D・スペードの人生やり直し   作:甚三紅

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最後の方にちょっぴり吐く、という表現があるので注意。
一気に話が進みます。


七話

神様とやらが与える「特典」というものはかなり厄介な代物ではないかと考える。なぜならば、特典とは与えられたものであり積み上げてきたものではないが故に見ただけでは分かり難いのだ。

例えばジョットやナックル。彼らの拳には硬いコブがあり重心の移動が抜群に上手く足運びも軽い。

リボーンやアラウディならば足音はしないし気配も薄い。加えてGなどは手が銃を握る者の手だ。

ヴェルデやルーチェはそういう意味ではほぼ一般人と同じだが、得意分野においては才能が突出しているため言葉や仕草、視線にそれが表れる。

つまり、何が言いたいかというと…

 

「ツナに怪我させたら許さないんだから!」

 

夢野みいるが実は強いとは予想外だった、という事だ。

 

話は至極簡単だ。

応接室に訪れた四人が雲雀恭弥と喧嘩になり夢野みいるがそれを撃退した。それだけだ。

もっとも、夢野みいるは勝手についてきたのであってリボーンや私が巻き込んだわけではない。「ちょっとやめなよ」などと言いながらついてきたのだ。

ちなみに私はといえば、術により他者から限りなく認識され辛いようにしている。

彼女は雲雀恭弥からの攻撃をかわし拳で反撃。トンファーでガードしつつもその衝撃を受け止めきれずに雲雀恭弥は吹き飛ばされたのだが…夢野みいるには技術もなにもない、単純な力のみで吹き飛ばしていた。

体の作りは一般的な女子中学生と変わらないのにあの力、確かに凄いが無駄が多すぎる上あれでは皮がずる剥け出血しかなり手と手首を痛めただろう。

彼女は力を使えるが使いこなせる訳ではないようだ。強い、と実力がある、は違うのだから。

 

四人とリボーンが窓から出ていくのを見送り、一歩分足をずらすと死角から上方へトンファーが通り過ぎる。その一撃では終わらず次々と襲いかかる攻撃をかわし、わずかに自分から前に出ると攻撃の主は大きく後ろに飛び退いた。

 

「やっぱり貴方が一番楽しめそうだ」

「フフ、勘は悪くない」

 

あの四人が全く気がつかなかった私に気づいた、というだけで沢田綱吉達との実力差が分かる。もっとも、この術はリボーンクラスになると全くの無意味な程度ではあるが。

トンファーを構え直し獰猛な笑みを浮かべる雲雀恭弥に笑顔を返して一瞬で距離を詰める。意識を奪う程度の力で顎に掌底を打ち込もうとしたのだが、回避しようとしたのかすれすれで顔を動かされたので思ったよりも強く入ってしまった。

当然のごとく雲雀恭弥は昏倒。彼の身体能力の高さに驚けばいいのか、自分の未熟さを嘆けばいいのか悩むところだ。

 

意識のない雲雀恭弥を放置して普通にドアから廊下に出る。大事な大事な(笑)夢野みいるが怪我をしたのだ、保健室にでも行っただろうと思い足を運ぶとやはりそこに五人はいた。

 

「ごめん、オレが弱いからミールちゃんにこんな怪我…」

「悪い、オレらがやられちまったばっかりに…」

「ちっ、情けねぇぜ。女にこんな怪我させちまって…」

「きっ、気にしないで!私がツナを守りたかっただけなの!それにこんな怪我すぐに…いたた…」

 

治療をしながら何やら青春をしている中学生と、一歩離れて彼らのやり取りを見ているリボーン。

リボーンと視線が合うとお互い何も言わずに学校を出た。

 

「どうだった」

「貴方が言うだけあってかなりの逸材ですね、今の沢田綱吉とは雲泥の差だ」

「引き入れられそうか」

「沢田綱吉が成長すればあるいは。それに、貴方が引き入れるのでしょう?」

「まぁな、ヒバリはこの先必要になる奴だ。家庭教師としてそれくらいはしてやるつもりだ」

 

リボーンは生粋のドSで鬼畜だがプロとして仕事は完遂する、その姿勢は賞賛に値する。何かを依頼するならば私とてリボーンのような信用出来る人間を選ぶだろう。

それはさておき、今日は私は鍛錬に向かいリボーンは別な用事があると言って別れ残りの時間を過ごした。

 

 

 

それから運動会があったり保育士騒動やらがあったりしたがここでも全てに夢野みいるは関わってくる。

言動が一々受け付けないが沢田綱吉は順調に強くなってきているので現状、目を瞑っている。目的は強いボンゴレの為に沢田綱吉を鍛える事なのだから。

ただし、どこかで余計な甘さを捨てて貰わなければならない。そう、ジョットのように。

ところでリボーン、ボンゴリアン・バースデーパーティーとか正気ですか?

当時は洒落とノリでやっただけのゲームなのに何故伝統になっているのか。

あの時は大抵ランポウが最下位で罰ゲームをさせられていた。そういえば、ジョットは全員同点などと言い出して全員罰ゲームをするはめになったのも良い…良い?思い出だ。罰ゲームをしない、という選択肢は存在しない。

 

 

バースデーパーティーから暫くしてディーノが日本へとやってきた。ボンゴレ10代目候補を見に来たらしい。

 

「久しぶりだな、リボーンもスペードも相変わらずで何よりだ」

「ええ、久しぶりですね。貴方も元気そうで何よりですよ」

「ちったぁボスらしくなったか?」

「ははっ、先生達に恥ずかしくないくらいにはやってるぜ」

 

昔の教え子と穏やかな会話をしていると沢田綱吉が帰ってきた。余計なおまけと一緒に。

 

