「え? どういうこと? 夜戦?」
「いや夜戦は関係無いだろ」
混乱してても夜戦ネタをぶちこんで来る辺り、川内の夜戦への愛は本物なんだろう。激しくどうでもいいが。
「何で総一郎がこんなところにいるんだ? 貴方は確か軍を退役してたはずなのに」
「え? 退役って、前も軍にいたのか?」
「え、あ、うん。まあな」
権言坂の問いをそれとなく誤魔化し、山田は長門に歩み寄った。
長門は途端に顔を輝かせるが、
「余計な事は言うなよ?」
「ひっ」
恐ろしく低い声でそう告げられて震え上がる。ちなみに、山田はとてもいい笑顔だった。笑顔って怖いね
「新しくこの鎮守府に着任したんだよ。一昨日な」
「ちゃ、着任? なら権言坂提督は?」
不安そうな長門を前に、山田は「……ほう?」と感心する。何だ、こいつは分かっていたのか。
「安心しろ、提督補佐としてやってもらう予定だ。あんないい人を左遷するわけにもいかんだろうし」
「そ、そうか」
一転して安堵の表情を浮かべる長門に、山田は珍しく微笑む。その光景に、周りは完全に置いていかれていた。
「……えっと山田提督は、長門さんと面識があるんですか?」
「ああ、五年前に少し、な」
「少し等と言うものではない!」
長門が何かすごい勢いで横槍を入れてきた。拳を掲げて何かを語ろうとする長門に、山田は凄い勢いで顔を青くするが、長門は躊躇なく口を開いた。
「私は、総一郎に生きる理由を与えられたのだ!」
「おい、ちょ長門お前」
「私は当時慢心していたのだ。そのせいで油断し敵潜水艦の攻撃を受け無様に沈み行く私を、総一郎は引きずりあげてくれた」
「待てっておい」
山田の制止も完全に無視して熱弁する長門。周りはやっぱり置いていかれていた。
「落ち着けって言ってるだろ!」
とうとう声をあらげた山田に、長門は正面から言い返す。
「何故だ!?」
そして長門はとんでもない爆弾を投下した。
「あの日の総一郎はあんなにも情熱的に私を求めてくれたではないか!?」
「おいこらその言い方は誤解が」
そう慌てて訂正しようとするが、時すでに遅し、港には壮絶な空気が漂っていた。
「あ、そ、そういう関係だったのかよ、早く言えよな」
「Oh! そういう事だったんデスネ!」
艦娘は顔を赤らめながらそんな話をしだすし、
「DTじゃ無かったのか?」
「いや、きっとDTを捨てずに恐ろしいテクで」
「マジかよスゲェな、流石提督」
職員は職員で、凄い事を言っている。テクって何だテクって。
「……! イチノへ?」
そうだ、きっとイチノへなら分かってくれるそう期待を込めて振り返ると、
「そ、そう言うことだったのか。つまりは提督は人生の先輩ということに」
「イチノへさぁあああん!?」
だ、駄目だ、完全に誤解されている……。
山田は嘆いた。だから顔馴染みと顔を合わせるのは嫌なんだ!