「はーい、じゃあー。授業始めるからねー」
ベネムエの襲撃から3日が過ぎた。フェルリア先生はベネムエを倒した(という事にしてある)報告書を提出する為にイージス本部へと出張している為、ミーディア学園を離れている。代わりに授業を行っているのは副担任である多賀花苗先生である。
「この時間は、チームについてみんなに教えるよー。ところでみんなはチームってなにかー、知ってるー?」
何を隠そうこののほほんとした副担任の先生はフェルリア・ヴォーネバイスのパートナーなのである。しかも、フェルリア先生の方からお願いしたというのだから驚きだ。
「主に6人から7人で1チームを作るのが一般的だねー。戦闘員がー4人から5人、整備士が二人っていうのがよくあるチームかなー。幸いこの学園には戦闘員志望も整備士も志望も沢山いるしー、イージスに入隊すれば嫌でも誘われるから余るって事は無いと思うよー」
学園にいる間にチームを決める必要性は無いのだが、長く付き合う事になるのだし、それならば早いうちに決めておこうという事で、ミーディアを卒業する殆どの生徒が在学中にチームのメンバーを決めているという話である。
かくいう俺も一応天剣十三将の一人として数えられてはいるものの、イージス内でも正体を知ってる人は殆どいないし、どうせいつかバレるのだから師匠にも在学中に決めておけと言われている。
チームというものは自身を守る為の盾となり、一緒に戦う矛にもなるとても大事な存在である。殆どのイージスのフリーダムナイツの操縦者はチームを組んでおり、例外的に天剣十三将は組まなくても良い、という事になっているものの、俺の知る限りチームを組んでいないのは俺の師匠と他二人だけだったと思う。
そして最後に多賀先生は「一応まだ決めなくても良いけどー、伝統的にミーディアを卒業するまでに殆どの生徒がチームを決めてるから決めといたほうが良いんじゃなーい?」と締めくくり、今日の授業は終わりを告げた。
そして、授業が終わってから直ぐ。
「なあ、鋼夜。良かったら……その……私と…その………チームを……組まないか?」
幼馴染みからそんな事を言われた。うーん。俺としては良いんだけど……
一応天剣十三将として俺は名が売れている。まだそれが朧火鋼夜だと知っている人は殆どいないが、イリーガル・ブルーとしての仕事は俺にたまに入ってくるのだ。俺とチームを組むという事はそれだけ危険な目に遭わせるという危険性が上がるという事でもある。本音を言えば出来れば美月を危険な目に遭わせたくないというのが本音である。だが、フリーダムナイツの戦闘員としてイージスに入隊する以上危険な目に遭わないという事は絶対にあり得ない。
(なら、俺と一緒にいた方が安全か?)
だが、安易に答えを出す訳にはいかない。そうすれば美月は色々イージスの深いところに連れて行ってしまう事にもなるし、何より今は俺がイリーガル・ブルーと知られる訳には絶対にいかない。今それがバレたらミーディアに恐らく俺の能力を狙う
とまあそんな訳で適当に流したのだが、美月は酷くショックを受けた様子で「そうか………」と言いながらシャワーを浴びてくると言って出て行ってしまった。罪悪感に胸が押しつぶされそうになったものの、今は答えを出す訳にはいかない。心の中でゴメンと謝りながら俺も教室を出た。
〜〜〜〜〜〜〜
「そりゃあ、てめえが悪りぃ」
放課後、俺と美月は師匠の稽古を受けるべく最近毎日武道場に足を運んでいる。美月の休憩中に師匠と組み手をしている間にさっきの顛末を話したらそう言われてしまった。
「女を泣かせる奴は最低だぞ、てゆうか前にも言ったがお前はここでチームを組むべきだ。お前がイージスに入ってからチームメンバーを募集したらどうなると思う?イリーガル・ブルーってバレた瞬間に希望者続出でそれどころの騒ぎじゃなくなっちまう。だから、ハーレムを作りたければここで作れ、ここなら
「いや、待て。話がずれてるし、俺は一度としてハーレムを作りたいなんて言ってない」
「ん?なんだ、お前男として本当に最低だな。ハーレムと名声と金は男なら一度は思う願いだろうが!!」
「それはジジイの歪んだ倫理観だ!!」
「師匠と呼べと言っとるだろうが!!」
「うるせえ!精神的に見習いたくない師匠なんてジジイで充分だ!!」
あーだこーだ言ってる内に武道場の使用時間が終わってしまったので俺と美月が帰ろうとしたが、直前で師匠に呼び止められてしまった。
「ん、まてお前ら。ちょっと話がある。そこのお嬢ちゃんに関する話だ」
すると、武道場のドアが開き、そこから多賀先生と副校長であるミリア・ハイベリオ・ミュアールがやってきた。
いや、それには語弊があるかもしれないミリア副校長は多賀先生にひきずられてやって来たのだから。
なんだ、あの人。
「取り敢えず紹介からだな、お前らは副校長について全然知らないだろう。紹介しよう、こいつはミリア。ミーディア学園の副校長にして俺のパートナーだ」
「…………眠い…………ねえ秋水………帰っていい?」
欠伸をこらえながらどう見ても俺たちよりも年下の少女がそう言った。
「……まさか師匠にこんな性癖があったなんて……」
「違えよ!!お前、こいつはこう見えてももう300年位生きてるんだぞ⁉︎」
「つくなら、もうちょっとまともな嘘をつけ‼︎」
「ああー、鋼夜くーん?校長先生の言ってる事はほんとーだよ?」
「えっ、じゃあ本当に300歳?」
「………違うよ?私は十三歳だよ?…………イリー………」
「黙れ!嘘をつくな!てか、余計な事を喋るな!」
「余計な事?」
「いや、お嬢ちゃんは知らなくていい」
仲間外れにされた美月がプクーという効果音が後ろに出てそうな感じで頬を膨らませる。
「えい」
それを見た俺は後ろから美月の頬を挟む。俺の手が近づくにつれ、プシューという音と共に空気が抜けていく。
「なっ、なっ、何をする!!お、乙女の頬にいきなり触るなど!!」
「ごめんごめん、柔らかそうだったからつい」
「ついって………」
「はいはい、夫婦喧嘩はそこまで」
「そっ、そっ、そんな事は……私は決してこ、こ、鋼夜とふっ、ふっ、ふっ………」
美月が顔を真っ赤にして反論する。
「そうっすよ師匠、俺と美月はそんな関係じゃありません」
ん?なんだか、美月から冷たい視線を感じる。
「ねえー、鋼夜くーん。女を泣かせる奴はさいてー、ってフェルリアちゃんが言ってたよー?」
「…………最近………」
なんでだろう、なんで俺はこんな短期間に三回も最低って言われなきゃいけないんだ?
「まあ、それは置いといてだ。ミリアの話だったな。ミリア、自己紹介」
「え〜……………面倒…………」
「後でゆっくり寝かしてやるから」
「………仕事…………は?」
「……俺がやろう」
「…………わかった。…………私の名前はミリア・ハイベリオ・ミュアール…………年齢は297歳…………長生きの秘訣はめんどくさがる事…………以上」
「………まあ、ミリアにしては良く頑張った方だろう。まあ平たく言うとこいつはこう言えば分かるか?」
そして師匠はわざとらしく深呼吸をして続けた。
「ミリアは『怠惰』の魔女だ」