頑張りました。
明久 side
「……ほほぅ、なるほど」
二年F組と書かれたプレートの前で思わず溜め息を吐く。
「プレートが壊れてる上に扉が障子と来たもんだ……」
プレートは左半分が割れてなくなってる上に障子だよ。参っちゃうね……。
廊下を走りながら横目で見たけどAクラスの設備はこれとは全くもって逆だった。
椅子はリクライニングシートでノートパソコンが机に一台完備されていたね。
なんか、個人用の冷蔵庫もあったような……。
「いや、過ぎたことは気にするな。現実を見ろ、現実を」
このクラスで明るく過ごすためには先ずは友達からだ!
「――と、そう言えば遅刻してるんだったな」
遅刻はマズイ。第一印象を下げるかも……。
「何事も最初が肝心だ。……行くぞっ」
と、思うと、僕はすぅっと大きく息を吸い込み、明るい未来に続くドアを開けて――、
「すいません、ちょっと遅れちゃいました♪」
?「早く座れ、このうじ虫野郎!」
回れ右して帰りたくなるような罵声が響いた。
あれ、そういえばこの野太く野生味たっぷりでゴリラが人間に生まれ変わって発するような声、聞き覚えのあるような……。
「って雄二じゃないか。何やってるのさ」
雄「おぉ、明久か。先生が遅れてるらしいから代わりに教壇に上がってみたんだ」
こいつは坂本雄二。僕の友達、というより悪友だ。
「雄二が代わりに?なんで?」
雄「一応このクラスの代表だからな」
と言って雄二が偉そうにふんぞり返る。学園最低クラスの代表になったことは別にそこまでえばれることじゃない。
雄「お前こそ、ここでクラス合ってるのか?……いや、いくらお前でも文字を読み間違えることはないか」
「雄二、それはどう言う意味さ」
雄二が呆れた顔で僕を見てくる。
雄「どうせ、名前の記入ミスでもしたんだろ」
「違うよ!……はぁ、実は色々理由があってテストを途中退席しちゃったんだ」
僕がそう言うと、雄二は悪そうな笑みを浮かべ、
雄「そうか、そいつは好都合だお前がいるとこれから始まる《戦争》がやり易いからな」
「そう言ってもらえると僕としても嬉しいよ」
雄二のいう戦争とはこの学校独自のシステム、試験召喚戦争のこと、略して試召戦争のことだ。クラス単位で戦い、その戦争で勝てば設備の交換ができる、という下位クラスにとても良いルールがあるが、負けた場合は設備のランクが下がり、三カ月間の宣戦布告の禁止というおまけ付きのルールもある。雄二もやはり戦争をする気があるみたいだ。
「……それにしても流石Fクラスって感じだね」
雄「……あぁ、なんつっても設備が卓袱台と座布団だからな」
Aクラスと真逆の意味でこれも学校の設備なのかな……。取り敢えず空いてるスペースを探して座るとしよう。
?「えーっと、ちょっと通してもらえますか?」
後ろから覇気のない声が聞こえてきた。
?「それと席についてもらえますか?ホームルームを始めますので」
ホームルームって言ってたしどうやらこのクラスの担任みたいだ。
「わかりました」
雄「うーっす」
僕たちはそれぞれ返事をして取り敢えず空いてると思われる席に着いた。
?「おはようございます。Fクラス担任の福原慎です。よろしくお願いします」
福原先生は名前を書こうとしてやめた。理由はいたって簡単。チョークが用意されてないからだ。……おかしいだろっ……!!
福「皆さん卓袱台と座布団は支給されてますか?不備がある場合は申し出て下さい」
先生がそう言うと皆は口々に文句を言い始めた。
『先生、座布団に綿が殆ど入ってないです』
福「我慢してください」
『先生、窓が割れていてすきま風が寒いんですけど』
福「我慢してください」
まぁ、教室がこれだしね。皆色々と文句はあるだろう。
せっかくだし、僕も思っていた不満を言おう。
「先生、卓袱台の脚が折れてるんですけど」
福「我慢してください」
「無理です!」
流石にこれは我慢できない。まともに勉強だってできやしない。
福「ははは、冗談ですよ」
と言って笑いながら懐から木工用ボンドを取り出す。……先生、それも冗談ですよね!?冗談だって言って下さい!!
