業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》   作:ムササ

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#34 決着。そして

 

『蒼天皇』と『黒き太陽』がぶつかり合う度、凄まじい轟音と共に空気が、大気が激しく震える。

十聖剣同士がぶつかり合う、その結果は誰にも知ることは無い。

 

「ぐらぁぁあ!!」

 

俺が剣翼と天羽々斬を使い分けながら、白夜に向かって斬りかかる。白夜は天叢雲剣、腕、足を巧みに使い分け、受け、流し、払う。

 

「なら、これでどうだ!!」

 

俺は『蒼天皇の剣翼』を最大まで展開。合計111本からなる、天を羽ばたく蒼天の翼をはためかせる。

これでもう壊されても再生は出来ない。しかしそのかわりに圧倒的に手数は増す。

 

「ふはははぁ!いい!いいよ鋼夜!それが殺意だ!それが本来の人間の有るべき姿だよ鋼夜ぁ!殺意に身を任せ、僕と戦え!人間らしさなんて捨ててしまえ!獣の様に気高く戦えぇ!!」

「いや、違うね。俺が戦うのは仲間の為だ。殺意なんかに塗れてたまるか」

「それでもいいさ鋼夜!僕はずっとこの時を待って居たんだ!7年間待ち続けた!あのくそったれな兄妹の中で唯一まともな人間だった鋼夜を、僕がこの手で真正面から叩きのめす事をぉ!!」

「さっきと言ってる事が違うぜ?」

 

さっきまでは殺すつもりは無かったとか言って無かったけか?それとも人生初めての嘘をついたか?

 

「いいや、僕が殺したかったのはねその目をした鋼夜だよ……僕はね羨ましかったんだ鋼夜。君は唯一あの兄妹の中で『人間』だったからね」

「……どういう事だ」

「さあね、それ以上敵に教える義務は無いんじゃ無いの?」

「うるせえ!」

 

俺は剣翼を一斉に投擲、合計111本の日本刀が一斉に白夜に襲いかかる。しかもそれは前後左右、上下両方からの一斉投擲である。

しかし白夜は人間とは思えない反射速度で天叢雲剣を使って弾き続ける。……本当にこいつ俺と同じ人間か?多分俺でもこんな事は……

 

「こんなものかい?鋼夜ぁ!ならこっちから行くよ!」

 

白夜は天叢雲剣を真っ直ぐに構え、一直線に突撃してくる。対する俺は既に剣翼は使える状況じゃあ無い。天羽々斬で受けるしか無い。

 

共に『天』を冠する十聖剣。その理由は単純明快。実はこの二本、神話上では全くの同一の剣である。

日本神話で、須佐之男命(スサノオノミコト)がヤマタノオロチを退治した際に尾から発見されたと言われる刀。それが天羽々斬である。そしてそれは後の世では天叢雲剣と名を変え伝えられたとされている。

何故同じ刀が十聖剣として現れたのかは分からない。

しかし今、現在この二本は打ち合っている事は間違いない。

 

白夜が上方から切りおろしを仕掛ければ、鋼夜はそれを刀の側面で受け流し、横薙ぎに斬り払う。白夜はそれを後方に飛ぶ事で回避するものの、鋼夜はその機を逃さず追撃を仕掛ける。しかしそれを白夜は後方に帰ったエネルギーをそのまま回転へと変え、宙返りの要領で鋼夜の顎を蹴り上げる。足が浮いた瞬間を逃さず、白夜が鋼夜の首を取るべく横薙ぎに振るうも、鋼夜は間一髪で肩の蒼火桜の装甲で受ける。蒼火桜の装甲が分子構造を破壊されるよりも早く、鋼夜は体制を立て直し、自身の固有武装、光華紫電で白夜の腕を狙う。

血飛沫が飛び散るも白夜の命を脅かすどころか、全く戦闘に干渉する程の傷しか与えられなかった事を鋼夜は歯ぎしりしながらも直ぐさま頭を切り替える。

 

「さあ、もっと、もっと狂おう鋼夜!これが僕たちの狂奏曲(コンチェルト)だ!!」

 

