成功ね。良かった。』
声が聞こえ、振り向くとカリンが安心した様にこちらを見ていた。しかし、その瞳に寂しそうな色を見たレーヴェは大きな声で最後に叫ぶ。
「カリン!!愛してる!!!」
カリンは驚いた顔をした後、ほとんど消えかけているレーヴェに顔を赤らめながら返事をする。
『私も愛しています!』
レーヴェはそれを見て笑顔を浮かべ、完全にこの世界から消えた。
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