剣帝の軌跡   作:くろけん

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第6話 剣帝と風の剣聖

 

 アルモニカ村の近くにある古戦場。

そこには向かい合うレーヴェとアリオス。そして、その二人を見守る様に見つめるクロスベルの遊撃士リンとエオリアの姿があった。

青みかかった銀髪の女性のエオリアはレーヴェ達に聞こえない様に小声で相棒のリンに話し掛ける。

 

「ねぇ、リン。何で私達が見てないといけないの?私達は今日は非番よね?私、今日はティオちゃんに会いに行こうと思ってたのよ…私だけ抜けちゃダメ?」

 

エオリアのお願いに、黒髪の女性、リンは首を横に振る。

 

「ダメだ。アリオスさん達の対決を見守り、報告すること。これは私達しかお願い出来ないとミシェルさんが言っていた。それにこれは依頼として出されている。仕事を放棄するつもりなの?」

 

「ぐっ。確かに仕事なら放棄出来ないけど…けど!あ〰こうなるなら早めにティオちゃんに会いに行けば良かった!可愛いもの成分が足りなくて死にそうだわ!」

 

エオリアは頭を抑え、今朝だらだらと過ごしていた過去の自分を呪う。そんなエオリアを見て、リンは溜め息をつく。そして少しでも元気になるように励ます。

 

「それで死ぬことはない。それよりこんな間近でアリオスさんとあの剣帝の対決が見れるんだぞ?最近はあまり手応えのない戦闘ばかりだったし、私達には良い刺激になるぞ。元気をだせ。」

 

嬉しそうに目をキラキラさせてアリオス達を見るリンに、エオリアは呆れた様子をみせる。

 

「う〰。そんな事で元気になる女の子はリン位なものよ。あーも。こうなったら、これが終わり次第、意地でもティオちゃんを抱き締めてやるんだから!」

 

そう言うとエオリアも一緒に二人の対決を見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

始める前にレーヴェは刀に手を添えたアリオスへ対峙しながら尋ねる。

 

「致命傷以外の攻撃ならしてもいいと言うことだが、いいのか?」

 

その言葉にアリオスはエオリア達を見ながら頷く。

 

「問題ない。彼女達の一人エオリアは優秀な治癒術士だ。ある程度の怪我は治せる。だから遠慮せず、本気で掛かってこい。」

 

「なるほど。それなら安心だ。では、始めようか。」

 

レーヴェは魔剣ケルンバイターを構え、アリオスは刀を抜く。

 

見た目はお互いに口は開かず、黙って構えているだけ。

しかし、その二人の体から闘気が溢れていた。

レーヴェは自分と変わらない程の闘気を出すアリオスに自然に笑みを浮かべていく。

 

(A級遊撃士でありながら気迫は既にS級遊撃士のものだな。その剣技。何処まで俺の剣が通用するか試させてもらう!)

 

レーヴェは左足に力を入れると同時に地面を蹴る。その瞬間、レーヴェの体は一気にアリオスへ向けて直進する。そしてその勢いのまま剣を振り降ろす。

 

キン!

 

だがレーヴェの剣はアリオスの刀にあっさりと反らされる。

 

「ふっ。」

 

アリオスは反らした刀を戻す勢いでレーヴェに斬りかかる。レーヴェは自分に迫る刀を間一髪避けると、そのまま下がる。そして構え直し声を掛ける。

 

「あの時より更に剣を極めたようだな?」

 

レーヴェの言葉にアリオスは笑みを浮かべ、答える。

 

「ああ。四年前のレミフェリア公国では世話になった。あの時の様にいくとは思わない事だ。」

 

 

実は四年前レミフェリア公国の大事件での際に、アリオスとレーヴェは一度やり合っていた。そして、レーヴェとの戦闘に時間を使い過ぎ、せっかく追い詰めた黒幕を逃がしてしまっていたのだ。

 

アリオスは八葉一刀流の型を構えた。

 

『二の型《疾風》!』

 

レーヴェの目の前からアリオスが消える。レーヴェは自分の直感に従い、剣を振るう。

 

カキン!!

 

剣から伝わる衝撃に少し態勢が崩れ掛けるも、何とか立て直す。レーヴェは後ろを振り返る。そこにはアリオスの刀を振り切った姿があった。

 

「この技を凌ぐとは、流石は剣帝といったところか。」

 

「以前よりもスピードと力が上がっているな。初見であれば喰らっていただろう。しかし、八葉一刀流と言ったか?やはり素晴らしい剣技だ。」

 

アリオスはその言葉に頷く。

 

「ああ。この流派を教えて下さったユン老師には感謝している。剣技、精神を共に鍛え、極められる流派はそうないだろう。」

 

「そうか。なら俺も試してみるとしよう。」

 

「なに!!」

 

レーヴェは先程、アリオスが見せた八葉一刀流ニの型を構える。アリオスはそれを見て不可能だと思う。

 

(例え剣の才能が高かろうと老師に指導されてもいない者が使える筈がない。八葉一刀流を愚弄するつもりか。)

 

レーヴェの行動に憤りを覚えたアリオスは、こちらもニの型を構える。

 

