時は数分前に遡る。
「朧火鋼夜は私が追う。貴様らはレーヴァテインを貰っておけ」
雛岸と名乗った女が鋼夜を追いかけて行く。
心配だが、私達は此処から動く訳にはいかない。総勢5機のゼノギアが私達を阻む。
「じゃあ俺がやるぜ。へっ、いい女じゃねえか。静かに寄越せば痛くはしないぜ?」
「黙れ
「おお怖え怖え、そのツラが何処まで持つか疑問だがなぁ!!」
一機のゼノギアが私とポーラに近づいてくる。他の奴らは高みの見物か…後悔しても知らんぞ。
「《不死をも殺す強大なる刃よ》レーヴァテイン!」
「シャイン・オブ・サタデイ、レイン・オブ・サンデイ!!」
〈〈標的を識別しました、攻撃を開始して下さい。貴女の意思に神のご加護があらん事を〉〉
ポーラが二丁のマシンガンの引き金を引き続ける。バラララという轟音一つ一つに実弾が乗っているのだ。
「第二世代如きでゼノギアを止められると思ってるとか、随分とおめでたいみたいだなぁ!おい!!」
そいつは臆することなく弾丸の雨に突っ込んでくる。そしてゼノギアは弾丸の雨から操縦者の命を軽々と守る。
「俺のゼノギアは防御に重きを置いた『ゼノギア・アーマー』!!第二世代如きの攻撃なんて、痒くもねえ!!」
そいつは手に持った恐らくは武装であろう剣をポーラに振りかざす。しかしそれは
「ちっ、レーヴァテインか」
「助かったよ、美月ちゃん」
そう、これが私がレーヴァテインを手にしてから手に入れた能力。私が見つけたレーヴァテインの力。
それは、力点の移動。
レーヴァテインはその中心から半径15mに渡って自身の力点を変化させる事のできる特殊なフィールドを張る。その中にある限りレーヴァテインは自由にその力点を移動出来るのだ。分かりやすく言えば、レーヴァテインの斬撃は飛ぶ。
私がその場でレーヴァテインを振れば、ゼノギアの剣が弾かれる。続いて二撃、三撃と入れる度にゼノギアの体が後ずさる。
「このクソアマがぁ!邪魔すんじゃねえ!!」
ゼノギアが2本目の剣を抜きながら無茶苦茶に振り回し、こちらへと向かってくる。正直ここまでくれば美月の独壇場である。
前にも言った通り美月は剣道二段の実力者である。美月はレーヴァテインを解除し、夢幻吹雪を取り出す。まだ美月の実力では二本同時に出す事は出来ないが、ここまでくれば問題ない。
ゼノギアの無茶苦茶な剣の軌道を正確に読み切り、初撃を剣の側面で受け流す。ガラ空きになった胴に当身を入れ、距離を離す。そして躊躇なく、一閃。
「う、うわぁぁぁぁあ!!手が、手が、俺の手がぁぁぁぁ!!」
美月に切り落とされた右手を持ちながら男が何かを喚き立てる。だがそれを見て大人しくしているだけの存在では無いという事を美月は失念していた。
「動くなぁぁ!動けば、後ろの生徒達を撃つ」
男の後ろに備えていた雛岸と名乗る女に続くリーダー格らしき奴が私の後ろに銃口を構えていた。
「武装を解いてこちらへ来い女。さもなければ…撃つ」
その言葉に後ろの生徒達から悲鳴らしき声が上がる。
くっ、従うしか無いのか?
私が直ぐにでも行かなければこいつは躊躇無くその引き金を引くだろう。
「美月ちゃん………」
ポーラが今にも泣きそうな声でそう言ってくる。しょうがない………私が雪時雨を解いた時ーーー轟音と共に『蒼』が現れた。
〜〜〜〜〜〜〜
「《時空をも斬り裂く鋭利なる刃よ》天羽々斬 」
十聖剣にはそれぞれ力を発揮する為の言葉があるのが厄介だけど、敵もいないこの状況での2秒なんてさしたる問題でも無いか。さあ、さっさと済ませて…白夜の情報でも聞き出さないとな。
俺が天羽々斬を一振りすると、呆気なく間違いなくミーディアで最高クラスの防御力を誇る訓練場の外壁はまるで豆腐の様にその身に傷を付ける。まあこれ位なら他の十聖剣でも頑張れば出来るだろうしね。
天羽々斬の能力は一言で言えば何でも斬れる、だ。
たとえ形の無いもの、空間をも天羽々斬は斬り裂く事が出来る。この世で天羽々斬に斬れない物はただ一つ。他の十聖剣だけである。
やべ、切りすぎて音を立てながら外壁が崩れちまった。
おおー、見てる見てる。すみませんねえお騒がせして。
「イリーガル・ブルー………」
そう言ったのは…美月か。どうやら無事みたいだな。ざっと見たところ怪我人は特に無しか。敵は…一、二、三、四、五人目は…ありゃあ無理だな、美月がやったのか。…出来れば手を汚して欲しく無かったってのは…自己満足か?