天羽々斬を握っている鋼夜には対し、白夜は懐から牽制に投げナイフを繰り出す。直後白夜の体から合計3本のナイフが繰り出される。

弾道の速さ、高低差もあり回避は著しく困難である。しかし鋼夜は蒼火桜の世界最高の速度をもってそれを可能にする。一つ目を横に捻ることで回避し、二つ目を蹴り上げ、三つ目を天羽々斬で切り裂く。

 

しかし白夜はバネの様に足を曲げ、真っ直ぐに鋼夜に向かい跳躍、白夜の二段攻撃の構えである。

ナイフはしっかりと牽制の役目を果たし、体制の崩れた鋼夜に跳躍の勢いの乗った斬撃が叩き込まれる。

しかし斬撃の勢いに関わらず、天叢雲剣の一撃を受けた光華紫電はその身を光に変え、鋼夜の宝力へと戻る。

そしてガラ空きになった鋼夜の左腕に天叢雲剣が振るわれる。

 

瞬間、鋼夜は左腕を引いて回避しようとするものの、鈍い痛みにそれを遮られる。今朝の傷が未だにその効果を果たしているのだ。そして薄い、あまりにも装甲とは呼ぶに相応しくない薄い装甲に阻まれ、少しばかり勢いの衰えたものの、凄まじい勢いの斬撃が鋼夜の左腕に叩き込まれる。

 

「あぁぁぁあ!!!!」

 

何とか切り落とされるという最悪の事態だけは避けたものの、血が滴り、今この瞬間にも激痛とともに赤い鮮血が左腕から流れ出す。

天叢雲剣の効果が人体に影響しないだけマシであるが、もうこの戦闘で左腕は使い物にならないだろう。

 

「ここまでだね、鋼夜。僕の勝ちだ」

「まだ……俺は屈してねえぞ……?」

「ならこれでどうだ」

 

目にも止まれぬ一撃、回し蹴りの要領で白夜の体が縦に回転し、直後鋼夜は脳天に凄まじい衝撃を食らう。

そして無防備にされけ出された左腕を白夜が踏みつけ、踏み躙る。

 

「さあ、ここまでだ。鋼夜……ありがとう美月ちゃん。君のお陰で鋼夜を殺せるんだ。礼を言うよ」

 

凄まじい俺の悲鳴の中で白夜の言葉はしっかりと美月の耳へと届いた。

 

「……せ。鋼夜を離せぇぇぇ!!」

「おっと、それは出来ない。やらせたくなければ力づく。それがフリーダムナイツの、イージスの行動理念だろう?」

 

美月は夢幻吹雪を手に、白夜に斬りかかる。しかしそれはあっという間に天叢雲剣に阻まれ、その刀身は光へと変わる。だったら……

 

「レーヴァテイン!!」

 

美月は身の丈程はあるかという大剣を真っ直ぐに構える。

 

「……やめろ……美月……」

 

大剣を美月が振るうたび、何もない空中を白夜の斬撃が止める。果たしてその斬撃は見えているのか。

 

「君はまだ鍛錬が足りない。レーヴァテインの軌道は確かに見えないけれど、本体の腕の動きと目の動きで君の思考は読めるんだよ!!」

 

そして、回し蹴りが叩き込まれる。

身体をくの字に折り曲げながら美月が飛ばされる。

 

「君はまだ殺す価値は無い……今ここで鋼夜を殺したら……君も価値が現れるかな?」

 

白夜が美月にレーヴァテインを奪うべく接近する。

俺は……また目の前で……白夜に奪われるのか?

何が仇だ。

何が復讐だ。

何が殺すだ。

何が、誰が……そんな事は……

 

「くだらない、くだらないぞ。くだらないプライドなんて捨てろ」

 

いつかの師匠の言葉が蘇る。

 

『たとえ間違ってもいい、見失ってもいい、折れてもいい、泣いてもいい、転んだっていい、挫折したっていい、無くしたっていい、後ろを振り返ったっていい。だけどな鋼夜。最後に大切なものを取り違えるな。自分が自分に立てた誓いを果たせ。本当の願いを果たせ。絶対にそれだけは見失うな』

 

『お前の本当の願いはなんだ?』

 

