★拙作「或る咎人の憂鬱」を前提にした短編になります。

自分の弱さを痛烈に自覚した咎人は、アクセサリに対する否定的な情を抜きにして、戦闘の効率化と安全性を確保するため、違法を承知で大幅な改造を決意する。
しかし、その扱いは「ヒト」ではなく「モノ」扱いである事に変わりはなかった。
その扱いに、不満を覚える人物が一人。
その人物によって与えられた小さな変化の種は、その人物の予想の斜め上をいく成長を遂げ、咎人達を翻弄する事になるのだった。

或る咎人の、言葉による短くも小さな騒動の顛末。

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◆ 原作の設定に基本忠実ですが、捏造要素はしっかり含まれています。
◆ 拙作「或る咎人の憂鬱」を読まないと、わからない設定が出てきます。
◆ オリジナルの男主人公です。暴言を吐きます。
◆ アクセサリ、NPCのキャラが大崩壊しています。暴言を吐きます。
◆ アンチ・ヘイトの意図はありませんが、保険としてつけています。
◆ その他、不備がありましたらごめんなさい。


咎人、いつものように振り回される

嫌な予感がする。

独房の扉から数歩離れて立つ俺は、酷く緊張していた。

扉の向こうにいるのは未知の存在であり、俺の毛根と胃腸を苛むであろう天敵だ。

何故こんな事になった。

この後に続く事態を想像し、臆病な俺は、すぐにでも回れ右をしてガソリンへと駆け込みたくなる。

しかし悲しいかな、消灯時間十五分前だ。

消灯時間ぐらい破ってしまえばいいのだが、体がこのリズムに慣れ切っていて眠気が徐々に足元へと迫っていた。

だが逆を言えば、未知との遭遇も十五分足らずで終わるのだ。

それに、夕方にユリアンに見てもらった時は比較的マトモだったじゃないか。

恐れるな! 今こそ戦いにこの身を捧げる時!

壮絶な覚悟の元、一歩足を踏み出すと、空気の抜けるような音と共に独房の扉が開いた。

 

「いよっ。お帰りなさい」

 

…………。

 

「おうおう。ユウ、どうかしましたか。プラントの外灯のモノマネですか。その割には頭部が光っていないようですが」

「うるせえよ」

 

辛うじて言い返し、とりあえず独房に入ることにする。

 

「クックックッ。消灯時間、十五分前です」

 

……何だよ、何なんだよ。

夕方までは、まだマトモだったのに、この数時間で何が起こった!?

もう十分におかしいが、このポンコツがこの程度で終わるわけがない。

とにかく、今日はさっさと寝よう。

顔を洗い、歯を磨いて、薬を一気飲みし、布団に潜り込む。

 

「さあ、ユウ、消灯時間です。しっかり休息をとって、明日も貢献に勤しみましょうカッコ笑いカッコ閉じ」

「まてや」

 

思わず起き上がる。

 

「おかしいだろ」

「てやんでい。何がおかしいんですか」

「お前の言葉の使い方がだよ!」

 

ポンコツは無表情で小首を傾げる。

 

「あらまあ。ですが、このプログラムは貴方がインストールしたものです」

「シズカに押し切られる形でな。もっと言うなら、そのプログラムもシズカが組んだものだ」

「わあ。確かにプログラマーとして、咎人シズカ・“フェイク”・ローランの名前がありますね」

 

やべぇな。ウザさがハンパねえ。

シズカのバカ野郎が!

こんな事態になった張本人の涼しげな顔が脳裏に思い浮かび、奴の後ろから助走をつけて飛び蹴りをかましたい衝動に駆られる。

もちろん、実際にそんな通り魔のような真似はしない。

やる時はちゃんと一声かける。

 

「とにかくもう寝るから」

 

これ以上付き合ってられるか。

 

「はい。お休みなさいダブルダブルダブルダブルダブルダブルダブルダブル」

「何じゃそりゃ!」

 

たまらず飛び起きると、ポンコツは壁面モニタを指し示した。

 

「先ほどの私の発言を文字にするとこうなります。あらよっと」

 

壁面モニターに唐突に文字が浮かび上がる。

 

『はい。お休みなさいwwwwwwww』

 

「……お前、ついにマトモに挨拶すらできなくなったのか」

「私はプログラム則って動いているだけです。えっへん」

「マジうぜぇ」

 

ちなみにこの一連のポンコツの発言、いつもの無表情に、例の人工音声と変なイントネーションだからな。

大きく溜め息を吐き再び布団に潜り込む。

 

「寝る」

「はい。お休みなさい。ちゃんちゃん」

 

叫び、壁を蹴りつけたい衝動を、歯を食いしばって耐えた。

 

◆

 

そもそも、何でこんな事態になったのか。

この日、ユリアンから頼まれていたボランティアを終えた時だった。

 

「ユウさん、ちょっとお話がありますの」

 

