「ふふふ、はははっ!これは…傑作だ!!そうか!そうだったんだね鋼夜!!」
「……黙れよ……」
「ふふふっ、ごめんよ鋼夜。7年ぶりの再会だっていうのに随分と無愛想じゃあないか。ほら、昔みたいにお兄ちゃんって呼んでも良いんだよ?」
「黙れよ!!」
この時点で朧火鋼夜にとって好都合な事は四つ。
「……つれないなぁ。でも鋼夜が生きててくれて良かったよ。やっぱりあの時に生かしておいて良かった。まあ、アレの力が君に渡ってしまったのは計算外だったけどね」
「実の妹を……アレと呼ぶな。お前が殺した紗夜をお前なんかが思い出す資格も無い!!」
一つ目は空中での戦いの最中だった為、鋼夜と白夜が話しても地上にいる生徒たちには何も聞こえないという事。
鋼夜が白夜に日本刀を突きつけた時、一機のフリーダムナイツが此方へと飛んでくる。
確かあれは……入学式の時に司会をしていた……確か名前は羽金先生?
「白夜様!!遂にイリーガル・ブルーの正体を!!」
そうか、あいつが内通者か。俺がそう思った時、白夜の汚物を見るような目に気付く。
俺は不覚にもその瞳に恐怖を覚えてしまった。
そして白夜は一瞬で羽金の首をはねる。
「僕と鋼夜の時間を邪魔するな屑が」
血しぶきをあげながら羽金が地面に落下していく。その目は驚愕に目を見開いており、その身に纏ったフリーダムナイツは自壊を始めていた。
「邪魔が入ったね鋼夜。さっきも見せたけどこれが僕の十聖剣、天叢雲剣だ」
二つ目はこれだ。
文献によれば天叢雲剣は斬った物の分子構造を破壊する剣。すなわちそれに切られた物は分子構造が破壊され、自壊を始める。
もし、鋼夜の蒼火桜が全身を覆うタイプのフリーダムナイツだったならば今頃宙に浮かぶ事も出来ずに、地面に落下して無残な死を遂げていただろう。
三つ目はまたも空中の戦闘の為、地上からは顔の判別が出来ない事だ。フリーダムナイツの望遠機能を使えば見えるだろうが、生憎地上の生徒は全員フリーダムナイツが使用不能で、他の先生やミーシャ達は全員戦闘中であり、そんな事をしている暇がない。
「全く……兄弟水入らずの時間を邪魔するなんて、汚物よりも汚らしいね。せっかく7年ぶりの再会だっていうのにゆっくり語らう暇も無いなんて。それどころか、こんな空中だから誰も来ないと思っていたし、唯一事情を知ってる蛍はちゃんと僕の言いつけを守ってくれて、違う所で戦闘をしてくれてるのにさ、あの屑といったら、何が白夜様!だよ、全くあんな屑に僕の名前を呼ぶ資格なんて無いっての。ああ、ごめんね鋼夜愚痴ばっかりで、ああ本当に生きていてくれてありがとう鋼夜。ああ僕の愛しい愛しい鋼夜。やっぱりあの日の僕の選択は間違ってなかった。元々鋼夜は殺すつもりは無かったしね、あの屑みたいな父親とあの塵みたいな母親と人外のアレは殺す予定だったけど鋼夜は最初から殺す気なんて無かったんだ。それと僕は一つ謝らなきゃいけない事があるんだ鋼夜、あの鋼夜の幼なじみの……えっと……そうだ!美月ちゃんの家はどうやら創生龍が襲ったみたいなんだ。ごめんね僕がもっと早く屑と塵とアレを殺して創生龍に入っておけばあの人たちが殺される事も無かったのかなあ。あっ、でもダメか。あの美月ちゃんの両親も屑と塵だもんね。やっぱりイージスなんかに肩入れしてる奴らは塵ばっかりだ。あっ、鋼夜の事を悪く言ってる訳じゃ無いんだよ?天剣十三将なんて言ってもただの寄せ集め集団だし、末席の鋼夜じゃあイージスの暗部なんて知らないでしょう?なら全然良いんだよ。そうそう、美月ちゃんも十聖剣持ってるんだってね。レーヴァテインだっけ?いやー、運命って凄いよね?僕が天叢雲剣、鋼夜が天羽々斬、美月ちゃんがレーヴァテインそれに……あの裏切り者、セルディがデュランダルだっけ?あれ?これ鋼夜の知ってた?まあいいや、話が逸れたから戻すね。あの美月ちゃんだけどさ、殺してもいいかな?僕たちどうしてもレーヴァテインが必要なんだ。だから……あっそうだじゃあ美月ちゃんを僕にくれない?ああ、勿論鋼夜も付いてきてくれることが前提ね?其れがダメなら美月ちゃんを殺すしか無いんだけど……どうする?」
正直、言ってる事の九割は全くもって理解出来ない。だけど、最後の言葉だけはさ理解出来たぜ?白夜ぁぁ!
