業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#13 雪時雨

「それはそれとしてだ、何か謝罪の印があってもいいのでは無いか?」

「しゃ、謝罪とは?」

「遅れた事に関する謝罪だ、バカ」

「え、えーと……じゃあココモココの専門店でケーキ奢る」

「それだけか?」

「お、お昼も奢ろう」

「ん。そ、それとだな……な、何かプレゼントを買ってくれないか?」

 

いきなりしどろもどろになった美月はそんな事を言ってきた。

 

「ん。了解。まあ遅れたのは俺だしな、プレゼントは何がいい?」

「な、なんでもいいぞ。………鋼夜がくれる物ならなんでも……」

「わかった、じゃあ折角だしお揃いとかにするか?別に美月が嫌ならいいけど」

「……………」

 

ん?なんで美月は急に黙りこくってるんだ?なんか顔色も赤いし、まさか……怒ってるのか?うわあ、お揃いとか言わなきゃよかった……

 

「やっぱり……嫌か?」

「ひゃぁ!‼︎な、な、何がだバカ者!!」

「いや、お揃いとか言っちゃったから」

「い、いや⁉︎お揃いで構わんぞ!……仕方なくだからな!あくまで、仕方なくだ!!」

「仕方なくならいいんだけど……」

「いや!鋼夜も決まっていたほうが良いだろう⁉︎ならばお揃いでいい、いいぞ⁉︎」

「……わ、わかった、じゃあ行こうか」

 

若干美月の勢いに気圧されながらも、今も握っている美月の手が思いの外華奢で、そこにある美月の体温が心なしか暑く感じたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「「ここは……」」

「いらっしゃいませ」

 

午前中にある程度の生活必需品は買い終えたので少し早めのランチをとる事にしたのだが、ココモココにあるランチの店は今日が日曜日という事もあり、全てが全て混んでおり、一つしか入る事が出来なかったのだ。そこはさっき美月と約束したケーキ屋であり、幾つかランチも提供しているという事でそこにする事にしたのだが、問題はその中に入っている客層なのだ。何故か見渡す限りのカップルである。基本的に俺たち以外は殆どカップルで構成されており、妙に居心地が悪いのだ。

 

「は、早く食べて行こうか…」

「……………」

「美月?」

 

美月は隣のカップルを注視しており、心此処にあらずといった所だった。その視線の先ではカップルが俗に言う『はい、アーン』状態でケーキを食べさせ合っていた。

 

「美月?」

「はっ!な、なんだ鋼夜⁉︎決してあの様な事がしたいという訳では無いぞ?」

「いや、自分で言っちゃってるし」

「あう!」

「したいならしても良いぞ?」

「な、な、な、なんという事を!そそそ、そんな事をしたいとか考えている訳が無かろう!」

「はいはい、分かりました。すいません、じゃあ取り敢えず今日のランチ二つと食後にケーキ下さい」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

伊達に美月の幼馴染みをしている訳では無い、美月がこうやって必死に否定をする時は殆どそれがしたい時なのだ。

別に前にもやった事があるんだし否定なんてしなくて良いと思うんだけどな?

 

「な、なんだ?」

「いや、分かりやすいなと思って」

「うっ」

「そういや、プレゼントは何が良いんだ?」

「そ、そうだな……お揃いのペンダントとかはどうだろうか?」

「ペンダントか、それなら良いな。まあそれ位なら戦闘の邪魔にもならないしな」

「…………」

「な、何だよ」

 

急にジト目で見つめられて少しづつビビったのは秘密だ。

 

「……私と二人でいる時くらいそんな事は忘れろ」

「………そうだな、すまん」

 

そんな話をしていると思ったより早くランチが運ばれてきた。

 

「お待たせ致しました」

 

そう言って並べられる二枚の皿。その上に乗っているカルボナーラは湯気を立てていて、とてもいい香りが鼻腔をくすぐる。

 

「それでは後ほどケーキをお持ち致します」

 

そう言って去っていくウエイターさん。俺たちは早速スプーンとフォークを持ってパスタを食べる事にした。

 

