業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#19 ノブレス・オブリージュ

 

午前5時。日本の春ではまだ少し暗い時間。ミーディア学園の一室である一人の少女が目を覚ました。

少女の名はミーシャ・アルキオス。金髪ロングの髪ときめ細かい白い肌を持つ典型的なイギリス人である。好きな食べ物はカルボナーラで、胸は他の同年代の女性と比べると少し少ない……話が逸れたが、ともかくミーシャは目を覚ました。その理由は、

 

(うむ、今日も気持ちのいい朝だな。絶好とまでは言わないが良い稽古日和だ)

 

彼女の朝の日課である一人稽古である。

ミーシャが産まれたアルキオス家にはあるしきたりがある。騎士の家系であるアルキオス家はとにかく強き者を好む。それすなわち、『自分よりも強い者と結婚せよ』である。

元々イギリス王室に騎士団長として使えていた初代アルキオス家当主からのしきたりである。そして彼らは自分らの鍛錬を決して怠る事はない。

 

『ノブレス・オブリージュ』…富める者は人類の未来に奉仕する義務を負う。

 

それがアルキオス家の家訓であり、行動規範である。

騎士である自分達がフリーダムナイツに乗らずにイージスに護られるだけなど有ってはならない。それ無くして何が家訓か、という事でアルキオス家の多くの成人はイージスに所属している。

それ故幼い頃より騎士としての知識と力の教育を受け、フリーダムナイツの操縦士(ランナー)となるべく毎日を過ごしてきたミーシャにとって朝の稽古とは既に生活の一部であり、それの無い生活など考えられすらしなかった。

 

そっとベッドから抜け出すと同室者であるポーラ・バリトレオを起こさぬようにそっと着替えを始める。

正直最初はこのポーラという女性がミーシャは余り好きでは無かった。優柔不断で、意見を伝えるのに時間がかかり、何よりも弱い。

幼い頃より騎士としての教育を受けてきたミーシャにとってポーラは対極の存在だったのだ。

しかし、ポーラは変わった。朧火鋼夜という少年に出会い、恋心を抱いた時よりポーラは努力を始め、今では体術や剣術では叶わないものの、銃器の扱いに長け、何より一番初めに第二世代へと進化を果たした。

いつの間にかミーシャはそんなポーラの事を認め、親友と呼べる存在になっていた。

暫しの間横で寝ているポーラの横顔を眺めているとふいにポーラが目を覚ます。

 

「すまん、起こしてしまったか?」

「ううん、ちょっと早く起きちゃっただけ。ミーシャちゃんこんな朝早くにどこに行くの?」

「武道場だ。朝稽古が日課でな。これをやっていないと落ち着かない」

「そっか…それ私も一緒に行っても良い?」

「ああ、勿論だ。何事も一人でやるよりも二人でやった方が良いに決まってる」

「本当⁉︎ありがとうミーシャちゃん!今着替えるからちょっとだけ待っててね‼︎」

 

そう言ってドタバタ着替えるポーラをミーシャは微笑ましく眺めていたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「ふう、疲れたー。ミーシャちゃん毎朝こんな事やってたんだね」

「そうか?私は幼い頃からずっとやってきたからな。もう生活の一部なのだ」

 

朝稽古を終え、大浴場へと向かった二人は今シャワーを浴びている。シャワー自体は自室にも有るのだが、流石に二人で一緒に入れる程の大きさは無いので、朝早くから空いている大浴場へと向かったのだった。朝早くという事もあり、大浴場には二人以外に人影はなく、二人の貸切状態となっていた。

ミーシャは隣で話すポーラの胸元に目を向ける。そこには同年代の女性と比べても大きな方と言えるものがあった。そしてその後自分の元へと目を落とす。そこには同年代の女性と比べると小さな方と言えるものが。少々負けた気持ちになったものの、フリーダムナイツでの戦闘では邪魔なだけでは無いかと自分に言い聞かせ、納得する事にした。

だが、ふとした瞬間にまたポーラの方を見てからまた自分の方へと目を向けると残念な気持ちになってしまうのだった。

 

シャワーを浴び終えると朝ごはんの時間である。ミーシャはポーラと共に食堂へと向かった。

 

「おお、ミーシャとポーラじゃないか。おはよう」

 

何時もの面々である、鋼夜と美月、ライラとオルトが今まさに朝ごはんを食べ始めようという所だった。鋼夜を見つけた瞬間にポーラの顔が赤くなっていたのはポーラの名誉の為にも黙っておこう。

 

「ああ、おはようみんな。ご一緒しても良いかな?」

「勿論だ。大勢で食べたほうが飯は美味いからな」

 

そういう鋼夜の言葉に甘え、ポーラと共に一緒のテーブルに着く。朝ごはんの話題に上ってくるのは、やはりと言えばやはりだが、フリーダムナイツの事である。

 

「そういえばまだフェルリア先生帰って来ないんだね」

「それならばどうやらイージスでの仕事が終わらないとか言っていたらしいぞ」

「私の所為なのだな。うむ、今度フェルリア先生にはお礼を言わねば」

 

美月がレーヴァテインに目覚めた事はこの5人だけには伝えてある。信頼できる仲間ならば伝えても良いとの滝沢校長からのお許しが出たのだ。

 

「そうそう。もうすぐでトーナメントが始まるんだよね」

「ああ、そうだったな。もう入学から一ヶ月経つのか」

 

一ヶ月前にフェルリア先生から告知を受けてから鋼夜たちはこのトーナメントの為に力を磨いてきた。この新人戦に向けてのクラス内トーナメントは第二世代へと進化を果たしたペアが圧倒的に有利なので、実質鋼夜と美月、ポーラとミーシャのペアの戦いである。

勿論鋼夜はイグナイトである。

 

「そうだ、じゃあ今日の放課後模擬戦でもしないか?俺たちも実践形式の訓練とかしたいし」

「うむ、それは良いな。ぜひ頼む」

「そうだな、では放課後終わった一時間後というのはどうだ?」

 

美月のその提案に全員が賛成し、審判はデクアルート兄妹がやってくれるらしい。

そしてあっという間に1日の授業は終わり、放課後がやってきた。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

第一訓練室へと集合した面々は全員フリーダムナイツを着込み戦闘準備は完了している。

イグナイトと雪時雨、イグナイトとフォーチュン・ドリーム。しかし、二つのイグナイトの武装はそれぞれ違う。

鋼夜のイグナイトは日本刀でミーシャのイグナイトは二本のレイピアである。

 

フリーダムナイツ同士の戦いでは死傷者が出る事はほとんど無い。フリーダムナイツは互いに人間には致命傷を与えられないように設定されているのだ。それ故に模擬戦とはいえ全力の戦いが出来る。

 

「準備はいいか、美月」

「ああ、バッチリだ。勝つぞ鋼夜。ミーシャ達が相手といえど手を抜くなよ」

「勿論だ」

 

と、日本人2人が言えば、

 

「さあ行くぞポーラ」

「うん、鋼夜君が相手でも頑張るよ!」

「そのいきだぞポーラ」

 

ロングとショートの金髪がそう言う。

 

「さあ!準備は良い?四人とも!決着は相手を戦闘不能にするまで、もしくはギブアップを言わせたら勝ちよ!じゃあ行くわよ!レディー………ゴー!!」

 

ライラの掛け声に合わせ、4機のフリーダムナイツが勢い良く飛び出した。

 

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