本音side
資料で見たときは何もわからなくて、謎だらけ。
それで、初めて見たときは無表情で、何を考えているかわからなかった。
勇気を振り絞って話しかけてみると、少し無邪気で面白かった。
君の声は最初の挨拶しか聞いたことはなかったけどね。
ただ、ある人達を見てる時だけ少し羨ましそうな目をしていた。
それでね、試合すごかったね。見惚れてしまったんだよ。君が飛んでいる姿に。
でも、なんで眩しそうにあの人達を見てるの?みんな同じじゃないの?
試合が終わって寮の部屋に向かってアリーナを出ようと歩いていたらAピットの出入り口で君を見かけた。
耳を手で塞いで首を横に振って後ずさる君を。
一瞬だったから間違っているかもしれないけど、泣いていたの?
立ち去った君を呆然と見ていた私は、ふとAピットを覗くとあの人達が話し合っていた。
君にはどう写ったの?
知りたい。
君はどんな風に生きてきたの?
気になって仕方なかった。だから君のもとへ歩き出した。
「...ツッキー、どこにいるかな〜?」
△▽△▽△▽△▽△
僕は何をやっているのかな?初めからわかっていたことだった筈なのに、戻れないことなんて今更なのに。
手を伸ばしても掴んでくれる人はここにはいない。一人でいたいけど、怖いなぁ。苦しいなぁ。
あの時の記憶が、声が、こちらを見ている目が、そんな映像が頭の中に流れて、更にズキズキと痛む胸を押さえても何も変わらない。怖い。寒い。痛い...
コンコンッ
「ツッキーいる〜?」
ベッドの上で頭を抱えていると外から聞こえる声。
聞いたことがある声。優しい声。
「...いないの〜?ってあれ?開いてる...お邪魔しま〜す」
怖い。来ないで。一人にしないで。壊れる気がする。失う気がする。助けて。もうこれ以上傷つきたくない。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
頭の中で渦巻く何か。拒絶する何か。救いを求める何か。滅茶苦茶で気持ちが悪い。
「...ツッキー?」
来ないで。助けて。来ないで。助けて。来ないで。助けて。
グルグルと回る思考。
「つ、ツッキー!?どうしたの!?」
近づく声。わからない。なんで?なんで?出来損ないの僕にそんな優しい声を聞かせるの?僕はもう...
「...い...だ...いや...嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ...」
「ツッキー?」
「...一人にしないで。無視しないで。怒らないで。そんな目で見ないで。僕出来なくても頑張るから....見捨てないで...」
「ツッキー!?大丈夫なのツッキー!?」
ズキズキと痛む胸を押さえても耳を手で塞いでも次々と浮かぶあの時の記憶。
そしてそれらは頭の中でプツン、と聞こえた音と共に無くなった。
顔を上げると隣には涙目の本音さん。ちょこっと誰でもいいから聞きたくなった。
「あ、ホンネさん」
「ツッキー!よかったぁ〜大丈夫?」
「ねえホンネさん...?」
「ど、どうしたの?」
――僕、なんで生きているのかなぁ?
本音side
怖かった。
さっきまでブツブツ何かを呟きながら大量の汗を流して、目を見開いて虚空を見ていたツッキー。
ツッキーの幼い頃のことはたっちゃんから聞いている。酷い。そう思った。
必死に声をかけても何も聞こえてないようだった。でも、突然それらは止まって、顔をあげたツッキー。
こっちを向いて目が合う。驚愕した。そこには絶望しか写ってなかった。
「ねえホンネさん...?」
「ど、どうしたの?」
私はツッキーをまっすぐ見た。
そしてツッキーは、目から涙を流しながら何もかもを諦めたような笑を作り、そして...
「僕、なんで生きているのかなぁ?」
その言葉を聞いた瞬間に私はツッキーを抱きしめた。
なんでそうしたか分からなかったけど、体が動いていた。
「...なんで...抱きしめたくれるの?僕は出来損ないだよ?」
なんで、なんでと呟くツッキー。
「...でも、暖かい...」
ツッキーは、ゆっくりと私の背中に手を回してきた。
「...暖かい...暖かいなぁ。まるで束さんみたいだ。暖かいなぁ嬉しいなぁ。あはははは...はは...は......うぅ...」
ツッキーは私を抱きしめ返し、静かに泣いていた。
ああ〜ダメだなぁ〜やっちゃったな〜。
好きになっちゃった。うわぁ。なっちゃったよ〜。
無表情だけど一緒にいて楽しかった。
微かだったけど優しかった。
試合の時はかっこよかった。
そして、今の弱々しさが愛しいなぁ。
もっと知りたい。もっとツッキーを知りたい。
さっき束さんみたいって言ってたって事は、そう言う事なのかな?
...えへへ。だったら負けないもんね〜絶対にメロメロにしてやるのだ〜♪
私は頬を赤めらせて、ニコニコとこれからの事を考えていった。
「えへへへ。ってあれツッキー寝ちゃった?う、動けない...ま、いっか〜♪お休みツッキー♪」
......(;¬_¬)