護送車を待つ間、ジオフロントを見て回ろうとした時、背後から声をかけられた。

地味な色のコートに、フードを被った姿が特徴的な、仲間……と呼ぶにはいささか抵抗のある女、シズカである。

この女、顔は美人の類だし、抜けるような白い肌の色艶もいい。

コートを押し上げるおっぱいの形も悪くはないし、腰も年相応にしっかりと張っていて、半ズボンからでている足も適度に肉がのっている。

物腰は柔らかく、育ちの良さと教養の高さが立ち居振る舞いに表れていて、古代の言葉を借りるなら『高嶺の花』ってやつだと思う。

しかし、俺はこの女の性根を知っているので、手放しで賞賛する気は一切ない。

 

シズカが俺を呼び止めた理由は、いつもの事ながら俺のアクセサリへ扱いだった。

服とフルフェイスの色がダサい、酷い、ありえないとこき下ろし、もっとヒトのように丁寧に扱いなさいと言ってくる。

余計なお世話である。

俺がアクセサリの服の色を、ド派手なマゼンタにするのも、目に毒な蛍光グリーンにするのも、ハレーションを起こしそうなシグナルレッドにするのも、全ては目立たせるためだ。

敵の盾にするつもりはない。なりようがない。

盾にするなら、屋根に使われている折板のほうが余程役に立つ。

派手な色の服を着せているのは、蘇生をすぐにできるようにするためだ。

アクセサリの位置を示すUIがわかりづらく、肉眼で確認したほうが早い。

ならば、地形に溶け込むような服よりも、自然界には決してありえない色を使った方が都合が良いのである。

 

だが、アクセサリ至上主義者のシズカに、そんな俺の事情など通用しない。

とにかく、このプログラムを入れてみなさい。

ヒトの片鱗を少しでも垣間見れば、貴方もアクセサリをもっと大切にできるようになるはずですわ、だそうで。

だから俺は言ってやった。

 

「お前、もう忘れたのか? 俺のアクセサリに看護プログラムと、ホスピタリティプログラムが搭載されていた時の事を──」

「あれは……、本当に酷いものでしたわね」

 

どこか遠くを見るような表情でシズカは視線をそらす。

あの時のポンコツの理不尽かつ不条理な言動は、俺だけでなく全方向に無差別に発動した。

アクセサリを無条件に信奉するシズカも例外なく、その煽りを食らった一人である。

 

「そうだろう。お前が咎人になってからの体重と腹囲と血糖値が、俺のアクセサリによってロウストリートジャーナルにつぶさに公開されて、血糖値が」

「その薄汚いお口を、オレンジ石鹸で洗って差し上げましょうか」

 

穏やかな口調だが、その裏には恐ろしいまでの殺意がこめられていた。

それ以上はその件には触れず、とにかくポンコツのヤバさを訴えたのだが、どうしてもと言って聞かず、シズカは強引にインストールしてしまったのである。

この時、ポンコツは偵察システムを取り入れようと改造の真っ最中で、さすがに危機感を覚えた俺は、PTに戻るや否や、アクセサリを連れてユリアンの元へ向かった。

話が話だからと、ザッカーから無人の焚き火の前に移動。

ユリアンは手持ちの端末で取り急ぎ調べてくれたが、すぐに安堵の溜め息を吐いた。

 

「ああ、これくらいだったら改造中のシステムに影響が出る事もないかな。大丈夫だよ」

「そりゃ良かった」

 

不幸中の幸いだ。

胸を撫で下ろしつつ、アクセサリに指示を出す。

 

「おい、先に独房に戻ってろ」

「ふっ。了解しました」

 

その応答に違和感を感じつつもアクセサリを見送り、改めてユリアンに向き合った。

 

「でもシズカのやつ、どんなプログラムを押し付けたんだ?」

「あれ、聞いていないのかい?」

「アクセサリに愛着を持つ第一歩だって言ってた」

「そうか」

 

ユリアンはメガネを押し上げる。

 

「このプログラムは、アクセサリの発言の語頭と語尾に、感動詞をくっつけるものだよ」

「感動詞?」

「そう。感動詞はわかるかい?」

 

首を振ると、ユリアンは頷いた。

 

「感動詞って言うのは、感動、呼びかけ、挨拶、かけ声、応答を表し、単独で文になる言葉のことだよ。間投詞、感嘆詞とも言われている。わかりやすい例えで言うと、『はい』『いいえ』も感動詞だ」

「ほほう」

「今の言葉も感動詞だよ。さっき君のアクセサリが言ってた『ふっ』ていうのもそうだね」

「なるほど」

 

さっきの応答の違和感はこれだったのか。

 

「でもそれが、アクセサリに愛着を持つきっかけになんのか?」

「本当にきっかけ程度だね」

 

ユリアンは端末をウエストバックにしまうと、腕を組んだ。

 

「感動詞は文字通り、感情や心をそのまま表現する言葉で、人間性を表現するには手っ取り早い方法さ。アクセサリには必要最低限の感動詞しか搭載されていない上に、感情や心はないから、ヒトのように自在に感動詞を使う事はない。だから、プログラムで強制的にとは言え感動詞を多用するようになれば、聞き手は錯覚するかもしれないね。試みとしては面白いとは思うよ。思うけど……でもなぁ……」

 

ユリアンは俯き言葉を濁した。

その気持ちは良くわかる。

俺たちはあの時のことを決して忘れてはいない。

相当数の抜け毛と、胃痛と引き換えに学んだのだ。

超人市民は顔上げた。

 

