中身デイモンの風リボ風。警告タグのボーイズラブが強めです。
本家本元の風成り代わりの女性の存在が出てきます。
新たな肉体の名は風というらしい。武道に命をかけていた少年で、その修行中に命を落としたのだから本望だろう。
ありがたくはないが、仮に今死んでも同じ事が繰り返されるだけな気がしてならないのでこの体を使う事にする。元々他人に憑依して存在し続けていたのだ、見知らぬ体を使う事への抵抗はない。
さて、この風少年の体は戦闘特化型らしい。私の精神は術者であるが面白いほど肉体が反応する。鍛えれば鍛えるだけ成果を上げていくのも素晴らしい。主観だが、アラウディや雲雀恭弥を凌ぐ素材ではないかと思っている。
こんなにも面白く素晴らしい原石は磨き上げたくなるというのが人の性、私はこの体を鍛える事に夢中になった。幻術は以前からそうであったように問題なく使えたためにそちらも怠りはしない。ちなみに、幻術を使う際は変わらず右目にスペードのマークが浮かぶ。
いくつもの大会で優勝し国内どころか世界でもトップクラスの拳法の使い手となった頃、一通の招待状が届く。
差出人は不明だが、チェッカーフェイスとかいうふざけた人物ではないかと予想される。私は夜の炎を手に入れた時に色々と知ったのだ。
なる程、その時代の最強の人間を生贄にする。確かに今の私はこと武道においてはかなり強いだろう、素手で弾丸も止められる。生贄としての資格は十分だ。
ここで私が無視してもどうせ代理が現れるのは分かりきっている為無視しても良かったが、最強とされる残りの六人に会ってみるのも面白い。特にあの晴れのアルコバレーノ、元は伊達男らしいので是非見てみたい。あのコスプレの数々を披露する大元を確認出来れば大いに笑えるだろう。
最後の依頼とやらだけは逃げる事を決めて私は指定の場所へと旅立つ事にした。格好は三つ編みのおさげに赤いカンフー服、ゆったりした服装は色々と仕込めて都合がいいのだ。
さて、名前はどうしたものか。
「はじめまして、風と申します」
私達の為に用意されたらしきとある屋敷にて、拱手をしながら集まった皆の前で挨拶をする。結局はこの体の元々の名前を名乗る事にした。その方が面倒事が少ない。
挨拶をする際軽く下げていた頭を上げて周りを見渡す。バイパーだけは素顔が分からないが、全員中々に顔がいい。審査基準に顔の造形も入っているのだろうか?
一番の目的である晴れのアルコバレーノ…リボーンのところで自然と動きが止まる。結構な美形だがこの男が例のふざけたコスプレの数々を披露するのか、鼻提灯を作ったり情報収集として虫を子分にしたりと色々と愉快な事に…。そこまで考えが及ぶと危うく大爆笑してしまいそうになり、それを抑え込むと自然と笑みが深まった。
頑張れ私の腹筋!今笑い出したら私のイメージが崩れる!!
個人的に壮絶な出会いを終え各々に与えられた部屋へと向かう。私の腹筋はよく持ちこたえてくれた。
部屋で遠慮なく笑おうか、と思っていると背後から声をかけられる。振り向いてみるとボルサリーノを被った死神が居た。彼を目の前にして笑ってしまわない為に今は余計な事は頭から追い出す事にする。
「リボーン、でしたね。どうかしましたか?」
「単刀直入に言う、さっきオレを見て笑みを深めた理由を聞きにきた。お前の考えだけが読めなかったからな」
「ああ…会いたかった人に会えたのでつい。気に障ってしまったのなら申し訳ありません」
警戒もあらわに間合いに入らない距離で問いかけられる。一方的ではあるが随分とピリピリした空気だ。
特に隠す必要もない為に素直に理由を話すが、私が直接会った未来の彼よりも目の前の彼は余裕がないように感じた。
「どういう意味で会いたかったのか、是非とも聞きてーな」
ぎらついた眼差しを私に向けたまま口元に笑みを作るリボーン。くっ、駄目だ…10代目候補の情報を集めた時に見たコスプレを思い出してしまった。今の彼とのギャップに気の抜けた笑みが顔に浮かぶ。
「フフ、そうピリピリしないで下さい。本当にただ会いたかった…もとい、一目見てみたかっただけなのですから」
堪えきれず漏れてしまった笑い声を誤魔化すとリボーンは毒気を抜かれた顔をし、同時に殺気のような重苦しい空気もなくなった。
この期を逃せる筈がなく軽く頭を下げて割り振られた部屋へと向かう。そこで布団を被り大笑いをしたのは私だけの秘密だ。
チェッカーフェイス…鉄の…帽子だったか仮面の男だっか…とにかく、彼からの依頼は実に楽しかった。特に中~遠距離を得意とするラル・ミルチ、リボーンと組むのが面白い。
私とてマフィアの嗜みとして銃は扱えるが、流石に本職には敵わない。まぁ、敵おうとも思わないが。
