「たぁぁぁっ!!」
「甘いっ!」
南アメリカ大陸陥落から一日が経ち、全世界に衝撃が駆け抜けた。その日中に南アメリカ大陸陥落の報せは全世界を駆け巡り、より一層フリーダムナイツの配備が世間からは急がれていた。
そして俺は昨日の反省を生かし、早朝からみんなで武道場に集まり、稽古をしていた。
「ふぁぁあ、眠い……」
「仕方ないですお嬢様、また仲間はずれにされたら怒るからという鋼夜様のご好意なのですから」
「でも私、接近戦は出来ないし……」
「じゃあ、ティナちゃんも遠距離型なの?」
「ええ、そうよポーラ。私の武装はスナイパーライフル」
「じゃあさ…私と模擬戦やってもらってもいい?」
「いいけど、私第三世代よ?」
「うわぁ、凄いんだねティナちゃんって!うん!お願いするよ!」
「じゃあいきましょうか、手加減はしないわよ?」
ポーラと共に、今もなお接近戦を続けている俺と美月の邪魔にならないように距離をとってフリーダムナイツの展開を開始する。それを微笑ましく見つめるセルディにミーシャが近づいてくる。
「貴女もフリーダムナイツは使えるのですか?」
「はい、一応それなりには」
「では、わたしに動き方のコツなどを教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「何故、私に?私は普通のメイドですが?」
「……佇まい。でしょうか?貴女の動きは洗練されている」
「……そうですか……貴女もかなりの才能がお有りの様だ。私で良ければお相手いたしましょう」
「宜しくご指導ご鞭撻の程お願いします」
セルディとミーシャもそれぞれ俺たちから離れていく。
「ほらっ!よそ見をしている暇は無いぞ!!」
「まだだぞ美月!足が甘い!」
雪時雨の一撃をイグナイトで躱す。それぞれ二人の武装は刃が潰してある模擬戦用の刀だが、当たればかなり痛いし筋を痛める可能性もある。
午後になると
更に他の生徒は午前中の、それも朝にもうメンテナンスを始めてしまうので、今日の授業は座学が中心で、正直キツイ。だからストレスを溜め込まない様に朝の運動は大切なのだ。
「とか、言い訳を考えてたりして!」
「くっ、まだまだぁ!」
俺の放った一撃で美月の体制が崩れる。その好機を逃さず俺が刀を振り上げる。それを返そうと美月の刀が俺の左手に迫る。
「だから、ここの標準を合わせて、そのカーソルが重なった瞬間にこうやって…撃つ!」
その瞬間、ティナの放ったゴム弾がちょうどいい具合にミーシャのレイピアに当たる。
「なるほど、重心はこちらで腕の力で振り抜くと」
ガンッ、という音と共にレイピアに当たったゴム弾が射線を変える。
「これで、終わりだっ……」
そしてゴム弾が俺の後頭部に直撃する。
俺の刀の軌道は思いっきりずれ、美月の横を掠める。そして無防備になった俺の左手に美月の刀が叩き込まれる。
「あだっっっ!?!?!?」
その日俺は二日続けて朝に心からの悲鳴を上げた。
〜〜〜〜〜〜〜
「「「「「ほんっっっっとうにごめんなさい!!」」」」」
「いや、いいから。頭上げてくれる?これ、他の人に見られたら相当絵面悪いから」
今俺は保健室で左腕にテーピングを巻いてもらっている最中である。見事美月の刀は俺の左手の筋をクリーンヒットし、少々筋を痛めたのだ。そしてその元凶を作ってしまったとして、美少女五人が俺に頭を下げているというわけである。
「あらあら、まるで王子様ね鋼夜君」
「先生…冗談はよして下さい。先生からも何か言ってやってくださいよ」
保健室の先生(名前忘れた)がそんな冗談を言ってくるが、正直な所何も面白くない。
「そうねえ…まあほとんど日常生活に危険は無いし、相当危険な戦闘でもしない限り大丈夫な怪我よ。心配しなさんな」
「ですが…」
「まあまあ、もう気にすんなよな美月。わざとじゃ無いんだし」