「断言してもいい。この試みは失敗に終わる」

「わかってるさ。だから俺もそう言ったよ。ポンコツのヤバさも話した。それでもアイツ引かなくてなぁ」

「……あんな目にあったのに、彼女も懲りないね」

「アクセサリのこととなると目の色変えるから」

 

揃って溜め息を吐くと、ユリアンは疲れた表情で俺を見た。

 

「本当は関わりたくないけど、何かあったら必ず連絡してくれ。違法改造している手前、事が大きくなると僕だけじゃなくて、協力してくれている皆もヤバイから」

「悪ぃな。遠慮なくそうさせてもらうから」

 

本当にユリアンには世話になりっぱなしだ。

その恩を返す方法が、ボランティアぐらいしかないのは歯痒い。

ふとユリアンは、視線を遠くへと飛ばした。

その視線の先には、林立する半壊したビルと組まれた鋼材、乾いた風にたなびく現場シート、そして燃えるような色の空が広がっている。

その光を浴びて、遠くを見つめる超人市民の姿は、大層悲哀に満ちていた。

 

「最近思うんだ。命は資源として活用できる術を幾らでも持っているのに、髪の毛一本すら守りきれない僕らは一体何なんだろうって」

「胃腸もな。俺ら、何て無力でちっぽけなんだろうな」

「本当にね。理不尽ばかりで癒しの一切ない現実に、髪の毛どころか心まで不毛地帯になりそうだよ」

「お前には嫁さんがいるだろうが。活入れてもらうなり、慰めてもらうなりして潤い補給しろよ。ぼっちの俺の方がそれ言いたいわ」

「君には天使ちゃんとやらがいるんじゃなかったのかい」

「恩赦ポイントのかかる街角の天使ちゃんだがな」

 

夕日を眺めながら、二人でひとしきり愚痴とぼやきを垂れ流した後、ユリアンと別れた。

できる限り独房へ戻る時間を先送りにしようと、天使ちゃんのところへ行ったり、ガソリンでマティアス達と飯を食いつつだべったりして、無駄な足掻きをしつつ夜を過ごしたのだが……。

溜め息を吐き、布団を頭から被りなおして、目を閉じる。

明日もボランティアがあるから、少しでも回復しておかないと。

しかもアブダクターと共に市民を護衛するボランティアだ。

あのポンコツと一緒なのが不安ではあるが、言葉が変なだけで大きな支障はないだろう。

……ないと良いんだけどな。

 

そして翌朝。

いつもどおりの時間に起床して、メシ食って、身支度整えた俺は、ポンコツを伴って独房を出た。

体がいつもより重い。

言うまでもなく、ポンコツのせいだ。

起きたらいつもポンコツに戻っているのではないかと、淡い期待をいただいたのだが、現実は無情である。

どこかずれた感動詞を駆使して会話するポンコツに、俺のストレスは順調に水位を上げていた。

こんな調子で、今日のボランティアを無事に乗り越えられるのか。

不安と憂鬱を抱えてモザイク街に向かうと、広場に見慣れた姿を見つけた。

 

「ユウ、おはよう」

「おーっす」

 

片手を上げて応じると、明るく元気な笑顔でベアトリーチェは出迎えた。

ボランティアに行く直前なので、ベアトリーチェのアクセサリも背後に控えている。

 

「さすがに今日は一番乗りか」

「三十分前に来ちゃったよ。もう楽しみで楽しみで」

 

心から嬉しそうなベアトリーチェの笑顔が、荒んだ俺の心には眩しい。

すると、ベアトリーチェが真顔になった。

 

「何か元気ないね。体の具合、悪いの?」

「や、元気だよ」

「んー。でも、何かテンションがいつもより落ち込んでるよ」

 

メッキが剥がれていたか。

そして思う。

……ポンコツのこと、言ったほうがいいかな。

アクセサリは、監視対象者以外とは会話をしない。

だから、ベアトリーチェや他の連中が、この件に巻き込まれる事はないはずだ。

ポンコツの件は、とりあえず黙っておこう。

指摘されたら話せばいい。

そう判断し、苦笑いをして答える。

 

「昨日、薬の効きが悪くて寝るのに時間がかかってな」

「そっか。辛くなったら言ってね。今日の私は絶好調だから、アブちゃんと合わせてユウのサポートもバッチリしちゃうよ」

「ありがとな。そん時はちゃんと言うから」

 

気持ちはありがたく受け取っておこう。

 

「うーっす!」

 

待ち合わせ時間ギリギリでマティアスの登場。

奴はいつもどおり元気そうだ。

 

「マティアス、おはよう」

「うっす。ビリーはどうした?」

 

いつもの面子であるビリーの姿が見えない。

尋ねると、マティアスは呆れた表情を浮かべた。

 

「アイツ寝過ごしたらしくてな。髪のセットをしているから、五分くらい遅れるってさ」

「あの髪型だもんね。私の身支度より時間がかかってそうだよ」

「いい加減やめりゃいいのにな」

「でも、あの髪型をやめたら、ビリーはビリーじゃなくなっちゃうような気がする」

「あの髪型は奴の魂のようなもんだからなぁ」

 

