艦隊これくしょん グレースケイル   作:T村

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呉第四ブラック鎮守府 2

「何でそこで身構えるのか参考までにお聞かせ願いたいんだが」

 

 山田は、何か提督だと告げたら凄い身構えられた。流石にこの対応は心に刺さる。私なんか悪いことしたか?

 しかし返ってきたのは、そんな不安を悪い意味で裏切る物だった。

 

「……アンタも提督なら、どうせ私達を無理矢理戦わせるんでしょ!」

 

 気の強い艦娘、摩耶は臆することなくそう告げた。いや、彼女の足が震えている所を見ればそれが強がりであると言うことが分かった。

 

「……そんなに過酷だったのか? 貴様らの提督の組んだスケジュールは」

 

「…………」

 

 無言は肯定。その事は彼自身がかつての前線で経験した教訓だ。言葉で伝えないのは、下手な事を言わないためか。それとも言うのも躊躇うような事なのか。

 山田は静かに目の前の十二人の艦娘達を一瞥した。

 金剛、比叡、榛名、霧島、赤城、加賀、高雄、摩耶、川台、夕張、吹雪、響、そして遠征に出ている長門。

 名前だけ見れば、その性能的に第四(ほけつ)なんぞにいていい艦娘ではない。そもそもブラック鎮守府に集められ、こんな酷い扱いを受けていること自体が異常だと言うのに。今の鎮守府がそれほど杜撰ということなのか。

 よく見ると彼女達には、皆身体に痣があった。入渠していないのか、それともしてもすぐに痣が出来るのか。何にせよ、見ていて気分が悪い。

 しかしあれだ、このメンバーだと戦艦二隻、空母、重巡、軽巡、駆逐が一隻ずつの編成と言ったところか。バランスは悪くないが、普通ここは戦艦を減らして駆逐艦を入れるべきじゃ無いんだろうか。コストとか機動力とか考えたら。

 そんなことを考えながら、山田は言った。

 

「おい貴様ら、食堂に行くぞ」

 

 

 

「お、おいしい!」

 

 その料理を口にした彼女達が、最初に言った言葉がそれだった。

 ここは鎮守府の食堂だ。第四ともなると、第一や第二のように広大な面積を持つわけではなく、一つのそれなりに大きい学校位の建物の中に必要な施設を詰め込む形になる。この食堂も、その施設の一つというわけだ。ところで権言坂はこんな小さい権力にしがみつこうとしていたのだろうか。泣けてくる。

 で、そのなんかよく分からない権言坂が提督になってから、ここの食堂は使われることなど無かったそうだ。職員は支給のレーション食ってたらしい。この事はまたも目の前で艦娘に手をあげようとした別の職員に優しく(締め上げて)聞いた。

 まぁ、調理用具さえあれば問題無かったので、田舎暮らしで身に付けたお婆ちゃんの知恵を駆使して瞬く間に食堂を綺麗にし、そのままの勢いで持参していた地元の食材でちゃちゃっと料理を作ったのだ。三十人分程。

 何故わざわざ艦娘十二人なのに何故三十人分も作ったのかと言うと、赤城が一人で七人分位食うらしいと聞いたからと言うのと、この鎮守府の職員十一人にも食わす為だ。

 

「どうした? 食べないのか?」

 

 料理を前に動こうとしない職員にしびれをきらして山田が聞くと、さっき情報を提供してくれた職員(吉田と言うらしい、男)が言った。

 

「その、山田提督は我々の行いを間違っていると言われましたが、その件について処罰などは……」

 

 そういうことか。この職員達(男五人、女六人)は、彼が何かしらの処罰を与える為に呼んだと思って集まったようだ。

 彼は少々呆気に取られながら「いや……無いが」と答えた。

 

「「え!?」」

 

 職員達が信じられないと言ったような顔でこちらを見てくる。

 

「え、その、……本気ですか?」

「何が?」

「いえ、だからこの件について……」

 

 山田はその問いに当然のように答えた。

 

「いや、貴様ら、もうこんなことはせんだろ?」

 

 山田より少し年下、十七、八くらいの職員達は、こくこくと頷いた。あの場に居なかったのも必死に頷いているのは、多分他の職員から話を聞いたからだろう。だがその答えを見て、

 

「だからだよ」

 

 と、言い山田は続ける。

 

「反省してもうしないっていうんなら、それ以上どうこうする必要は無い。それをしたらただの苛めだからな。私は苛めは嫌いなんだ」

 

 日本男児たるもの、戦うときは正々堂々やりたいだろ?

 そう言うと彼は、とん、とひと指し指で軽く机を叩いた。

 

「まあ、そういうわけだから、とにかく食べろ。私の地元の野菜はいつだって新鮮だからな」

「あっ、は、はい!」

 

 山田の言葉で、弾かれた様に箸を持つ十一人。その直後に聞こえた「ウマーーーッ!?」の声は見事なハーモニーを奏でていたと言わざるをえない。

 さて、先程から演技じゃ無いの? と聞きたくなる勢いでばくついているが、これは決して単に空腹だからとかではなく、単純に、純粋に美味しい。いや旨い。すこぶる旨い。

 料理人としての山田、その腕前は彼の経営していた小料理屋が、ド田舎に輪を掛けてド田舎ともいえる立地に関わらず、ミシュランにその名を連ねたと言えばその凄まじさは想像に難くないだろう。

 そう、彼の実力は、あの「いるだけでまさに最強の鎮守府ってかんじだよねー?」と提督達に囁かれている間宮と互角であると言える。

 

 

 

「……来ないな」

 

 ざざーん。権言坂は、何故か誰もいない港で待っていた。

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