「いただきます!」

「頂きます」

 

俺と美月は手を合わせてからカルボナーラを食べ始める。

 

「おお、美味いな!」

「ああ、中々の味だ」

 

食事中なのでその後の雑談は止め、暫く俺たちの間にはフォークを動かす音が響いた。

そして、ケーキが運ばれてくる事はーー無かった。

突如ココモココ全域を激しい振動が襲う。そして次の瞬間、ココモココの一角の天井が崩れ落ち、そこから三機の小型グリモアが襲来してきた。白昼堂々の奇襲である。

 

「美月!」

「今している!!」

 

俺が言うよりも早く美月はミーディアに連絡を開始、それは直ぐに繋がり先生方が来てくれるようだ。

だが、それまでは俺たちがあの小型グリモアを食い止めなければならない。

 

「行くぞ、イグナイト!」

「出番だ、イグナイト!」

 

二人は同時にそう叫び、逃げ惑う人々の指揮を取るべく、走り出した。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「こちらです!早く逃げて下さい!」

「慌てずに!慌てずにお願いします!」

 

俺たちの指揮の甲斐あって、ほとんどの民間人は逃げる事が出来た。だが、不思議なのはその間グリモアが一切攻撃を仕掛けてこなかったことだ。

 

(何かを待っている?)

 

その時小型グリモアが動き出す、標的は………まずい!逃げ遅れた親子がいる!

俺は咄嗟にグリモアと親子の間に割って入る。動きを止めたグリモアに美月の持つ日本刀の一撃が加わり、グリモアは動きを止める。

 

「大丈夫ですか?」

「はい!ありがとうございます、ありがとうございます」

「早く逃げて下さい!次が来ます!」

 

親子が逃げ終わったのを見て、俺たちは残り二機となった

グリモアに視線を向ける。

グリモアはどうやら体当たり以外に攻撃方法が無いらしく、一直線に突っ込んでくる。

俺はそれをきちんと見切り、あたる直前に手に持つ日本刀でぶった切った。どうやら美月も無事な様だ。俺が一安心した直後、ココモココの天井が全て崩壊した。

そこに現れたのは、

 

「大型グリモア、『ベネムエ』……」

 

堕天使の名を持つそいつは昔オーストラリアを壊滅に追い込んだグリモアの複製体である。

ベネムエはその巨体から繰り出される一撃を美月に向かって繰り出した!

 

「美月ーー!!!」

 

唖然としている美月は動けない、このままでは美月が死んでしまう。脳が考えるよりも早く、体が動いた。次の瞬間、俺の体をとてつもない衝撃が走る。

その衝撃に従い、俺は壁まで吹き飛ばされた。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「鋼夜ーー!!」

 

目の前で鋼夜が吹き飛ばされた。

大型グリモアの来襲に呆然としていて、反応が遅れた。

私の所為で鋼夜が怪我を負った。美月に昔の記憶がフラッシュバックする。

また私の所為で鋼夜が怪我をする?

また鋼夜が危険な目に合う?

また私は守られるだけの存在なのか?

その瞬間、私の体を光が包む。

 

〈戦闘経験値が一定まで貯まりました。解放条件を一つ満たしました〉

 

私は何も出来ずに立ち尽くしていた時とは違う!

今度こそ、今度こそ私が鋼夜を守る!

 

〈感情の爆発を確認しましたーーー貴女のキーはーー守護です〉

 

その瞬間、私のイグナイトが形状を変えていく、イグナイトが光がの粒子へと変わり、再分配されていく。

 

〈機体名ー雪時雨(ゆきしぐれ)ー〉

 

私のイグナイト…いや、雪時雨がそう告げる。

全身が白で塗り固められた雪時雨は一片の曇りも無く、白き輝きを放っていた。

 

「私が鋼夜を守る!!」

 

〈日本刀 夢幻吹雪(むげんふぶき)構築完了。目標を識別しました。攻撃を開始して下さい〉

 

私は手に持つ日本刀の重みを感じながら、大型グリモアに向かって攻撃を開始した。

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