業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#32 不公平と言う名の皮肉

 

「ほう、第二世代へと進化したか。面白い中々お前も見所があるようだ。よかろう、貴様も創生龍へ来ないか?そこのマシンガンのと共に」

「断る」

「何故だ」

 

ナイトリオンを、銀のフリーダムナイツを纏ったミーシャは真っ直ぐに蛍の顔を見てそう言った。

 

「貴様らの目的には賛同しかねるのでな。更に言えば貴様らの軍門に下るなどお母様が許すはずもない」

「そうか、残念だ。ならばここで殺すとしよう」

「私は殺されなどしないさ、皆を守る騎士だからな」

「ふっ、一人で何が守れるか試してみるがいい!!」

「……一人じゃあ……ないよ?」

 

弱々しく、足を震わせながら、けれどその目は真っ直ぐ前を向き、その声は一片の曇りも無く、ミーシャの親友が、黄色のフリーダムナイツを、フォーチュン・ドリームを纏ったポーラが立ち上がる。

 

「ふん、よく立ったと褒めてやろう。第二世代如きが私の一撃を受けてよく立った……だからなんだ?そんな満身創痍で私と、第五世代と戦えると思っているのか!?」

「戦えるよ?だって……私にだって守りたい人がいるもん、真面目で頑固な頑張り屋さんのルームメイトも……鋼夜君だって、私が守ってみせる!!」

「ああ、そうだポーラ。私も微力ながら手伝おう。私も、自分の気持ちを上手く言葉に出来ないルームメイトを守りたいからな」

「「たとえ一人じゃあ勝てなくても、二人なら」」

 

共に第二世代であるミーシャとポーラ、第五世代の蛍との世代差は一つ。その距離は三倍。十分射程距離である。

 

「ほざけ、弱者が」

 

蛍がポーラに向かって接近する、しかしポーラに向かって振り下ろされた一撃はミーシャによって阻まれる。

ミーシャの駆るナイトリオンは防御を念頭に置かれて作られている。その為他のフリーダムナイツよりも速度の面では劣るが、その反面高い防御性能を誇る厚い装甲を持っている。更にナイトリオンの両腕には敵の攻撃を防ぐ小型盾(バックラー)が取り付けられているので、第五世代といえどその防御を破ることは容易くない。

 

「そこっ!」

 

振り下ろした直後、固まった一瞬の隙を突いてポーラが引き金を引く。凄まじい轟音と共に実弾が莎草蝶に突き刺さる。しかし……

 

「所詮第二世代の攻撃……防御性能は中々のものだが、私の装甲を抜くには突破力が足りない」

 

その弾は一発たりとも蛍の肉体には届いていなかった。

莎草蝶の装甲が全てを退けたのだ。

しかし、蛍は一つ失念していることがある。

それはミーシャとポーラはルームメイトだという事。

そして、ミーディア学園の部屋割りはフリーダムナイツ使用時の相性の良さ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)のみで割り振られるということ。

 

「「はぁぁぁ!!」」

「なっ、んだと……」

 

硝煙によって視界が遮られた前から突っ込んできたのはレイピアを前に構え、真っ直ぐに突っ込んでくるミーシャの姿と、後ろでマシンガンの引き金を引き続けるポーラの姿であった。

 

(正気か!?こいつらっ!)

 

一歩でも、一瞬でも、一回でも少しでも照準が狂えばミーシャの背中にマシンガンが雨のように突き刺さるだろう、しかしそんな事はポーラはおろか、ミーシャですら考えていなかった。

信頼。確かな信頼関係がそこにはあった。まだ知り合って1ヶ月ちょっと、それまでは赤の他人、最初はあまりいい印象を持っていなかった。だからどうした。

 

私達はルームメイトだ!背中の一つや二つ、命の一つや二つ、預けられなくて何がルームメイトだ!何が親友だ!!

