プロローグとエピローグ含めたらもうちょっと有りますが、ナンバリング的には区切りが良いですね。
ヴァネッサちゃんから、鋼夜とポーラの『嫉妬』の呪いが、ファニーオレンジ島で見た黒い影、『悪魔』に似ていると言われた日から一週間が過ぎました。
まだ、ヴァネッサちゃんは自分の『強欲』の力を使う事が出来ません。
ヴァネッサちゃんは自分の中に『強欲』の力があると理解はしてくれたものの、どうやって使えば良いのか全く分からないのです。それもそうでしょう、私達の中に魔女は居ません。居るとすればミーディアに居るミリアちゃん位ですが、ミリアちゃんに聞いて見たところ、生まれて自分の意思が芽生えた瞬間から使う方法を知っていたと言いました。
魔女の力を起動し、自分の罪の名前を呼ぶ、そしてそれを司る神の名前を呼ぶ。
ミリアちゃんが言った発動方法はこんな感じです。
だけどヴァネッサちゃんは自分の罪を司る神の名前を知りません。ミリアちゃん曰く、生まれた時から知っていたとの事ですが、何か違いがあるのでしょうか?
この一週間の間にも鋼夜とポーラの症状は刻一刻と悪くなっていきました。
ポーラは体の半分ほど、鋼夜は既に体の三分の二程黒い痣に覆われています。
鋼夜の『嫉妬』の進行が思ったより早いです。
師匠にその理由を聞くと、恐らく体に魔女の力、『憤怒』の力を宿している所為で、拒否反応を起こし「嫉妬』の進行が進んでいるのだと言いました。
このままのペースで行くとポーラは後5日、鋼夜は後3日程で……死んでしまいます。
「うぅぁ……ぐあぁ……」
「鋼夜……」
もう、痛み止めも全く効かず、鋼夜はもうまともな受け答えすら出来ません。
汗が止めどなく流れ落ち、拭っても拭っても直ぐに噴き出してきます。
「ティナちゃん……お水……ちょうだい……?」
「ああ、うん。分かったわポーラ」
ポーラは鋼夜に比べればまだマシですが、それでも一人で立ち上がる事も出来ません。
「セルディ、ちょっとお水持って来てくれる?」
「……」
「セルディ?」
「……っ、すみませんティナお嬢様、今何と仰いました?」
「お水を持って来てくれない?」
「はい、分かりました」
そう言ってセルディがキッチンへと歩いていきます。
セルディも一週間前から様子がおかしくなった。
何を聞いても上の空だし、考え込んでいる事が増えた。
「一体……どうしちゃったのよ……」
ミーシャも居ない、鋼夜とポーラは臥せっている、セルディもどこか上の空、エレナさんは必死にイージス本部に連絡をとっているみたいで忙しそうだし、私がしっかりしなきゃ……私が……
「ティナお姉ちゃん……こーやお兄ちゃんとポーラお姉ちゃん大丈夫?」
ふと気がつくとそこにヴァネッサちゃんの姿。
「…………ああ、うん。大丈夫よ」
「……ごめんね。ヴァネッサが『ごーよく』使えないから……」
「ううん、ヴァネッサちゃんは悪くないのよ」
「頑張って練習するから……だから、こーやお兄ちゃんもポーラお姉ちゃんも……ヴァネッサの前から……居なくならないでね?」
「……」
「大丈夫よ……ヴァネッサちゃん……私も……鋼夜君も頑張るから……ね?」
「うん……うん。じゃあもう一回頑張ってみるね」
そう言ってヴァネッサちゃんは走って行った。
私はそれと入れ違いになって戻ってきたセルディとセルディについて来たライラに後を任せ、リビングへと戻った。
「くそっ!」
私以外居ないリビングにそんな私の声とドンッという壁を殴りつけた音が木霊する。
「くそっ!くそっ!くそっ!」
あの時……ヴァネッサちゃんが私達の所に鋼夜とポーラの様子を見に来た時、一瞬でも思ってしまった私が許せない。
一瞬でも、「お前が使えない所為で」と思ってしまった私が許せない。