「本当にすまなかった」
「じゃあ他に痛めてる所が無いか確かめるから、上脱いでもらっていい?」
「ほい」
俺は保健室の先生(名前忘れた)に言われた通りにジャージを脱ぎ始める。
そして、俺は最後に残った翡翠のネックレスを取り外した。
「鋼夜…それまだ持っていてくれたのか……」
「うん?……ああ、これか」
そう言って美月の指差した翡翠のネックレスを手に持ったまま弄ぶ。
「美月のお母さんとお父さんからのプレゼントだからな」
「鋼夜?それ何なの?昔からずっと付けてたよね?」
「美月の両親からのプレゼントだよ、美月の誕生日についでに貰った。最後のプレゼントだ」
「ふーん。ごめんね?ヤな事思い出させた?」
「ううん、平気。確か美月とお揃いだったよな」
「ああ、お揃いというか、元々一つだったものを二つに割った感じだったな」
そう言って、美月が胸元から翡翠のネックレスを取り出す。
「はーい、終わり。特に左手以外は異常無いね。うん、じゃあ帰って安静にしておくこと。今日はこのまま
「はーい」
「それと早く行った方が良いわよ、さっき
保健室の先生(名前忘れた)が言葉を言い終わる前に俺たちの視界が黒に閉ざされた。
電気が全部消えたのだ。
「停電?」
「
いや、違うこれは……
すると直ぐさま凄まじいアラートが鳴り響く。これは、火災報知器?その音と連動し、防火シャッターが全て降りる。更に緊急地震速報にグリモアの出現情報、津波警報、暴風警報、竜巻警報などミーディアに完備されているありとあらゆるアラートが鳴り響く。
間違いない、これは……ハッキングだ。
『まだフリーダムナイツは預けていないな?お前たち』
いきなり腕輪から、フェルリア先生の声がする。フリーダムナイツの通話機能を使って俺たちに通信をしているのだ。
『至急体育館まで来い。今動けるのはお前たちだけだ』
何時になく真剣な声色のフェルリア先生に俺たちは顔を見合わせ、体育館へと走った。
〜〜〜〜〜〜〜
「くそっ、やられた。ハッキングだ。よりにもよって
体育館に着いた俺たちを待っていたのは師匠のそんな言葉だった。
「
「全滅だな。一機たりとも動かせん。勿論俺のも含めてな」
それすなわち、ミーディアの戦力の99%か封じられたに等しい。
俺がそこまで考えたら瞬間、耳障りなノイズと共に、聞き覚えのある声がスピーカーから流れてきた。
『やあ、聞こえてるかな?ミーディア学園の諸君。僕は
「っ!白夜……」
殆ど七年ぶりになる兄の声。その声を聞くだけで、心の底から殺意という黒い感情が湧いてくる。
『みんなもお気付きの通り、僕たちはミーディア学園にハッキングを仕掛けた。これで殆どの戦力は使用不能だよね?』
「やっぱり、内通者か。この状況だと、
俺たちは除外として、残るは先生方か。恐らくその中に絶対に内通者がいる。あいつならそれ位は平然とやってのける。妙にカリスマ性は高いからな。
『じゃあ、今度は前の反省を生かして全力で相手をさせてもらうよ?またこちらからの要求は三つ。レーヴァテイン、鋼夜、イリーガル・ブルーの身柄の確保だ……邪魔をするなら……今度は全員殺す』
全く声色を変えずにそう言い放った。
殺す。と、この生徒を全員。
狂ってやがる。そうとしか思えない。
『じゃあ突入は10分後だ。それまでにせいぜい戦力の確認でもしておくんだね』
10分後か、俺が身を隠す時間くらいあるかな。
『そうそう、最後に鋼夜。紗夜の力は何処まで残ってる?僕の愛しい鋼夜、君だけは絶対に手に入れる。ミーディアが落ちるところを特等席で見せてあげるからね』
反吐が出る。
お前だけは、俺が絶対に殺す。
イリーガル・ブルーの力を舐めるなよ。
今、此処にミーディア学園最初で最悪の総力戦が始まろうとしていた。
開戦まで、後九分。