好き勝手言い合う俺達だが、マティアスが怪訝な表情で俺を見た。

 

「お前、何かあったか?」

「え?」

「いや、気のせいならいいんだが、何かいつもよりテンション落ちてなくね?」

「さっき聞いたら、お薬の効きが悪くて寝不足なんだって」

「そうか。最近はずいぶん安定してきていたのにな」

 

そんなに表に出ていたか。

いつもだったら、体調不良でも比較的上手く隠し通せるんだが、俺が思っている以上に動揺が態度に出ているっぽいな。

マティアスは俺の腕を軽く叩いた。

 

「ま、今日のボランティアは比較的楽な部類だし、無理せずに後方に回っとけ。若干一名、メッチャ張り切っているのがいるから、大丈夫だろ」

 

マティアスがベアトリーチェのほうを見つつ、からかい混じりに笑って言うと、言われた本人は満面の笑顔を浮かべ、両手の拳を胸の前でギュッと握った。

 

「だってアブちゃんと一緒だもん! 何も怖いものなんてないよ! 私、この日を本っ当に楽しみにしてたんだから! モフュフュ」

 

出たよ、その変な笑い方。

思わずマティアスと顔を見合わせる。

天獄では、その笑い方は普通なのか?

 

「おおっと。データベースにない単語を認識しました。ユートペディアにて検索中」

「え?」

 

唐突な発言に、俺たちは一斉にその発言者を見た。

俺達の視線を受けても気にする事もなく、発言者であるポンコツは相変わらずの無表情で立っている。

 

「ジャーン。検索終了。該当件数ゼロ。発言に至るまでの状況から感動詞と判断しました。現在、データベースへの登録、並びにユートペディアへ、新規の感動詞として登録申請中です」

「は? 何言ってんだ?」

「えっと……、何が、起こっているのかな?」

 

戸惑うマティアスとベアトリーチェをよそに、俺は自分の至らなさに、忸怩たる思いで空を仰ぐ。

……やられた。

このポンコツ、やはり隠し玉を持っていやがった!

 

「ユートペディアへの登録申請が受理されました。喜びを表現する感動詞として、データベースに登録完了。以後、登録された感動詞は適宜使用されます。モフュフュ」

 

棒立ちで情緒なく告げるポンコツに、凍りつく俺ら。

ベアトリーチェが言っても、かなり微妙な言葉なのに、無感情なポンコツが口にした時の寒さたるや、古代の『オヤジギャグ』のそれと匹敵する。

 

「ユウ」

 

先に立ち直ったのはベアトリーチェだった。

笑っているような、疲れているような、何かを諦めたような表情で俺を見る。

 

「説明してくれるよね」

「ああ。洗いざらい話す。てか、是が非でも聞いていただきたい」

 

やっぱりあの時、話しておきゃ良かった。

右手で顔を覆った時だった。

 

「グッモーニン! 待たせちゃってソーリー……っス」

 

ビリーがアクセサリを引き連れ、慌ててやって来た。

最初こそ元気に挨拶をしたが、俺達の様子に謝罪の言葉が尻すぼみになる。

さすがはビリー、俺と並ぶ臆病者。

空気を読む力と、危機察知能力はピカイチである。

 

「あの、どうしたっスか? 俺様の遅刻、みんなでレイジングマッド?」

「意味はわからんが、お前の遅刻とは関係ねーから」

 

マティアスが応えると、ビリーはとりあえず安心したようだった。

 

「そうっスか。いやあ、アクセサリにアラームをセットするの忘れてて、起きたのが集合十五分前。思わず叫んだっスよ。デミィッ!」

 

あ。

 

「ややっ。データベースにない単語を認識しました」

 

こうしてポンコツは英語の感動詞、しかも悪態表現を習得したのだった。

その後、護送車の中で皆に事情を説明。

皆は軒並み同情を示したが、マティアスは珍しく腰が引けていた。

コイツもシズカ同様、看護プログラムを搭載していたポンコツに振り回された一人なのである。

当時のポンコツの思い出話をしつつ、目的地である旧市街地に到着した。

だが、ここからが大変だった。

共に行動するアブダクターを見たベアトリーチェが、大興奮のあまり感動詞を連発。

その度にポンコツが、データベースにない単語をいちいち登録をしていく。

戦闘が始まったら落ち着くかと思いきや、覚えたての感動詞を好き勝手に使うポンコツに、俺とマティアスの集中力は乱され、戦闘はグダグダ状態に。

戦闘が長引き、ビリーを筆頭とした皆の悲鳴と雄叫びと罵詈雑言の回数も急上昇。

そこでもポンコツは、データベースにない単語を登録をし続け、そのたびに棒立ち状態になるので、機能停止回数が恐ろしい勢いで増えていく。

どうにか無事にボランティアが終わった時、疲れ切った皆から、プログラムを何としてでも削除するよう嘆願されてしまった。

俺も当然異論はなく、今日中に削除する事を約束したのである。

 

◆

 

