学園でWARSな青春を送りましょう   作:ラキスタリ

2 / 2
2戦目

青い空、白い雲、そして頬を撫でる暖かい風が、僕に春の訪れと冬の終わりを告げる

学園中の桜はいっぱいに咲き誇り、僕たちに淡い桃色の幻想を見せてくれる

時折、風に揺られた花びらが、僕のいる体育館に、ひらりと落ちてきたりした

さらに、窓から射す日光が、僕たちに催眠術をかけているんじゃないかと錯覚させるほどに麗らかで暖かい

今日は最高の快晴だ

 

―しかし、そんな最高の天気とは対象に、僕の心境は暗い曇天の夜だ。始終、どんよりしている

 

今日、4月某日。僕は入学し、高校生になった僕は鈴川学園戦争学科所属第22期生だ。…ハァ

 

と、僕はテンションただ下がりの状態で椅子に腰かけていた

思わず脱力して肩を落としガックリとしたいが、このきっちりした姿勢を崩すわけにはいかない

なぜなら僕は最前線の椅子に座っているからだ。普通ならこういう場所は入試試験でスゴい結果を出した子が座るはずなのだが…なんで僕ここにいるんだろう?

正直なんでかは分からない。考えても仕方ない気もするなぁ…

 

「ハァ…ん?」

 

ここで、ふと気のせいか視線を感じた。僕は気になって見回る

しかし、自分と同じ制服の男女が前をただ見ているだけで、僕を見ている人なんて誰もいなかった

 

(さっきの視線はなんだったんだろう……)

 

そう思っても、前を向かないと怒られてしまうので僕は前を向いて話を聞くことにする

立派な赤い絨毯が引かれた舞台には、教頭と思われる男が立っていたが

「それでは、学科長からのお話です」と言って裏側の方へ歩いていった

それと同時に、手を後ろで組みつつ一歩一歩堂々と歩いてくる成人男性が台の前で立ち止まる

丁度、学科長が挨拶をするところだったようだ

 

「やぁ諸君! おはよう!! 私がッ! この私がッ! この学園の学科の一つ、戦争科の最高責任者!学科長だッ! まずは入学、おめでとうッ!!」

 

初対面の時から思ってたけど、テンションが高い人だなぁ…今の僕とは真逆だ…

 

「さて、私からの話だが…これといって固い話はではないッッッ!!!諸君、自由に生活を送るといい! 自由に学び、自由に戦い、自由に恋をしそして! 自由に楽しむといいッ!!私は、諸君らの自由を疎外などはしない! しかし!! 学園に所属している限り! ルールは守ってもらおう―――

 

―――だが、そこら辺を説明するのは些か面倒だ。こういうことは教頭君に任せるとしよう。諸君! ようこそ鈴川学園へッ!!」

 

一気に捲し立てると、学科長は舞台を降りていった

……なんていうか、スゴい先生だったなぁ…

スゴくテンションが高かったし…意外と適当そうだったし…

そう思っているうちに、教頭先生が校則について話している

覚えるのは少し面倒だけど、大人しく耳を傾けることにした

 

 

―☆―

 

 

「仮クラス分け、か…」

 

入学式が終わり、僕は桜が舞い散る校庭で小さく呟いた

なぜ、クラス分けが仮なのかと言うと、それはさらに数週間後に『適性試験』というある意味クラス分けに近い試験を行うからだ

その適性試験が始まるまで仮のクラスで過ごし、学校の雰囲気に慣れよう

というのが目的だと、僕は践んでいる

まぁ、僕の勝手な推測だけどもね

 

「さて、僕は何組かな?」

 

生徒がガヤガヤと騒がしくしている中心に、僕は足を進めた

しかし、生徒が多すぎてクラス表を見ることができない。それどころか、入る気すら湧かない

そこまで勇者じゃないんだよ、僕は

 

でも、入らなければクラスが分からないし。あんまりもたついてるとHRに間に合わない

学校内で迷子にならないとも限らないしね

 

「よっと………ごめんね………ちょっと行かせてね………はいはい、通るよー…」

 

僕は人の塊を割きながら進む。流石に人が多くて中々進まないけど…

 

「っと、やっと抜けれた…」

 

