業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#26 不吉な予感

 

ティナの壁破壊事件から次の日。

 

「え、えっと…此処…俺の部屋だよね?」

 

そんな質問をしたくなるほど、今の俺は変な状況に身を置いていた。

 

「すーすー…うぅーん。精進が足りん…」

 

隣のベッドで寝ている美月、これは何時もの光景だから問題無い。

 

「すーすー……」

 

その更に隣で寝ているセルディ。お行儀良く寝相も一切乱れていない。

 

「あぁ…んっ、鋼夜ぁ……」

 

そして問題はティナである。何故かティナは俺のベッドに潜り込んでいた。それは問題ではない…いや問題ではあるのだが、さしたる問題ではない。実はこのお嬢様。半端ではなく、寝相が悪い。

それはもう凄まじく、一回師匠の所で修行をしていた時、隣の隣の部屋で寝ていたティナが寝相で突っ込んできて、俺の部屋の障子が壊れた位。

今日も今日とて、その寝相の悪さを発揮し俺を俺のベッドから蹴落としたらしい。だって、蹴られた痛みで朝起きたもん。

 

時間を見ると現在の時刻、午前五時。まだ学食も空いておらず、校舎も空いていない。かといって、今この部屋に居続けることは高校生的に不味い。

 

「ったく、しょうがないな。武道場でも行くか」

 

俺はまだ寝ている女子達をちらりと見てから、朝の稽古をすべく武道場へと向かった。

 

「あっ!鋼夜君!どうしたの?」

 

そこで迎えてくれたのはポーラとミーシャであった。

どうやら少し前から毎日欠かさず二人で朝稽古をしているらしい。俺も見習わねば………朝弱いから無理だわ。あっ、でも毎回ティナが蹴り起こしてくれれば………やっぱやだなぁ。

 

「んじゃあ今日の稽古は俺も混ぜてくれよ」

「うん!いいよ!良いよね?ミーシャちゃん」

「うむ、一向に構わんぞ、組手の相手が増えるのは喜ばしいからな」

 

組手かぁ。ミーシャとやると気を抜くと負けるんだよな。

うーん。流石アルキオス家と言うべきか…でもこのことフェルリア先生に言ったら怒られたんだよな。先生曰く「天剣ともあろうものが、たるんでいる!!」らしい。厳しいよ、俺の先輩は。

 

「じゃ、じゃあさ!次は私とやってよ!!」

 

うーん。ポーラかぁ。正直ポーラとの組手はあんまりやりたくないんだよな。その……組手をすると………ポヨンポヨンしたものがどうしても当たってしまう訳で……

 

「うーん、まあ良いよ」

「本当⁉︎やったあ!」

 

まあ喜んでくれるなら良いか……俺が我慢すれば良いんだし。頑張れ!俺の自制心!!

なんとか朝の稽古を乗り切った俺はシャワーを浴びて一旦部屋に戻る事にした。

 

「…………という事がありまして……」

 

今、俺の状況。玄関で土下座。

目の前には怒髪天を突く勢いの、美月…さんとティナ…さん。そして、後ろに控えているものの、怒気が隠しきれていないセルディ…お姉様。

なんでこんな事になったのかと言うと、朝起きた美月は先ず俺のベッドを見て仰天。まあそうだよな、だってそこにはティナが寝てるんだもん。それを見た美月が叫んだ事でティナとセルディが起き、俺がいない事に気付いて騒いでいた所に俺が帰ってきたという訳だ。

 

「という事は、お前は私達を放っておいてミーシャやポーラと稽古をしていたという訳だな!?」

「全く…私というものがありながら、他の女にうつつを抜かすとは、お仕置きが必要ですわね!」

「ふぇ!?」

「そうですね、鋼夜様には少し痛い目にあってもらいましょう」

「そうだな、それについては私も同感だ」

「えっ、ちょっ……」

 

ジリジリと詰め寄ってくる美少女三人。

 

「「「さあ、覚悟!!」」」

「あっ、あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!?」

 

朝からの俺の絶叫はどうやら噂によると寮すべての部屋に届いたらしい。

 

「くっそー、3人がかりとか卑怯だぞ」

「ふふん、自分の弱さを握られているのを自覚したか」

 

朝食をとっている時にくすぐられた脇腹が思い出しただけでくすぐったい。ちくしょー、幼馴染共め、俺の弱点全部知ってるからなー、脇腹重点攻撃は卑怯だぞ。

 

「本当鋼夜君の悲鳴凄かったよー?私達が帰ってる時に凄い声したもん」

「ああ、この世の終わりの様な絶叫だったな」

「ポーラ達も何か鋼夜にお仕置きをする時はくすぐるといいぞ」

「特に脇腹が効きますわ」

「言わんでいい!!」

 

朝の出来事があったからか、ティナも美月達と仲良くなってくれたみたいだ。まだ、ポーラ達にはお嬢様モードだけど、美月には素で接してるしな。これくらいでティナとの距離が縮まるなら…たまには……本当ーにたまにならいいか。

 

「にしても、お前に向けられる男子の目が怖いな鋼夜」

「ん?どういう事だ?オルト」

 

そんなわけ……ってうおっ!

