剣帝の軌跡   作:くろけん

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第1話 故郷ハーメル

 

 目を開けると緑に染まる大地と眩しい空、そして時が止まっているかのように変わらない故郷が見えた。

 

(相変わらずこのハーメルはあの時から変わっていないな。)

 

しばらく黙ってその光景を見つめていたレーヴェは一度ため息をつくと自分の体を確認する。髪は銀色、服は象牙色のコートを着ており変化はない。自分が死ぬ原因となったワイスマンが負わせた傷も消えていた。

 

(特に変わったところはないか。だが、体が前よりも軽い気がするが気のせいか?)

 

レーヴェは少し気になったが大した問題ではないと思い、いつも自分が行っていたカリンが眠る場所に向かう。

 

(カリンに無事着いたことを報告してから行かないとな。ん?あれは)

 

レーヴェがカリンの墓地に着くとそこには見慣れない墓が隣にあった。その墓にはレオンハルトの名前が書かれていた。

 

「なるほど、俺の墓か。ヨシュアが気を利かせて作ってくれたものだろうな。」

 

レーヴェは弟のようなヨシュアがわざわざカリンの隣に作ってくれたことが嬉しく、思わず笑みを浮かべる。

ふと自分の墓の後ろに何かあるのに気付き目を向ける。

 

「!!」

 

そこには盟主から授かった愛剣があった。

 

「魔剣ケルンバイダー…此処に埋められていたか。」

 

レーヴェは最後のワイスマンとの戦いを思い出す。

 

あの時は………

 

空の至宝の力によるワイスマンの「絶対障壁」によって窮地に追い込まれたエステル達。それを救う為に盟主から授かった「外の理」で出来た剣、魔剣ケルンバイターで「絶対障壁」を切り裂き、エステル達に活路を開いた。

 

しかし、直後にワイスマンに反撃された一撃が致命傷となった。

 

(そして魔剣ケルンバイダーもその時の衝撃で折れた筈だ。)

 

レーヴェは地面に刺さっている愛剣に手を伸ばし掴むと、一気に引き抜く。

 

「な!?折れていない…」

 

そこには傷ひとつない黄金の刀身があった。

 

(あり得ん、まさか再生したのか?外の理の物は本当に常識が通じないな。)

 

愛剣のまさかの復活に呆れながらも笑みを浮かべる。

 

「また力を貸してくれ。」

 

そう言ってレーヴェは愛剣を握った。

 

 

 

カリンに報告したレーヴェは、ハーメルを出て今後のことを考える。

 

「さて、結社の計画ではリベールの次はクロスベルだったな。しかし、何をするかは詳しく分からない。情報が足りんな。」

 

結社の執行者だったレーヴェも計画については詳しくは教えられておらず、そういった情報を持つのは使徒のみであった。

 

(やはり、実際行って確かめるしかないか。そこで俺ができることを探す。)

 

「……だがその前に……出てこい。」

 

先ほどからこちらを探る気配に声を掛ける。すると20人程の男達が出てきてレーヴェを逃がさない様に取り囲む。その中でリーダーらしき赤ひげ男が前に出てくる。

 

「へっ気付いてやがったか!俺らは泣く子も黙る赤ひげ盗賊団だ!命が惜しかったらその高そうな剣と有り金を全部置いていきやがれ!!」

 

赤ひげ男がそういうと同時に周りの盗賊達がナイフや銃をレーヴェに向ける。レーヴェは特に表情を変えずに周りを見渡す。

 

(人数は20人弱、錬度は大したことはないな。結社とも関係はなさそうだ。)

 

レーヴェがそう考えていると、無視されていると思ったのか盗賊達が口々に声を荒げる。

 

「無視してんじぁねえぞ!こら!」

 

「なめてんのか!?」

 

「殺すぞ!!」

 

それを聞いたレーヴェは口を開き、盗賊達に告げる。

 

「剣に目をつけるとは目は良いようだが、お前らごときでは俺には勝てない。今なら見逃してやるから去れ。」

 

それ聞いた盗賊団達の顔が赤く怒りに染まる。

 

「てめえ、状況分かってんのか!この人数で勝てるはずねーだろ!もういい。お前らやっちまうぞ!!」

 

赤ひげの男がそう言うと「おお!!!」と叫んで盗賊達がレーヴェに襲いかかる。

 

「ははは!死にやがれ!!」

 

まずはナイフ持った男3人が、それぞれ人間にとっての致命傷になる場所へ突きを放つ。しかし、

 

「甘い。」

 

レーヴェは余裕の表情でナイフを全て紙一重で避ける。避けられるとは、思っていなかった盗賊達はバランスを崩し、前のめりになる。レーヴェはその隙に盗賊3人の後ろに素早く移動すると、闘気を纏わせた剣を振るった。

 

「ぎゃあ!?」

 

背中に衝撃を受けた3人はそのまま数メートル程吹き飛び気絶する。

 

「なぁ!?」

 

それを見ていた残りの盗賊達は、一瞬で仲間がやられ動揺する。だがそこは数々の修羅場を経験した盗賊団。すぐに接近戦が危険と分かると銃を持つ盗賊10人が接近させないよう乱射する。乾いた銃声が鳴り響き、いくつもの銃弾がレーヴェを襲う。

 

「よく見て当てろよ?」

 

そう言うとレーヴェさらにスピードを上げ、銃弾の合間をぬって接近し、1人、また1人と気絶させていく。

 

盗賊団のリーダーは目の前の現実が信じられなかった。少し前までは、自分たちが勝つという事は当たり前で、いつものように弱者を殺し、金目の物を奪うって酒や女で遊ぶ。そのことしか考えていなかった。

 

だが、今日は違った。大勢いた仲間達が嘘の様にやられていくのだ。

 

たった1人相手に。

 

「し、信じられね-…化物かあいつ。おい!なにボーっとしてやがる!銃が駄目ならアーツだ!アーツ使え!!」

 

リーダーの指示に従い複数の盗賊がアーツを詠唱する。いくら動きが速くても複数のアーツ詠唱を止めるは不可能だ。それにまだレーヴェは銃を持った盗賊を相手をしている。間に合う訳がない。

リーダーは自分の判断に勝利を確信し、笑みを浮かべ、自分も詠唱をする。

 

 

 

銃を持った最後の盗賊を倒したレーヴェ。もう少しでアーツ詠唱が終わる盗賊達を見て構える。

 

「確かにその判断は悪くはない。だが……遅い!」

 

レーヴェは剣を振り抜く。

 

『零ストーム!!』

 

その瞬間、剣先に竜巻が生まれ詠唱中の盗賊達のアーツをキャンセルし、そのまま吹き飛ばした。そして、赤ひげ盗賊団は1人の剣帝によって全滅することになった。

 

 

 

「ふぅ、終わったか」

 

溜め息をつくレーヴェの目の前には、赤ひげ盗賊団全員が気絶していた。

 

(前の俺なら問答無用で殺していたが、甘くなったか。いや俺はもう答えを得た。これでいいんだ。)

 

自分の変化に少し戸惑いながらも悪くないと思うレーヴェ。そして…遂に剣帝が動き始める。

 

「行くか。魔都クロスベルに。」

 

 

 

 

 

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