たった数メートル進むだけなのにこんなに疲れたのは初めてだよ…

さて、僕は何組かな

僕は自分のクラスを知るために、クラス表を見上げた

 

Aクラス…違う。Bクラス…も違う。Cクラス……ああ、あったあった

デカデカと一年三組と書かれたクラス表には、確かに僕の名前が書いてあった

名前に誤字もなにもない、何も問題はない

が、一つ気になることがある

 

「……成績優秀者?」

 

何故、僕の名前の欄の隣に「成績優秀者!」と書かれているのだろう

確か僕は入学試験の時は逃げ回っていただけだのはずなんだけど…

…激しく気になるけど、そこはまぁ、書いた本人であろう担任の教師に聞けばいいかな

さて、自分のクラスも確認したことだし。三組教室に向かおうかな

僕はいたる処に貼られている校舎の見取り図を一枚拝借して、三組の教室へ向かった

 

 実のところを言うと、僕は戦争科になんて入りたくなかった

本当に僕が入りたかったのは農業科だ

理由は実に簡単、僕自信農業が好きだからだ

これは僕の祖父が農業をしている影響もあったからだと思う

 

僕の祖父は自然をよく分かっている人だった

空気や土の感じで、その日の何時に雨が降るかが分かるという天気予報士も真っ青な特技を持っていた

僕は、そんな祖父に憧れた。今思えば、昔の僕は存外爺臭かったなぁ

とにかく、僕は祖父に憧れて七歳頃から祖父の手伝いをしていた

 

そんな僕は昔から心に決めていた事がある

農業校か農業科に入って、祖父のようになると

そう、心に決めていたはずなのに…

何の因果か知らないけど全く正反対と言っていい戦争科に入ることになるなんて…

悔やんでも、悔やみきれない…

 

「……死んだお爺ちゃんに、申し訳つかないなぁ…」

 

なんてことを、ポツリと呟いてみる

しかし、その時の僕は俯いて歩いていたので、前を一切見ていなかった

そんなことをすれば、当然―

 

ドンッ

 

「わわっ!?」

 

 

「っとと!?」

 

 

―誰かとぶつかってしまう

僕は後ろによろける程度ですんだが、ぶつかった相手は音から察するにこけてしまったらしい

や、やってしまった…

 

「あたた……全く、前見て歩いてほしいんだけど?」

 

「す、すいません…」

 

僕は声をかけられて、初めてその人を視認した

まず、性別は女性であることが、顔を見る前にありあまる女性特有のモノで分かった

続いて、頭にはボンボン付きのピンクのニット帽を被っている

肌は普通の女子に比べ白すぎるくらいだ

顔立ちは、正直に言おう。美人である。テレビに出てきそうだ

 

彼女はよっと。と声をあげ立ち上がる

そこで、彼女の背丈に気づく

高校生…にしては小さい気がする。中学生っていうのがしっくりくる

 

彼女はこちらを足元から頭の天辺まで、ジロジロと見てくる

 

「って、君一年か…」

 

って、ジロジロ見てたのは学年を把握するためだったのか…

 

「あ、はい。これから仮クラス先に向かおうとしてたんですけど、考え事をしてまして…」

 

それを聞いた彼女はふぅんとよくあるありふれた返事を返した

こんな学科だけど、案外普通の人は結構いるのかもしれない

 

「ま。次からは気を付けてな。じゃあ」

 

「す、すいませんでした…」

 

彼女は手を上げヒラヒラと手のひらを翻した

そういえばあの人、僕とは制服の装飾の色が違ったけど……もしかして先輩だったりして…

………まさかね

それより、急がないとね

早く行かないと遅刻するかもしれないし

 

「……あれ?地図がない…」

 

 

―☆―

 

 

道に迷ったり、間違えて違う階に行くなんてこともあったけどなんとかCクラスに到着。教室に入ってまず最初に目に入ったのは『適当に座れ!!』と雑に黒板に書かれた文字

いや、確かに最初はそれが無難だろうけど、雑すぎる気もする……余程肝の座った先生なのだろう

さすが戦争科、どんな小さなことにでも驚いてしまう要素が盛りだくさんだ

 

