灼熱の誓い(凍結中)   作:知恵の欠片

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リンが後々弟分として一緒に過ごす猫との出会いのシーンです。


弟分との誓い(前編)

 母がいなくなってから長い月日が経った。

 

あたいはその傷はもうほとんど癒えていた。

 

しかしそれはあたいのもう一つの大事なものを奪い去っていた。

 

そう、感情である。

 

あたいは以前とても母に甘えていた。甘えすぎていたのだ。

 

そしてそれがきっかけで母を殺してしまったと言ってもいいだろう。

 

野生の身ゆえの厳しさを存分に味わった。

 

二度と繰り返さない為に、あたいは感情というものを取り去ったのだ。

 

 

そう、あのあたいたちが暮らしていた山の木々が落葉するのと同じように、甘えが少しずつ消え、結果として感情がなくなっていたのだ。

 

 

 幸いにも感情などなくても生きていくことはできた。あたいは母から独り立ちを認められるほどの狩りなどの技術に長けていたからだ。

 

今は生まれ育った山を離れ、人間の行き来の少ない森にひっそりと住み、ひたすら、食いつないでいた。

 

そして偶然にも人間があたいの視界に入れば迷わず襲うことにした。流石に仕留めることはできないが、それでも重症を負わせるくらいのことはできた。それが唯一のあたいの生きる糧となっていたのだ。

 

 

 

 そんなころあたいはあいつに出会ったのだ。

 

 

 

 

その日はちょうど雨の日だった。あたいが狩りに行くのも面倒になるかのような雨だった。

 

(とにかく退屈しのぎになるような物はないかな。)

 

なにせこの雨だ。雷が時たま鳴るくらいで何も起こりはしない。

 

(しょうがない、濡れるのは嫌だけど、退屈するよりかはマシかもしれないな。)

 

あたいがちょうど自分のねぐらから出ようとするやいなや、人間の声が聞こえたのだった。

 

(この雨に便乗して奇襲でもかけようか……)

 

あたいは声の方へと駆けていった。

 

「早く捉えろ!あいつは金になるんだ!」

 

どうやら人間は何かを追いかけているようだ。あたいは彼らが追走している方向へと目を向ける。そうすると、とにかく道なき道をかけていく子猫が見えた。

 

(このままだと、あいつもあたいが経験したような恐怖を覚えてしまうかもしれない。)

 

とにかく、人間を追っ払うということを優先するのではなく、その猫を保護することを考えた。

 

 

 そしてあたいはその猫が出てくるであろう位置へと先回りし、待機していた。

 

ガサッ!!

 

「う、うわぁ!!」

 

その猫は目の前に突然出たあたいに驚いたようだ。

 

「おとなしくしてて。」

 

そういうとあたいはその猫の首元を咥えてそのまま木を駆け上った。

 

人間たちがあとから遅れて来るが、見つからない。それもそのはず、やつらはずっと木の根っこあたりを探しているのだから。

 

「くそっ、向こうを探せ!」

 

あたいたちがしばらく見守っていると、やつらはどんどんあたいらから離れていった。

 

「怪我はない?」

 

あたいはこの猫に尋ねた。

 

「うん、ありがとう、お姉ちゃん。」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

あたいは少し動揺してしまった。昔の仲間は年下の子猫が少なかったのもあるけど、大抵は「リンちゃん」と呼ばれることはあったが、お姉ちゃんは初めてだった。あたいに弟や妹がいなかったのも理由としてあるだろう。

 

「どうして君は人間に追いかけられていたの?」

 

あたいは動揺を隠すためにこの猫に質問してみた。

 

「ボクは三毛猫のオスなんだ、だから珍しいからじゃないかってお兄ちゃんが言ってた。」

 

なるほど、この子は一緒に行動していた猫がいるようだ。

 

「じゃあお兄さんはどうしたの?」

 

「お兄ちゃんもボクと同じ三毛猫だったんだけどさ…ボクを守るため人間に捕まっちゃったのさ……」

 

「そっか……」

 

この子の話からあたいは過去の自分の姿を彼を重ね合わせた。そうしたら、次の言葉を無性に言いたくなってしまった。

 

「もし、行くあてがないなら、あたいと一緒に行くかい?」

 

気づいた時にはすでに口走っていた。だが、この子の反応はすぐ返ってきた。

 

「え、いいの?」

 

「もちろん。」

あたいがこう言うとこの子は満面の笑みを見せる。やっぱりあたいは久々の感覚というか、照れてしまったので、急遽話題を変えることにした。

 

「あたいはリン、あなたは?」

 

「名前?うーん……そういえば、ボクは名前なかったような気がするなぁ……」

 

「じゃああたいが考えてあげる!」

 

あたいは久々に母のことを思い出した。母があたいの名前を決めた時どうしたって言ってただろうか。確か……呼びやすさ、だったよね。う~む……。

 

あたいが真剣に悩む中、この子が心配して顔を覗かせる。

 

「大丈夫、リン姉ちゃん?」

 

そうか!あたいがリンだから……!

 

「あなたの名前は今日からレンよ!」

 

「どの結論からそうなったのかわからないよ!?」

 

この子はびっくりして聞いてきた。

 

あたいは自信を持ってこう言う。

 

「だって、呼びやすいし、あたいとそっくりだからね!」

 

「むぅ、ボクはリン姉ちゃんとは全然違うよ!!」

 

この子は口を尖らせて反論する。

 

「でも、今日からあたいはお前のお姉ちゃんになったんだから、名前も勝手に決めていいわよね、レン?」

 

「一緒についていくとは言ったけど、弟になるなんて言ってないよ!?」

 

「じゃあレン、あなたいくつ?あたいは1歳半くらいだけど。」

 

レンはそれを聞くと、諦めたような顔をして答えた。

 

「は……半年です……」

 

「決まりね、とにかく一緒に帰りましょ!」

 

 

こうしてあたいはこの子を連れてねぐらへと帰った。レンはこの場が落ち着いたのか、着いた途端に眠りに落ちてしまった。よほど人間から追跡をされて疲れていたのだろう。あたいはレンの寝顔を見ながらこうつぶやいた。

 

「お母さんも、今のあたいと同じ気分だったのかな……?」

 

母を失ったショック以来初めて守りたいものができた。これからあたいは母が感じたことをどんどん経験していくだろうと頭に思い浮かべた。そうすると、あたいは自然と頬が緩んでしまう。

 

おそらく、あたいはこの時このねぐらに来てから初めて笑顔になった。

 




オリキャラに関して、某有名な双子をもとに、主人公がリンだったのに対し、男の子なのでレンにしました。ネーミング由来はそれですが、キャラクターの性格は一致させる予定はありません。

次作はしばらく一緒に過ごした彼らの様子を書く予定です。
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