福「その他必要なものがあれば各自で調達するようにしてください」
何だ、このAクラスとの異常な差は?設備さえ酷いのにこの設備を補うこともしてくれないなんて!?来年は頑張ってAクラス狙おうかな。
福「それでは、自己紹介でも始めましょうか」
と言われ、自己紹介が始まった。
その後、廊下側の人から淡々と名前を告げるだけの作業が続き――、
?「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
彼、いや彼女と言った方がピンとくる秀吉。僕の友達で自分は男だ、といつも言い張る。絶対女の子だと思うけどな~。
そんなこと考えてるとまた――、
?「………土屋康太」
僕の友達の土屋康太だ。彼を呼ぶときは僕は土屋でも康太でもなく学年的に有名な渾名で呼んでいる。
それにしても男ばっかりだ。Fクラスにもなると女の子なんていないのかな。
?「――です。ドイツ育ちで日本語で会話は出来るけど読み書きが苦手です。趣味は――」
おっ、珍しく女の子の声だ。どんな子だろう。
?「趣味は、吉井明久を殴ることです♪」
だれだっ!?そんな趣味は神が許してもこの僕が許さないぞっ!!第一殴られる本人が殴られることを公認していないっ!!
「あぅ、島田さん」
島「ハロハロー、吉井。今年もよろしく」
僕と島田さんが会話を交わすと、
『あいつがその吉井ってやつか……』
『あぁ、そんなドM漫画にしかいないと思ってたが……』
『『『変態だな』』』
「待って、皆誤解しないで!!」
あぁ、これで僕は女の子に殴られるのが大好きなドMの変態だ。今年は楽しく学園生活を送れるかなぁ……。
「――です。よろしく」
ん?気づけば僕の番じゃないか。明るく自分をアピールしないと。……さっきの失墜を取り戻す為にも!!
「えーっと、吉井明久です。気軽にダーリンって呼んでください♪」
『『『ダァァーーリィィーーン!!』』』
確かに呼んでとは言ったけどね!?
「すいません、忘れて下さい。……あと、ドMっていうのも忘れて下さい。とにかくよろしくお願いします」
と、苦笑しつつ席に戻る。こんなに茶目っ気たっぷりの冗談を本気にするなんて思わなかった。……うぷっ。思い出すと気持ち悪くなってきた。
雄「よかったじゃないか、明久。進級そうそうモテモテだぞ」
「全っ然嬉しくない!!」
こいつ、完全に僕をからかってやがる……。
?「あの、遅れて、す、すいません。」
『『『えっ?』』』
誰もが驚きの声を上げる。普通は驚くだろう。何故ならこの成績最下位クラスにテストで常に上位に名を残している超優等生が入ってきたのだから。
福「丁度よかった今自己紹介をしてるところなので姫路さん、お願いします」
姫「は、はい。姫路瑞希です。よろしくお願いします……」
『はいっ。質問です』
名前を言い終えたらすぐに姫路さんに質問がはいった。
姫「は、はい。なんでしょう?」
『どうしてここにいるんですか?』
皆が今疑問に思ってることを聞いてくれる。
「その…テストの最中に高熱を出してしまって途中退席してしまいまして……」
姫路さんが理由を言うと、雄二が小声で話しかけてきた。
雄「おい、明久。姫路も途中退席したのか?」
「うん、さっきも言ってたけど熱を出しちゃったんだよね。僕はそれに付き合って行ったんだ」
まぁ、期末テストで二人も途中退席なんてちょっとおかしいよね。
雄「ふむ…………」
僕がそう言うと、雄二は考え事に耽ってしまった。どうしたんだろ?
姫「い、一年間よろしくお願いします」
と、姫路さんが結びの言葉を告げ終えると、最後に雄二の番だ。
福「坂本くんはクラス代表でしたよね?」
名前を呼ばれると、雄二は先程と打って変わって自信に満ちた顔で福原先生の言葉に頷き、教壇に上がっていく。
雄「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは坂本でも代表でも好きなように呼んでくれ」
そして少し間を開け、
雄「さて、皆に少し聞きたいことがある。……かび臭い教室、壊れかけの卓袱台、薄く汚れたボロボロの座布団。……これに対してホテルのようにデカイ教室、机はシステムデスクに、座席はリクライニングシートらしいが――」
皆が唾を飲んで待つ中、雄二がやっと続きの言葉を発した――。
雄「不満はないか?」
『『『大ありじゃあっ!!』』』
雄二はこの反応を期待していたかのようにもっと自信満々な顔になり、
雄「だろう?俺だってこの設備には大いに不満を抱いている」
『そうだ、そうだ!』
『いくら学費が安いからってこの設備はあんまりだ!』
『そもそもAクラスだって同じ学費だろ!?』
雄二が口元に悪そうな笑みを浮かべる。この顔は本気だ。結構な間付き合ってきたからわかる。
雄「皆、聞いてくれ。これは代表として提案するが――、」
俺たちFクラスは、Aクラスに《試召戦争》を仕掛けたいと思う」
感想でも入れてくれれば。
誤字脱字も受け付けてます。
次回から少しだけ変わります。