もう少しどんなものかを見回りたかったけど、入り口に突っ立っていても他の人の邪魔になるだけ

僕はさっさと適当な席に座ろうと思い教室を見渡す。が、少し遅かったのかどこもかしこも埋まっていて所々しか空いてはいなかった

仕方ない…フレンドリーな方ではないけど、少し挨拶をして座ろうかな

僕は適当に目をつけた席に向かい、鞄を置いて座った

窓側の席が空いていて助かった…中心の席なんてまっぴらごめんだしね

しかし、隣の席には既に誰かが座っている。ただ、気になるのは、その周りには誰も座っていないということだが…まぁ、文句は行ってられない

さて、ここは挨拶をしてこれからの学校生活を少しでも明るくしよう

 

「えぇっと、隣の席だね。これからよろしく」

 

「ん? ああ、そうだな…これからよろ―」

 

 

「「ああァー!?」」

 

こ、こいつ! 試験日の時にボロクソに言ってきやがった女!!

 

「何故貴様がここにいる!?」

 

「それは僕の台詞だ!」

 

あの時の恨みは、忘れたわけじゃない!

今ここで罵倒したおしてやる!!

と、意気込んだが

 

「「「「………」」」」

 

周りの非難の視線をもろに浴びていることに気づいた僕と女は、周りに一言謝罪をし、とりあえず座ることにした

 

「……それで? なんでお前がいるのさ?」

 

「…私は貴様のような無能な奴等の顔を見ないためにいち早く教室に来て座っただけだ」

 

ああ、だからこいつの周りは誰も座ってなかったのか。こんな奴の隣になんて座りたくないよね

座ってしまった僕は運がない、ということか

 

「…貴様こそ、何故ここにいる?」

 

「…適当に座ったらお前の隣だったんだよ。全く、運がないにもほどがあるよ」

 

「ふんっ、確認しなかった自分の無能さを他人のせいにしないでほしいな」

 

「「……」」

 

静かな睨み合い。互いの眼光を極限までに光らせ、相手を睨み殺す勢いの最悪な睨み合い

周りの人達が震えているように見えたが、今の僕達には至極どうでもいいことだった

今は、こいつをどうしてやろうかと考えているのだから…!

 

「おーおー、元気でいいね。青春してるかい?」

 

「「!?」」

 

バッと、同時に振り向く。そこには先程までいなかったはずの女性教師がいた

恐らく、このクラスの担任の人なのだろう

 

「元気なのはいいが、もうHR

ホームルーム

だ。少し抑えてくれるといいね」

 

「…すいません」

 

「…申し訳ありません」

 

「うんうん。それでいいね。それじゃあHR始めるよ」

 

そう言って、女性教師は教壇の前に立った

荷物らしい荷物も持たず、仁王立ちで腕を組む

せめて出席簿は持ってくるべきだと思うんだけどね

 

「おはよう! 今日から私がここの担任を務めさせてもらう! 一ヶ月という短い時間だが、よろしく頼む! さて、呼び名に関してだが、君たちの好きにするといい。金〇先生でもヤ〇クミでもドラ〇ン桜でも好きに呼んでくれ! 何か質問はあるか?」

 

「せんせーい、著作権というものをご存じですか?」

 

「そんなものスクラップにしろ。他には何かないか?」

 

スクラップにしちゃいかんでしょ。ある程度は守りましょうよ先生…

 

「せんせーい、規制にかかりますよ?」

 

「伏せ字していれば問題ない。次」

 

伏せ字でもバレバレだよ

 

「せんせーい、なんでジャージなんですか?」

 

「着やすいからだ。スーツでなくて悪かったな」

 

チッ

 

「先生!スリーsぐぼぅッ!?」

 

「質問はもうないようだな。では今日はこれで解散だ。気を付けて帰れよー」

 

ある意味伝説の勇者のような行為をした男子にボディブローをかまして、先生は去っていった

なんていうか、ここの教師はスゴい人しかいないなぁ…

学科長とか、学科長とか、学科長とか…

 

とりあえず、今ここで分かったことが一つだけある

それは

 

「いいか、ここから先には絶対に近づくな。いいな?」

 

「それは僕の台詞だこの漢女!」

 

僕の最悪の学生生活が始まったということだ…


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。