この時期の砂漠は、夏の灼熱地獄からうって変わって、昼間でも寒風吹き荒ぶ厳冬の地となる。

画像データでしか見た事はないが、古代のこの地域は、海に面した比較的温暖な地域だったらしい。

今ではその名残は、視界の向こうにある鋼鉄船くらいだと思っていた。

ただ最近知ったのだが、この砂漠の海抜は低く、さらに先にいくとマイナス百メートル以上の箇所が増えていき、最終的にはマイナス数千メートルに達する箇所もあるという。

それもまた、海があった名残と言えるのかもしれなかった。

 

「ユウさん。何をぼんやりしていらっしゃいますの」

 

シズカの声に、現実に引き戻された。

そう、今は資源回収ボランティアが始まる直前である。

ボランティアの内容自体はたいした事はない。

今回は、シズカに現時点でのポンコツを見てもらう事が一番の目的なのだ。

だが、今のポンコツと一緒に戦う事は、憂鬱の以外の何者でもない。

現実逃避をしたくなるってもんだ。

思わず舌打ちし、自分でもかなり怖い舌打ちになったと思ったが、気遣う心の余裕はない。

 

「このクソったれな現状から逃避してたんだよ」

「よほど、私のプログラムがお気に召していないようですわね」

 

俺はシズカの方を向き、口の端を釣り上げた。

精神的にタフなシズカは怯む事はしなかったが、その目には不機嫌と不審と不安の色が宿っているのを見逃さなかった。

 

「フ、フハハハハハハハ! ハーッハハハハハハ!」

「え」

 

突然笑い出した俺に、さすがのシズカも顔を引きつらせたようだが知ったこっちゃねえ。

 

「すぐにわかる。そのために今回のボランティアでは、俺のアクセサリの通信を、お前にも聞けるように設定したんだからな。刮目しろ。そして聴け! この天と地が、理不尽と不条理に満ち溢れ、俺達若造の想像を遥かに越える事象が存在する事を、その身を持って知るといい!」

 

無意識のうちに、アーベルのモノマネは入ったか? まあいいか。

シズカは不愉快そうに顔をゆがめ、俺に言い返そうとした時だった。

 

「デミィッ。複数のアブダクターの反応を感知しました」

「え!?」

 

ポンコツの報告に、シズカが思わず声をあげる。

言うまでもなく、アブダクターの出現に驚いたのではない。

それでもあえて俺は、怪訝な表情をしてみせる

 

「どうした? アブダクターが複数いること自体、いつものこったろ」

「いえ、そうではなくて」

「さあさあ。敵対勢力の妨害に対応しつつ、資源を回収してください」

 

シズカは明らかに戸惑った表情でポンコツを見るが、フルフェイスを被ったポンコツの表情は当然見えない。

見えたところで、いつもどおりの無表情だろうが。

出現したのは、赤と紫の汎用二脚と小型アブダクターである。

戦闘区域ギリギリで、二脚がそれぞれ離れて出現したのは好都合だ。

戸惑うシズカに構わず、俺はゴーグルと防護マスクを身につける。

 

「俺とアクセサリとで紫の方を叩く。紫はアクセサリを掻っ攫う事に熱心な上に、アクセサリもアクセサリで何故かアイツに構おうとするからな。資源回収は任せていいか」

 

俺の台詞に、シズカもすぐに表情を改めて頷いた。

 

「よろしくってよ。私が資源回収をしている間、私のアクセサリも貴方達と戦わせます」

「了解。くれぐれも気をつけてくれ」

 

コイツのこういう気持ちの切り替えの速さやドライなところ、そして効率重視の戦闘は、ボランティアではかなり助かってるんだけどな。

むしろ、ボランティアにおいては、俺との相性はいいくらいだ。

そしてボランティアはスタートした。

荊で真っ先に紫の汎用二脚に接近する。

 

『あわわ。敵、発見。速やかに排除して下さい』

 

ポンコツは無感情に感動詞を交えながら報告し、暢気な足取りで間合いを詰めながらロケランをぶっ放した。

 

『おかしいですわ。あのアクセサリ、一体どうしたっていうんですの?』

 

おーい、独り言が筒抜けだぞー。

ついでに言えば、それは俺が言いたい台詞だー。

シズカの独り言は聞き流し、目の前の敵に集中する。

俺一人では厳しかったかもしれないが、高火力の武器を持つポンコツと、シズカの優秀なアクセサリの手助けもあって、紫の二脚のヘルスゲージはゴリゴリと削られていく。

 

『うひょー。敵アブダクター、損壊率五十パーセント。オウサム』

 

……集中だ。集中しろ、俺!

ムラサメで左腕を溶断し、バーバラで鳥篭(ケージ)を攻撃し続ける。

強化に強化を重ね、ハゲそうになりながらモジュラー付けをした武器の威力は覿面で、面白いようにアブダクターは怯み続けた。

俺は現状無傷で済んでいるが、アクセサリのほうはそうはいかない。

ドラッグダウンでヘイトを稼いで、アクセサリから目を逸らすように仕向けなければ。

右腕を突き出し、荊を射出。

赤い荊が敵の足元に巻き付き、俺は渾身の力で荊を引いた。

目論見どおり、奴は俺のほうに向かってくる。

よしよし! あと少しでドラッグダウンも完了する。

無力化したら、一斉攻撃だ!

