艦隊これくしょん グレースケイル   作:T村

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コミュニケーションをとろう 1

「へぇ、じゃあオイゲンちゃんって重量オーバーして造られたの?」

「うん、でも国連には『ぴったりで造ったよ』って言ってたらしいよ!」

「……すごいんですね、ドイツって」

「ナチスデスからネ」

「でも榛名としては終戦まで生き残ったって事に驚きです」

「幸運艦ね、凄いわ」

「高雄さんも凄いですよ!」

「あらあら、ありがとう」

「おいおい、アタシは?」

「…いや、ここで話に加われていない比叡がグレ始めていることについてはノータッチ何だな」

「フ、フフ、響ちゃん? さりげないフォローは時として残酷だからね?」

「……そ、そうなのか」

「ところで夜戦は?」

「今、朝ですよ川内さん」

 

「………めちゃくちゃ馴染んでるな、オイゲン」

 

 下手するとあれ、私より馴染んで無いか? 食事中完全に蚊帳の外にされた山田は焼きもろこしをかじりながらぼやいた。ちなみに職員'sと一緒である。メロンの人は喜んでるみたいだったので放置して置いた。側に一応食事を置いておいたから大丈夫だろう。両手使えないみたいだけど、きっとなんとかなるだろう。

 そう確信めいた何かを感じたので、とりあえずオイゲンの事は艦娘達に任せて、山田は職員'sとコンタクトを取ってみる事にした。

 

「なあ、お前ら」

「何でしょう、山田提督」

「いや、何でしょうって程の事でも無いんだが……私はお前らの事を何も知らないな、と思って」

 

 少し、声のトーンが落ちたのを気遣ってか、快活そうな少年、確か吉田だ、は言う。

 

「いえ、山田提督はまだ着任されて日も浅いですし、ね?」

「……でも、職員の名前も知らないのは駄目だろう。私が名前を知っているのは権言坂と吉田だけだ」

「……あ、僕の名前は知ってるんですね」

「一応、な」

 

 一応、ですか、と腕を組んで考えこむ吉田。確か彼らは下士官だったはずだ。つまり、士官学校に行っていないメンツというわけだ。

 

「じゃあ、自己紹介でもしましょうか?」

「ああ、頼む」

 

 それじゃあ権さんから、と吉田は促す。すると、んん、と喉をならして、隣に座っていた権言坂がこちらに向き直った。というか権さんって呼ばれてるのかこの人。おじいちゃんみたいな呼ばれ方だ。

 

「ああ、と。私は権言坂イチノへ。一応少佐だ」

「え? 中尉じゃなかったのか?」

「いや、提督は基本少佐からなんだが」

 

 これには山田も割りと本気で驚く。参ったな、昨日中尉って呼んじゃってたよ。データじゃ中尉だったんだけど、と、誰に言うでもない言い訳をする山田。

 と、権言坂は少し困ったように言った。

 

「えっと、私は君の、その、と、友…達で、良いかな?」

 

 山田は無言で水の入ったバケツを取り出すと、その中に顔を突っ込んだ。

 

「べびびがぼ(天使かよ)!」

「あっ、その、駄目、だよな……」

「いえ全くむしろこちらからお願いします」

 

 突然の奇行におどろいた権言坂が『しょんぼり』とかそういう何かを感じさせる様に顔を僅かに伏せるが、山田はコンマ0秒の反応速度で否定する。

 すると、「そ、そうか!? いいのか?」と心が綺麗になってしまいそうな笑顔で喜ぶものだから、山田はもう一度バケツにダイブせざるを得なくなった。少佐、その笑顔は反則ですぜ。

 

「そうか、そうか。やっぱり、裸の付き合いが上手くいったのかな!」

 

 わりとクリティカルに空気が変わった。

 さっきまで怯えるような態度だった男達は、みなニヤニヤとした顔になり、女子は女子で、凄まじい勢いでノートに何かメモっている。六人全員。怖い。

 

「ふふふ、いや、山田提督も中々やりますね」

「ふふ、これは意外と。ふふ」

 

 ニヤニヤと吉田とあと上田が言う。名札に書いてあった。

 たまらず、話題をかえにかかる山田。

 

「い、いやいや、そういうお前らこそ、どうなんだよ。艦娘達と何か無いのか?」

『あ、私たち三次元は捨てたんで』

 

 五人全員から凄い答えが返ってきた。え?

 

「ど、どういうことだ?」

 

 わけが分からない。何の話なんだ、興味が無いってことか?

 山田が珍しく(あれそうでもない?)本気で驚いていると、吉田は遠い目をした。

 

「いえ、ね。赤紙が届いたあの日から、私達はリアルを捨てたんです」

「ええ、あの忌々しきペンダウンの日……」

 

 何か、ぎりぃと歯ぎしりをする音が聞こえた。

 

「ペンダウン……それは軍に強制的に兵役することになり、いつ死ぬか分からぬ赤紙徴収者達から強制的にDTを奪う魔の儀式……」

「まるでベルトコンベアーを流れる製品にシールを貼るが如く行われるその行為の中、つけられていた目隠しが外れて………僕たちの『相手』が見えたんです」

「あ、相手……?」

 

 吉田は、嗚咽をもらす他の四人を庇うように、絞り出すように言った。

 

「脂ぎったぶよぶよの四十代のオバサンが、『ぶふふふふ、若い子は良いわぁん。ぐふっ』って………ぐふっ、って………!」

 

『がはぁっ!』

 

 男たち五人は、ほぼ同時に吐血した。

 

「もう二次元しか信用出来ないぃい!」

「あばばばばばばばばばばばばばばば」

「来るなぁ! 来るなあああ!」

「オレハナニモミテイナイオレハナニモミテイナイオレハナニモミテイナ……」

「…………と、言うわけです」

 

 完全にトラウマスイッチが入ってしまった彼らは、確実にSAN値が吹っ切れてしまっていた。

 

「……何か、悪いな。嫌な事を聞いたみたいだ」

「いえ、悪いのはこんな制度を考えた軍のお偉いさんです。提督は悪くありません」

「何の話だい?」

 

 男にしか理解できない(女の場合はもっと別なシチュエーションだろう)涙を流していると、不思議そうに権言坂は首をかしげた。

 

「えっと、女と士官には分からない話だよ」

「そうか、じゃあ私は士官だから分からないのか」

 

 そっちじゃないよ。山田と吉田は同時にそう思ったが、変に掘り返すのもあれなので、気にしない事にした。

 

「って、確か山田提督は士官でしたよね? じゃあ……」

 

 吉田がこちらを伺うように聞いてきたので、山田は素直に答えた。

 

「DTだけど」

『……ああ……』

 

 このあとめちゃくちゃ空気が悪くなった。何でだ。

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