sideロイド バニングス
ロイドはまるで夢でも見ているよかのような気分でレオンハルトと甲冑をきた人物、おそらく
しかし、たった今、目の前で行われた戦闘は今までのどの戦いとも違う、別次元の所にあった。ロイドの目に写ったのは、雷の雨が地面を砕く恐ろしい天災と、その雷と雷の間に一瞬だけ表れるレオンハルトと《鋼》の姿のみ。あの中で戦闘が行われていることを教えてくれるのは、合間なく聞こえてくる金属が擦れる音だけだった。
これだけでも十分理解を超えているのだが、これで終わりではなかった。今度は、雷の雨が止んだかと思えば《鋼》から黄金の闘気が立ち上ぼった。そして、突然巨大な竜巻が発生し二人を呑み込んだのだ。一体、今何が起きた?これは本当に同じ人間同士の戦いか?俺が見ているのは現実なのか?現実離れした数々の現象に混乱するロイド。
だが、彼は目を開けておくのも辛い程の吹き荒れる暴風に、髪を乱されながらも竜巻から目を離さない。それは何故か。何が起きているのかは分からない。けれど最後まで見届けないといけない。そんな気がしたから。
そして、、、竜巻が消え失せた。その中心には、立っている勝者と、倒れている敗者があった。ロイドはその二人の姿を見て、
「……終わった。」
勝負が終わったこと。ただそれだけを理解した。ロイドの言葉に反応するように隣にいたランディが口を開く。
「…ああ、そうみてぇだな。」
ロイドは、聞こえてきたランディのいつもとは違う冷たい声に、はっと隣を見る。そこには険しい表情で《鋼》を睨み付けるランディの姿があった。特務支援課で見せるお気楽で明るい兄貴分の打って変わった様子に戸惑ったロイドは、ランディのことが心配になる。
「ランディ…大丈夫か?」
ロイドの自身を心配する様子に、自分がいつもとは違う顔をしていることに気付いたランディは、引きつった笑みを浮かべる。
「すまねぇ、ロイド。俺は大丈夫だ。…たださっきの戦闘を見て"血が騒いだ"自分に嫌気がさしただけだ。気にすんな。」
「え?それってどういう―――」
ランディの言葉に何か引っ掛かりを覚えたロイドは改めて尋ねようとするが、ランディにその続きは遮られてしまう。
「ロイド。どうやら
「――ええ、話しの途中にすみませんが、少々お時間を下さい。」
口を止めたロイドは、目線を元の場所へ戻す。ロイドの視界に傷付いたレオンハルトを大事そうに抱える《鋼》の姿が写った。
「あ…!」
ロイドは驚く。それは、敵の筈の《鋼》がレオンハルトを抱えていたことに驚いたのではない。《鋼》が着けていた仮面が割れ、その素顔が明らかになっていたことに驚いていたのだ。金色に輝くストレートに下ろされた長髪。そして、その素顔はまるで神話に出てくる聖女そのままと言っていいと思う程の美しい顔だった。その青い眼差しを受け止めたロイド達は思わず緊張する。緊張するロイド達の耳に澄んだ女性の声が聞こえてくる。
「貴方達の中に回復術に秀た方はいますか?」
「わ、私が得意です!」
《鋼》から発せられる王族のような威厳と、高貴さに当てられ、固まっていたエリィが敵である《鋼》の言葉に思わず手を挙げ、答える。
「貴女ですね。」
鋼はエリィに目を向け頷くと、一瞬でエリィ
の目の前に移動する。
「「「な!?」」」
突然現れた《鋼》にロイド達は目を見開き、武器を構えそうになるが、彼女が武器を持っていないことに気付き、それぞれ動きを止める。《鋼》は、そんな周りの反応は気にせずエリィを見つめる。そして、
「レーヴェの傷を治して下さいませんか?」
《鋼》がエリィへ丁寧に頭を下げて御願いをする。エリィは、敵にまさか頭を下げられるとは思っていなかったので一瞬混乱するが、レオンハルトは遊撃士達の大事な仲間である。断る理由がないと思い、慌てて了承する。
「わ、分かりました!治しますから頭を上げて下さい。」
「感謝します。」
