D・スペードの人生やり直し   作:甚三紅

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継承式編の終わりは拍子抜けするほどあっさりです。最初にちょっとだけ。
10代目達は本編と同じように戦ってました。


十六話

遠い昔の懐かしい夢を見た。

初めてシモンと会った時、自警団を立ち上げた時、仲間との穏やかな日々、最期に見たジョットの泣きそうな顔。こちらの世界で手に入れたものたち。

そして、私が死んだ後に何があって前の世界と同じ道筋を辿る事になったのかを知る。

 

目を覚ますと狭い天井がまず視界に飛び込んできた、寝かされていたらしいベッドに横になったまま視線を右にずらせば窓からは海と島が見える。

今自分が居るのは、シモンの聖地と呼ばれる島の前につけてある船の中だろう。ここまで引っ張ってきたのは沢田綱吉かリボーンか、とにかくありがたい。

 

「ふ、ふふ…そこまで私の辿った道を行きたいですか。三流術士風情が」

 

動いていた犯人のあまりの滑稽っぷりに笑いが込み上げてくる。今は止めてくれるジョットも居ない、どんなに怒ろうが頭を働かせるよう気をつけなければ。

 

イレギュラーである夜のリングを指にはめて炎を灯す。場所は知っている、後はそこに飛べばいい。

 

 

「ごきげんよう、裏切り者のルシファー・ダイヤ」

 

顔も衣服もわざわざ昔の懐かしい姿に変えて、思念体となった彼女の首に鎌を軽く引っ掛ける。こちらの笑顔を見て恐怖に引きつった顔を見るに、私の事は覚えていてくれたようだ。

 

「な、なぜ…私が殺した筈なのに」

「ええ。貴方は完全完璧しっかりと、私の息の根を止めて下さいましたよ」

 

震える声で問う彼女に、あくまでも穏やかに返してやると急に勝ち誇った顔をし始めた。ころころ表情が変わる様は正直見苦しい。

 

「あはっ!私に殺される程度のく」

 

また耳障りな騒音を聞くのはうんざりなので、早々に首を跳ねると地面に落ちる前に霧となり体ごと消えた。

残り滓はどうでもいいのでさっさと背を向け、ボロボロの沢田綱吉と古里炎真に体を向ける。意識を失っている内に順調にパワーアップしたようだ。

審判をしていた筈の復讐者はもういない、死合いは終わったとして引き上げたのだろうか。

 

「もう体調はいいのか?」

 

演出をする必要がなくなり術を解いていると、リボーンが肩に乗ってきて髪に触れる。そういえば髪も結わぬまま来てしまっていた、私とした事がとんだ失態だ。

 

「まぁ、悪くはないですね。と言うか邪魔ですよ」

 

リボーンを掴んで軽く放り、髪結い紐を探したが見当たらず息を吐く。帰るまではこのままでいる他なくいっそ飛んで行こうかとすら考える。

呆気ない結末にどこか茫然としている面々を尻目に、目的は果たした為帰る事にした。沢田綱吉やらにはリボーンが気つけでも行うだろう。

 

 

継承式は完全に流れてしまったが、戦いは終わりシモンを含めた平和な日常へと帰ってきた。

時代は違えど在りし日のジョットとシモンのようで自然と目が細められる。この光景を見れば、きっとジョットも喜ぶだろう。

だからと言って教えの手を緩めたりはしない、素の状態で崖登りくらいは出来るようになって貰う。

鬼やら悪魔やら言われたが、正しく私の名は悪魔(デイモン)なので痛くも痒くもない。

 

ある日の夕方。生身の人間である以上、食事をせねばならず買い物に出かけると古里炎真が不良に囲まれているのを見つけた。

自分の行きたい方向にいたのでその様子を見ていると、こちらに気づいた不良達は怯えた顔をして逃げていく。見た目は確かにほぼ一緒なため、雲雀恭弥と勘違いしたようだ。彼による恐怖政治はこんなところでも効果を発揮するらしい。

 

「いつもありがとうございます」

「私は何もしていませんよ」

 

シモンならばしそうにない情けない表情をして頭を下げる彼に肩をすくめて商店街へ向い、後ろからついてくる気配がしても気にせずに買い物をする。が、帰る頃になっても気配は離れず軽く息を吐いて振り返り、ずっとついてきた古里炎真に目をやった。

 

「何故ついてくるんですか?」

「え、デイモンさんが居るから何となく」

 

目の前の彼は、質問にきょとんとしてさも当然のように答えてくる。

刷り込みされたヒヨコですか?