「ちょっ、こんな椅子運び込むなんて何考えてんのよ!」

「…沢田家の人間以外は通さないようにした筈では?」

 

挨拶より何より先に文句とは…キンキンとうるさい声に眉を寄せロマーリオに視線を向けると直ぐに夢野みいるを外に出そうとする。迅速に行動出来るのは良い事だ。

 

「スペード、そう言うなよ。可愛い「あー!ディーノさんまで風さんを違う名前で呼ぶし!人の名前間違うなんて失礼ですよ!」……」

 

フォローに入ろうとしたディーノの言葉を夢野みいるが遮る。まだ自己紹介もしていないのに自分の名を呼ばれ、ディーノは僅かに目を細め側近二人は警戒し出した。

 

「はぁ…これでは話が進まない。女性を乱暴に扱うのは気が引けますが仕方がないですね。ついてくるな、と止められたにも関わらずついてきたあなたが悪いのですよ」

 

頭の緩い彼女に深い深い溜め息を吐くと首根っこを掴みそのまま窓から外に捨てた。下にはディーノの部下もいるし、何よりこの程度でどうにかなるような「平凡」で「普通」なか弱い女ではない。殴り込みにこないか、という方が心配なくらいだ。

 

「なっ!ミールちゃんに何すんだよ!!」

 

彼女を捨てた事に怒り食ってかかってきた沢田綱吉の足を軽く払い転がす。このやり取りはディーノもリボーンも静観するようだ。

 

「守る、と決めた者の為に怒る事が出来るのは良い点ですよ。ただし、現状を正しく理解出来ない点はマイナスだ」

「っ…!!」

「望む、望まないに関わらず既にマフィアの世界に巻き込まれている自覚はありますか?ボンゴレボス候補という自覚も。不用意な言動一つで周囲を危険にさらしてしまう…いい加減理解なさい」

「オレはマフィアになんかならない!!」

 

強い視線を真正面から受け止めながらゆっくりと言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

視線を逸らされぬままきっぱりと返された頑固な言葉に思わず笑ってしまった。

 

「望む、望まないに関わらず、と言ったでしょう。例えば今。ボス候補には聞かせられる話でも一般人が知ってはいけない会話をしていたら、彼女は消されていた。例えば、ボス候補を暗殺したい人間にとって彼女はかっこうの餌だ、利用されつくし君の命まで危なくなるかもしれない」

「そんなのオレが…」

「守る、と?今正に間違えたというのに?」

 

言い訳のしようもない状態に悔しげに奥歯を噛み俯く沢田綱吉。「スペードが強すぎるんだ」などと喚かなくなっただけ成長していて喜ばしい限りだ。

 

「危険から遠ざけてあげるのも優しさです。側で守りたいならもっと力をつけなさい。今の君はあまりにも弱すぎる」

「オレ…オレは…」

「あ、あー…スペード、そう弟分をいじめんなよ」

 

ディーノのストップに口を閉じて肩をすくめる。確かに少し急ぎすぎたかもしれない。

この場はリボーンとディーノに任せ部屋を出て階段を降りる。心配して玄関まできてみれば、案の定夢野みいるが勝手に中に入っていた。ディーノの部下達は無理矢理退けたのだろう。

 

「いくら風さんでも女の子をあんな風に投げるなんて」

「「平凡」、でいたいのでしょう?」

「ほえ?」

 

キッとこちらを睨みつけた上指を指す彼女に尋ねる。間抜けな顔と返事に最高に苛ついたがここは我慢だ。

 

「今ならまだ戻れます。これ以上関わるのならば私もマフィアの一員として扱いますよ」

「確かに平凡でいたい…けど!私はそれ以上にツナを守りたい!マフィアでも何にでもなってやるわよ!」

「そうですか…では遠慮なく」

 

何も分かっていない彼女にまた溜め息が漏れそうになる。

もっとも、これで彼女はただの一般人ではなくなったので今からする事を咎められる事はなくなった。

力が強いだけの女子中学生、という事を考慮しつつ腹に掌打を叩き込む。彼女は胃の中身をぶちまけながら玄関の石畳の上に座り込んだ。

 

「同盟ファミリーのボスへの無礼な振る舞い、その上理不尽な理由でキャバッローネの人間を攻撃。ボンゴレの立場をよほど悪くさせたいようだ」

「ぅ、え…わ、わたし、そんな…」

「そんなつもりではなかった、など言い訳にはなりませんよ。無知は罪だ、代償は己の命だけでは済まされない」

「ひっく…違う、もん…話せば…」

「そんな甘い世界ではないのですよ。今の沢田綱吉はしょせんボス「候補」、場合によっては殺されるでしょうね。他ならぬお前のせいで」

 

限りなく手加減したとはいえ、喋れるとは大したものだ。まぁ、しゃくりあげる姿は苛つきしか生まないので自然と冷たい態度になったが。

 

「そうそう、マフィアになったとちゃんと自らの口で沢田綱吉に報告するように」

 

彼の思いを踏みにじり裏切ったと、自分で言えと言い残して家を出ると、思った通り外で倒れていたディーノの部下達を介抱し移動させて口の中で笑う。

もっと思い知ればいいのだ、今日の事など序の口にもならないと。

 




リボーン「で、スペードのプレゼントは何だ」
デイモン「そうですね、キスでもして差し上げましょうか」
みいる「もー!風さんてば冗談ばっかり!」
リボーン「(ちっ、邪魔すんな)」
デイモン「(舌打ちしましたね、今)普通にコーヒー豆ですよ。後でエスプレッソでも淹れましょう」
リボーン「99点だな」
綱吉「甘っ!リボーンって女の子に甘いけどスペードには更に甘いよな!」
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