捕縛荊の力は伊達ではなく、瞬く間にドラッグダウンは完了。

 

『敵アブダクター、一時的に無力化。追撃を提案します。イエイ』

 

歯を食いしばり、アブダクターを睥睨する。

悪ぃな、アブダクター。

お前には何の恨みはねーけど、八つ当たりの的になってくれや。

 

「おおおりゃあああああ!!」

 

雄叫びと共に、バーバラで鳥篭を集中攻撃。

敵のヘルスゲージは急速に減り、アブダクターは絶叫と共に、機体を緑色に染めつつ崩れ落ちた。

 

『よーしよしよし。敵アブダクターを撃破しました。他の敵アブダクターも排除して下さい』

『やっぱりおかしいですわよ!』

 

シズカの声に、俺はすっ呆けて答えた。

 

「何がおかしいんだよ。アブダクターは倒したぞ」

『違いますわよ! アクセサリの事ですわ』

 

俺は残り一体のアブダクターの元へ向かいながら、シズカと応答を続ける。

 

「アクセサリがおかしいのは、いつものこったろ。一律戦闘AIは残念仕様なんだから」

『とぼけてんじゃありませんわよ。貴方のアクセサリ、さっきから何なんですの? 俗な上に品のない感動詞を口にして!』

「手前のプログラムのせいだろうがあああっ!」

 

ついに鬱憤が爆発し、声を荒げて訴える。

 

「どんなスパゲティプログラムを突っ込んだんだよ、えぇ!? 手前のプログラムを突っ込んでから、挨拶すらマトモにできなくなったんだぞ! スパゲティプログラムじゃなかったら何だ、コミュ障育成プログラムか!? あ!? いらねー。そんなプログラムいらねー。面倒くせーコミュ障は、手前だけで手一杯じゃあああ!」

『お黙りなさい、この粗悪なジャガイモ風情が!』

 

罵声を浴びせるが、こんな程度でシズカが怯むわけがない。

 

『私のプログラムはどこに出しても恥ずかしくないものです。その証拠にジョブズさんも、咎人なのに大したものだと誉めて下さって──』

「知らねーよ! 誰だよそれ!」

『まあ! ジョブズさんも知らないなんて、本っ当にこの下卑たジャガイモは』

『ヒャッハー。敵、発見。速やかに排除して下さい』

 

ポンコツの報告に、俺たちは思わず口をつぐんだ。

何か、さっきより酷くなっているような気がするんだが、気のせいか?

気のせいじゃねーよな、だってポンコツだもんな、ハハッ!

 

『アクセサリは、究極の美を体現した完全な存在なんですのよ。なのに何故こんな事に……』

「ヒトに近づけようとしたら、完全さなんて崩れるに決まってんじゃねーか」

 

嘆くシズカに、俺は呆れて言葉を吐き捨てた。

俺は意識を切り替え、こちらに向かってくる赤い二脚に視線を定める。

コイツを倒せば、ボランティアは成功したようなものだ。

赤い二脚は立ち止まると、両肩についているミサイルポッドの砲門が開いた。

荊を射出するまでもなく、発射されるミサイルをステップでかわしたが、

 

『きゃーん。損壊率、規定値を突破。一時的に機能を停止します。ホーリーシッ』

 

ポンコツには見事に当たったようだった。

敵の荷電粒子砲の範囲から逃れつつ、ポンコツを蘇生する機会を窺う。

 

『ふえぇ。現在、ダメージにより機能停止中。回復を要請します。アサップ』

 

うぜえ! 回復したくねえええっ!

だが、これでも高火力の戦力なのだ。

荷電粒子砲の掃射が終わった隙に、荊を射出してポンコツを叩き起こした。

 

『うほほーい。機能の修復を確認。戦闘に復帰します。ウラー』

『いやあああ! そんな俗な言葉を口にしないでえっ!』

 

シズカは叫ぶが、当然聞き入れる奴は誰もいない。

とりあえず、兵装を引っ剥がさないと。

ミサイルポッドに取り付き、溶断を始める。

再びアブダクターは立ち止まり、荷電粒子砲をぶっ放した。

俺には直接の影響はないが、シズカの悲鳴が耳に飛び込んできた。

 

『クソ虫、どもが……』

「シズカ!」

 

荷電粒子砲の直撃を食らって、戦闘不能になったようだ。

しっかし、酷ぇ言葉だな、おい。

ログを見れば、シズカのアクセサリも揃って機能停止状態になっている。

すぐさま、ポンコツに蘇生優先のコマンドを送った。

 

『マンマミーア。了解しました』

 

さっきから気になっていたが、コイツの使う感動詞がどんどん訳わからなくなってるぞ。

どこで覚えてんだよ、このポンコツは。

俺の疑念など知る良しもないポンコツは、緊張感など全くない足取りでシズカの元へ向かった。

俺のほうもミサイルポッドの溶断を完了し、地上に着地したと同時に、シズカのアクセサリを叩き起こす。

立て続けに荊をアブダクターに向けて飛ばし、ドラッグダウンを仕掛けた。

先ほど同様、ヘイトを稼いで注意をこちらに向けるためだ。

 

『ほらよ。蘇生しました』

『今までにない最悪の蘇生ですわ』

 