「八葉一刀流を愚弄したこと後悔するがいい。」

 

二人は同時に動いた。

 

 

『『二の型《疾風》!』』

 

アリオスは高速で動きながら目を見開く。

(馬鹿な!?)彼の目の前では自分と同じ動きをするレーヴェの姿があった。アリオスの刀とレーヴェの剣がぶつかり、お互いを弾きながら二人はすれ違う。

 

アリオスは驚きを隠せず、レーヴェの方に視線を向ける。レーヴェは先程の動きを確認する様に剣を振るっていた。

 

「ふん…もう少し踏み込みを早めた方が良かったか…」

 

(…あの動きは、ほとんど完璧だった。レミフェリア公国で一回、最初の一回。たった二回見ただけで、ここまで再現出来るのか?そんな事が人間に可能なのか?)

 

アリオスはその事実に恐ろしく思う自分を振り払うかの様に再び型を構える。

 

「行くぞ。絶!」

 

『洸破斬』

 

アリオスの体に闘気が溢れ、そのまま刀が横に振り払われる。すると、鋭い横の斬撃がレーヴェに向かう。

レーヴェも対抗する様にクラフトを発動する。

 

「遅い!」

 

『零ストーム』

 

レーヴェの剣から闘気の竜巻が生まれ、アリオスの斬撃とぶつかる。

 

ドガッ!!

 

ぶつかった衝撃で、地面が軽く砕ける。

しかし、防がれる結果を予想していたアリオスは素早くレーヴェに接近していた。そして、上空に飛び上がると刀を振り降ろす。

 

「うおおお!斬!」

 

『大雪斬』

 

重力の重みが乗った斬撃がレーヴェを襲う。

レーヴェはそれを避けず、力には力の剣技で抵抗する。

 

「舐めるな!」

 

『破戒剣』

 

闘気が纏った魔剣が振り払われる。

 

ガッ!!

 

その衝撃にレーヴェは後ろに下がり、アリオスも反対側に飛ばされた。そして、空中で体勢を整えたアリオスは又も目を見開く。そこには、八葉一刀流の構えをしたレーヴェがいた。

 

「確かこうだったな。」

 

『洸破斬』

 

自分が使った洸破斬とほぼ変わらない斬撃がアリオスに迫る。アリオスは刀を縦に構え、そのまま受けて反らした。刀から伝わる衝撃に腕が痺れたアリオスだが、気にせずにレーヴェを睨み付ける。

 

(やはり奴は一度見て受けた剣技を再現出来るか。まだ完全に再現は出来ない様だが、それも時間の問題か。……何て恐ろしい剣の才能だ。これが剣帝レオンハルトの力。)

 

時間が経つ程、自分が不利になると感じたアリオスは一気に勝負を決める為、己の力を高める。

 

「風よ、我が力となれ。」

 

『軽功』

 

アリオスの体が風に包まれる。その様子にレーヴェは警戒する。アリオスは再びニの型を構えて告げる。

 

「これで決めさてもらおう。」

 

レーヴェは先程防いだ技をもう一度使おうとするアリオスに疑問を覚えたが、自分もニの型を構える。

 

「無駄だ。その技はもう見切った。」

 

レーヴェの言葉にアリオスは反応せず集中を高めていく。そして、先程同じように二人が動いた……ように見えたが、先に動いたのはレーヴェだった。

 

(なに!?)

 

レーヴェは驚きながらも技を繰り出した。

 

『二の型《疾風》』

 

しかし……アリオスは笑い、動く。

 

「悪いが、俺が使うのは《疾風》ではない。」

 

 

『ニの型《裏疾風》』

 

 

その瞬間、レーヴェの方が先に動いていたのにも関わらず、その速さを超える一撃がレーヴェの攻撃を弾いた。

 

そして、二撃目が無防備になったレーヴェの背中を切り裂いた。

 

 

 

 

 

辺りは静まり返っていた。アリオスは倒れているレーヴェを見て、構えを解く。

 

(ようやく決まった。正直危なかったが何とかなったな。しかし、抑えるつもりが、かなりの傷を負わせてしまった。それだけ俺も焦っていたということか。急いでエオリアに治療を頼まないとな。)

 

そう思い、アリオスはエオリア達の方に体を向けて声を掛けようとする。その時、アリオスの背中に今まで感じたことがないプレッシャーが感じられた。

アリオスは背中に冷や汗を浮かべ、その原因に視線を向ける。

 

そこには、背中から血を流しながらも関係がないとの様子で剣を構える剣帝が立っていた。

 

(あれ程の傷を負っていながら何故立てる?それにこの気迫。先程とはまったくの別人。これが奴の本当の力なのか?)

 

「その傷でまだ戦うのか?」

 

「無論だ。まだ戦える。」

 

即答するレーヴェにアリオスは、その怯む事のない気高き精神に敬意を覚える。そして、その思いを汲み取り、刀を構える。

両者には既に語る言葉はない。あるのは剣を交えることで伝わる言葉のみ。

 

「うおおお!!」

 

「はあああ!!」

 

二人の剣が重なる。

 

ガキンッ!!

 

その音が最後の戦いの合図となった。

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