「……そうか、朧火白夜が……」
今俺と師匠、それとミリアがいるのはミーディアの正門前。俺たちは既に全員フリーダムナイツの武装を解除している。周りには15体の動かぬ鎧と成り果てたゼノギア。それに比べ師匠達は息すら乱れていない。
「本当。なんであいつはこんな戦力でミーディアを攻めたんですかね?」
「さあな。ジュライアの命令じゃあねえだろうし」
「ジュライア・アクス・ヒスドマーノ……ですか」
ジュライア・アクス・ヒスドマーノ。創生龍の創設者にして、第1席。そして、師匠の兄弟子である。
師匠は頑なにジュライアの事を話してはくれないが、以前しつこく聞いて回った時、観念した様に話すその目には確かに親しみがこもっていた。
7年前からこのミーディアに入るまでの時間ずっと住んでいた筈なのに今ではもう遠い事の様に思えるのだから不思議である。
師匠と俺、そして
「多分白夜の独断だろうな……俺の主観だが、恐らく白夜はどこからか嬢ちゃんの持つレーヴァテインの話を聞きつけた、そして何故かは分からないが、お前とレーヴァテインを奪取する為にちょっかいを仕掛けてきたってところじゃねえか?」
「でも……俺がここにいるって事は聞きつけられたとしても、なんで美月のレーヴァテインの事が……」
俺がミーディア学園に入学した事は調べればすぐに出てくる。しかし美月がレーヴァテインを所有しているという事実はごく一部の生徒、俺とポーラ、ミーシャ、ライラ、オルトと先生方しか知らない筈である。
「……教員に創生龍の内通者が居るって事だろうな」
それはミーディア学園やイージスだけでなく、鋼夜個人にとっても由々しき事態である。もし、なんらかの偶然でその内通者に朧火鋼夜がイリーガル・ブルーだと知られてしまえばこのミーディアは確実に創生龍からの一斉放火を食らう。そうすれば、鋼夜や師匠だけでは無く、美月やポーラ達にも被害が出る。それだけは絶対に食い止めねばならない。最悪の場合もうイリーガル・ブルー = 朧火鋼夜は知られてしまっているのかもしれないのだ。
「フェルリアが帰って来ないのも気になる………考えたくも無いがあいつが内通者っていう可能性が全く無い訳じゃあねえからな」
恐らく鋼夜達にとって最悪の可能性はそれである。鋼夜には師匠がフェルリアを疑ってしまう訳が分からない訳ではない…………恐らくフェルリアの出自を知っていれば誰でも思うことだろう。しかし鋼夜はその可能性は絶対に無いと断言する事が出来た。もしフェルリアが内通者ならば鋼夜はとっくにこの世にはいないだろう。この学校の教師ならば鋼夜の部屋に忍び込み暗殺することなど容易いのだから。
「それは無いですよ師匠」
「…まあそれもそうだな、あんな真面目な奴がスパイなわけねえか」
「それはそうと師匠。なんでこのゼノギアの操縦士は全滅させちやったんですか?師匠の腕なら生け捕りなんて簡単でしょうに。まあ、美月のお陰で一人捕まえられましたけどね」
「それはだな…………」
捕虜というのはいつの時代でも貴重な情報源である。師匠ほどの実力ならば殺さず生かすなど造作も無いことである筈である。まさかそんな事がわかっていない筈でも無かろうに。
「…………だって……生け捕り……面倒くさい………」
……聞かなきゃよかった。
とんでも少女(?)の所為で怪しげな雰囲気になってしまった空気からいち早く師匠が口を開く。
「それはそうと、お前に伝えたい事が………」
「滝沢校長!!」
師匠が続きを言う前に一人の教師がこちらへ大声をあげながら走ってくる。俺はさっきの話を思い出し、瞬間的に嫌な顔をしてしまったが、情報の少ない今は何もわからないと思い、なんとか止める。
「フェルリア先生が帰ってきました!!」
その言葉を聞き遂げた瞬間、俺と師匠は駆け出した。
〜〜〜〜〜〜〜
「これは………派手にやってきましたな」
「フェルリアもひでえ格好だな」
フェルリアは明らかに戦闘の跡を残すイフリートを纏いながら創生龍の襲撃に間に合わなかった事を詫びた。それを師匠は笑って許しながら誰と戦ったのかを聞いた。
「恐らく創生龍です。計四体のゼノギアが私の乗る船を轟沈させたのです。船は大破、乗組員は私以外全滅しました」
聞けばそこから一人でイフリートで応戦し、そのままイフリートに乗り続けて海を渡ったのだそうだ。日本海以外で襲われていたらヤバかったと笑っているが、他の教師は全員顔が引きつっていた。
「
時間があればチームの整備士がやるのが普通だが、ミーディアは整備士よりも圧倒的にフリーダムナイツの量が多いので世界に2棟しか無い
「了解、ありがたく使わせて貰います」
もう鋼夜にやることは無い。そう思い、俺は一人で第一訓練室へと向かった。
〜〜〜〜〜〜
「鋼夜!!無事だったか!!」
「おう、なんとかな」
訓練室の前でしつこく警備の先生に何故外へ出て行ってはいけないのがを問いただしている美月に苦笑しながら声をかけるとパアッと顔を輝かせ、そう言った。
「なんとか師匠の所に逃げ込んだんだ」
「そうか………うっ、うっ………」
「美月?」
いきなり呻き声を上げながら顔を背けるので訝しんで声をかける。
「ゔゔっ、見るな馬鹿っ………」
「美月………」
「……鋼夜は死んだりししないか?……ゔゔっ、私の前から居なくなったりしないか?……私は……私は………ゔゔっ……うわぁぁぁぁぁ!!馬鹿っ、馬鹿っ、バカァぁぁぁあ!!」
目から水を零しながらポカポカと力無く俺の胸を殴る美月を俺はそっと抱きしめる。多分、気が気でなかったのだろう。美月は俺がイリーガル・ブルーって知らないから当然か。生身の人間がフリーダムナイツに狙われて無事でいる方が難しい。
「大丈夫。俺は居なくならないよ。絶対に美月にもう二度とあんな苦しい思いはさせない」
「ううっ、うん、うん……」
「あっ!美月ちゃん!抜け駆け!!ズルい!!」
そう言ってポーラがこっちへ向かってくる。続いてミーシャやライラ、オルトも俺の姿を見てほっとした顔つきを見せる。
ああ………居なくならないさ、お前らに俺と同じ思いなんてさせてたまるか。
改めてそう俺は決意をした。
〜〜〜〜〜〜〜
「やっと帰って来た。何年ぶり?三年ぶり?やっぱ久々の日本は良いわねー」
「お嬢様、公衆の面前であまり大声を出さないで下さいませ」
「分かったわよセルディ。久しぶりの日本で気が緩んだだけよ」
金の髪を長く伸ばしたお嬢様と呼ばれた少女が少しむくれた様にそう言う。
「これからどうなされるおつもりで?お嬢様」
「うーん、セルディは何処か行きたい所ある?」
「私の行く場所はお嬢様と常に同じです」
「つまり無いと、じゃあさっさと目的地に行こうかしらね」
「目的地と言いますと?」
まるで少女はこれからデートをしに行くかの様な桃色のオーラを放ちながらこう言い放つ。
「勿論、ミーディア学園に私の『