章名が大胆なネタバレ……
狂奏曲も夜双曲も一文字ずつ漢字変換が違いますが、誤字では無いので、あっ、業火剣乱もか……(今更)
二章プロローグ 美しき月の夜双曲《ノクターン》
『夜を照らし出す月の如く、月を映し出す夜の如く
美しき月は夜を望み、鋼の夜は月を望む
我らの願いは【月】と【夜】に
【クルティナの予言】の成就の為に
我ら、ここに願いを記す
心音 太陽 心音 星華』
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「はぁぁぁぁぁぁ!?会合を開くぅぅぅぅ!?」
「ああ、うるっせえよ馬鹿餓鬼。朝っぱらから騒ぐんじゃねえ!!」
「だって三ヶ月前にやったばっかじゃないですか!!もう俺あんなところ行くの嫌ですよぉおぉぉ!!」
俺たちは特に何事も無く、平和な日常を謳歌していた。
この時迄は。
「私だって嫌だ。しかし『天将』が開くと言っているのだからやらない訳にはいかないだろう」
「フェルリア先生まであんな会合とは名ばかりの武闘会に参加したいんですか!?」
「だから私も行きたくないと言っているだろうが!」
今俺たちが話している会合とは平たく言えば武闘会……ではなく、天剣十三将の会議の事である。
「なんでそんなに鋼夜は行きたくないんだ?」
「ええ、そうですわよ。いくら鋼夜が顔を隠しているからと言って素顔を晒さねばならない訳では無いのでしょう?」
「お嬢様も経験されたらよろしいかと……」
「そうそうー。あれはー、ちょっとー、行くのが嫌でー、引きこもってもおかしくないレベルー?」
「……戦闘狂……の……集まり……」
今此処に……というより俺の部屋に集まっているのは俺、美月、ティナ、セルディのルームメイトと師匠、ミリア、フェルリア先生、多賀先生の俺の事情を知っている者のみである。
因みに先日の戦いの際、俺は途中で気を失っていたらしく最後の方の事は覚えていないが、無傷でゼノギアの大群を食い止めていた多賀先生と、神がかった運の良さで俺の逃げ込んでいた(と思われている)部屋で爆睡していたというミリアには正直俺は認識を見くびっていたと言わざるを得ない。
多賀先生は強さという部分で、ミリアは怠惰という部分で。
どうやらあの日から試行錯誤してはいるものの、俺と美月の翡翠のネックレスは光を放つことは無かった。
あの光を浴び受けたときから体が軽くなった事は確かだし、何かしらの秘密があることも多分確かだと思うのだが、全くもって俺も美月も心当たりがなく、現状放置しか出来ないのである。
「でだ、それで更に厄介なのが今回からパートナーを同伴させるべきだとガルティムの奴が言ってきた事だ」
「『絶対防御』ですか……」
ガルティム・フリーゼ。『絶対防御』と言われる天剣十三将序列二位の男であり、『天将』、『嵐女帝』と共に天剣十三将を創り上げた創設者の一人である。
その絶対防御という意味合いはそのまま『イージス』の名の由来にもなったと言われる程の実力者だ。
「という訳で……だ。鋼夜、お前もとっととパートナーを選べ」
「てか、それ選択肢一択じゃないですか……」
「私ねっ!!」
「違うからね!?ティナ!」
「何でよ!!」
「お前はルナセリアの跡取り娘だろ!?そんな奴をパートナーになんかしたら俺、イージスにあっという間に取り込まれるわ!!」
「じゃあ私ルナセリアの家を出る!!」
「お止め下さいお嬢様……本当に」
凄みのある声に当てられてティナが押し黙る。
それをしたセルディはしれっとしている。
「という訳で、美月……お前しか居ないんだ頼む」
「ふぇっ!?わ、私か!?何で!?」
「お前しか頼める奴が居ないんだ」
『お前しか頼める奴が居ないんだ』→『俺にはお前が必要なんだ』→『愛してるよ美月』
時として乙女の思考回路は常人には考えられないような理論に達し、遂にはショートを起こす。脳内で現実よりも5割は美化された鋼夜がこれまた5割美化された美月に最後の言葉を囁く。
ボフッという音とともに美月が顔を真っ赤にして倒れこむ。唖然とする俺、冷徹な目で女性陣から見つめられる俺。そして、
「まーた、やりやがったこの天然ジゴロめ」
頭を師匠に小突かれる俺。
10分後、訳も分からず俺は目を覚ました美月に平謝りさせられる羽目になった。
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(ああ、びっくりした……)
自室、と言っても二部屋分の広さを誇る部屋に備え付けられているシャワールームで黒髪と黒目を持つ見目麗しい少女、心音美月はさっきの事を思い出し、羞恥と言い様のない心の疼きとで頬を赤らめる。
(全く、鋼夜の奴。軽々しくあんな事を言うものじゃないだろうに)
とは言っても幼き頃からの付き合いである美月には鋼夜のあれが正常運転である事を知っている。暫く会っていなかった間も変わらずにいた事に苦笑する一方、同時に落胆の色を隠せない。
遡れば一ヶ月前、創生龍の大規模な襲撃の後、美月と鋼夜は二人っきりで屋上へと登った。そして美月は確かに意中の人に
その時の事を鮮明に思い出し、またも顔が赤くなるのを自覚しながら、ため息を一つ吐く。
あれから鋼夜は何事も無かったかのように美月と変わらず接している。
それが嬉しいのか、悔しいのか自分では分からない。
分からないのが苦しいのだ。
そして美月はシャワールームに備え付きの防水性に優れたカレンダーを見てもう一つ大きなため息を吐いた。
今日は6月25日。あと一ヶ月と一週間で美月は16歳になる。
正確には8月1日で心音美月は16回目の誕生日を祝うこととなる。しかし美月はその日が嫌いだ。正確には7月31日が……
美月は
「お父さん……お母さん……」
嗚咽に混じったその声はシャワーの流れる音になる遮られ、目から流れる涙さえもシャワーの温水が流してしまい。誰にも気づかれる事は無かった。
〜〜〜〜〜〜〜
俺は夏が嫌いだ。
暑いのも嫌いだし、蚊が多いのも嫌いだし、ジメジメするのも嫌いだ。しかし一番嫌いなのは……
『お前には殺す価値も無い』
「つっ……」
目を瞑れば7年前のあの日が思い出させられる事が一番嫌いだ。
7年前の7月31日、俺と美月はその日全てを失った。
「ふー……うっし!気分転換に散歩でもするかな」
来週に迫った会合の為にしていた荷造りがひと段落付き、俺は気分転換の為に外へ出た。本音を言えば、少しでも早く体を動かしてしまわないと過去に囚われそうで怖かったのだ。
(俺もまだまだ……だな……)
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「『来る時、人の世の終わり、世界それを望まぬならば英雄の雛産み落としたり……」
「『クルティナの予言』か、白夜」
「ジュライア様……」
「貴様の弟は英雄になるやもしれんな?貴様も鼻が高いだろう。それとも……貴様がなりたかったか?」
「いえ、自分は英雄になどなれません。何せ自分はヒトならざるものですから……」
「そうだな、混じり物であったな。見た目はヒトなのだから忘れておったわ」
はっはっはっ、と笑いながらジュライアは部屋から出て行く。その後ろ姿を見ながら白夜は、
「ふん、汚らしい屑が。いつか寝首をかかれぬよう十分注意しておけ」
そう、薄ら笑いを浮かべながら言った。