剣帝の軌跡   作:くろけん

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第9話 人喰い虎と剣帝の共闘

 

 東クロスベル街道、橋近くにレーヴェとシャーリィは来ていた。彼らの視線の先には今回、討伐する手配魔獣を見ることができた。

シャーリィは笑みを浮かべ、レーヴェに尋ねる。

 

「ねぇねぇ。あの魔獣ってどんな奴?」

 

「ゴールドスタチュー。錬金術で作られたと言われる邪悪な像。動きは遅いが、防御が非常に硬く、通常は雷を使った遠距離攻撃をしてくる。邪雷撃といった範囲攻撃もしてくるらしいな。」

 

「へぇ~。少しは歯ごたえがありそうかな♪」

 

テスタ=ロッタを片手で振り、やる気を見せるシャーリィ。そんなシャーリィを見ながらレーヴェは念の為確認する。

 

「シャーリィ。本当に戦うのか?お前は遊撃士ではない。何の報酬も貰えないぞ。」

 

「いいの、いいの♪暴れればそれでいいよ。それより6体いるから半分ずつね。合図はそっちに任せるから。」

 

まったくこちらを見ずに、答えるシャーリィに溜め息をつくレーヴェ。

 

(まるで餌に飛び付く前の獣の様だ。やはり、こっちが奴の本性か。気を付けていないと、こちらにも飛び掛かって来るかも知れんな。)

 

レーヴェは気を引き締めながら、剣を構えた。

 

「行くぞ!」

 

それを合図に、二人は魔獣に飛び掛かっていく。

まずはシャーリィが魔獣達に銃口を向け、ライフルを連射する。

 

「やあああ!」

 

ババババババ!!

 

 

 

魔獣達は突然の襲撃に混乱し、もろに銃弾を受ける。しかし、レーヴェの情報通り防御が硬い様で特にダメージは受けてない様子を見せる。魔獣達は反撃するように雷撃を放つ。

 

複数の青い雷がシャーリィに向かう。だがシャーリィは身軽に跳躍し、それを避け、懐に入りこむ。

 

「あははは!サクッと行こうかな?」

 

『ブラットストーム』

 

赤黒い闘気を纏ったシャーリィが魔獣達の間を駆け抜けながら斬りつけていく。強烈な斬撃に流石の魔獣も悲鳴を上げる。しかし、まだまだシャーリィの動きは止まらない。テスタ=ロッタのチェーンソーが唸りをあげ、また一体、また一体と命が刈られていく。

 

「きゃははは。もっと楽しませてよ!」

 

そこには、己が欲求のまま殺戮を楽しむ一人の赤い悪魔が存在していた。

 

一方、レーヴェは静かに魔獣と対峙していた。

構えたまま、動かないレーヴェに待ちきれなかった魔獣達は雷撃を放つ。雷撃がレーヴェを襲う。

 

『八葉一刀流ニの型、《疾風》』

 

魔獣達の目の前からレーヴェは消え、雷撃は地面に直撃する。そして、魔獣達は高速に動くレーヴェに斬り刻まれ、硬い筈の魔獣達の体がみるみるうちに傷付いていった。

 

レーヴェの動きが止まると、本能的に死を感じた魔獣達は邪雷撃を放つ。先程の雷より強力な雷が広範囲に振り注ぐ。そこに逃げ場はなく、いくつもの雷がレーヴェの体に直撃する。魔獣達は自分達の攻撃を受けたレーヴェに追い討ちをかけようとする。

 

しかし、魔獣達は困惑する。それは雷を受けたレーヴェの体が目の前で薄く透明になり、消えていったからだ。

動きを止めた彼らの後ろでその声が聞こえた。

 

「悪いが、それは分身だ。」

 

振り返った魔獣達が見たのはアーツを詠唱するレーヴェの姿。詠唱を止めようとする魔獣達。だが、それは既に遅かった。

 

『シルバーソーン』

 

白銀の剣が魔獣達を囲み、その下に魔方陣が現れる。そして、赤い光の柱が立ち上ぼった。赤い光の柱は魔獣達を呑みこみ消滅させるのだった。

 

「ふぅ。」

 

無事に魔獣達を倒したレーヴェは構えを解く。

 

(遠距離攻撃の雷撃は少し面倒だったが、動きが遅すぎる。俺の相手ではなかったな。しかし、八葉一刀流の技はやはり使える。これからも使わせてもらうか。…………さて、シャーリィの方も終わったようだな。)

 

レーヴェはシャーリィの方に目線を向ける。

そこには、チェーンソーを振り払い、最後の一体を斬り裂くシャーリィがいた。

 

「あーあ、終わっちゃった。もう少し遊びたかったなー。あ、そっちも終わったみたいだね♪」

 

「ああ。依頼は達成だ。帰るぞ。」

 

レーヴェはそう言うと背中を翻し、その場から離れていく。

 

「わわ。ちょっと待ってよ。シャーリィも行くよ!」

 

