起きて最初に感じたのは痛みだった。左手に鈍い痛みがある。どうやら折れているようだ。しかし、幸いにもと言うべきか、どうやら他の部分は殆ど無傷のようだ。
だか私は思い出してしまう。私は大事な事を、気を失う最後の光景を思い出す。
「そうだ鋼夜っ!」
ごちんという音が響き渡り、私の頭に衝撃が走る。
「あでっ!」
「きゃっ!」
そしてそこに居たのはーー
「鋼夜!!」
「おかえり。美月」
ーー私の最愛の人。朧火鋼夜がそこに居た。
〜〜〜〜〜〜〜
「……という訳でフェルリア先生が来て助けてくれたんだ」
我ながらよく出来た嘘だと思う。勿論フェルリア先生には既に了承済みなので怒られる心配も無ければ口裏も合わせてくれるだろう。
美月に嘘をつくのは心苦しいが、今の俺の立場からして美月に全てを教えるのは無理だ。少なくとも今は。教えてしまえば美月に。いや、この学園全体に少なくない被害が出る事になるだろう。それほど
創生龍が求めているのは俺の願いを叶える能力、『テミスの鎮魂歌』と、十聖剣である
さっきジジ……師匠がさっき話してはいたが、そもそも創生龍とは平たく言えば人類の裏切り者である。もっと簡単に言うとアウター側に付いた人間、と言ったところか。
その昔、これは俺が生まれる前の事なので俺自身の記憶や体験では無いのだが、アウターはいきなり戦争を仕掛けてきたのだが、過去に一度だけ人間側との話し合いに応じた事がある。その内容とは言うまでもなく和平交渉である。
人間側のどうすればこの戦争行為を止めてくれる?という直球な質問にアウター側の答えも直球であった。曰く、「人類が我々にひれ伏し、我々の好きな時、好きな場所、好きな分の血を我々に無償で提供してくれるならば止めてやる」との事だった。
勿論そんな話に応じる事など出来ず、和平交渉は決裂した。が、その話を聞き出来たグループがあった。それが創生龍である。
創生龍の考えとしては人類など腐る程居るのだから、要らない人間から無作為に選んでアウターにくれてやればいい、という事だ。だが、国連としてはそんな事は認める訳にはいかないと突っぱねた。すると創生龍はアウターに自ら近づき、「人類を侵略する手伝いをしてやるから侵略し終わった後の統治権を寄越せ」とそう言ったのだ。アウターはそれを快諾。とまあそんなこんなで人類側の過激派組織という創生龍という組織が出来上がったのである。
創生龍がまず初めに取り掛かったのはフリーダムナイツの作成である。だがフリーダムナイツの作成方法はイージスで徹底的に管理されており、盗み出すのは不可能であった。そこで白羽の矢が立ったのが、美月の両親である心音夫妻である。心音夫妻はフリーダムナイツの初期作成者の一員であり、今は独立してフリーダムナイツの機能向上の研究をしていた。そして創生龍は心音夫妻の家を襲撃、夫妻を惨殺し、まんまとフリーダムナイツの作成方法、及びその起動データを盗み取った。そして創生龍はフリーダムナイツを基とした新たな兵器。『ゼノギア』を開発し、今はアウターのグリモアと共に人類の殺戮を行っていると言うわけである。
「にしても良く戦えたな。美月」
「ああ、うん。私のフリーダムナイツが頑張ってくれたからな」
「ん?もしかして第二世代に進化したのか?」
「ああ、しかもそれだけじゃないぞ!見ていろ!」
そう言うと美月はいきなりベッドから起き上がった。
「ちょっ!いきなり立つな、まだ寝てろよ怪我人なんだから」
「大丈夫だ、このくらい怪我の内に入らな………いっ!」
案の定美月は起き上がり、ベッドから立とうとした瞬間、いきなり前のめりにつんのめった。
とまあそれを予期していた俺が間一髪倒れる前に抱きとめたんだけど。ん?なんで顔が赤いんだ?美月。
「そ、その……ありがとう」
「ん。気をつけろよな、医務室の先生のお陰で殆どもう完治してるけど、一応肋骨も折れてたんだからな」
まあさっきこれくらい怪我の内に入らないとか言ってた矢先に痛みでつんのめったとか、美月的に恥ずかしかったんだろう。
「……い、いつまで触っている!!この変態!!」
「あでっ!」
美月は器用にも抱き抱えられた状態で俺の頬を折れていない右手でクリーンヒット。俺が手を離した瞬間にベッドへ逃げ込んだ。いや、確かにずっと触ってたかもしれないけどさ、一応俺美月の事助けたんだし、その前に美月の自業自得だし、まあその怪我の責任が俺にあるから強いことは言えないけどそれでもグーで殴るのは良くないとおもうんだなぁ!?
「良くないとおもうんだなぁ!?」
突然俺が大声を出した事で美月がこっちを向いてビクッと肩を震わせた。おっと、心の声が出てしまっていた。
怪訝な顔をされたが、まあ良いだろう。
「それより、何を見せようと思ったんだ?」
「ああ、そうだったな。取り敢えず見せてやろう。ーー出番だ雪時雨」
美月が右手のブレスレットに手を当て、そう言うとブレスレットから光の粒子が溢れ出し、美月の体を包む。そして光りが収まったかと思うとそこには純白の機体が鎮座していた。
「どうだ鋼夜!これがわたしのフリーダムナイツ、雪時雨だ!」
一言感想を言えば誰しもこう言うだろう。ーー美しいと。
それ程美月の雪時雨は美しい機体だった。まず、純白の機体という物が殆ど存在しない。更に、所々から美月の宝力が反射し、月の光に反射する雪の様な美しさを醸し出していた。いたのは良いのだが、美月の雪時雨はその…何というか、肌の露出が他のフリーダムナイツに比べて…多いのだ。特に首元が開いているフリーダムナイツなど聞いたことがない。更にその……何故かフリーダムナイツの配置的に……その…胸が強調されているデザインなのは本当に良く分からない。前面装甲がないフリーダムナイツなど、ただの武器を全身に取り付けたパワードスーツでは無いのか?更に言えば美月の胸は同年代の女子と比べて比較的大きい。とまあ、そういう訳で俺は結局目の向けどころが無い状況に陥ってしまい。結局美月の顔を見るしか出来なかった。
「な、何をわたしの顔をジロジロ見ている。それよりも感想を言え!感想を!」
そう言って俺に近づき、俺の腕を掴む。
「んー。一言で言えば、綺麗だな」
「………へ?」
「だから、綺麗だって。美月が」
すると美月の顔がさっきと比べ物にならないくらい赤く染まっていく。自分から感想を求めた癖に褒められてそんなに嬉しかったのだろうか。まあ、俺も蒼火桜を褒められたら嬉しいし、美月も雪時雨を褒められて嬉しいのだろう。
「……い、いきなりそんな事を言われても………」
「ん?なんか言ったか?」
「い、いや!なんでもないぞ、何でもない!」
「そうか、じゃあ…そろそろ雪時雨解いたらどうだ?………その、色々当たってるんだが」
そう言われて美月は今の体制に気が付いたらしい。そう、今俺はフリーダムナイツを来て完全武装した心音美月に腕をしっかりと掴まれ、あろうことか嬉しさの余り力が入ったらしく俺の右手がその……とても幸せな事になっている。
「こ、こ、この変態!!!!!」
その後俺は美月の武装であるらしい日本刀を持った雪時雨を完全に乗りこなしている美月に追い掛け回される羽目になった。
本音を言うとベネムエと戦った時より死ぬかと思ったんだ。
あれ?美月レーヴァテインの話してなくね?