艦隊これくしょん グレースケイル   作:T村

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過去編、抜錨します!


忌むべき記憶 1

「……全員、食い終わったか?」

 

 しんと静まりかえった夕暮れ時の食堂で、山田は静かに問う。答えは、返って来ないが。

 

「これから話すのは、少し長い話になりそうだから、先に夕飯を食べて貰った訳だが、お前ら」

 

 ぐるりと、目の前の二十五人を見る。怯える様な目をするもの、聞きたくない様な顔をするもの、ただただ真摯にこちらを見つめるもの、皆、各々の表情を見せながらも、そこに座っていた。

 それを見て、目をつむり、頭をかきむしって顔を押さえ、「……あああああああああ!」と苛立たしげに低く唸って、どすん、と椅子に座った。

 そして山田はすっと目を開ける。

 

「少し、昔の話をしよう」

 

 

 

 時は今から十一年前にまで、遡る。

 

 

 

「さて、貴様らはこれから御国の為に戦うことになる訳だが」

 

 軍服を着た男の低い声が、霞が丘ファミリーホーム……孤児院に響く。

 子供たちは皆怯えきった顔をしていた。まあ無理もないだろう。こんな深夜に突然軍服を着た男たちが入ってきて、自分達を一番大きい部屋に集めて整列させ、こんな事を言ってきたら、大抵の子供は怯える。だが、怯えていない子供が、三人。

 

「『牙』、とか言う作戦のことかよ?」

「……クロ、おかしなこと言わないで」

 

 気の強そうな黒髪の少女がそう訊ねるが、その隣にいた白い髪の少女がそれをいさめる。

 

「シロの言う通りだ。軽々しくそう言うことは言うべきではない」

「……っ、ハイイロ」

 

 シロと呼ばれた少女に、灰色の髪をした少年は賛同の意を示した。

 

「相手方の服装を見ろ、軍服だ。日本に軍隊は無い。下手なことを言うと消されかねんぞ」

「ほう、十歳の餓鬼にしてはよく分かっている様だな」

 

 リーダー格の男(服装から、この集団のトップなのだろうという事が分かる)が、感心したように三人を見る。

 三人は大体十歳程度と、この孤児院の中では最も歳上の部類に入ると見られた。

 男は、腰に提げた軍刀の柄を手で弄びながら、「それにしても、」と黒髪の少女を睨むようにして見る。

 

「貴様、何故『牙號作戦』の事を知っている?」

 

 ドスの効いた声でそう問いかけるが、クロは鼻で笑う。

 

「はんっ、俺の死んだ親父が自衛隊の『たいさ』でな、そんな話をしてたんだよ。悪魔の作戦だとか言ってな」

「悪魔の作戦……か」

 

 まあ、あながち間違いではないな。

 そう、米倉耕作は思った。あの所業は、許されてもいい物ではない。だが、それでもやらなければならないのだ。

 

「まぁ、その『牙號作戦』の一貫として、貴様らにはこれから『人間をやめてもらう』」

 

 米倉は隣に置いてあった黒塗りの箱に触れる。亀裂のように淡い光が走り、触れた所を中心に上下左右に開いたそれに右手を突っ込み、中から『銃身の無い拳銃』を取り出す。

 そしてそれをおもむろにクロに向け、引き金を引いた。

 

「がっ、あぁあああああああぁぁぁああ!?」

 

 プシッ、と空気の抜けるような音と共に放たれた『それ』は着弾点をおぞましい黒色に染め上げ、クロに悲鳴をあげさせた。メシメシと何かが歪む音が響き、悲鳴が一際大きくなり、ぱたりと倒れて静かになる。

 皆が震えながらその光景を見つめるなか、シロとハイイロは冷静だった。

 

「成る程な。そうなるのか」

 

 むくり、と身体を起こしたクロの額からは、二本の黒い角が生えていた。

 

「いきなり適応者が出てくるとはな。今回は期待出来そうだ」

 

 そう愉しそうに笑うと、米倉は箱の中からもうひとつ拳銃を取り出した。

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