D・スペードの人生やり直し   作:甚三紅

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大空戦~未来編導入部まで。
いつもながら微妙な区切りです。


十話

さて、明日はいよいよ大空戦だ。XANXUSのおかげで沢田綱吉は中々にいい具合になってきている。

折角良い材料が揃っているのだ、少しばかり演出をしてもうちょっとくらいこちら寄りになって貰いたい。

もっとも、リボーンがいる以上幻術による誘導や誤魔化しは難しいので沢田綱吉の意思が何より必要になるのだが。

 

 

「沢田綱吉、君に聞きたい事がある」

「スペード…、…オレに答えられる事なら」

 

招集された時間の少し前、並盛中に向かおうとしていた二人に声をかける。どもらなくなった事に妙な達成感のようなものを感じて自然と笑みが深まる。

 

「大空戦は恐らく総力戦となるでしょう。その時、私の相手をした女性は脅威となる可能性が高い」

「回りくどい言い方してんじゃねーぞ」

「フフ、流石リボーン。察しがいいですね」

 

沢田綱吉の為に一から説明してみたのだがリボーンに一刀両断されてしまった。本人はまだ話が分からず不思議そうな顔をしている。

 

「彼女程度、私なら殺せる。どうしますか?」

「ど、う…って…?」

「君の守護者として戦う以上、一時的とはいえ君がボスだ。君の意思に従うという事ですよ。その上で献策しているのです、「あの女はボス、及び他の守護者の脅威となりうる。故に始末してしまう事を勧める。その為の手段として私を使え」こんなところです」

 

いきなり他人の生死の決定権を委ねられ困惑し、夢野みいるの事でも思い出したのか顔を青くする沢田綱吉。

リボーンに視線でまだ早いと咎められたが無視をして私は沢田綱吉に視線を向け続ける。

 

「ッ…オレは、例え敵でも無闇に殺すとか、そういうのは嫌だ。酷い事も、出来ればしたくない」

「それが君の…ボスとしての意思ですか?」

 

こちらの顔を直視はせずともちゃんと自分で考え、自分で答えた彼に目を細める。確認にも頷く様子は予想した通りでありとても満足だ。

 

「では、そのように」

 

 

 

明らかに怪しいリストバンドは巻くふりをして仕掛けを避ける。暗殺部隊のくせに変なところで素直なヴァリアーには笑った。

夜の守護者の彼女は高いプライドから私に手も足もでなかった事に鬼女のように怒っており実に都合がいい。大空戦が始まり毒にやられたふりをして手を抜けば、リングを奪い解毒してこちらに適度に怪我を負わせてくれた。無論、向こうも無傷にはしない。

後は適当に彼女を逃がして泳がせる。色々と激戦があったようで爆発音やら光やら賑やかな事だ。

怒った鬼女は勝利した沢田綱吉側の守護者達を次々と沈めていく。死ぬ前に助けてはいるが、その度にあえて攻撃をくらっているので流石に足元がふらついてきた。

失血と傷の痛みに息が上がる中、最後の仕上げの場面へと移る。

 

凍るXANXUSを背にこちらを愉快そうに見下ろす鬼女。

庇った事で私の血を浴び赤くなった沢田綱吉を背に膝をつく自分。

鬼女は「今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」などと言って調子に乗っているが、思い通りにいって愉快なのはこちらの方なので屈辱は感じない。

 

「沢田綱吉…今ならまだ出来る。どうしますか?」

 

鬼女に目を向けたまま後ろの「ボス」に問い掛ける。

私には沢田綱吉の表情は分からないが、長いようで短い逡巡の後、彼は私への視線を逸らさずに頷いた。

自らの意思で殺人を許容させる。目的を達成した今、目の前の女は邪魔だ。もはや加減する必要はない。

 

鬼女の最期は呆気ないものだった。こちらに突進してきた彼女の心臓にナイフを突き刺して終わり。首を飛ばすなり何なり、派手な最後も考えたのだが流石にトラウマを植え付ける気はない。

死体から夜のリングを奪いリストバンドの穴に差し込む。こういった細かな演出は必要だ。

それにしても疲れた。正直立っているのも億劫で素直に座り込む事にする。

XANXUSが実子ではないやらヴァリアー部隊の襲撃やら、そういった事は他人に任せて息を吐いた。

 

