「ふーん、じゃあ美月ちゃんと鋼夜君は明日からこの土日で師匠と一緒に天剣の会合に行くんだ」
「ああ、だから二日間いないけど頼んだな」
「うむ、何かは分からないが頼まれた」
金曜日、次の日から天剣十三将の会合の為二日間ミーディア学園を空ける旨を夕飯の際にミーシャとポーラとライラとオルトに伝えておいた。
「ふむ、それは私も行きたかったな。天剣十三将の会合など一目見たいものだ」
「ミーシャ様、お言葉ですがそれはお止めになられた方がよろしいかと」
「敬語はやめて下さいと申しているでしょうセルディさん。貴女こそ敬語を使われる立場なのに」
「いいえ、今の私は一介のメイドですので、ティナお嬢様のご学友にはその様に扱わせていただきたく」
「……では、その様に」
今のセルディは天剣を辞めた身である。敬語を使う必要はないし、普通のメイドなのだが……あっ、そういえば今は先生でもあったんだっけ。
「うん、取り敢えずわかったよ、鋼夜、美月ちゃん……最近武器庫のせいで整備士の意味が無いから暇なんだよねー」
「それならセルディのフリーダムナイツを見せて貰えよ、天剣のフリーダムナイツなんて滅多に見れるもんじゃないぜ?」
「私のでよければどうぞ」
「「本当ですか!!!??」」
おう、いきなり目を輝かせ始めたよ。まあいつかチームを組んでもらう予定だし、その時は蒼火桜もきちんとメンテしてやんないとな。イリーガル・ブルーってことを隠してるおかげで武器庫でしかメンテ出来なかったし。
その後俺たちは色々と談笑しながら、夜の有意義な時間を過ごし、明日のため早く寝なければならないので俺と美月は直ぐに帰ったが、ティナ達はもう少しゆっくりするとの事だったので、取り敢えず俺は美月と二人で帰ることとしたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜
「んじゃあ、ちゃんと天剣の二つ名は頭に入ったか?」
「うむ、勿論だ。全員言えるぞ」
「多分パートナーは別室が与えられるだろうとは師匠が言ってたけど、もし万が一何かあった場合名前を覚えておかないと大変だからな。それに結構こだわりがある人も居るし」
天剣十三将とはその名の通り、十三人のイージストップクラスの戦闘能力を持ち合わせる世界の最高戦力と言っても過言では無いほどの力の持ち主たちである。
第1席 『天将』 滝沢 秋水
第2席 『絶対防御』 ガルティム・フリーゼ
第3席 『嵐女帝』 アルシア・セラム
第4席 『百人将』 リヴァン・ディルクラール
第5席 『黒影』 グランリー・リゼータ
第6席 『翼竜』 劉 翔萎
第7席 『爆破王』 シリル・クステア
第8席 『業炎』 フェルリア・ヴォーネバイス
第9席 『爆炎砲』 シアン・カル・クライン
第10席『雷剣』 グレース・アルキオス
第11席『人形使い』 オフィリス・アルモスト
第12席『切り裂き魔』 シーラ・コレット
第13席『蒼天皇』 朧火 鋼夜
俺が第四世代になった事で全員が第四世代以上のフリーダムナイツを持つ、最強の13人が集まるこの会合は毎回……少なくとも俺が入ってからは模擬戦が始まることが多い。
天剣というのは殆どが戦闘狂であり、些細な喧嘩から始まり、最終的に一騎打ちになるのだ。
これに全員分のパートナーを加えた26人が人類の最後の砦と言えるだろう。
「……そんな大事な役目を私で良いのか?」
「良いも何も俺には美月しか選択肢無かったからなぁ」
俺の素顔を知っており、なおかつパートナーに選べる人間と言えば美月しか俺の周りには居なかったのだから仕方がない。
「まあ、そうでなくとも俺は美月を選んでいたけどね」
「えっ?」
「だって、守ってくれるんだろ?俺をさ」
「鋼夜……」
確かに言った。創生龍の襲撃の際、白夜との一騎打ちの時に確かに美月は鋼夜に「守る」と言った。
(覚えていてくれた……)