ポンコツが無事にシズカを蘇生したものの、シズカの不機嫌は収まる事を知らない。

 

『やれやれ。他の咎人と会話する権利は得ていますか? その場合は、私ではなく直接本人に話しかけて下さい。ファッコフ』

『ユゥゥゥウさあああああん!!』

「俺のせいじゃねーぞ!」

 

何はともあれドラッグダウンは成功。

どうにか建て直しは出来た。

だがこの後も、ポンコツは様々な言語の感嘆詞を交えながら戦い続け、その度に俺とシズカとで言い争いが勃発。

先ほどのボランティア同様、戦闘は長引いた上にグダグダ状態となった。

しかも間の悪い事に増援まで登場。

俺とシズカのストレスはピークに達し、言い争いは激化。

資源回収をアクセサリ達に任せ、アブダクターを適当にあしらいながら、ついには取っ組み合いの大喧嘩となった。

ポンコツは、どこまでもマイペースにデータベースにない単語を登録していき、その都度立ち止まっては、ご丁寧に機能停止状態になる。

様々な悪循環のなか、今までにない最低の内容のボランティアは、シズカのアクセサリが拾った資源を最後に、どうにか終了したのだった。

 

◆

 

「ねえ、ユウさん」

「んだよ」

「見てくださいな。砂漠の砂が夕日を浴びて煌いていますわ。砂に煌く小さな小さな光。まるで、この世界の命の儚さと美しさのようだと思いませんこと?」

 

そう言うシズカの端正な横顔は、砂埃で酷く汚れている上に、疲労の色が濃く滲み出ていた。

薄い色の唇はささくれ、フードからのぞく緩やかなウェーブを描く髪も、パサつき艶を失っている。

おまけに、コートはボロ布同然と化し、その背中には俺の靴跡がくっきりと残っていた。

 

「砂が煌くのはガラスのような成分があるからでしょうね。でも、この煌きを見るたびに切なくて、とても愛しい気持ちになるんですのよ」

 

だがその目に浮かぶ表情は、まるで少女のような無邪気と純粋な賞賛が宿っていた。

 

「お前の言うとおり、砂漠の砂を作っているのは、ガラスの材料にもなっている石英だよ」

 

俺は愛想なく応える。

俺の今の有様も、シズカと似た様なものだ。

既に外しているが、ゴーグルは割れ、防護マスクの吸収缶はどこかへ吹っ飛んで使い物にならなくなっている。

さらに、顔を含めた体のあちこちは熱を持ち、さっきまで鼻血が止まらなかった。

 

「石英は化学的に安定していて水に溶けにくい上に、機械的な強度も高いから、岩石が風化した時に、石英だけは最後まで砂として残りやすい。それが太陽光に反射して輝いて見える時があるんだとさ」

「貴方も変なところで知識がおありですのね。でも、小さくとも美しいものが最後まで残るなんて、ロマンチックじゃありませんこと?」

「んなもんか?」

「女性にもてたいのなら、そのあたりの感性も磨いた方がよろしいですわよ」

「余計なお世話だよ」

 

砂漠に夕闇が迫る時刻となっていた。

もはや俺達には、自分の意思を主張する気力も、蔑み罵り合って戦う意思も失せていた。

不毛な戦いの果てに俺達の間に残ったのは、増えた刑期──ボランティア中の私闘は当然処罰対象である──と疲労だけだった。

稼動中の溶融炉のような光を放ち、地平の向こうへと沈んでいく太陽を、俺達は護送車を待ちながら、並んで立って見送っていた。

 

「ねえ、ユウさん」

「んだよ」

「私はね、心配をしているんですのよ」

「何のだよ」

「貴方のアクセサリの扱いについてですわ」

 

シズカの口調は、先ほど取っ組み合いの大喧嘩をした女とは別人のように穏やかだった。

 

「アクセサリは、基本的には大切に取り扱うものですわ。だって、PTから支給されたものですもの。個人のモノではない。でも、その事実を抜きにしても、関心を持って大事に取り扱うものだと思っておりますの」

「前に言っていた、生きた証ってやつだからか?」

「それは、私個人の勝手な考えですわ」

 

ささくれた唇に笑みを浮かべるシズカ。

 

「アクセサリは咎人の生活に欠かすことの出来ない、大切なパートナーですのよ。それを粗末に扱うという事は、自分の生活、もっと言うなら、命すらも粗末に扱っているように私には見えますの」

 

端正であるがゆえに冷たさも感じるその顔は、オレンジ色の光に染まっているせいか、今は暖か味を帯びて見えた。

 

「貴方には成したい事がおありなのでしょう。だから、戦う事が嫌いなのに戦い続けている。なら、もう少しパートナーの扱いは、丁寧にしたほうがよろしいんじゃないかと思いましたの」

 

驚きである。

あのシズカが、俺の事を気遣ってくれたのだ。

それでもいつもなら、素っ気無い返事であしらっただろう。

だが今は、疲れのせいもあって強がる気力が湧かなかった。

 

「せっかく気遣ってくれたのに悪ぃな。うちのアクセサリがポンコツで」

 

素直な気持ちで詫びると、シズカは視線を落とした。

 