「美月を殺す……?」
「うん」
「お前はまた、俺から大事なものを奪っていくのか?」
「うん。あっ、ダメ?それでも……鋼夜……僕を
「やめろぉぉぉぉぉ!!!」
その時、俺の体を光が包む。
この感覚……久しぶりだな。
〈Confirmation key Feelings.フリーダムナイツの進化を開始します。蒼火桜、第四世代へと移行。貴方の感情は、殺意です〉
そして四つ目の幸運は鋼夜の素顔を見た者は白夜を除いて一人しかいなかったということ。
しかし、それは最も知られてはいけない者だった。
光に包まれ、殺意に身を委ねる鋼夜には見えていなかったのだ。鋼夜を守りたいと願う、一人の少女が。
純白のフリーダムナイツを纏った少女の姿がそこにある事に。
「鋼夜……?」
〜〜〜〜〜〜〜
時は鋼夜がまだイリーガルブルーとして白夜と戦っていた頃に遡る。
「第三世代が一人、第二世代が一人、第一世代が一人、そんなもので私を止められると本当に思っていたのか?」
既にティナもポーラもボロボロだ。唯一殆ど無傷なのは……全く相手にされていないミーシャくらいなものだろうか。
雛岸蛍対ティナ、ポーラ、ミーシャの一戦はかなり劣勢と言えた。それもそのはず、この蛍。第五世代である。
フリーダムナイツの世代が一つ変われば、その力関係は三倍開くと言われている。勿論それに当てはまらない事もあるが、それが通論である。
「くっ、何故だ。なぜ私を狙わない!私は騎士だぞ!仲間を守れなくて何が騎士か!!」
「弱いから。私が戦う理由もない」
それは屈辱であった。
騎士の家系、それも名門アルキオス家の本家の娘であるミーシャにとって、騎士というのは誇りであった。
父はイージスの兵士を育成する教官、二人いる兄達ははイージスの最前線で戦う屈強な兵士、そして最もミーシャが尊敬してやまないのが、母であった。
ミーシャにとって母とは騎士そのものであり、英雄であり、希望であり、そして憧れであった。
母の名はグレース・アルキオス。天剣十三将、序列9位『雷剣』のグレース・アルキオスである。
そんな母の面影を見ながらミーシャは願う。
幼き日に誓った、父の力を越えて見せると。
幼き日に誓った、兄の事も越えて見せると。
幼き日に誓った、母の元へとたどり着いて見せると。
幼き少女が願った思いを、今ミーシャは願う。
騎士の誇りにかけて。仲間を守って見せると。
記憶の中の母の言葉が蘇る。
『いいですかミーシャ。騎士とは仲間を守る盾にならねばなりません。たとえどんな状況でも、どんな苦しい力でも、それから仲間を守る盾になるのです。甘えは許しません。いいですか、仲間を守る。それを騎士の誇りにかけて誓えますか?』
はい、お母様。私は誓います。
私は仲間を守りたい。
ポーラを、ティナをみんなを守りたい!
だからお願いします、私に力を!!
その時、ミーシャの体を光が包む。
〈感情の爆発を確認しましたーー貴女のキーはーー友情です〉
その時、ミーシャのイグナイトが形状を変える。
イグナイトが光の粒子へと戻り、再分配される。
〈機体名ーナイトリオンー〉
そうミーシャのフリーダムナイツが告げる。
手にはミーシャが幼き日から愛用するレイピアが。
そして両手には取り外し可能の盾が付けられているその機体は正しく騎士と呼ぶに相応しいものであった。
フリーダムナイツであって、その中でもナイトと付く機体。それはミーシャの守るという意思を色濃く反映している。
〈二刀レイピア、レイディアント・ピアス。構築完了。貴女の意思に神のご加護があらん事を〉
さあ、行こうかナイトリオン。みんなを守る盾になりに。
その時、私の記憶の中のお母様が笑いかけた気がした。