いや、それよりもあの約束を信じてくれていたのだ。
天剣十三将を守るなど馬鹿げている。そもそも少し前までは美月は天剣に守られる側だった筈だ。しかし美月は鋼夜を守ると言った。普通ならば笑われるその言葉を鋼夜は信じ、信頼を寄せてくれた。
それが美月はとてつもなく嬉しかった。
「背中は頼んだぜ?美月」
「ああ、頼まれた。私の背中は任せた」
「ああ、任されたよ」
その時、キラリと胸のネックレスが翡翠に光った気がした。
〜〜〜〜〜〜〜
その夜、美月は夢を見た。
7年前の7月31日。美月の誕生日の一日前。
「ねえねえ、お父さん、お母さん。今年の誕生日はみんなでパーティー開いてもいい?」
「ああ、いいよ美月。朧火さんも呼んでうちでパーティー開こう」
「本当!?やった!!」
「ああ、本当だ。誕生日プレゼントは良いものを用意してやるからな。楽しみにしとけよ〜」
そう言ってお父さんが私の頭をガシガシ撫でる。
「うん!!じゃあ行ってきます!!」
「ああ、行ってらっしゃい。美月」
「なるべく早く帰ってくるのよ〜」
そうして私は鋼夜のお父さんが経営していた道場へと足を運ぶ。
……それが父と母との永遠の別れになるとも知らずに。
私がそれを知ったのは帰った時だった。
家のドア、窓、壁、全てが壊されており、夕日が直接家の中まで照らしているのが印象的だった。
……結局私は父と母の遺体には会えず、訳も分からぬまま泣きじゃくる叔母の腕の中で呆然と立ち尽くしていただけだった。
そして叔母から渡されたのは二つの翡翠のネックレスだった。
明日渡す為に宝石商を営んでいる叔母にわざわざネックレスにする為の加工を頼んだ特注のネックレスだと言う。
二つあるのは鋼夜に渡せと言われた。
それにその時叔母はおかしな事を言っていた。
曰く、「間違えて翡翠の部分に刃を当ててしまったが、不思議な事に全く傷付かず、逆に刃が折れた」と。
兎にも角にも私は訳も分からず鋼夜の元へと走った。
この言いようのない不安を抱きとめて欲しかった。
私は走った、鋼夜の元へ、そしてそこで見たのは血まみれの紗夜ちゃんを抱きしめ目元を泣き腫らしている鋼夜の姿であった。
そのあと裕福とは言えないが、神社の家系の叔母に引き取られ、私は7年を過ごした。
不思議と喪失感というものは無かった。
父と母がフリーダムナイツというものを研究所していた事は知っていたし、遺体にも会えなかった為、フリーダムナイツというものを見る度に父と母がそこにいるような気がしたのだ。
それに鋼夜に無理やり押し付けた翡翠のネックレスの片割れが握り締めれば何時でもそこに両親の温もりを感じることが出来たから。
そして私にも『ジュエル』がある事が分かり、ずっと女手ひとつで育ててくれた叔母に礼を言いながら、私はミーディア学園へと入学した。
そこで私は7年ぶりに再会する事となったのだ。
私の忘れもしない初恋の……そして最愛の人に。
7年経って鋼夜は大人になっていた。言い方はおかしいが、大人の風格というものが出てきていたという方が正しいだろうか。今思えば鋼夜はあの頃からグリモアとの戦闘を経験し、挫折や後悔の人生を歩んできていたのだろう。
そして色々とあったあっという間の一ヶ月が過ぎ、私は鋼夜の秘密を知った。
それでも私は変わらない想いを抱き続けている。
私は鋼夜を守りたい、それは変わらない真実であり、私の偽らない本心である。
さらに言えばずっと鋼夜の隣に居たいというのも本心であろう。あの時、レーヴァテインを初めて手に持った時、私は雪時雨に誓ったのだ。私は朧火鋼夜を愛していると。
あの頃から私は何処かでこうなる事を予期していたのかもしれない。
ふと私が目を覚ますと、時計を見ればまだ午前3時であった。そして横を見ればだらしない格好で爆睡している鋼夜の寝顔。
「いつか必ず、愛してると言わせてやるぞ鋼夜」
そう言って私はもう一度深い眠りへと落ちていった。