慌ててシャーリィもそれに続こうとする。しかしその時、彼女は視界の隅に見たことがない蒼い花を見つける。気になったシャーリィは走り、レーヴェを追い抜くと花の咲く場所にたどり着く。

 

「おい!何処に行く?」

 

「レオン待って!!何か見つけた!見て見て!」

 

彼女の呼び掛けにレーヴェは帰る足を止め、シャーリィの元に歩いていく。シャーリィは蒼い花の前でしゃがみこみ、じっとその花を見ていた。

 

「……その花は?」

 

「…………わかんない。あたしも初めて見たもん。」

 

その花はただ蒼いだけではなかった。その花を中心にぼんやりと蒼く光っているのだ。

 

(…俺もこんな花は見たことがない。クロスベルで咲く花なのか?しかし…この花。嫌な感じがする。触れるのは危険か…)

 

レーヴェがそう考えていると、

 

「あ、そうだ!これ綺麗だし、パパにプレゼントしよう!」

 

突然シャーリィはそう言って、蒼い花に手を伸ばす。

シャーリィの行動に驚き、レーヴェは止めようとする。

 

「待て!シャーリィ!触るな!!」

 

「へ?」

 

一歩遅かった。シャーリィの手が蒼い花に触れる。

その瞬間、蒼い光が溢れ、レーヴェ達の空間が歪んだ。気が付くとそこは紅い花が咲く森へと場所が移動していた。そして----奴はいた。

 

 

 

それは巨大な獅子だった。しかし、只の獅子ではない。紫の鬣に、深紅の体毛。背中に漆黒の翼があり、尻尾は大蛇。そして、目立つのは黄金に輝く巨大な牙と爪。この世の生物ではない姿。それが今、レーヴェ達の目と鼻の先にいるのだ。

 

「……何だ…貴様は?」

 

とてつもないプレッシャーにレーヴェは、無意識に剣を構えながら、目の前の存在に尋ねる。すると、頭の中に直接声が響く。

 

--我ワ--幻獣ノ--王-“ヴァーミリオン”--ナリ

 

「「!!」」

 

「何これ?頭に直接声が聞こえてくる!こいつが話してるの?」

 

シャーリィは突然の声に頭を抑え、驚く。

レーヴェも内心は驚くも、冷静にヴァーミリオンを見据える。

 

「幻獣の王…ヴァーミリオン。一体何しに現れた?」

 

また頭に声が響く。

 

--人ノ--子ヨ--我ニ-力-ヲミセテ-ミロ--

 

その声が聞こえ終わった瞬間、ヴァーミリオンが咆哮を上げる。

 

ガァァアアアア!!!

 

「っ!?下がれ!!」

 

レーヴェとシャーリィはヴァーミリオンから距離をとる為、後ろに下がる。そして、二人はそのまま戦闘態勢に入る。

シャーリィは今までにない威圧感に、額に汗をかくが戦闘狂の笑みを浮かべる。

 

「あはは!はははは!手応えがない魔獣で終わるかと思ったけど、何か楽しくなってきたー!!」

 

レーヴェは鋭い目でヴァーミリオンを睨み、魔剣ケルンバイター強く握った。

 

「どうやら戦うしか無いようだな。…いいだろう。剣帝の力、とくと味わうがいい!」

 

ガァアアア!!

 

最初に動いたのは、ヴァーミリオン。

 

《エアライド》

 

あの巨体から信じられない速さで突進してくる。

 

「あぶな!?」

 

「くっ!」

 

レーヴェ達は直感に従い、横に飛び、ギリギリ攻撃を避ける。ヴァーミリオンの一撃はレーヴェ達の後ろにあった木々を粉々にしていく。その光景を見れば、その一撃を受ける事=死に繋がることが容易に伝わる。

 

シャーリィは攻撃の隙を与えないよう、ヴァーミリオンにライフルを連射する。

 

「らああああ!」

 

バババババババババ!

 

だが、まるで効いていないかのようにヴァーミリオンは近付いてくる。そして、巨大な爪が振り被り、シャーリィに降ろそうとし、

 

「させん。斬!」

 

『洸破斬』

 

 

レーヴェの飛ぶ斬撃がヴァーミリオンの顔に当たり、その動きを止める。シャーリィはその隙を見逃さず、懐に入り、

 

「ふふ。簡単に壊れないでよね!!」

 

『ブラッティクロス』

 

至近距離での連射からの強烈な斬撃がヴァーミリオンの腕に直撃する。今度は効いたようで、その腕から血が流れる。傷を付けられた事に怒りを覚えたのか、ヴァーミリオンは尻尾の大蛇を乱暴に振り回す。

 

「うわ!?」

 

近づき過ぎていたシャーリィはなんとか避けようとするも、少しだけ体に掠り吹き飛ばされ、木に激突する。

 

「がは!!」

 

シャーリィは背中の衝撃に、肺から空気が抜け、すぐには動けない。大蛇の口がシャーリィの方向に開く。

 

(やばい、何かくる!?)