《鋼》は笑顔を見せてお礼を告げると、ゆっくりレーヴェをエリィの前に降ろす。静かに眠るその顔を慈愛を宿した眼で見つめ、一度だけ撫でる。そして彼女は名残惜しむ様にレーヴェから離れていった。エリィは、そんな《鋼》を見ていて何故か見たことがある気がしたが、今はそれよりも怪我人の治療を優先しないといけない。その疑問を胸の中に仕舞い、レオンハルトの治療を始める。
様子を見ていたロイドは《鋼》が他の二人の所へ戻った所で、自分達がやるべきことをする為、気持ちを切り替えて話し掛ける。
「俺達は、クロスベル警察『特務支援課』の者だ。結社
ロイドの言葉に白衣を着た中年の男性が首を捻った。
「身分の証明…?彼は何を言ってるんだい?」
その疑問に隣にいた赤い服を着た少年。以前ミシュラムで会った執行者No.0道化師カンパネルラが答える。
「う~ん、警察としての手続きを踏んでいるんじゃないの?ウフフ、ボクたち相手に身分証明って悪い冗談にしか思えないけど。」
カンパネルラは面白そうに笑う。それに対し、《鋼》と思われる女性の方は申し訳ない様に表情になって口を開く。
「真っ直ぐな若者ですね。要求に応えられないのは心苦しくはありますが……」
質問された三人ともロイドが求める対応が出来ない、またはする気がない様子を見せる。これを見たランディは溜め息をつきながら、ロイドに告げる。
「駄目だ……ロイド。やっぱり常識が通用する連中じゃなさそうだぜ。」
これには今まで黙っていた銀も同意する。
「その通りだ。『教団』の連中あたりと同じだと考えるべきだろう。」
銀の言葉にロイドは教団、DG教団と呼ばれた教団の信者達がマトモではなかったことを思い出す。結社も彼らと同じなのであろうか。ロイドがそう思っていると、白衣の男性が少し顔をしかめて話し始める。
「ふむ、彼らと一緒にされるのは流石に面白くないねぇ。フフ…いいだろう。自己紹介くらいはしようじゃないか。F・ノバルティスだ。身喰らう蛇の第六柱にして、『十三工房』を任されている。どうか気軽に"博士"とでも呼んでくれたまえ。」
博士の自己紹介が終わると、ティオが何かに気付いた様に顔を上げる。
「なるほど。貴方の仕業だったんですね。オルキスタワーのハッキングに使われた不可解なコードを開発したのは。」
博士は目を見開きながらティオを見る。
「ほお……!?あのコードが分かるのかね!?あれは『
「博士、博士。話ずれてるよ。」
「そういえば教団の被験者でエブスタインの連中が拾った娘というのがいたか……どうだね君!?その才能を『結社』のために活かすつもりはないかね!?」
博士は何故か必死な様子で、ティオを結社に勧誘する。
それに対しティオは、
「お断りします。」
いつもの無表情で、一切の迷いなくこれを断った。
「ガーン!」
まさか何の迷いなく、あっさりと断られるとは夢にも思わなかった博士は、口を大きく開き、物凄くショックを受けた様子を見せる。まるで子どもの様な反応に特務支援課メンバーは呆れてしまう。
カンパネルラも肩をすくめ、溜め息をつく。
「まったく、レンに逃げられたからといって流石がに必死すぎないかい?」
図星だったようで、博士は額に汗をかいて焦る。
「べ、別にレンの話はここでは関係ないだろう!?」
博士は否定するが、明らかに嘘をついていることがバレバレである。
「――さて、次は私ですか。本当は素顔を晒すつもりはありませんでしたが。フフ…そこの彼に割られてしまったので仕方ありませんね。」
博士の話が終わると今度は澄んだ声が聞こえた。『鋼』と思われる女性が聖女のような微笑みを見せながら前に出てくる。敵であると分かっていながらもその微笑みに目を奪われるロイド達。しかし、
「我が名はアリアンロード。身喰らう蛇第七柱にして『鋼』の名を冠されています。どうか見知りおきを。」
名乗り上げたと同時に発せられる闘気にロイド達は体が固まる。
「っ!」
先程のレーヴェとの戦闘で見せられた圧倒的な力。そして間近に感じるこの闘気に誰も口を開くことが出来ない……一人を除いて。
「――ふん。気に喰わんな。試しているつもりか、結社最強の使い手。…確かに先程の戦闘で人の域を超えた力を見せられ、身震いする程の闘気を浴びせられれば畏怖する者もいよう……だがこの銀はそう甘くはないぞ。実際に試してみるか?」
