「痛って!ちょ、もう少し優しくできないの!?」
「……」
「だぁぁあ!!痛いっ!痛いって!!」
「……」
「ごめん!ごめん!わかった、謝るから頼むから優しくしてくれ!!」
俺は今、自室で白夜との戦いで負った傷のため、学園の敷地内にある病棟から医療キットを拝借して、手当てを受けている。
二部屋分の窓から射し込む陽射しは暖かく、のんびり過ごすには最高である。
しかし、余りにも乱暴な手当ての所為でそんな事に浸る暇もない。
「こんなになるまで戦うなど正気の沙汰では無いぞ。全く……私がどれほど……」
「痛い痛い!しみてるしみてる!消毒液を傷口にそのまま掛けるな!!」
「うるさい。手当ての邪魔だ」
「あいてっ!?ちょ、俺一応学園を救ったんですけど!?」
「私に心配を掛けた罰だ」
「なんとまあ横暴な独裁政治でありますこと!?」
一応俺の手当てをしてくれている美月が乱暴に俺の左腕に包帯を巻く。
「よし、これで終わりだ……さて、話してくれるんだろうな?」
「……えーっと。やっぱり話さなきゃダメ?」
「無論だ」
正直、明日になったら『テミスの鎮魂歌』で完全回復する左腕よりも、今の美月に使いたい気分である。
美月が今求めているのは、俺が何故イリーガル・ブルーという事を隠していたのか、という事だ。
幸い、師匠が直ぐに連れて行ってくれたらしいので、他の生徒にはまだバレていないそうだが、何せ戦闘中に美月とは会話もしたくらいである。
「まあ、その事に関しては悪いと思ってるよ」
「では、教えてくれるのだな。鋼夜の秘密を」
「ああ、それは……」
『俺、この戦いが終わったら、告白するつもりなんだ』
いきなり俺の音声で、扉の方から声が聞こえ、俺と美月が一斉にそちらを向く。この際内容はカットだ。
「てな感じだろ?鋼夜」
「なんだ……師匠か……」
そこにいたのは師匠とミリア、ティナとセルディであった。
「てことで、告白しろや鋼夜」
「なんでですか!?」
「さっき言ってただろ?」
「あれ、合成サンプルですよね!?俺あんなこと言った覚えは無いですよ!?」
「ちっ、バレたか」
「ばれますよ!!」
そんな俺たちのやりとりに唖然とする美月。
そしてその隣にさりげなく座るティナ。
「さあ、私なら準備は出来てるわよ鋼夜!」
「なんのだよ!!」
「勿論俺それは貴方からの愛を……」
「はい、アウトー!!」
「きゃぁ!何をするのです美月!!」
ああ、師匠達が入って来たことで話が……てか俺の部屋が……
ギャーギャー騒ぐみんなを見て俺はようやく戦いが終わった実感を得た。
「それでだ、真面目な話に戻るが、お嬢ちゃん。これを聞いたら多分平和な日常には戻れないぜ?それでも良いのか?」
「はい、私は鋼夜と共に居たいのです」
「ふむ、その言や良し。鋼夜、見してやれ」
俺は頷くとセルディに手伝ってもらいながら上の制服を脱ぐ。そしてそこに刻まれていたのは……
「これは……だから鋼夜は人前で着替えないのか……」
「ああ、あんまり見てて気持ちのいいものじゃないだろ?」
俺の胴を覆い尽くす程の面積の黒い痣の様なものである。
それは禍々しく、それでいておぞましい雰囲気を醸し出している。
「これが俺が紗夜から受け継いだ『憤怒』の魔女の力『テミスの鎮魂歌』。これを隠す為だよ」
「みんなは知っていたのか……」
「ああ、これを知ってるのはここにいる全員と、後はイージスのごく一部とフェルリア先生たちだけだな」
「それだけ……」
俺はまたセルディに手伝ってもらい、服を着る。
そしてそのまま、美月に話を続けた。
「これが天剣十三将、『蒼天皇』の正体だ。どうだ?がっかりしたか?」
「……いや、鋼夜がイリーガル・ブルーとわかって、なんだかほっとした」
「ほっとした?何で?」
「……これだけ強ければ鋼夜は死なないからな……私が守らなくても」
「何言ってんだよ美月」
その言葉に美月がうつむきかけた顔をこちらに向ける。
「さっきの戦いだってお前がいなきゃ俺は死んでたぜ?俺にはお前が必要だよ……だから……これからも守ってくれよな。美月」
「!!!ーーうん!!」
初めて俺は美月の笑った顔を直視出来た気がする。
なんだか顔が熱くて、赤いのは戦闘で疲れたからかな?