このまま運命の日まで楽しく過ごすのも悪くない。
そう思ってしまう程にここでの日々は楽しかった。
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風、という男は初めて会った時は油断ならない人物だと思った。
常に笑みを浮かべており穏やかな物腰と丁寧な言葉使い。一見すると優男だが、服の下は相当に鍛えられており足運びからもかなりの使い手だと分かる。
そしてこのオレに心を読ませない。
そりの合わなさそうなヴェルデさえ読めるのにこの男からだけは何も読み取れなかった。
オレを見て笑みを深める様子に警戒を一段階引き上げたが、その後あっさりと毒気を抜かれた。それもこの男の作戦の内なのだろうか。
それから日々依頼をこなす内に風の評価は最初と逆転する事になる。
誰よりも信頼出来てオレが背中を預けるに値する男。頭の回転が早く会話も楽しい、堅物かと思えばそうでなく茶目っ気もある。潔癖なようで清濁あわせて飲み込む器も持っている。
まぁ、パシリにまで優しくするのは欠点か。
そしてオレと風が組むのが当たり前になってきた頃にそれは起こった。
「抜ける?どういう事だ!」
「そのままの意味ですよ。私はこの依頼を受けるつもりはないし、そろそろ帰ろうかと思っています」
七人全員への依頼に風が突然抜けると言い出した。こいつ自ら輪を乱すなど一度もなかっただけに皆驚きを隠せない。
「ああ、依頼の事なら心配せずとも大丈夫ですよ。きっと私ではない『私』が現れる筈ですから」
「『私ではない私』…?」
いつもと変わらぬ笑みを浮かべて告げる風。こいつは一体何を知っている?
正直に言えば裏切られた、と思った。それ程までにこの男の事を信頼していたのだ。
衝動に身を任せ銃を抜きかけるがそれをあっさりと止められる。早撃ちを得意とするオレでも銃を抜く前に止められてはいくらなんでも撃てはしない。
目の前の風を睨みつけると困ったような、そして申し訳ないような笑みを返される。
何故お前がそんな顔をするのか。
そう思った瞬間に訪れた抗い難い眠気。気配からして他の五人は次々と眠っていっている。
皮膚を破る程に唇を噛みしめてみたが痛みは感じず眠気はますます強くなる。原因は間違いなくこの男だ。
「すみません。貴方がた…特に、リボーンの事は好きですよ。ただ、私は…」
かすむ頭と視界。最後に聞いた悲しげな声、男の右目にはスペードが浮かんで…。
「はじめまして、風と申します」
声にハッとして顔を上げる。オレはこんな訳の分からないところで寝ていたのか?今は謎の招待状により集まった七人の顔合わせの場、そんな事は有り得ない。
今はこのカンフー服を着た「女」の紹介の番だ。
特に不審な点はない。ない筈だがどうしようもない違和感にボルサリーノの下で眉を寄せた。
それからの日々は悪くはないものだった。依頼をこなしていくのは面白く達成感もある。だが違和感は強くなっていくばかりでカンフー服の女をどうしても「風」と呼べない。彼女に非はない、むしろいい女と言える。穏やかな物腰でありながら一本芯が通っており汚い事は許せず正義感がある、気配りもできて料理も上手い。強い母性を感じ癒しを与える存在だ。そしてその母性とは程遠いところにある力も中々のものを持っている。だがその力がふるわれる事は滅多にない、極力穏便にすまそうとする。その姿勢は庇護欲を誘った。ルーチェが守ると発言する程に。
皆…あのヴェルデでさえ彼女に夢中である。この極上ともいえる女を口説かないなど、伊達男と呼ばれる己のプライドにかけてない…筈、なのだが…。彼女はどうしようもなく違う、という思いからどうしても一線を引いてしまう。勿論女性への扱いをこのオレが間違う筈もないが。
嵐たる赤は守らなければいけない存在ではない、風とは己が背中を預けられる存在である筈だ。「そうでなければいけない」。
訳の分からない思いは彼女と過ごせば過ごす程強くなり苛立ちが募る。
そして運命の日。
アルコバレーノの呪いを受けたその時にオレは思い出した。
彼女があいつの言う『私ではない私』か。なる程、よく分かった。
色々とあるがまずオレはあの野郎を殴りに行く。全てはそれからだ。
違和感を覚えたのはリボーンのみ。
思い出したのもうっすらと覚えていなくもなかったリボーンのみです。
男としてあるまじき事と思っているがどうしても彼女の事は風とは呼べないリボーン。きっと今後もそう。
スカルなんかは勝ち誇っていますが、中身デイモンの風の方が気になるので名前を呼べない事そのものはそこまで重要度は高くありません。
でもパシリはムカつくのできっちりシメてます。