「私が組んだプログラムは、あくまでもデータベース内にある感動詞を、定型文の語頭と語尾に付け足すだけのもの。でも、貴方のアクセサリは何故か、ヒトが発した感動詞を積極的に取り入れようとしましたわ。まるで小さな子供が、周囲の知らない言葉を聞いて、覚えて、積極的に口に出していくような。そんな風に見受けられましたのよ」

「お前のプログラムが突っ込まれる前は、そんな様子は微塵となかったぞ」

「そこが、不可解なところなんですけどね」

 

俺は頭をかいた。

 

「とにかく、お前のプログラムは削除させてもらう。気持ちだけ、ありがたく受け取っておくよ」

「この様じゃ仕方ありませんわね。私もジョブズさんにたった一度誉められただけで舞い上がっていた、未熟な小娘ということを思い知りましたわ。まさか、あんな事になるなんて。貴方の仰った通り、この世界には私たちの知識や経験が役に立たない事が、まだまだたくさんありますのね」

 

そして頬に手を当て、そっと溜め息をつく。

 

「今回はアクセサリ道の奥の深さを知っただけでも、良しとしましょう」

「俺を巻き込まないなら、いくらでも頑張れ。俺は俺なりにアクセサリをどうにかするわ」

「あら、ついに改造に手を出すんですの?」

 

驚きつつも嬉しそうなシズカに、肩をすくめる。

 

「既に出しているんだよ。さっきお前が言った『アクセサリを粗末に扱う事は、自分の命も粗末に扱う事』っていうのに近いの、最近思ってな。ただ、お前の思うようなものじゃねーよ」

「……何となく予想はつきますけど、頑張って下さいな。楽しみにしていますわよ」

「期待値は下げておいてくれ」

 

俺が溜め息をついた時だった。

 

「おい。護送車が到着しました。PTに帰還しましょう。モフュフュ」

 

相変わらずなアクセサリの報告に、俺とシズカは固まり、そしてガックリと肩を落とした。

 

「本っ当に酷いですわね」

「お前がまいた種だ。後もう少しだけ付き合えよ」

 

乾燥した冷気と砂埃を含んだ風が、俺達を急き立てるように強く吹き抜けていく。

 

「ところで、さっきから言ってるジョブズってマジ誰よ?」

「本当に呆れた物知らずですわね。後で夕飯でも食べながら教えて差し上げますわ」

「奢りか?」

「むしろ私の方が、授業代として奢っていただきたいくらいなんですけど」

「割り勘で頼む」

「貴方って人は、せめて人並みの甲斐性くらいは身に付けたらいかが?」

 

その風に押されるように、俺たちは疲れた体を引きずって護送車に向かうのだった。

 

◆

 

俺達を振り回したプログラムは、その日のうちにシズカ本人の手によって削除された。

だが疑問も残った。

アクセサリが、積極的に単語を取り入れようとしていたことだ。

調査したところ、単語の取得範囲は俺達の周囲だけでなく、PT全域にまで広げていた形跡があったという。

その行動について、シズカも、ユリアンも、そして改造に協力している技術者達も、明確な答えを出すことができていない。

どちらにしても、その後のメンテナンスでは全く異常は見られず、ポンコツも良くも悪くも元通りとなり、いつもの憂鬱な日常は続くのだった。

 

<咎人、いつものように振り回される:終わり>

 




ここまでお読みいただきましてありがとうございます!
誤字、脱字、言い回し等の変更がある際は、都度手を入れていきます。

一点、お断りをさせていただきたく。
この物語でアクセサリの発言の中には、厳密には感動詞と呼べないものも含まれておりますが、ニュアンスとして捉えていただければ幸いです。

そして、お詫びを。
シズカさんのファンの方、申し訳ありませんでした。
喧嘩両成敗ということで、ご容赦いただければと。
男女問わず、綺麗で涼しげで達観したキャラを見ると、徹底的に崩したくなる性質の悪い持病を持っておりまして、見事にその犠牲となりました。
シリアスな展開だったら、ちゃんとキャラクター性を尊重できるんですけど、そればかり書いていると、反動でどうしても崩したくなるんですよね。
治療法を知っている方がいらっしゃいましたら、こっそり教えてください。

今回の話は、ネタだけだった部分を大幅に加筆し調整しての投稿となりました。
すでに連載が終わっている事と、続編の投稿の見通しが立っていないため、習作として、チラシの裏扱いとする事にしました。
チラシの裏への投稿を、一度やってみたかった、というのもありますw
なので続編の投稿を始めた際に、幕間としてちゃんと投稿しなおすかもしれませんし、このままかもしれません。

テーマになった「感動詞」ですが、あまりの数の多さにビックリするのと同時に、その多彩な表現を使いこなせる事こそが、人間性の表れなのかなとも思っています。
そんな感動詞を、この物語のアクセサリに使わせたらどうなるのか、そんな好奇心から書いた物語です。
何となく予想通りの展開にはなりましたが、お読みいただいた皆さんの大切なお時間に、少しでも楽しさを生み出す事が出来たら幸いです。

なお、活動報告に補足を書かせていただきました。
お時間に余裕があり、興味のある方はご覧いただければと思います。

それではまた。

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