 

《ワンダーブレス》

 

大蛇の口から紫色のブレスが放たれた。

ブレスがシャーリィにかかる寸前、金剛石の盾がそれを防ぐ。

 

『アダマスシールド』

 

レーヴェがギリギリのタイミングで詠唱を間に合わせたのだ。レーヴェはシャーリィが攻撃されないよう、ヴァーミリオンに急接近し、闘気を纏った斬撃をお見舞いする。

 

「喰らうがいい。」

 

『破砕剣』

 

強力な衝撃がヴァーミリオンの体を後ろに下がらせた。

 

グルルル!

 

レーヴェを警戒するヴァーミリオン。

様子を伺い、攻めて来ない。

レーヴェは手数を増やし、こちらから攻めることを決める。

 

「そちらが来ないなら、こちらから攻めさせてもらう。」

 

『分身』

 

分身が一体増え、左右から二人のレーヴェがヴァーミリオンに斬りかかる。ヴァーミリオンは左の分身を狙い爪を縦に振るう。分身のレーヴェは剣を使い、爪を上手くずらし、腕を斬りつける。

 

ヴァーミリオンは攻撃されながらも、今度は右の本体のレーヴェにも爪を横に振るう。

 

レーヴェは分身と同じように剣で受け流す構えをする。

しかし、攻撃する爪が発光しているのに気付き、紙一重で避ける。

 

《バニッシュエッジ》

 

レーヴェが避けた爪を分身が剣で受けた瞬間、分身は何処かに転移するように消えてしまった。

 

(チっ。厄介な攻撃を。迂闊に受け流すことも出来ないな。ならば!)

 

レーヴェはバックステップで距離をとり、アーツを詠唱する。そうはさせまいとヴァーミリオンが距離を詰めようと走る。しかし、

 

「あたしの事忘れたらダメだよ♪」

 

いつの間にか回復したシャーリィがヴァーミリオンの頭に飛び乗り、零距離状態で銃口を合わせる。

 

「あははは!燃えちゃえ!!」

 

『フレイムチャージ』

 

ヴァーミリオンの顔に火炎放射器の炎が投射された。炎が燃え広がると同時にシャーリィは飛び降り離れる。

 

グアアアアアアア!!

 

顔が燃えているヴァーミリオンは苦しむ声を上げながら、炎を消す為、頭を地面に擦り付けている。

そこにレーヴェのアーツが追い討ちを掛けるように発動する。

 

『アヴァロンゲート』

 

幻属性最上位アーツの一つ。理想郷の門が開け、その中から幾重もの聖槍が飛び出し、ヴァーミリオンの体に降り注いでいく。

 

ガァアアアァァ!?

 

ヴァーミリオンは堪らず、倒れる。その体はいくつもの穴が開き、血が吹き出している。

 

(ククク。我ガ人間ニココマデ…追イ詰メラレルトハ。デハ、最後ノ悪足掻キヲサセテ…モラオウカ。)

 

ヴァーミリオンは最後の力を振り絞り、立ち上がると、アーツの詠唱を始める。

発動しようとしているのは『ルシフェンウィング』。

時属性最高位アーツ。魔神ルシフェルを召喚し、相手を滅ぼす恐ろしいものだ。発動すればレーヴェ達は只ですまないだろう。

 

レーヴェは相手のアーツを止める為、戦技を使う。

 

「遅い!」

 

『零ストーム』

 

剣先から竜巻が発生し、詠唱するヴァーミリオンに直撃する。

 

「馬鹿な!?」

 

詠唱は止まらない。相手は自分の体が傷つこうと構わず、詠唱しているのだ。その様子にレーヴェ達はこれを発動させたら自分達が危険ということが分かり、止めを指す為、己が最高のクラフトを放つ。

 

「テスタ=ロッタ、行こうか!!」

 

「受けてみよ…《剣帝》の一撃を……」

 

『デス・パレード』『鬼炎斬』

 

銃撃、火炎放射、斬撃。全てを組み合わせたシャーリィの必殺、レーヴェの炎の一撃が炸裂する。

 

グググゥウウ!

 

だが、ヴァーミリオンには止めには後一歩足りない。

あと少しでアーツが発動してしまう。

 

(耐エタ…我ノ勝チ--)

 

しかし、、、ヴァーミリオンが勝利を確信した瞬間、彼は今まで感じたことがない冷気を感じた。

 

パキパキ。パキパキパキ。

 

ヴァーミリオンの視線の先に、全てを凍てつかせる剣帝が剣を構えていた。

 

 

「燃え盛る業火であろうと砕き散らすのみ····ハァァァ····滅!!!」

 

 

【絶技・冥皇剣】

 

剣から溢れ出る冷気が触れるもの全てを凍らせ、そしてヴァーミリオンの命を砕き散らした。

 

ーー見事ダーーー人間ーーーーー

 

 

また気が付くと、いつの間にか元の東クロスベル街道に戻ってきていた。

 

(やっと戻ってきた。)

 

レーヴェとシャーリィはその事に安心すると、今まで溜めていた疲れを解放するように倒れ、気絶するのだった。

 

その側には蒼い花が労うように揺らいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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