尚、この作品の更新を一番楽しみにしているのはムササです。はい。
二人が自分の胸部についてあれこれ考えを巡らせていると。
「ふふふっ」
突然聞こえた笑い声に思わずそちらを向く。
見ると笑い声の主は我らが天使ことヴァネッサちゃんであった。
「ポーラお姉ちゃん達、面白いね」
思わずばつが悪くなり、自分でも分かるほどに赤面する。
うぅ、恥ずかしい。いつから聞かれていたんだろう?
「ヴァネッサちゃん、どこから聞いてたの?」
「こーやお兄ちゃんがお胸が大っきい方が好きかちっちゃい方が好きか、って所から」
一番聞かれたくないところだった……
「ポーラお姉ちゃんと美月お姉ちゃんはこーやお兄ちゃんの事が好きなの?」
「「ぶっ!?」」
思わず二人で揃えて噴き出してしまう。思わず鋼夜君の方を向く。良かった、聞こえて無かったみたい。
「ヴァネッサちゃん、そういうことは鋼夜君の前で言っちゃダメだよ?」
「なんで?」
「なんでって……言われてもなぁ……うーん、恥ずかしいから?」
改めて聞かれるとなんで鋼夜君に私の好意がバレるのがダメなのかわからなくなってくる。
いや、心の中ではわかっているのだ。
私が鋼夜君に好意を抱いていることを悟って欲しくない理由は多分、怖いからだ。
私の想いを素直に伝えて、鋼夜君が私と同じ気持ちならとっても嬉しい。もし、ダメでも……このままの関係を続けられるのなら……まだいい。
だけど、もし、想いを伝えて、ダメで、この関係が崩れてしまったら?
コバルト・シリウスも抜ける事になって、もう一生鋼夜君と話せなくなってしまったら?鋼夜君に嫌われてしまったら?
そう考えると、怖くて、言えない。
「そっかぁ、恥ずかしいのか……分かった!こーやお兄ちゃんには内緒ね?」
「うん、ありがとう」
だから、まだ言わない。
私は卑怯だ、自分の想いも伝えず、鋼夜君の想いを知りたいと思っている。
そして、あわよくば鋼夜君の想い人が私だったなら……と考えている。
知りたくて、知りたくなくて、それでも知りたくて。
私の事は伝えたくなくて、伝えたくて、伝えたくなくて。
この押さえ込んだ気持ちはどこへ向かうのだろう?
私の中で、ずっと一緒に育っていくのだろうか?
それとも、いつか年月が経って、忘れてしまうのだろうか?
それでも、まだ。
いつか、いつかきっと、鋼夜君の隣に胸を張って並べる時が来たら、自分から言ってみよう。
例えダメでも、大丈夫……には多分ならないだろうけど、少なくとも、私の想いを伝えよう。
今はまだ、遠いけれど、いつか絶対、横に並んで伝えるんだ。
「私は貴方が大好きです」って。
〜〜〜〜〜〜〜
「それにしても、こーやお兄ちゃんはモテモテなんだね」
急にヴァネッサちゃんがそんな事を言う。
「「ふぇっ!?」」
「んー?バレバレだよ?美月お姉ちゃんもポーラお姉ちゃんもライラお姉ちゃんもセルディお姉ちゃんもエレナお姉ちゃんもみーんなこーやお兄ちゃんの事が好きなんだよね?」
「どどどうして、そそそそんな事を!?」
「んー?なんとなくー?」
流石魔女と言うべきか、どうやら私達とは一線を画す洞察力があるらしい。恐るべし、この歳にして私達の気持ちに気がつくとは……
実際にはヴァネッサにも分かる程度には鋼夜に対する気持ちがだだ漏れというだけなのだが。
「こーやお兄ちゃんのどこがいいの?顔?性格?」
「どこって言われても……」
全部。としか言いようが無い。
強いて言うならば、鋼夜を鋼夜たらしめている根源?と言うのだろうか、あいつの人間としての凄さ?