「ま、待て!イリーガル・ブルー!!お前がどこのどいつかは知らんが、お前が動けば俺はこの引き金を引くぞ!そ、それが分かったら武装を解いて、大人しくしろ!!」
うるさいな、あいつがリーダーか?どう見てもさっきの雛岸ってやつより数段劣るな。しょうがない、あんまりみんなの前で見せる訳にはいかないんだが、そんな事を言ってる暇は無いか。
「…えっ?」
俺は背中のブースターを起動。瞬間的にリーダーっぽいやつの目の前に移動し、天羽々斬を一振り。声すらあげる暇もなく、首から上が飛ぶ。
「あ、うわぁぁ、ば、化け物!!」
「撃て!撃て!撃ちまくれ!!!」
後ろに控えていた奴らが一斉にマシンガンの引き金を引く。だが、狙いが曖昧だな。本当にこいつら創生龍のメンバーか?それにしては練度が余りに低いぞ、白夜は何を考えている?
っ、てか!弾丸が後ろの生徒の方に飛んでるじゃねえか!
くそっ!ちゃんと狙いくらいつけろよな!!
俺は剣翼を壁の様に配置することで弾丸から生徒を守る。
あっぶねえ!
「ひぃ!く、来るなぁ化け物!!」
奴らは弾切れしたらしく、一目散に逃げていく。逃がすか。剣翼が逃げる奴らの背中を容赦無く突き刺す。
……慣れたくは無かったが、もう人を殺すのには何も感じない…か。
「凄い……」
後ろでミーシャがキラキラした目でこっちを見ている。
他の生徒も呆けた感じだ。
「全く…朧火鋼夜を探しに行って、悲鳴が上がるから戻って来てみたら……これだから雑兵は使えない」
ふと、後ろから端々に冷徹さをうかがわせる冷たい声。
そこには全身を黄色で覆ったフリーダムナイツに乗る女が、ポーラのフォーチュン・ドリームも黄色だが、薄いポーラと違ってこいつは濃い黄色だ。まずいな、こいつは少なくともフェルリア先生クラスの実力があるんだ。こんなところで戦ったら他の生徒に巻き添えが。
「あなたの天羽々斬も白夜様に捧げてあげましょう!」
御構い無しか、そりゃそうだよな。せめて高度はあげさせてもらうぜ。訓練場はフリーダムナイツのより実践に近い場所にする為に天井がかなり高い。少しでも上に上がらないと。
「何か喋ったらどうですかイリーガル・ブルー!それとも何か?喋れない理由でも?そのバイザーをとった素顔…拝ませて貰いますよ!」
「よく喋る女だ」
「あら、やっと喋ってくれましたね。高度が上がったからですか?すみませんね、私戦闘中はテンションが上がってしまうんですよ!
「待て!白夜について教えろ!!」
「では、また」
くそっ、瞬間移動の固有能力。かなり厄介だぞ、あいつを取り逃がしたのは痛いな。特に創生龍に俺がミーディアに居るという事がばれたのがまずい。
こりゃあ師匠に相談すべきかな。
そんな事を考えながら俺は師匠の元へと向かうのだった。
〜〜〜〜〜〜〜
「そうか、やっぱりイリーガル・ブルーはミーディア学園に居たか」
「はい、すみません。レーヴァテインと朧火鋼夜を連れてくるというマスターの命令を果たすことが出来ませんでした」
「いや、良いんだよ蛍。今回は様子見だからね。本番は、また今度だ」
「はっ、それについてですが。やはり近い内にやるそうです」
「まあ、今回の件であいつらのフリーダムナイツも傷付いただろうしね……それが終わったら内通者は消そうか」
「はっ、マスターの仰せのままに」
そう言ってまたも少女は白夜の視界から消える。
それを確認して、この少年の正体を知らなければ世界中のどんな女でも虜に出来るような優しい微笑を浮かべながら、白夜はこう続けた。
「鋼夜…ああ、僕の愛しい鋼夜。やはり生かしておいて正解だった。君には守るべき物ができたかい?愛しい存在ができたかい?生きる意志ができたかい?僕への怒りはまだ残っているかい?ああ、鋼夜。愛しき僕の弟よ。今やこの世にたった一人の愛しき家族よ、愛すべき家族よ。鋼夜、君は僕を
「ーーー君に殺す価値は出来たかい?」
いやー、自分で書いてて思った事。
やべえ、白夜気持ち悪い。