 

「スペード」

「なんですか?」

 

少し休んだ事で体力も回復した為、沢田綱吉を担いで移動している最中に突然リボーンに名を呼ばれる。沢田綱吉を私がわざわざ運んでやるのは今回の事の褒美のようなものだ。

 

「お前、手を抜いただろ。でなきゃそんなに怪我をする筈がねーからな」

「ボスの指示に従ったまでです」

「攻守共に一流のくせに何言ってやがる。攻撃出来なくても守る事は出来たろーが」

 

沈黙は肯定になるのを理解していて何も答えずに足を進めると、こちらの気持ちを察したリボーンはそれ以上何か言う事はなかった。

 

祝勝会に私が出る筈もなく、その時間は自分の傷の回復に務める。見た目は派手に血が出るよう怪我を負ったが深刻なものは何一つありはしない。

そのまま日常に戻るかと思いきや、妙な胸騒ぎを覚えリボーンに張り付く事にした。ジョット程ではないが、こういう勘は外した事がない。

 

バジルとランチアを見送る時にそれは起こる。

まさかリボーンが動けない状態にされるとは思わず、庇う事で一緒にバズーカの弾に当たってしまった。

十年後の世界は初めてだがそこは問題ではない。煙が晴れた途端に突然苦しみ出したリボーンに驚きすぐさま抱えて走り出す。

よく分からないが兎に角「外はまずい」、そう思えて仕方がない。

途中でこの世界の山本武に会えたのは幸運だった。私の存在を怪しまれたがリボーンの様子から急を要すると察したらしく地下基地へと案内して貰い、多少はリボーンの様子も落ち着いた。その後、ジャンニーニより急ピッチでリボーン用の対非73線スーツが作られる。

何もかもが順調にいき過ぎて、始めから準備されていたような気がしてならない。だいたい、リボーンが動けなくなる事からしておかしいのだ。呪いで体が縮んでいようが最高の殺し屋である事に変わりはないというのに。

だが思考に耽る暇は与えて貰えないらしい。リボーンが休む部屋の外で、この世界の山本武に刀を突きつけられた。

 

「んーで、ヒバリ似のあんたは誰だ。小僧を連れてきてくれた事は感謝するけどな」

「十年前、何度か会っていますし夜の守護者戦にも出ていた筈ですが?」

「そんな戦いはなかったぜ、嘘吐くならもっとマシな嘘にしとけよ」

「どういう事です…ここは私達がいた世界の十年後なのでは…」

 

現状を把握するには情報が足なさ過ぎて困惑する。山本武が夜の守護者戦を知らない、と言うのであれば違う未来にきたとでもいうのだろうか。

こちらの困惑具合に何か思うところがあったのか、突きつけられていた刀が引かれる。

 

「守護者とかはともかく、敵ではないみたいだな。小僧抱えてた時のあんた、すげー必死だったし。今日はゆっくり休んでくれよ。つっても、監視はさせて貰うが」

「……、…休ませて貰えるのならばありがたい。監視はどうぞご自由に」

 

監視されたところで痛くも痒くもない為山本武の言葉に頷き、案内された部屋でおさげを解き横になる。ベッドはしっかりした作りで休むには充分だ。

一体どういう事なのか、と服の上からリングを握る。私の記憶は十年前のあの日までしか存在しない、過去ならばいくらでも覚えているが未来の知識は持っていないのだ。

まぁ、こういった節目になりそうな事件にはきっと沢田綱吉らも関わってくる、というのは想像出来る。問題はその沢田綱吉らが「どの」沢田綱吉か、という事だ。

叶うならば、今の私が知る彼であればいい。そう思いながら目を閉じ今日は休む事にした。




ディーノ「落ち着けって!先生があの程度で何かなる訳ないだろ!」
リボーン「ちっ、スペードもスペードだ。あの程度、難なくかわすなり流すなり出来んだろーが」
ディーノ「(あーもう昔っからスペードの事になると面倒くせーなこの家庭教師!どの愛人より溺愛してんじゃねーか)」
リボーン「久々にオレの授業でも受けるか、へなちょこ」
ディーノ「ごめんなさい撃たないで下さい」
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