D・スペードの人生やり直し   作:甚三紅

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晴れと雷と。

D・スペードの個性、「ヌフフ」は使いません。ル○ンを思い出してしまい笑ってしまうからです。



一話

落ちてきた例の女は本部預かりとなった。下手に外に出しては子供達が危ない、という判断になった為だ。

始末してしまえば楽なものを、と思いはしたがボスの決定に逆らう気はない。何より、ボンゴレと…ジョット、Gが無事ならば大した興味も湧かないのだ。好きにすればいい。

術を解いた女が連れていかれたのは人一人寝泊まりするには十分な部屋。硬いがちゃんとしたベッド、清潔なシーツ、窓もあり日差しも悪くない、更に小さいながらテーブルまである。

私とナックル(私はいざという時の為、ナックルは神父なのでいくらか落ち着くだろうという配慮だ)で連れていったのだが…

 

「倉庫なんて酷い…でも仕方ないよね、怪しいのはあたしだもん」

 

さも悲しいのを堪えて健気に笑っています、といった風な様子で言われた言葉にナックル共々眉を寄せた。

平成の世を知っている私だからこそ部屋が倉庫に見えたのも理解出来るが、この時代としては悪くない部屋なのだ。勿論我々幹部とは比べ物にはならないが。

難しい顔をしたナックルの頭の中では「神父たるもの迷える子羊は受け止めなければ」の呪文で一杯だろう。分かり易いこの男の背中を叩き意識をこちらに戻すと、彼女を部屋の中に入れて外から鍵をかける。扉を閉める前の一言も忘れない。

 

「何をどう思おうが自由ですが、命があるだけマシと思いなさい」

 

 

 

「ああいう手合いは初めてだ。神父としてまだまだ足りんな、オレは」

 

会議室に戻る途中でナックルが独り言のように漏らした。

周りに人の気配はなく、加えて術者である私が一緒だからこそあえて今口に出したと知る。

並んで歩いていた足を止めて私はナックルへと体ごと顔を向けた。

 

「何をどうやっても救えない者はいます。それが分かっているからこそ『ここ』に居るのでしょう?」

「それは…そうだが…」

「貴方が心配している事は予想がつきますし、別に迷うなとは言いませんよ」

 

この男は心配しているのだ。彼女が災いになるのではないかと。どう見てもちょっと感覚はずれているが一般人の女の子なのに、災いとなったらどうすればいいのか、とも。

私にしてみれば馬鹿馬鹿しい限りだが、前の時のジョットを思い出してしまいつい余計な事を言ってしまった。

 

「何が起ころうとも守りたいものを全力で守ればいい。その為の力を持ったのでしょう?」

 

らしくない言葉にナックルは呆気にとられた間抜けな顔をする。途端に気恥ずかしくなり早足で歩き出すと、彼は慌てて後を追いかけてきて私の顔を覗き込んで笑った。

 

「究極に分かり易いな!ああ、オレは守りたいものを全力で守る!まるで神の啓示を受けた気分だ、感謝するぞ」

 

夏の日の、眩しい晴れた青空を思わせる笑顔に私は更に足を早めた。

 

 

 

ある日の午後、庭でランポウとあの女…そう、名前は確か××○○…を見かけた。誰かと一緒ならば庭への散歩くらいは許しているが…あまりよくない話を聞いたばかりだ、姿が見えないよう細工をして二人に近づく。

二人は仲良く並んで芝生に座っていた。ランポウは年も近く話しやすい雰囲気なのだろう。

この二人に術を破られない自信があるため堂々と近づいていく。話し声が十分に聞こえてくる位置で足を止めた。

 

「戦うのが怖いなら戦わなくてもいいんだよ、無理する必要なんて全然ないじゃん!」

「で、でもGもデイモンも怖いし…」

「無理強いするなんてサイッテー!みんなランポウの事いじめすぎるってずっと思ってた。屋敷で働いてる人もそう、使用人全員に戦闘訓練の義務があるとか何様だっつーの!」

 

ボス様と幹部様ですが何か?