うーん、何かが違う気がする。
って、こんな事を話している場合じゃなくて。
「ヴァネッサちゃん、そんな事よりヴァネッサちゃんにやって貰いたい事が有るんだけど」
「そんな事?美月お姉ちゃんにとってこーやお兄ちゃんの事はそんな事なの?」
「いやっ、別にそういう事じゃ無くて……」
自分の半分程の年の少女にあたふたさせられる美月。
実に哀れである。
「まあまあ、ヴァネッサちゃん。美月ちゃんが困ってるからそこら辺までにしてあげて」
「はーい!」
どうやら悪ふざけだったらしい。
しかし、さっきヴァネッサちゃんに問いかけられた内容が私の頭の中に残っていたらしく……
鋼夜の方を見た瞬間、(やっぱり、全部かなぁ)とか思ってしまった。
「どうしたの?美月お姉ちゃん。顔赤いよ?もしかして怒ってる?」
ヴァネッサちゃんがさっき言った事で私が怒っていると思ったらしく、不安そうにこちらを見てくる。
うっ、その目はやめてほしい……何もしていないのに罪悪感に駆られる……
「ううん、大丈夫。怒ってないから安心して」
「本当!?ありがとう!」
頭を撫でてやると、「えへへ」と言いながら顔を綻ばせるヴァネッサちゃん。やはり天使か。
「それでね、美月お姉ちゃん。ヴァネッサにやって貰いたい事ってなあに?」
「うん、それなんだけどね」
そう言って、鋼夜を手招きする。
「やれやれ、やっとか。今まで何話してたんだ?楽しそうだったけど」
「んーとね、美月お姉ちゃんとポーラお姉ちゃんがこーやお兄ちゃんに好きになってもらうにーーもがっ」
「こ、今度私とポーラが鋼夜の好きな料理を作ってやろうという話をしていたのだ。な、なぁ!?ポーラ!」
「えっ!…えっと……うん、そうだよ!?」
「お、おう……そうか」
鋼夜が若干腰を引かせながらそう答える。
と、右手にくすぐったい振動。
「もがっ、もがっ……ぷはぁ。うぅー、死んじゃう所だった……」
「ご、ごめんね?ヴァネッサちゃん」
「ぶー」
どうやら、鋼夜の説得に夢中になってしまい、ヴァネッサちゃんの口に当てていた手の力が強まってしまっていたらしい。
「まあまあ、ヴァネッサちゃん。美月も悪気は無かったんだろうし、許してあげて」
「まあ、こーやお兄ちゃんが言うなら良いけど、次にやったら言っちゃうよ?」
言う。というのが、何を意味するのか直ぐに思い至り、私は思わずぶんぶんと首を縦に振る。
「それで、ヴァネッサにやって貰いたい事ってなあに?そろそろ聞かせて?」
「うん、その話をする前にまず、ヴァネッサちゃん。鋼夜とポーラの二人がなんでここにいるのか分かる?」
「んっと、美月お姉ちゃんの仲間…なんだよね?」
「うん、そう。でも、なんでヴァネッサちゃんの所に来たと思う?」
「んー、わかんない」
魔女の勘。と言うものは無いらしい。
「じゃあ、鋼夜とポーラに変な所は無いかな?」
「んー?」
そう言うとヴァネッサちゃんは首を傾げながら、鋼夜とポーラの二人を見つめる。その仕草がなんともこの場の空気とは不釣り合いで、なんだか可愛らしい。
「二人とも、病気なの?」
「「「ーーっ!!」」」
なんとは無しに呟かれたであろうその言葉に私達は揃って絶句する。
見抜いた。今の鋼夜とポーラは体に黒い痣はあれど、今は見えていないし、鎮痛剤のお陰で痛みは無い。少なくとも今は。
だから、今の二人は完全に普段通りの振る舞いが出来ていた。私ですら、一瞬分からなかった程だ。
それを、少し見ただけで見抜いた。
勿論当てずっぽうかもしれない。ベッドで寝ているという事で推測は出来る。
しかし、それが当てずっぽうでは無かったならば?
「なんで、病気だってわかったの?」
「んーとね、なんだかね。ヴァネッサ、ちっちゃい時から病気の人とか分かったの」
生まれつき、病気の人が分かった?
それが、『強欲』の魔女?
『強欲』とは、魔女の力を打ち消す能力では無かったのか?
それとも、ヴァネッサちゃんの力?
「二人とも、なんだかよく分からないけれど、体の中……ううん、二人の体の中にある光?みたいのが、濁ってるように見えるの。それが病気のサインだよ?」
体内にある光?……まさか、ジュエル?となると二人の宝力が濁っている?そして、ヴァネッサちゃんは宝力を見る事が出来る!?
「でも、ヴァネッサが今まで見てきた中でも二人のはちょっと違う……なんか、とっても嫌な感じがするの」