「さーあ、お前らちょっと外行ってこいよ。積もる話もあるだろ?今行けば月が綺麗だぜ?」
そう言って師匠は俺と美月を強引に外へ放り出す。
「えっ、あっ!し、師匠!ずるい、ずるいですわ!!美月ばかり!!」
「お嬢様。今日は美月様に譲るのが美徳かと」
「やだやだ!鋼夜は私のものなの〜!!」
そんな感じで騒がしい我が家を後にしながら二人残された俺と美月は互いに顔を見合わせる。
「じゃ、じゃあ師匠も月が綺麗だぜって言ってたし、屋上にでも行こうか?」
美月はその俺の言葉にコクンと頷くだけだ。
俺が歩こうとしても全く動く気配もない。
だぁぁ、もう!
俺は強引に美月の手を取って歩き出す。
美月がこっちを見るものの知ったことか、動かないほうが悪い!!
無言のまま、俺たちは屋上へと向かう。そしてたどり着くミーディア学園の屋上。
横浜のみなとみらいを一望できる高い屋上へと俺たちはたどり着いた。そこには人の気配は俺たち二人だけである。
「ああ、本当に月が綺麗だな」
「……ああ、そうだな」
そこから二人はしばし無言で月を眺める。
下を見れば夜景、上を見上げれば月、そして隣には幼なじみ。しばし俺はそんな時間を堪能した。
そして口を先に開いたのは美月であった。
「その……なんだ……鋼夜……私はだなそ、その……魅力があるか?」
「ん?」
「だ、だからだな、鋼夜。私には鋼夜から見て異性としての魅力があるのか?」
美月は俺の肩をがっしりと掴み、そういった。
「お、おう。美月は……そ、その……可愛いと思う……よ?」
正直幼なじみという贔屓目を除いても、美月は可愛いと思う。
「そ、そうか……そう、なのだな……」
「…………」
そのまま美月はうつむき、反対を向いてしまう。
俺は反応に困り、何をしていいのかわからない。
「鋼夜……お前はもっと自分を誇るべきだぞ?」
美月はいきなり吹っ切れた顔をしながらそう言った。
「ここは、お前が守ったんだ。その事を私は誇るべきだと思っている」
「そう、なのかな?」
「ああ、そうだ。ミーディアは鋼夜、お前が守ったんだ。ありがとう鋼夜」
「い、いや。改めて言われると照れるな」
「だ、だからだな……これは……その報酬というか……なんというか……」
「ん?」
「え、ええい!少しじっとしていろ!!」
俺は唐突に美月に顔を挟まれる。
そして数瞬後、
「っっっっっ!?!?」
俺はその衝撃に一時脳がフリーズする。
「な、な、何を……?」
「だ、だから……報酬だ。この学園を……私を守ってくれた事の……」
「お、おう……」
「そ、その……なんだ……か、格好良かったぞ?……鋼夜」
美月は今でも覚えている。あの時、自分を助けに来てくれた鋼夜の顔を、その顔は凛々しくて、勇ましくて……格好良かった。
静寂に包まれて少年たちの夜は更けていく。
全てを包み込む夜を照らす月は、明るく、優しく全てを明るく染め上げていた。
To.Be.Continued……To.the.next.stage……
美月と鋼夜は別に付き合った訳では無いのでご注意を。
と言うわけで第1章終了です!
いままでお付き合い下さった皆様、本当にありがとうございます!!
どうかこれからもコンチェルトをよろしくお願いします!