俺の本当の願いは……復讐じゃなく、仇を取ることじゃなく……目の前で誰も失わない事……

 

『笑って……お兄ちゃん!』

 

その時、俺の胸元から淡い翡翠の光が漏れる。

その光に後押しされる様に、俺は駆け出した。

 

走れ、走れ、走れ!風よりも早く、誰よりも早く、天を翔けろ!!。体が軽い。痛みも無い。それよりも何よりも……胸から暖かい光が俺を包み込んでくれる。それはどこか懐かしく、何よりも暖かい光だった。

 

そして俺は同じく翡翠の光を放つ少女の元へとたどり着く。

 

「なっ……」

「くらえ!天羽々斬ぃぃぃぃ!!!」

 

驚愕に目を見開く白夜に構えも何もなく、剣術のかけらも無い、一撃。ただ、一筋、鋼が切り裂く。

そしてそれは白夜の胴を切り裂き、血飛沫が舞う。

 

「くっ……」

「とどめだぁぁあ!!」

 

まだ浅い。もう一撃入れねば白夜の命は止められない。

そう直感が告げる。そして俺の最後の力を振り絞った一撃は……届かなかった。

 

「ふん。遊びすぎたな。白夜」

「……ジュライア……」

 

突如として割り込んできた白夜よりも黒き機体。それはまさしく漆黒と呼ぶに相応しいフリーダムナイツ。

そしてその手に込められている長剣に天羽々斬は止められていた。その事が示す事は一つ。

 

「久しぶりだな。ジュラ」

「おお、シュウか。どうやらハッキングを解かれたらしい」

 

そして俺の前に師匠が立ちふさがる。

白夜、ジュライア、師匠、俺、美月の順番だ。

 

「待ってくれ師匠……もうすぐで……」

「ダメだ鋼夜。ジュライアが出てきた以上、もう手を引け」

「なんでですか!」

「あいつが参戦すれば……ミーディアが滅ぶ危険性がある。校長としてそれは許可出来ん」

 

そんな事を言われたら俺は剣を引くしか無い。俺は渋々天羽々斬を引く。そしてそれを見てジュライアも自身の剣を引く。

 

「さあ、ここは一旦引くぞ白夜。データは揃ったゼノギアももう少しは強くなるだろう。来い、蛍」

「はい。ボス」

 

いつの間にかボロボロに左腕を垂れ下がりながらも蛍が転移してくる。

 

「さようなら鋼夜。最後の一撃は中々効いたよ。また会おう」

「……次に会ったら殺してやる」

「楽しみにしておこう」

 

そして師匠はジュライアと大将同士の対談をしていた。

 

「何故我々は道を違えたのかな?シュウ」

「さあな、元々俺はお前とは馬が合わなかったしな、ジュラ」

「我らの悲願は同じなのだがな、『クルティナの予言』その成就」

 

『クルティナの予言』?なんだそれは。

 

「スタンスが全く違う。だからだよ」

「ふっ、まあいい。次に会う時までにそこの小僧をもう少し強くしておけ、貴重な『テミスの鎮魂歌』だろう?……それにもしかしたら……至るやもしれんぞ」

「うるせえ、さっさと行け。でないと、消すぞ?」

「ふん、減らず口を……」

 

そして次の瞬間、蛍の能力で三人は何処かへ消えていった。

 

「終わった……のか?」

「ああ、終わりだ。よく頑張ったな、鋼夜」

「鋼夜……無事か鋼夜!!」

「ああ、無事だよ、美月……お前も無事で良かった…………」

 

そしていきなり俺の視界は黒く塗りつぶされた。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「心配ない。ただの疲労だ」

「本当ですか⁉︎」

 

全く……無茶しやがって。燃費の悪い蒼火桜でずっと全力戦闘なんて宝力が切れて普通だっての。それで意識失いやがって、タイミング的にもお前、死んだとか勘違いされても仕方ねぇぞ?

 

にしても……『クルティナの予言』……あのババア厄介なもんを残してくれやがって。

英雄……か。

お前ならなれるかもな、馬鹿餓鬼。

 

そうして俺は口に咥えたタバコに火を付けた。

 




明日は一章エピローグと人物紹介の二本立て……出来たらいいなぁ。
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