おっと、思わず突っ込んでしまった。

××は大きな身振り手振りでランポウに向かって喋り続ける。頭の痛くなる内容に脳が理解するのを拒否しそうだ。

幹部が揃うこの屋敷はいつ襲撃を受けてもおかしくない、自分の身を守るためにも戦闘訓練は欠かせない。そもそもそれを理解して働いている者ばかりの筈だ、自分の命に直結する事なのだから。

 

戦いたくないなら戦わなくてもいいじゃないか。逃げて何が悪い。

まずは話し合いをしよう、暴力は悪い事だ。

 

そうこの女は言い続けている。

若い連中、特に女性の中には強く賛同しボンゴレを抜けると言い出し始めた者もいる。戦闘が嫌なら別に戦わなくても構わないのだが、組織を抜けられるのは困るし危険だ。

抜けるとはすなわちボンゴレの庇護を無くすという事。敵対組織に何をされるか分からないし、下手に情報を持っていたりしたら抜けると言った人間を始末しなければいけない。

平和な平成の日本ならば間違ってはいないだろう。だがここは時代も場所も違うという事を本当の意味で××は理解していない。本気で正しい事を言っていると思い込んでいて、それが無闇に犠牲者を出していると知らずに主張し続けている。

まぁ、間違いだなどと親切にも指摘する義理も義務もないが。

 

「とにかく、嫌な事は嫌だって言っていいんだよ!仲間じゃない!もしそれでいじめられたらガツンとあたしも言ってあげるからね」

 

××は力こぶを作る真似をしながら笑顔をランポウに向け立ち上がる、尻を払い時間だからと一人で中庭から走って出ていった。

 

 

「ランポウ」

「ひゃいっ!!」

 

後ろからランポウの肩に手を置き術を解いて名を呼ぶ。面白い程体をビクつかせ裏がえった声で返事をする様子につい笑ってしまう。

 

「彼女の今の言葉、どう思いますか?」

「う…お、怒らない…?」

 

端的に問うと恐る恐るといった風にこちらの様子を窺うランポウ。薄く笑みを浮かべて頷くと、彼は体を震わせて視線を逸らしながらも口を開いた。

 

「暴力のない世界とか凄くいいと思うし素敵だと思う…逃げられるなら逃げたいんだものね。オレ様痛いのも怖いのも嫌いだし。でも…でも、逃げたら後ろにいる人達はどうなるのかな、て思うと逃げられないし逃げたくない…ジョットに恩返しもしたい、し…」

「フフ、いい答えだ。花丸を差し上げますよ」

「なっ!子供じゃないんだものね!」

 

確かにランポウは小心者で臆病者で時々…いや、結構な頻度でイライラさせられるが震えるだけの子牛ではないのだ。彼の答えにとても満足して誉めたつもりだったのだが、ランポウは拗ねてしまった。

 

「ランポウ。普段の態度がどうであろうと私達は皆、貴方が『漢』である事を知っています。だから幹部である事に誰も不満はない、もっと自信を持ちなさい」

「そんなの…、……」

 

私の言葉にぶつくさと口の中で文句を言っていたランポウは、こちらの顔を見るなりぽかんと口を開けた。

おや、私の顔に何かあるのですか?

 

「そういう顔、ずるいんだものね。…オレ様ももう行くよ、○○を長い時間一人にしたらマズいのは分かってるから」

 

ランポウは立ち上がり尻についた草を払うとのんびりとした歩調で××の行った方向へと歩き出した。

あれで戦闘時は中々に苛烈なのだから面白い。もっとも、あの雷はあまり落ちないのだが。

 




ナックル「デイモンは相変わらずつっけんどんな様を作っているが究極に優しい奴だと思う!」
ランポウ「あれで民間人とかには優しいのは否定しないけど、その優しさをオレ様にも分けて欲しいんだものね…」
ナックル「その割りには懐いているではないか」
ランポウ「……不思議と居心地悪くないから…」
ナックル「つまりランポウはデイモンが好きという事だな。オレもデイモンの事が好きだぞ!」
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