 

「そういえば、今日転校生がきたんだ。女の子なんだけど、ツナ君や僕を凄く見てて…その…」

 

若干顔を青くして身を震わせる彼の言葉に眉を寄せる。また外からの客だろうか、潰しても潰してもキリがない。

 

「…その件を詳しく話すなら、夕食をご馳走しましょう」

「行きます!」

 

即答し目を輝かせる古里炎真の姿を見ていると、段々餌付けをしているような気分になってくるのは何故なのか。

 

それはさておき、話を詳しく聞くと転校してきたのは二人らしい。片方は西洋、片方は東洋の人形のように綺麗な子だという。

 

「西洋人形の方は蛇みたいで怖いし、東洋人形の方は視線で犯されてるみたいで怖くて…」

 

なにげに酷い言いようなのは、それだけ嫌だったのだろう。

今までのパターンからして良い予感はしない。明日、学校に見にいく事に決めた。

 

「あ、東洋人形の方が『生ゴクツナ、ヤマツナ、エンツナきたー!いっそヒバツナ、ムクツナでツナ総受けキタコレ』とか呟いてたよ」

 

…暗号か何かですか?

 

 

次の日、自分で決めた通り学校へと侵入し沢田綱吉のクラスを外から眺める。以前より術を強めて使っていたが、沢田綱吉と古里炎真の二人は気がついたようだ。こういうところを見ると成長したとしみじみ思う。

東洋人形の方はボンゴレには無害そうに見え、西洋人形の方は裏の空気を感じる。しかも今日何か事を起こそうとしている雰囲気まで感じるので、仕掛けてくるかもしれない。

どうでもいいが、リボーンは今日は私に沢田綱吉を任せ銃弾の補充に行っている。弾は消耗品なので仕方ない。

 

日中は何事もなく終わり、放課後に沢田綱吉が西洋人形の方から呼び出しを受けた。

こちらに視線だけ向けてきたので頷いて返す。屋上に来てくれとはまたベタな。

西洋人形は私には気づけない程度の実力しかないようなので、沢田綱吉の少し後ろでやり取りを眺める。

可愛らしく見えるよう作られた顔で好きだの何だのと言い始める西洋人形。それを沢田綱吉が丁寧に断ると、態度が豹変しボンゴレを手に入れるなどと言いながらカッターで自分を傷つけ始めた。

あまりの変わりっぷりに沢田綱吉は思い切り引いている。

 

「あんたの居場所、無くしてやるから!きゃ」

 

今までの言動からして完全にボンゴレに対し攻撃の意思有りとみなし、叫ぼうとする彼女の口に刃が出たままのカッターを差し込み術を解く。

 

「こんにちは、お嬢さん。どこのファミリーの者か、素直に教えてくれると嬉しいのですが」

「あ…ぁ…」

「綺麗なままでいたいなら、早めに吐くのをお勧めしますよ」

 

カッターを引くのと同時に彼女の意識を奪い担ぎ上げる。自分がやられる覚悟もなく来ていそうなので、尋問は楽だろう。

担ぎ上げられた西洋人形を見て複雑そうな顔をする沢田綱吉は相変わらずだ。

 

「なるべく傷つけたりは…」

「彼女次第ですよ」

 

本当に彼女次第なのだ、軽く返し拠点へと向かう。

予想通り尋問はとても楽に終わり、元凶となったファミリーはあっさりと解体された。人身売買などをしていた事も解体の後押しとなった。

 

さて、沢田綱吉が呼び出しを受けた日、わざわざ屋上の扉前までついてきた東洋人形はどうしようか迷うところだ。

今のところ害はない。彼女はとある財閥の令嬢だが、その財閥に裏との繋がりはなかった。珍しくも清いグループらしい。

事情をある程度知っていようがボンゴレにさえちょっかいをかけなければ、一般人にこちらから何かをする事はないのだが…。




※初代達が指輪の中から10代目達を見ていたら

アラウディ「小動物に完全に懐かれたね」
ランポウ「デイモンもシモンには何か優しいし」
雨月「きっと、彼らには守ってくれる大人がいない事も関係しているのでござろう」
ナックル「そう言えば、持つ者の義務だ、と言って孤児院や教会によく寄付をしていたな」
ジョット「……。…あの飼い犬的ポジションはオレのものだったのに」
G「お前、デイモンが関わると本当に残念だな」
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