 

そして、ミーシャ渾身の一撃が、ポーラの思いのこもった一撃が、莎草蝶に受け止められる。

 

「ふふふ、ふはははっ、甘い!甘いぞ!さっきも言っただろう!突破力が無いんだよお前たちには!それが世代の差だ!!」

 

しかし、蛍にはもう一つ失念している事がある。

それは、まだこの場にはもう一人戦える少女がいる事、そしてその少女には、時間をかければ誰よりも凄まじい攻撃力を発揮する手段があるという事。

 

「チェックメイト」

 

その声が後ろから聞こえると同時にミーシャも、ポーラもその場から離れる。そしてその場に残ったのは、驚愕に目を見開いた蛍のみ。

 

「轟け、ストラトス・ディーヴァ!!」

 

チャージ時間、およそ五分。それはおよそ通常の32倍の威力を誇る一撃、超近距離型ショットガン『ヘルズ・エンジェル』が火を噴く。

一瞬の判断で蛍は左腕を庇うように前へと突き出す。

そして、耳障りな悲鳴と共に散弾は蛍の左腕をズタズタに引き裂いた。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「やっぱりいいよ、鋼夜!君の殺意はいい!そんな目を出来るようになったなんて、全く鋼夜にはいつも驚かされる!!」

「黙れ、白夜。お前は俺が殺す」

「いいや僕を殺せるものなど存在しないさ。だから鋼夜、僕が君を殺してあげよう!」

「うるせえ、行くぞ!白夜ぁ!」

 

俺は一気に加速して、白夜を天羽々斬で切り裂く、しかし白夜はそれを後ろに引いて回避すると尚も話しを続ける。

 

「素晴らしい、その身体能力も紗夜の力のおかげかい?『テミスの鎮魂歌』公正と公平の女神が奏でる鎮魂歌、その名は不公平、なんという皮肉か、最期にいいプレゼントを残してくれたみたいだね、紗夜は!!」

「うるせえ!お前が紗夜の名前を呼ぶなぁぁぁぁ!」

 

俺は何本もの剣翼を白夜に向かって投げつける、しかしそれを白夜は全て天叢雲剣で弾いてしまう。剣翼が分子構造を失い、宝力へと戻っていく。

しかし、すぐにまた剣翼は何事も無かったかのように再生を始める。

 

「なるほど、再生能力か。いや……違うなそれは交換か?」

 

そう、俺は剣翼を再生している訳では無い。

元々『蒼天皇の剣翼』が出せる日本刀の数は最大111。その中でもっとも有効に使える24本を出しているにすぎないのだ。

だから剣翼をいくら折ろうと、替えはまだ沢山あるし、ストックが尽きる頃には最初の剣が戻っているというわけである。

 

俺は蒼火桜の飛翔能力に任せ、疾風の如く加速する。

その速さは第三世代とは比べものにならないほど速く、一瞬世界がスローモーションになる。

 

「いいぞ!鋼夜ぁ!さあ踊ろう!僕たちの行き着く先は死あるのみだ!!」

 

耳をつんざく剣撃。ミーディア学園の講堂内で火花が散り、大気が震える。

右からの剣翼の三連撃、それを白夜は一つづつ確実に叢雲で弾き、破壊していく。叢雲が無くなった隙に俺は天羽々斬で白夜の首を狙うが、それを後方に回避。更にその遠心力で白夜は回し蹴りを俺の胴へと振り抜く。

 

「がはっ……」

 

ボキッという音とともに俺の胴が激痛に襲われる。

骨の折れた感触がする。これは、肋骨でも折れたかな……

そしてそのまま俺は講堂の壁まで吹き飛ばされ、俺のぶつかった周りの壁には大きなクレーターが出来上がっていた。

 

「僕は昔から回し蹴りが得意だった。忘れてないよね?鋼夜」

 

そういやそうだったな。フェルリア先生とセルディを吹き飛ばしたのも回し蹴りだったっけか。

痛え、久しぶりにこんなモロに一撃くらったぜ。

やっぱ一筋縄じゃ行かねえか……認めたくは無いがやはりあいつは天才だ。

 

「ああ、そうだったな。だけどそんなもんか?俺の薄い装甲でもまだ動けるぜ?」

「そりゃあ、そうさ。鋼夜を殺すわけにはいかないからね。手加減しないと死なれたら困るんだよ!」

 

そう言って白夜は一気に俺との距離を詰める。俺は少しでもスピードを緩めさせるために剣翼を放つが、全て天叢雲剣で弾かれ、消されていく。

 

「そろそろ終わりにしようか、鋼夜。どうやらこっち側はもう殆ど動ける人が居なくなってきたみたいだしね。そろそろ本気を出すとしよう」

 

そう言って白夜は詠唱を始める。

小声で紡がれるそれはまるで……呪詛の類だ。

 

「雨死光」

 

そして白夜の体を黒い光が覆い始める。

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