食堂中の男子の恨みや殺意がこもった目がこちらを睨んでいる!?

なんで?なんで?俺なんか悪い事した?

 

「だってお前、美少女三人と同居してんじゃん」

 

いや、その内2名ほどは壁を突き破って無理やり来たんですけどね!?

とまあそんな事を言ったら墓穴を掘るだけなので、黙っておく。うん、大人への階段を俺はまた一歩登ったぞ。

 

「馬鹿な事を考えるなよ?鋼夜」

 

俺の幼馴染は俺の心の内を読む術でも持っているのだろうか。

とまあ何時にも増して、騒がしい俺らのテーブル。

俺と美月、ティナとセルディ、ポーラとミーシャ、ライラとオルト。このメンバーでチームを組めたらどんなに良いことか……いつか俺の正体がバレたら本気で考えてみよう。

 

「おーい、お前らちょっといいか?」

 

そんな声をかけながら現れたのは、師匠である。

 

「すまんな、ちょっとばかし鋼夜とティナ…それにセルディを借りてくぞ?」

 

そう言って連れ出される俺たち。このメンバーは……全員俺の正体を知ってるな。何かあったのか?

疑問なのは俺だけでは無いようで、ティナとセルディと目があったが、どちらも首をすくめるばかりで何も知らないらしい。そして、校長室に着いた俺たちを出迎えたのは、フェルリア先生とミリアであった。

 

「いいかお前ら、これから俺が言うことは外部には一切漏らすな」

 

普段とはうって変わって、真剣な師匠の声。これは、滝沢秋水ではなく、天剣十三将筆頭の『天将』としての言葉か。

 

「何があったんですか?」

 

そう聞いたのはフェルリア先生だ。どうやら何も知らされずに此処にみんな集められたらしい。

 

「単刀直入に言う、南アメリカが落ちた」

「「「「なっ!!」」」」

「大陸丸ごと通信が途絶えた。先ず間違いなく、イージスは全滅だ」

 

もし、そんな大規模な襲撃があったのなら俺たち(天剣十三将)に召集がかからないのはおかしい。ならば迅速かつ、徹底的にいきなり奇襲を食らったと仮定すべきか。

 

「ちょうど、南アメリカを『翼竜』が離れていた時に襲撃を食らったらしい。それに一つ、見逃せない情報がある」

「何ですか?」

「ジュライアが現れたらしい、更に……固有能力を……二つ使ったと」

「固有能力を二つ……まさか……」

「ああ、第七世代に進化したとして、間違いないだろう」

 

フリーダムナイツは第三世代になると固有能力を持つ。そして進化するごとに武装や能力が上がる。それは各フリーダムナイツによって変わるが、第七世代になると二つ目の固有能力を持つ事は既に確認されている。

 

「更に……『シェムハザ』の目撃情報もある」

 

『シェムハザ』……アウターの誇るグリモアの最大級戦力。

たった一機で北アメリカ大陸の半分を破壊した、第1級危険種……かつて、俺が入る前、天剣が一つ少ない頃、天剣十二将の三分の一を殺害した機体。『アザゼル』に次ぐ、最強のグリモアの一機か……

 

「それに朧火白夜の動きも気になる。それで一応この前の戦闘で被害をうちも受けているわけだし、明日全員で武器庫(アルカイナム)でメンテナンスを受けさせようと思う。異論はあるか?」

「いえ、しかし私は大丈夫です。前にメンテナンスをしたばかりですので」

「私達も平気です師匠。先ず私達は戦闘を行ってませんので」

「お嬢様と同意見です」

「俺も異論は無いです。そろそろ、蒼火桜もメンテナンスしないといけなかったですし」

「じゃあ決定だな。じゃあ明日の午前中に全生徒のフリーダムナイツのメンテナンスを行うから、今日の武器庫(アルカイナム)の使用は禁止な。じゃあ以上解散!他言は無用だからな」

 

そう言って解散になったが、俺はどうも腑に落ちないところがあった。

天剣がいなくなった隙を狙って、ジュライアとアウターが動いた……狙い澄ました一撃を的確に当ててきた訳だ。

だけど……その情報はどうやって漏れた?天剣の居場所はイージス上層部しか知らない筈だぞ?それになんで南アメリカなんだ?創生龍(ティアマト)は何がしたい?

 

ミーディア学園を中心に大きな運命の歯車が回り出した事にまだ誰も気付いていない。

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