「………………。」
唯一銀だけは、アリアンロードの闘気に負けじと闘気を出し、武器を構え挑発する。銀の圧倒的な力に屈しないその姿を見たロイド達は、これを切っ掛けに畏怖しかけていた気持ちを持ち直し始める。最初に持ち直して口を開いたのはリーダーのロイド。
「――ちょっと待ってくれ、銀。特務支援課として彼らにはまだ聞きたいことがある。もう少し時間をくれないか?」
「持ち直したか………いいだろう。だが少しだけだ。その後はこちらの好きにさせてもらう。」
「ありがとう。そちらもいくつか質問に答えてもらっていいか?」
アリアンロードが代表して頷く。
「少しだけならいいでしょう。此処までたどり着いた褒美です。」
「では、クロスベル警察を代表して質問させていただく。身喰らう蛇。このクロスベルで貴方達はーーー」
こうしてロイドはアリアンロード達から結社のクロスベルでの目的と他の事件の関与について聞いた。しかし分かったことは彼らが何かの計画の進行と七耀脈の活性化、"約束の日"という日のタイミングを確認しにきたことだけだった。
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「そろそろいいでしょう。」
アリアンロードはロイド達の質問を切り上げる為そう告げると、ロイド達に背中を向けて離れていく。
………その背中に迫る影があった。
side銀
『鋼の聖女』が背中を向けた隙を見逃ず、私は飛び出す。黙ってロイド達に付き合っていたのはこの時を待っていたためだ。
「言葉は尽くした。ならここからは武をもって口を割らせよう!」
クナイを持った銀がアリアンロードに斬りかかる。
「な!?銀!」
まさかこのタイミングで仕掛けると誰も思っていなかった為、銀の動きは誰にも止められない。アリアンロードの背中に銀の不意討ちが直撃する……しかし、
「――甘い。」
アリアンロードの姿が消えた。銀のクナイは空をきってしまう。銀は不意討ちが届かなかったことに顔を歪めながらも、直感に従い後ろを振り返る。そこにはいつの間にか槍を構えるアリアンロードがいた。
「…………………。」
(来る!!)
超高速の連続突きが銀に放たれる。
「くっ!?」
辛うじで見える槍をギリギリに弾く。その勢いを殺しきれず後ろへ飛ばされた銀だが、アリアンロードの攻撃を凌ぎきった。これを見ていたカンパネルラと博士は感心する。
「ほう。『鋼の聖女』の槍を凌げる人間がいるとはねぇ。」
「ウフフ♪流石は東方人街の魔人と呼ばれるだけはあるみたいだね?」
アリアンロードも銀を見つめ、評価する。
「なかなかの反応です。……ですが、"先代"と比べるといまだ迷いがある様ですね。」
(………先代……お父さんのこと?)
「……なに?………」
アリアンロードの言葉に銀が怪訝な声を出したその時、
" パキ "
乾いた音が聞こえるのと一緒に、銀の仮面が割れて地面に落ちた。隠され続けていた銀の素顔が明らかになる。
「………………。」
(…どうして…仮面が…もしかして凌ぎきれてなかった?…)
茫然としている銀に視線が集まる。ロイド達はその見知った顔に驚きを隠せない。
「……っ!?……」
「……え……。」
「……んな!?」
「……リーシャ……さん?」
そこには、黒髪の黒目の女性、リーシャ・マオがいた。予想外の銀の正体にロイド達は何て声を掛ければいいかが分からない。そこへカンパネルラが笑いながらリーシャに声を掛ける。
「アハハ!これは傑作だ!『銀』の正体があのアルカンシェル準ヒロイン、リーシャ・マオなんてね!フフ、さぞ面白いドラマがあるんじゃない?」
「……くっ……。」
カンパネルラの言葉に顔を険しくするリーシャ。それを見たカンパネルラは面白くなると思い、更に言葉を続けようとする。
「クフフ、ねぇねぇ。詳しく教えてーーー」
だがそれは途中で止められることになる。
「ーーー黙れ…カンパネルラ。それ以上口にすると、そのよく動く舌とお別れすることになるぞ。」
地面から立ち上がったレーヴェの言葉によって。