ヴァネッサちゃんは悪くない、それはわかっている。だけど少しだけ、もう少しだけヴァネッサちゃんが『強欲』の力を使えたならば、鋼夜とポーラはこんなに苦しまずに済んだかもしれない。
そう思ってしまった私が許せなくて、やるせなくて、不甲斐なくて。
「誰か……鋼夜とポーラを、助けて……」
祈る事しか出来なかった。
〜〜〜〜〜〜〜
「何でですかっ!」
思わず私は携帯を放り投げそうになったが、寸前の所で踏みとどまる。
『そうは言ってもねえ』
「私は難しい事をしろと言っている訳じゃ無いですよ!?」
『イージス本部の研究班は少数精鋭の虎の子だ。本部から離れさせる訳にはいかないのだよ』
「ふざけないで下さい!『蒼天皇』の命がかかってるんですよ!?」
私が今連絡を取っているのはイージス本部。
少しでも鋼夜とポーラの症状を和らげようとイージス本部に研究班を貸してもらおうとしているのです。
「天剣十三将をみすみす一人失うつもりですか!」
『そうは言っても
「は?」
『それ位の者ならば本部には売るほどいるのだよ』
またも携帯を投げずに踏み止まった私の精神を私自身褒め称えたいと思う。
鋼夜の代わりが沢山いる?鋼夜に匹敵する人が売るほどいる?
ふざけるな。
じゃあお前らはたった一人で数百ものグリモアを殲滅し、民衆からの人望も厚く、『シェムハザ』と一対一で切り結ぶ事ができ、朧火白夜と互角の戦いができる人間が売るほどいるというのだな。
そんな人がそんなにいるのなら、こんな戦争とっくに終わってる!
所詮十三位だって?まさか、鋼夜はもう『天将』に匹敵する存在だぞ、フェルリアさんも一対一では勝てないと言っていた。
『ふむ、だが確かにこれ以上天剣が減るのは考慮すべき事態だな』
「なら!」
『それでは君が天剣になってはどうかね?エレナ・エレサール』
「……」
『元天剣候補だろう、オペレーターになったとはいえまだフリーダムナイツも持っているだろう?』
「……私はもう二度と、戦わないと決めました」
『ふむ、そうかね。では本部出身の者を何名か推薦しておくとしよう』
「イージスから天剣は半ば独立しています。『天将』が認めない限り天剣への加入は認められない筈ですが」
『ふむ、それも困ったものだな。あのジジイめ、とっととくたばれば良いのになそうは思わんかね?』
「……失礼します」
スピーカーからは相手の高笑いが響いていたが、無視して電話を切った。
「くそっ!本部の馬鹿共が!」
そう言って携帯を投げつける。
『天将』がくたばれば良いだって?そんな事になってみろ、瞬く間に人類は滅びるわ!
あの人がいるから
確かにイージス本部のあるイギリスは何故かこれまで一回もグリモアの襲撃も、
本部の連中は奴らが恐れをなしているからだとか宣っているけど、多分違う。
確かにイージス本部の戦力は強大だ。だけど周りに味方が居ない状況だったら出来る事は限られている。
アウターと
無論何人もの職員がその危険性を訴えたが、全て無視された。自分達は安全な所にいるから危機感が全く無いのだ。
それにイージス本部が強いとは言っても、圧倒的な武の才能がある者は無い。
恐らく天剣十三将全員でかかれば瞬殺だろう。
それ程までに各地を周り、幾度も修羅場をくぐり抜けた天剣は強い。
才能は天から与えられる物だが、経験は自分で掴み取るものだ。
だが、圧倒的に本部の連中には経験が無い。当たり前だ、修練過程を卒業したら直ぐに実戦を経験しないのだから。
だから、彼らは天剣を一人失う事の重大性に気が付いていない。
天剣を一人失う度に人類の破滅へのカウントダウンは進んでいるのだから。
私が去った後にはバラバラになった携帯だけが散らばっていた。
記念すべき100話、なんか重い……
と、後から言っていくスタイル。